写真あれこれ

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(PMA2010)シグマ山木社長インタビュー(前編)
http://blogs.yahoo.co.jp/ka_tate/60911341.html



IR:
フィルムの代わりにデジタルの時代になって、より多くの写真が撮られるようになりました。コンパクトカメラから一眼レフへステップアップしている人も多いです。デジタルカメラは中級者のマーケットも広げたのでしょうか?5年から10年前と比べて、ハイアマチュアは増えていると思いますか?

山木:
10年前と比べて、中級者の数は増えています。その理由の一つはインターネットだと思います。インターネット上のブログや写真共有サイトを通して、より多くの人が作品を発表することができるようになりました。写真は最も身近な、たくさんの人々が共有できる芸術表現になったと思います。

楽器が演奏できても多くの人に聴いてもらうことは難しいです。絵画なども展示するのは簡単ではありません。けれども写真はインターネットととても相性が良く、簡単に作品を発表する事が出来ます。作品をネットに上げ、多くの人に見られることで、もっと良い写真を撮りたくなる。これが強いモチベーションになっていると思います。

IR:
レンズの性能について、この5年から10年で飛躍的に向上したように見えるのですが、いかがでしょうか。

山木:はい、とても進歩しています。

IR:
それでは何がそのような進歩を引き起こしたのでしょうか?何か鍵となる要素があったのですか?例えば設計能力の向上、新しい製造技術、新素材、良質なガラス…、一体何が、レンズ性能の向上に寄与したのでしょうか?

山木:
ユーザーからの要望が、性能を向上させるきっかけになります。つまり、要望が技術の革新を可能にするのです。ユーザーは基本的により良い機材を求めます。例えば、デジタル一眼レフは画素数を増やし続けてきました。それゆえ、ユーザーはより解像度の高い画像を得られるレンズを欲しがるのです。

もし最新のフルサイズデジタル一眼レフに10年前のレンズを付けたら、古いレンズは高解像のセンサーにとって不十分だとわかると思います。もっと性能の良いレンズが最新のカメラには必要なのです。また、大画面モニターを使うことで誰でも隅から隅までレンズの性能を確認できます。画面上で100%に表示したのと同じサイズで印刷をしたら、フィルムカメラでは見たこともないような巨大な写真になるでしょう。

つまり、レンズメーカーは本当に良い性能のレンズを作らなければならないというプレッシャーの下にあるのです。フィルム時代は、例えば、コントラストなのか、解像度なのか、何を一番優先すべきなのかを考えて設計をしていました。けれども、今ではそこに議論の余地はありません。コントラストと解像度の両方が重要なのです。

IR:
その高い要求に応えるために、何が変わったのですか?

山木:
たくさんのことが変わりました。まず初めに、技術者が進歩についていくために、たくさん研究をする必要が出てきました。次に、高性能なレンズ設計のために、コンピュータが重要な役割をするようになりました。設計の過程で多くの計算をする必要があるのですが、高性能コンピュータを使うことで、光線の演算を何百回、何千回と行う事ができます。その結果、より高い性能のレンズを作ることが出来ます。また、シグマはFLDという新しいガラスを新製品のレンズに使い始めています。このような新素材の開発も良いレンズを作るのに必要です。

IR:
面白いですね。レンズを通した光の変化をトレースしながら少しずつ設計を変えて改良していくという、光学的な演算を何千回もしていると。このような計算を繰り返してレンズ設計を行っているのですか?

山木:
そうです。コンピュータがなかった頃は、全てのカメラメーカーは大きな設計室を持っていました。設計室には主に女性の社員が50人から70人くらい、一緒に座っていました。設計者は彼女たちの前に座って、光線をトレースするための計算をさせたのです。

昔はそうやってたくさんの人を使って、人力で演算を行っていたのですが。コンピュータを使い始めてからは計算速度が飛躍的に向上しました。高性能コンピュータというのは、言うならば千人から一万人の女性を計算に使うようなものですね(笑)

IR:
ずっとカメラ産業に関わっておられるからか、とても面白い話ですね。会社に入られたのはいつだったのですか?父君が始められた事業ですよね。

山木:
父が事業を始めたのが1961年で、私は1993年に入社しました。

IR:
今年で17年目ということですね。入社した頃から考えると、レンズ産業にとって、どのような変化に一番驚きましたか?

