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前回、元バルセロナ監督のライカールト氏のインタビューを2回にわたって紹介しました。
選手としても、監督としても成功を収めた人ですが、当然ながら、これはかなりのレアケースです。
プロ選手のセカンドキャリアのひとつであるサッカー指導者という職業は、実際にそれを目指すのは
イバラの道で、元プロだったからこそ味わう、一般人にはわからない苦労があるそうです。
これは日本だけの話ではなく、海外でも同じだそうです。
UEFA主催で「プロ指導者養成に携わる方々」向けのシンポジウムが、2006年にダブリンで開催されました。
サッカー指導者を指導する、いわばコーチのコーチです。
招かれたスピーカーには、元ミラン&クロアチア代表のボバン、元スウェーデン代表のローランド・ニルソン、
元アルゼンチン代表のガブリエル・カルデロン、元ルーマニア代表のダン・ペトレスクといった元トッププロ
もおり、引退後に指導者を目指した彼らの生の声が紹介されました。
「いつまでもサッカー界に関わりたい」
「サッカーへの情熱を仕事に生かしたい」
この想いが指導者を目指す最大の動機になっています。
元プロ監督らが直面する問題にはいろいろあるのですが、最大のものは「志半ばでのドロップアウト」です。
いつの間にか、サッカー界から消えてしまったり、忘れ去られてしまう、といったことです。
こういう現実は、業界関係者には周知の事実なのかもしれませんが、一般人には知る由もないですし、けっして
メディアにも乗ってこない影のニュースでしょう。
典型的な例を挙げますと、輝かしいプロキャリアを送った元スターが、「自分は選手として成功したのだから、
指導者としても成功するはずだ」と思いこみ、名声を利用して有名クラブのコーチなり監督の職にありつくも、
その仕事の重責、指導の奥の深さに驚き、そして自分の能力の低さに悲観して燃え尽きる(もしくはその前に
解雇される)というものです。
スピーカーの一人、元スウェーデン代表のローランド・ニルソン氏は、
「引退後にクラブチームのアシスタントコーチに就任し、直後に監督が解雇されたため、自分が繰り上げで
監督になったものの、瞬く間に失敗した。その後、サッカー指導の情熱を取り戻すのに、何年もかかってしまった」
と自身の体験談を語りました。
このような問題を解消することがこのシンポジウムの目的のひとつなわけです。
つまり、問題とは「指導者を目指す元プロ選手に、誰がどこまでどのように教育するのがよいのか?」
ということです。
なぜこれが問題かというと、元プロは当然サッカーの技量は一定水準以上ありますし、プレーに関しての知識
もある程度持っています。ところが、人の管理、リーダーシップ、コミュニケーションスキル、ストレス管理
などの知識は乏しい(もしくはアマチュア指導者同等)わけです。つまり、監督として求められるさまざまな
スキル、知識、経験が一般人よりかなりいびつであるわけです。
ところが、指導者教育コースを受講する生徒は、そのほとんどが元プロではありません。
こういった状況での元プロらの扱いが難しいようなのです。
元プロもフォローもしてあげるべきですし、かといって特別扱いしすぎても具合が悪い。
プロキャリアのない受講生をなおざりにしてしまうと、未来のラファエル・ベニテスやジョゼ・モウリーニョの
ような芽をつぶしてしまうことにもなりかねないわけです。
プロ指導者養成プログラムの責任者は、元プロにもそうでない一般人にも、適度にバランスのとれたコースを
設計する能力が求められているとのことです。
記事の中では、とくに解決法が「これだ」と示されている分けではありません。
常にバランスに注意し、適切な行為を適切なタイミングでおこなうしかなく、近道はないと述べています。
そのために、UEFAはウェブ、DVD、コンベンション、勉強会といった様々な形式やテクノロジーの活用で
教材と学びの場を創出し、かつ国境を越えたヨーロッパ全域の指導者を目指す人々に提供しています。
このシンポジウムの記事は、地味ですが重要(かつセンシティブ)な問題に光を当てていると思いましたね。
見る人によっては、
「うわー、それを言っちゃう?」
「わざわざ取り上げなくたっていいでしょう、面倒くさい問題なんだから」
って感じる問題かもしれないです。
人の問題ですから、スパッと明快な答えは出ないでしょうし、一朝一夕に解決できる問題でもないですしね。
でも、それを問題視する、議論する、解決の糸口を試行錯誤しつつ取り組むのか、それともフタをして
見なかったことにするか、で長い目で見たときに大きな差となって現れてくるのも間違いないでしょう。
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