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地球物理学から見た地震と原発
   日本列島に住み着いた私たちに熊本地震は問いかける
 
  島村英紀 武蔵野学院大学特任教授(地震学)

  熊本県を中心に地震が頻発している。いままでに震度7を2回記録したのをはじめ、有感地震(身体に感じる地震)だけでも、すでに1700回を超えて、異例の多さになっている。

■どこでも起きる可能性

  日本で起きる地震には「海溝型地震」と「内陸直下型地震」の二種類がある。前者はプレートとプレートの境で起きるもので、2011年に起きた東日本大震災(地震名は東北地方太平洋沖地震)がこの種の地震だ。主に日本の太平洋岸の沖で起きる。
 一方、内陸直下型地震はプレートが押してくることによって日本列島がねじれたり、ゆがんだりする。その歪み(ひずみ)がたまって、地下のどこかで岩が我慢できる限界を超えてしまったら起きる地震だ。こちらは日本列島の「どこでも」起きる可能性がある。げんに、内陸直下型地震は、この数十年だけをとっても、日本各地で起きてきている。

■熊本地震は内陸直下型

  今回の地震は典型的な内陸直下型地震だが、もうひとつの特徴がある。それは、この地震は日本最長の断層帯である「中央構造線」が起こした地震だったことだ。中央構造線は、長野県から西へ延びて紀伊半島を横切り、四国の北をかすめ、大分から鹿児島まで九州を横断する長さ1000キロもある大断層だ。地質学的な研究から、この大断層は過去に数百回以上も地震を起こしてきたことが分かっている。
 この大断層に沿って地震の「候補」が並んでいる。熊本で大地震が起きたことによって、その部分の地震エネルギーが解放された。大地震が起きたことは、隣の地震との間の「留め金」が外れたことを意味する。もし隣の地震の「候補」が、いまにも地震を起こすだけのエネルギーを貯めていれば、支えを失って連鎖的に地震が起きる可能性がある。
 熊本の地震の次に阿蘇山の下で地震が起き、さらに大分でも地震が起きた。また、熊本県の西南方にある八代市でも地震が続いたのは、こういった理由だろう。もし東に行けば、次は愛媛沖、もし西南に広がれば鹿児島県に入る。ともに原発があるところだから、地球物理学者としては気が気ではない。

■想定外だった加速度の大きさ

  内陸直下型地震は、地震としての規模(マグニチュード)は海溝型地震よりも小さいが、人が住んでいる直下で起きるので揺れは大きく、それゆえ被害も大きい。阪神淡路大震災(1995年)は東北地方太平洋沖地震の約1/350のエネルギーしかなかったが、6400人を超える犠牲者を生んでしまった。
 直下型地震の特徴は地面の加速度が大きいことだ。地震のときに、建物や橋などにかかる力は、そのものの重さに「加速度」をかけたものになる。加速度が大きいほど、そのものに大きな力がかかることになる。
 今回の益城町での加速度も1580ガルを記録した。近年、日本各地に起きた内陸直下型地震では、大きいものは4000ガルを超えた。新潟県にある東京電力柏崎刈羽原発が2007年の中越沖地震で停止してしまったときは、原発の構内にある地震計が記録した加速度は1500ガルにも達していた。
 じつは、各地の原子力発電所は、ここまでの加速度を想定していない。いままでの設計基準やその見直しでもせいぜい500〜650ガルなので、それを超える地震の加速度に襲われたとき、いったい何が起きるのかは心配なことなのである。

■巨大地震を契機に高まるリスク

  日本には火山も多い。プレートの動きによって、岩が我慢できる限界を超えると起きるのが地震、そしてプレートがある深さのところまで潜り込んだところで溶けてマグマが作られ、それが上がってきて起こすのが火山噴火だ。地震はプレートの動きの直接の反映、火山は間接的な反映になる。
 日本には活火山だけでも110もある。日本にあるすべての原発から160キロ以内に活火山がある。 ところで、19世紀までの日本では、各世紀に4回以上の「大噴火」が起きていた。「大噴火」とは東京ドームの250杯分、3億立方メートル以上の火山灰や噴石や熔岩が出てきた噴火をいう。2014年に起きた御嶽山の噴火よりも500倍以上も大きな噴火だ。この「大噴火」は、最近の100年は火山活動は異常に少なかった。
 しかし、これらが東北地方太平洋沖地震という巨大地震をきっかけに「普通」に戻りつつある。この東北地方太平洋沖地震は地下にある基盤岩全体を動かしてしまったためである。この地震は日本全体を載せたまま地下の基盤岩を東南方向に大きく動かした。
 この変動は広く日本列島全体に及んでいる。このために日本各地に生まれたひずみが、それぞれの場所での地震や噴火のリスクを高めている。この東北地方太平洋沖地震は、これから数年、あるいは数十年かかって、じわじわ影響が出てくるであろう。

■日本で原発を持つのは無謀

  自然現象としての地震や噴火は昔から起きてきている。これらが起きても、人が住んでいなければ災害は起きない。自然現象と社会の交点で災害が起きる。しかも文明が進むたびに災害が大きくなる。歴史を振り返ると、対策は被害をいつも追いかけてきた。
 とても危ないところに、知らないで住み着いてしまったのが私たちたち日本人なのである。一方で、四季がはっきりした気候も、農業も、温泉もみんなプレートの恩恵である。ほとんど掘り尽くしてしまったが、かつての日本を支えた鉱産物もプレートのおかげでできたものだ。
 日本列島に住み着いた私たちは、恩恵を十分受ける一方で、災害も受け入れざるを得ない。災害があり得るということを普段から考えていることが、何より大事なことだ。 こういうことを知っている地球物理学者としては、日本で原発を持つのは無謀であると言わざるをえない。
 たとえば約一万年に一度は「大規模噴火」よりもさらに、3桁以上も規模が大きい「カルデラ噴火」があり、日常的にプレートが動いている日本のようなところで原発を持ち、数万年にわたって放射性廃棄物を管理しなければならないことは無謀な試みといわざるを得ないからである。
 いままでの100年ほどは、日本の火山活動も、首都圏の地震も「異常に」少なかった。しかし、これらは地球物理学者から見ると「普通」に戻りつつある。私たち日本人は、もちろん火山やプレート活動の恩恵を受けている。
 しかし同時に、地震国・火山国に住む覚悟と自覚を持っているべきであろう。(2016・5・31記)

出典:「世界へ未来へ 9条連ニュース」2016年6月20日 No258より

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