山木:
もちろん、カメラのデジタル化による変化ですね。レンズの製造技術はそれほど変わっていないのですが、マーケットの規模は大きくなっていますし、レンズ性能への要求ももっと高くなっています。ユーザーからの要望はとても大きな力があるので、品質を上げ、生産能力を向上できない企業は競争に勝てないでしょう。能力を向上させていける企業だけがこの産業で生き残る事が出来ると思います。

IR:
交換レンズ産業はとても競争が激しく生き残るのは大変です。そのような状況で、どの時代にも共通しているものは何でしょうか?変わると予想していたのに変わらなかったものは何かありますか?

山木:
フィルムからデジタルへと時代が変わりましたが、良い写真というのは今でも良い写真です。その定義は変わりません。レンズでいえば、コントラストや解像度の高い、ゴーストやフレアが最小限になるレンズですね。そのゴールは変わりません。

フィルム時代にはゴーストやフレアについては、それほど神経質になる必要はありませんでした。フィルムの表面には光沢がないので、反射した光は分散しますから。

けれどもデジタルカメラのセンサーは表面がガラス面なので、入ってきた光をそのままレンズに反射してしまいます。センサーからの光の反射はひどいゴーストを作るので、それを考えて設計をする必要があります。レンズ設計のあり方が、デジタル時代になって変わりました。現在では全ての光の反射を計算して、ゴーストやフレアを減らすようにしています。

IR:
つまり、レンズを通ってきた光を計算しているだけではなく、センサーから跳ね返る光を考慮に入れなければいけないのですね?

山木:
そうです。私たちはさらにレンズ内での光の反射も全て考慮に入れて設計しています。このようなことはフィルム時代にはありませんでした。

IR:
景気について二つ質問があります。昨年(2009年)から景気が悪化しているのですが、その事でレンズ生産に何か変化はありましたか?生産拠点を海外に移す必要はなかったのですか?

山木:
私たちは日本国内にしか工場を持っていません。今では国内で全てのレンズを生産している会社はシグマだけです。他の会社は全て、主力工場は海外にあります。私たちの工場にはおおよそ1400人の従業員がいますから、彼らの雇用には大きな責任があります。

実際のところ、このような設備を日本国内で維持するのは、円高が進んでいる現状ではとても厳しいです。中国や他の国に工場を移した方が経営としては楽です。けれども、工場を移転すれば利益は増えますが、従業員の雇用を守ることはできなくなります。安価なキットレンズから高級レンズへと事業を転換した理由には雇用問題もあるのです。利益の高い、高付加価値の製品を作れば、雇用を守ることが出来ますから。

IR:
最後に、これは他の経営者の方にも尋ねている質問なのですが、世界経済についてこれからどのようになると考えているのか、展望をお聞きしたいです。景気は世界中どこも厳しいですが、映像産業は他の産業と比べて比較的小さな打撃しか受けていないように見えます。次の年はどのようになるとお考えでしょうか?速やかな回復か、ゆっくりとした回復か、あるいは更なる下落か、何が起こるとお考えでしょうか?

山木:
私も同じ質問をしたいくらいです(笑)。私にはわかりません。誰も今年何が起こるかわからないでしょう。

私の個人的な見解では、今年はコンパクトカメラ市場がとても厳しくなると思います。カメラの単価が下がって市場全体が縮小するでしょう。一眼レフと交換レンズ市場は多少上昇するでしょうけれども、競争が激しくなることで、価格の下落が起こるでしょう。

けれども、おっしゃられたように、カメラ産業そのものはそれほど景気には影響されませんでした。写真は趣味であり、人々は趣味のためにお金を貯めるものです。いったん景気が悪くなれば人々はお金を貯めるために、レストランでの食事や、海外旅行をやめたりします。けれども、不景気でも人は、趣味のためにはお金を使います。私は将来についてはそれほど悲観的ではありません。

私はメーカーが鍵を握っていると思います。新しい技術が生まれ、魅力的な製品をメーカーが作れれば、人々は新製品のために財布の紐を弛めるでしょう。

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