岩本康志のブログ

経済,財政の話題を折に触れて取り上げます

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 非伝統的金融政策を議論しているときに,財政政策のことが話題にのぼる。「『リフレ政策』に対する私見(とりあえずのまとめ)」(http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/32738553.html )でも,「中央銀行がバランスシートにリスクを負うことは財政政策であるとの認識が必要」と書いた。中央銀行のとる政策なのに,なぜ財政政策の話になるのか。不思議に思われる方もいるかと思われるので,今回と次回の記事ではそれを説明したい。

 ここで議論したいのは,中央銀行が伝統的なオペ対象資産(安全な短期金融資産)以外の金融資産を購入する非伝統的金融政策である。具体的には株式,格付けの低い社債,企業への直接融資,外貨建て資産等が考えられ,違いは,将来にその資産価値が減じるかもしれないリスクがあるということである。
 非伝統的金融政策に踏み出した中央銀行の業務は,

リスクのある資産を保有し,通貨を発行する

となっている。非伝統的金融政策の意味をはっきりさせるために,これを仮想的に2つに分割してみる(それを部局A,部局Bと呼ぶ)

部局A リスクのある資産を保有し,国債を発行する
部局B 国債を保有し,通貨を発行する

部局Aの債務である国債と部局Bの資産である国債が相殺されると,上の中央銀行の姿にもどる。ここで部局Bのしていることは,伝統的な金融政策である。つまり,部局Aのしていることが非伝統的金融政策を伝統的金融政策から違えている本質的な部分である(注1)。
 そして問題は,部局Aのしていることは金融政策なのか,財政政策なのか,である。
 政府を見渡すと,部局Aのような業務をしているものとして財政投融資がある。財政投融資特別会計融資資金勘定は,財投債を発行し,財投機関に融資をしている。同特会投資勘定は自己資本をもとに投資している。財投機関である政策金融機関は,財政融資資金からの資金で企業・個人に融資をしている。
 財政投融資は,金融的手段を用いた財政政策,と呼ばれている。どこが政策を実施するかではなく,政策の機能に着目して政策を分類し,金融政策を部局Bの業務に限定する考え方に立つと,部局Aのしていることは,財政政策になる。非伝統的金融政策の議論では,そのような理解がとられるのが一般的だ(例えば,Goodfriend ,2010を参照)。
 財政政策であるという理解に立つと,憲法83条「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない」の財政民主主義に服さなければいけない。実際,財政投融資計画での財政融資・産業投資・政府保証は予算の一部として,国会で審議され議決される。財政投融資計画自体も,特別会計予算の添付資料として国会に提出されている。また,政策金融機関の予算も国会で審議される。
 かりに財務省理財局や政策金融機関が国会の議決を仰がず,自分たちの判断で財政投融資や政策金融の活動をしたら,どうなるか。言語道断と非難されることは論をまたない。
 では,日本銀行が中央銀行の独立性のもとで,政策委員会の判断で部局Aのような業務をしたらどうなるだろうか。言語道断と直ちに非難されそうにはない。むしろ,デフレ脱却のために色々な資産をどんどん買え,といわれて日銀は批判されている。
 この違いをどう整理すればよいか。

(その2[2010年7月4日追記:http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/33500878.html )に続く。


(注1) 非伝統的金融政策のすべてが財政政策ではない。時間軸政策では中央銀行の業務は部局Bの枠内に留まっているから,時間軸政策は非伝統的金融政策と見なされていても,財政政策ではない。

(参考文献)
Marvin Goodfriend (2010), Central Banking in the Credit Turmoil: An Assessment of Federal Reserve Practice, forthcoming in Journal of Monetary Economics.

(関係する過去記事)
「『リフレ政策』に対する私見(とりあえずのまとめ)」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/32738553.html

「量的緩和から非伝統的金融政策へ」
http://blogs.yahoo.co.jp/iwamotoseminar/33205318.html

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