From ROMA-KEN.com(古代ローマ史探求)

ゆっくりとその汗を洗い流すがよい(by テルマエ・ロマエのハドリアヌス帝)

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第2部:ポンペイにおける「ヴィーナスの家」の紹介


(注)


をできれば、初めにお読み下さい...



さて、随分と前置きが長くなってしまいましたが、いよいよ、「ヴィーナスの家」を紹介してゆきます。
尚、この「ヴィーナスの家」と言う名が付けられたのは、この邸宅内の「ペリステュリウム」の壁面に、ポンペイの守護神でもあった美の化身「ヴィーナス」(*ラテン語では、venus)がフレスコ画として描かれていたからです。


イメージ 1

玄関口から見た「アトリウム」

「ヴィーナスの家」は、人びとの往来の激しい目抜き通りであった「アボンダンザ通り」沿いあった邸宅で、「円形闘技場」からも割合近くに建てられていました。

上の画像の通り、玄関口から入ると直ぐに「アトリウム」と呼ばれるパブリックな空間が姿を現します。
画像中央辺りに見える四角形の窪みは、雨水を受ける水盤であり、水量に応じて、排水口を通じて、水を排出できるような仕組みもできていました。
また、現在ではむき出しになっていますが、元々、「アトリウム」は丁度、水盤の真上に当たる中央部分を除いて、屋根で覆われており、日中の陽光は、屋根に開けられた開口部から注がれていました。


イメージ 2

別角度から写した「アトリウム」

この画像は、「アトリウム」を別角度から写したものです。
画像左側に見える空間が「ペリステュリウム」で、右側の空間が「横臥食堂」です。
「横臥食堂」と名が付けられていることから分かるように、古代ローマ時代においては、特に富裕層の食事の仕方は、長椅子に横になって毎日のように訪れる友人や客人と共に歓談をしながら、食事を取るスタイルが一般的でした。


イメージ 3

「ヴィーナスの家」の「ペリステュリウム」

さて、「アトリウム」より更に奥に入ってゆくと、「ペリステュリウム」と呼ばれる「私的な空間」がいよいよ姿を現します。
この画像からも分かるように、実際に「ペリステュリウム」が等間隔に設置された柱で囲まれています。
また、建築構造上の観点から言っても、「ペリステュリウム」「アトリウム」と比べると、天井の開口部が非常に広く、開け広げられた広間の上から注ぎ込む陽の光に満ちた緑豊かな空間が演出されていたことが容易に想像できるでしょう。


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「ペリステュリウム」の周りの部屋

また、「ペリステュリウム」では、「アトリウム」と同様、周りに大小様々な部屋が設けられ、一家や使用人(*奴隷)の寝室として、また、客人の宿泊部屋として、あるいは、主人の書斎や一家の守護神を祀る神棚を置いた部屋など、様々な用途の部屋が存在していました。


イメージ 5

周りの部屋の「室内」1

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周りの部屋の「室内」1に描かれた「神話」

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周りの部屋の「室内」2

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周りの部屋の「室内」2に描かれた「神話」

イメージ 9

壁面フレスコ画として描かれた「風景画」


以上の5点の画像は、「ペリステュリウム」の周りの部屋の室内の様子とその壁面に描かれた「神話」や「風景」のフレスコ画です。
これらの画像から窺えるように、古代ローマ時代の邸宅の各室内は非常に色彩豊かな壁面装飾で飾られていました。
壁面装飾として特にしばしば用いられたのが、赤や黄色、あるいは、心を静め、ゆっくりとした睡眠を取る為に寝室に好んで用いられた藍色や淡い青色でした。
また、こうした壁面装飾は、しばしば「神話」や「風景」などの題材がフレスコ画として飾られることもあり、現代の壁掛け絵画と同様に、室内に滞在する人びとの目を楽しませていました。

こうしたフレスコ画の中で特に注目して頂きたいのが、一番下のある邸宅を描いた「風景画」ですが、ここでは、既に遠近法が用いられていました。
つまり、古代ローマ人は、ルネサンス期以降の遠近法とは必ずしも一致しないものの、古代ローマ人流の遠近法を編み出し、こうした「風景画」に用いていたのです。


