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「仕事ができないやつだ」「バカかお前は」などとののしる、高級酒を貢がせる、無理難題を押しつけて精神的に追いつめる――など上官によって、連日罵詈雑言を浴びせられた海自護衛艦「さわぎり」乗員の新隊員が、ついにノイローゼになって自殺するという悲しい事件が1999年におきた。
この事件をめぐって遺族が起こした国家賠償請求訴訟の控訴審が20日、福岡高裁で結審した。判決は8月25日に言い渡される予定だ。2001年の提訴から7年以上にわたった法廷での戦いに、決着がつく。
「公正な判決を――」と支援者たちが広範囲によびかけ、6万筆ちかい署名が集められ、福岡高裁に提出された。
原告である遺族の心ちゅうには、ひとしおならぬ感慨があることだろう。亡くなった隊員の母が言う。
「やるだけのことはやりました。長い間ほんとうに支援ありがとうございました。天寿をまっとうできなかった息子の力だと思っています」
いじめの犠牲となったのは21歳の3曹Kさんだった。Kさんは、生前からたびたび艦内でひどい目にあっていると、家族に漏らしていた。
遺族は計り知れない衝撃を受け、悩んだ末に、時効が迫った2001年6月、国家賠償請求訴訟を長崎地裁佐世保支部に起こす。
自衛官の自殺をめぐる国賠訴訟は、これが最初となった。後に2件が相次いで訴訟を提起し、現在では横浜地裁と静岡地裁浜松支部でも争われている。いずれも「さわぎり」事件で闘う遺族の姿に勇気を得て、踏み切ったケースだった。
審議の過程でおぞましい艦内の実態が次々と明るみになった。規則違反である飲酒の横行。賭け事、制裁として部下を丸刈りにする・・・詳しくは拙著『悩める自衛官』(花伝社)で詳述しているので、ぜひお読みいただきたい。
2005年6月、一審長崎地裁佐世保支部の野田恵司裁判長は、上官による言動や行動を、一部「不適切」と認めながらも、「あくまで指導の一環」「いじめる意図があったとは認めがたい」などとして、原告の請求をすべて棄却した。審議の内容をみれば、原告が勝つべき裁判だった。真理より政治的な判断を重んじたとしかみえない判決だった。
控訴審では、新証人が採用され、さらに3年にわたる審議が続けられた。そしてようやく今日、結審を迎えた。
自殺で命を落とす自衛隊員は6年連続で年間80人以上もいる。2004年度から3年間は100人台に達した。2008年度も89人が自殺したという。自衛隊員の最大の死因は自殺なのだ。
その背景にある、陰惨な暴力やパワハラを、防衛省は「さわぎり」事件から10年になろうとしても、決して直視しようとしない。そして悲劇は繰り返される。
自衛隊が「軍」でないいま、自衛隊をチェックできる唯一といっていい機関が裁判所だ。裁判所の判断は、自衛隊の行く末、さらには日本の行く末に大きな影響がある。「軍隊」だからと、暴力やパワハラを容認するのか。あるいは、自衛隊員も同じ国民として基本的人権を尊重されるべきだ、と憲法を重んじるのか。
8月25日、福岡高裁の判決に注目したい。
三宅勝久
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