岩本康志のブログ

経済,財政の話題を折に触れて取り上げます

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 西濃運輸とそのグループ企業が健康保険組合を解散したことが,新聞各紙で大きく取り上げられている。大規模な組合が倒産以外の理由で解散するという稀有の事例なことと,悪評高い後期高齢者医療制度がからんでいるので,不安を煽りそうだ。事態を整理するためのQ&Aをまとめた。


【Q】 何が起こったのか?

【A】 西濃運輸は,健保組合を運営するか,政管健保に加入するか,の2つの選択肢があって,保険料が安くなる後者を選んだ。


【Q】 なぜこんなことが起こったのか?

【A】 医療制度改革で,高齢者の医療費に対する現役世代の支援が,組合健保の方で大きく増加することになった。それによって,健保組合の財政条件が悪くなり,政管健保の保険料の方が安くなるケースが出てきた。


【Q】 今後もこのようなことが起こり得るか?

【A】 上のような事情だから,当然に起こり得る。


【Q】 なぜ健保組合で負担が大きくなったのか?

【A】 明示的に組合健保の負担を重くする改革をしたわけではないが,結果的にそうなった。
 従業員の賃金が高い大企業は,健保組合を作り,自分たちだけで医療保険を運営することで,政管健保よりも保険料を安くできる。恵まれている健保組合に少し重く負担してもらってもいいという考えは,改革の背景に働いたと思われる。


【Q】 よくないことなのか?

【A1】 組合が消滅しても,従業員と家族は政管健保より今まで通り公的医療保険の給付を受けられる。加入者は心配しなくていい。
 組合独自の給付がなくなるが,これは会社の福利厚生の問題として考えるべき。

【A2】 現役世代の保険料負担の考え方によるので,可否は一義的には定まらない。
 かりに負担の格差に着目すると,政管健保とは保険料率の違う組合健保がなくなって負担が平準化されたことになり,格差は縮小した。


【Q】 このままいけば,健保組合がなくなってしまわないか?

【A】 なくなったとして,具体的に何が悪い?


【Q】 政管健保の財政は悪化するのか?

【A】 むしろよくなる。健保組合として財政が苦しくても,政管健保よりは良好である。既存の政管健保加入者から見れば,条件のいい人たちが加入してくるので,財政的には改善になる。


【Q】 公費負担は増えるのか?

【A】 健保組合の解散だけをみれば,公費が投入される政管健保加入者が増えるので,公費負担が増えている。
 しかし,解散を引き起こした原因は公費負担を減らす改革にあるので,それを合わせて考えると,公費負担は減っている。つまり,公費負担を減らす改革に対して,公費負担を一部増やす反応がこのように現れた。しかし,金額的には前者の減少額の方がずっと大きい。


(2008年8月23日追記)
 大事なところを過不足なく押さえたかったが,とっさの書き物なので説明不足だった点を補足する。
 政管健保には加入者の給付費の13%,高齢者への支援分の16.4%の国庫補助があるが,健保組合にはこれがない。健保組合の保険料が政管健保のそれを若干上回っていても,政管健保へ移行して国庫補助が入ると,もっと低い保険料でやっていける。こうした組合が解散して政管健保に加入すると,政管健保の財政が(わずかであるが)改善する。

【Q】 組合健保の9割が赤字になるというが,これらの組合が政管健保に移行してくるのか?

【A】 赤字になることと,政管健保に移行することは,まったく別の話。例えば保険料が6%(労使合計)の健保組合が赤字になったとすると,保険料7%にして黒字にできるならば,政管健保に移行して保険料を8.2%にしたりはしない。政管健保への移行は,保険料が高い組合だけで生じてくる。

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