イメージ 10

「ぺリステュリウム」正面の「ヴィーナス」


いよいよ、「ヴィーナスの家」と名付けられる由縁となった壁面フレスコ画として描かれた「貝殻の中のヴィーナス」です。

実は、この壁面フレスコ画でも、遠近法が用いられており、絵画のより立体的な美しさを追求したものであり、また、色彩の豊かさと表現法の完成度の高さを通じて、特に遠目から見る時にいっそう美しく、またいっそう一目を引くようなフレスコ画となっています。

イメージ 11

「貝殻の中のヴィーナス」1


より接近した時の「貝殻の中のヴィーナス」です。
このヴィーナスは二人のキューピッドに伴われ、ヴィーナス自身、完全に肌を露出しています。
ポンペイ、ひいては古代ローマ社会の「性へのおおらかさ」を垣間見せてくれるものでもあり、また、「神話」の姿により忠実であろうとした彼らの敬虔さを垣間見ることもできるでしょう。
「神話上の神々」を本来の生身の姿で描くことは、古代ギリシア・ローマ時代においては、「完成された美の追求」でもあり、「理想的な姿」でもあったのです。

イメージ 12

「貝殻の中のヴィーナス」2

上の画像は、「貝殻の中のヴィーナス」を更に拡大し、ヴィーナスの表情に迫ったものです。
このヴィーナスの表情は、非常に知性に溢れ、個人的な見解ですが、このフレスコ画からは、ポンペイの人びとの「卑猥さの露出」と言うよりも、寧ろ、ポンペイの守護神でもあるヴィーナスに対する「敬虔な姿勢」を感じ取ることができます。


この「ヴィーナスの家」には、他にもまだ注目すべきフレスコ画が多くあるのですが、文量の都合上、今回は割愛させて頂きます。

最後に、僕が現地で撮影した「ヴィーナスの家」の動画があるので、今までの説明を思い起こしつつ、まるで古代ローマ人の住民になった気分で、当時の邸宅の様子を想像しながら、ヴァーチャルな雰囲気を楽しんで頂けますと幸いです。
(*あまり鮮明ではないのですが..)
PC環境の都合上で、上手く再生できない方、申し訳なく思います。

ポンペイ遺跡内の「ヴィーナスの家」(casa delle venere)の様子
[[

「ヴィーナスの家」と呼ばれる邸宅にはヴィーナスを描いた見事なフレスコ画が存在している。この邸宅は、アトリウム(玄関直ぐ奥の広間)とペリステュリウム(アトリウムから更に奥に入った大広間)の二つの広間を持っている。
by トリマルキオ( kannri_roma_ken)



以上。



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ご訪問およびコメントありがとうございます。

この「ヴィーナス」のフレスコ画は、個人的には、当時のローマの絵画水準から言っても、必ずしも高い部類とは思えない(*実際、これ以上の高水準のフレスコ画は幾つも存在している。)のですが、それでも、やはり思わず我々の眼を惹き付けて止まない「魅力」があるのだと思います。

その理由として挙げることのできるのが、恐らく、この女神の表情に秘められた「知性」と「母性」、そして「慈しみ」(*優しい笑みに隠された。)なのではないかと思います。
(*ポンペイの守護神である「ヴィーナス」に対する「敬意」と「豊穣」に対する信仰が不可分な要素として結び付いているからでしょうか...)

ルネサンス期以降も、再び、古代ギリシア・ローマ時代の「神話」と「神話上の神々」がイマージュやモティーフとして描かれていくことになりますが、多分、古代における「意味付け」とは異なってくるものが多く存在していたのでしょうね...
そうした「時代の差異」や「文化的な差異」を考慮に入れつつ、時代毎の芸術を観て行くのは楽しい作業でもありますね。

2008/7/20(日) 午前 1:55 [ トリマルキオ ] 返信する

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