「ナンバ」馬術-発想の転換

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扶助を使うときには、まず自分の姿勢を安定させ、支点をしっかりと固定しておいてから、力を入れて末端を動かす、という動き方になりがちです。
しかし、多様な馬の身体の動きに沿って扶助を行うためには、1か所の支点を基点にして動く「自動車のワイパー」のような平面的・単一的な動きではなく、前後・左右・上下など、多方向の動きが同時に起こるような立体的・複合的な動きが必要です。

身体を立体的に動かすためには、体幹の使い方がポイントになります。
たとえば、身体を左右に二つに分割する切断面(「正中面」)を捻ったり回したりしないように(「正中面を立てる」)、体幹部を上から見て、長方形から平行四辺形に変形していくように動かし、内方側の肩と腰が同時に前に出るようにすると、脊柱を支点に身体全部がひとかたまりでまわらず、各部がそれぞれ別々に同時並列的に働くため、身体各部の動きを独立させて、扶助と随伴を同時に行いやすくなります。
このような動きは、日本古来の様々な武術や舞踊にもよく見られるものです。身体をねじる力で動くよりも体への負担は少なく、しかも、スムーズで力強く、かつ精妙な身体操作が可能になります。

人間が頭で考えて一度に処理できる情報量には限りがありますから、「ここをこうすればこうなる」という論理で身体を動かそうとすると、ラジオ体操のような、器械的な動きになりやすいものです。考えて出来る、言語で説明できるというような動きでは、それでできることはたかが知れているといえます。
左右の手綱や脚の作用、あるいは自分の身体の操作方法などをよく理解することはもちろん大切ですが、そのうえで、身体各部を意識しなくても、意思によって身体全体を三次元的に「自然に」動かして扶助を行うことができるようになれば、まるで自分の意思と馬の体が直結しているかのように、馬の身体を自分の手足のようにコントロールできるようになるのだと思います。そういう動きが、馬術の「術」たる所以であるとも言えるでしょう。


・二蹄跡運動の「型稽古」
「二蹄跡運動」とは、前肢と後肢が異なる軌跡を描くような動きのことです。これを練習することで、反対手綱と同側の脚による側対扶助、半減却の扶助、随伴の動きを同時並列に行い、馬の動きの方向を統御する感覚を身につけることができます。
またこの運動は、馬にとっても、騎手の扶助に対する緊張や抵抗による頸や背中、顎の凝縮を取り去り、また四肢を斜めに踏み込む動きを繰り返すことによって股関節や肩甲骨の可動域を広げ、後肢に負重するための筋力を養うことができるという効果があります。

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「斜め横歩」とは、外方に向かって斜め前方に進む二蹄跡運動です。内方の前後肢が外方の肢の前に向かって踏み出し、肢がクロスするような形になります。他の二蹄跡運動とは違って、馬に内方に湾曲した姿勢をとらせず、背骨は真直ぐで、頭がわずかに内方に向く程度に留め、また馬体保護のために後躯が先行することも避けなければならない、とされています。
斜め横歩をするためには、内方手綱で馬の顎を外方に圧し、同時に「前肢旋回」と同じようにやや後ろに引いた内方の脚で圧迫し、後躯の側方転移を促します。この扶助は全くの側対扶助で、馬に収縮を求めるものではありません。
前肢旋回と異なるのは、控えた外方手綱を少しだけ進行方向に開いてやることで、これによって馬の前肢が側方へ踏み出しやすくなりますが、あまり引っ張ると、馬が回転して斜めになってしまいます。
このとき、体幹ををねじらないように、胸郭と骨盤を左右分割し、外方側を後ろへ引きます。
内方手綱で馬の頭を内方に向けようとする意識が過剰な場合など、騎手が必要以上に内方の肩を引いてしまうと、後躯が先行してしまったり、外方手綱の規制が緩んで、外方の肩を張って逃げられたりします。

斜め横歩は、後躯の側方転移さえできれば、あとは馬の身体を真直ぐに保ち、前のめりになるのを止めるという感覚の方が重要かもしれません。
内方の手とか脚の、「ナマな力」でグイグイ横に押すのではなく、肩が先行して馬体が屈曲しすぎたり、後躯先行になったりするのを外方の脚で止め、馬体が真直になったら再び内方脚を使う、というように力を使わずに、馬のバランスをなるべく傾けずに、側方、前方と動かしていきましょう。

