糸魚川のお蕎麦大好き蕎麦店主が綴るお蕎麦密着型写真的ブログ

いつもご訪問ありがとうございます。お蕎麦のこと、ふるさとのこと、泉家のことなど、不定期更新で綴らせていただきます。

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豆まきの時期になりますとここ数年家人と次のような話を致します。

「あの時の天ぷらそばは、美味しかったよねえ」(家人)
「うまかったよなあ。何であんなにうまかったんだろう」(私)

あの日、12年前の2月4日、泉家の父の通夜の日に、
準備で集まっていただいた方々のお昼に有り合せの材料を使って
天ぷらそばをお出ししたのでした。

そんな間に合わせの天ぷらそばが、私と家人に取りましては
今まで食べた中で一番美味しかった天ぷらそばだ、というのです。

その時の天ぷらそばを家人も「一番美味しい」と思っていたという事は、
数ヵ月後になって初めて知ったのですが、不思議なのは、

当日は「食べる」と言うこと自体に気が行かない位の精神状態だったはずで、
何かを食べて美味しいと感じるような状況ではなかったはず、なのです。

なんであんなにうまかったのか、自分達の体調も含めて当時の状況を
一つ一つ思い起こしてみるのですが、毎年、納得のいく説明がつかないのです。

何であんなにうまかったのかは分からずじまいなのですが、
ハッキリしているのはその日が父の通夜の日だったということで、

このごろ、あれは「オヤジの天ぷらそば」だったからかなあ、
というちょっとウエットな、気恥ずかしくもある説明を、

個人的には受け入れてもよいのかなと思い始めています。
と申しますのは、通夜の日、隣のお仏壇の部屋に寝かされていた父が、

かけられた白布の下で「どうだウマイだろう」と
得意になって笑っていたのではないかという私の勝手な想像が、

親しみや可笑しさや懐かしさを伴って私の胸に浮かんできては離れないからなのです。
かくして2月4日の天ぷらそばは私の忘れ得ぬ味の一つとなったのですが、

その後、今日までそういう天ぷらそばには未だにお目にかかっておりません。
人との出会いと同じように忘れ得ぬ味との出会いも一期一会なのかもしれませんね。

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