肩を内へ
「肩を内へ」は、斜め横歩の進行方向を変えた感じの動きで、頭頚を内方に屈曲した状態で直進していきます。
主な扶助は、内方の手綱と脚の側対扶助ですが、外方脚は後躯を支持し、前方へ推進するために使います。この外方脚と内方手綱によって多少の斜対扶助の成分も加味されますので、馬体は斜め横歩のときよりも収縮する感じになり、内方の肩を軽くして、後躯を低下させて動くことを馬に教える効果もあります。ここまではまだ完全な斜対扶助ではなく、横歩や腰を内への運動に入る前の一つの段階ともいえます。

9を内へ、横歩
ここからは完全な斜対扶助によって行われる運動です。外方脚と内方手綱が主扶助となります。馬はこの脚と手綱の間に置かれ、馬体は収縮します。内方脚は内方後肢の進出を促す目的で使用します。
横歩は、「腰を内へ」と、「肩を内へ」の運動を組み合わせたもので、馬体はさらに収縮し、肢の運動方向は斜めとなり、交差する度合いも大きくなりますので、これによって馬に要求される柔軟性はより増大されます。肩、背、股間節の自由度と扶助に対する従順性を高める効果がもっとも高い運動といえます。
騎手にもまた、より精密な身体の使い方が要求されます。


・手前の変換
馬の運動の方向を変えることを、「手前を変える」と言ったりしますが、この「手前」とはどういう意味か、考えたことはあまりないでしょう。
「右手前」「左手前」という言葉は、元々、人間の姿勢を表す言葉です。
槍や剣、あるいは弓などを持って構える場合、同側の手足がそろった「半身」の姿勢になりますが、この時に「右手右足が前に出ている」構え方を「右手前」、逆に「左手左足側が前に出た」構えを「左手前」の構えというように呼ぶのです。
馬が右回りで進むときに、右側の前後肢を進行方向に踏み出し、左側に対して先行するように見えるため、馬の右回りの時の動き方を右手前、左回りのときの動き方を左手前、という呼ぶようになったのだろうと思います。
言いかえれば、「手前を変える」というのは、馬の進行方向を右回りから左回りに変える、というようなことではなく、馬の身体の動きの方向、力の方向を変えることである、ということもできます。

・踏歩変換
駈歩の「手前」を変える方法には、シンプル・チェンジ(単純踏歩変換)といわれるものと、フライング・チェンジといわれるものの2通りがあります。
シンプル・チェンジとは、駈歩から一瞬常歩に移行し、そこから改めて逆手前の駈歩に移行する方法です。
フライング・チェンジとは、駈歩を継続したまま、駈歩の手前を変える方法で、これを4歩毎、3歩毎、歩毎というように連続して行うものを「連続踏歩変換」といいます。これには人馬ともに器用さが必要で、バランスやタイミングの乱れ、強引な扶助などによって、馬が興奮してしまいやすく、連続して行うのはたいへん難しいものです。
フライング・チェンジを行うためには、駈歩の浮上期(馬の全肢が空中にあるタイミング)に瞬間的に体勢を入れ替えなければならないので、内方の前肢が地面に着地しようとするときに、左右の脚の位置を入れ替えて、馬体に付けていた外方脚をはなして前(内方脚の位置)に移動させ、逆手前の駈歩を発進させる、ということになります。馬はこのとき、瞬時に左手前から右手前というように姿勢を差し替えなければならないことになります。これは馬にとって結構大変で、力んで興奮しやすいので、極力刺激しない感じで行います。
通常の駈歩発進でも同じですが、内方脚で内方後肢の進出を促す際、あまり強く「グリッ」と圧迫しすぎると馬の内方への重心移動を妨げ、馬を興奮させてしまいやすくなります。
馬が姿勢を差し替えやすいように、馬体を収縮させ、左右の肩の位置がなるべく揃ってズレの少ない体勢をつくってから行なうようにする必要があります。

またこの時、騎手の体勢も差し替える必要があります。騎手の「手前」を瞬時に差し替えるためには、膝や上半身の「抜き」によって身体が浮いている(あくまで感覚ですが)間に、全身をひとかたまりで回して向きを変えるのではなく、群泳する小魚が一斉に方向変換するように、身体を細かく分割して各部の動きの方向を一斉に変化させるようにすると、スムーズに向きを変えられると思います。

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