ブログ水族館/中村 元

次回のトークライブ『中村元の超水族館ナイト2017春』は2/5(日)開催。チケット発売は1/5の10:00〜です。

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ハタハタしょっつる

今回の男鹿半島は、GAOが目的ではなく、男鹿の観光再生のお手伝いで、講演をするだけじゃなく、男鹿半島の魅力を地元のボランティアの人たちと再確認しながら回った。

すごいね、男鹿。
自然がいっぱい。自然がいっぱいすぎて、足腰がガクガクになるくらい歩いたのだけど、自然の豊かさがこんなに残っている観光地は、日本にはもうそれほどない。

イメージ 1例えばこれ、原生林の傾斜の中のそこかしこに、ぽかりぽかりと穴が空いているのだけど、それが湧水の穴。
こんなふうに、大木の根っことか、石の脇とかに穴があって、ボゴッボゴボゴッと音を立てながら冷たくて美味しい清水がわき出しているのだ。
男鹿半島の付け根に、寒風山という火山があって、その火山岩の間を20年かけて通ってきた水なのだとか。
付近の上水は、この一帯「滝の頭水源」からの湧水を集めて使っているのだそうだ。

でも、このいただきます食堂では、水はメニューではない。
今回は「しょっつる」、しょっつる鍋のしょっつるだ。
しょっつるは塩汁が語源とかで、魚を塩につけて発酵させた醤油、つまり魚醤である。

実はボク、しょっつる鍋とか秋田料理とか味の濃さがちょっと苦手だったのね。ナンプラーなんかもやっぱり苦手だったので、きっと海のない田舎育ちだったから、魚醤が苦手なんだと思いこんでいた。
ところが、今回の1泊目の宿で出てきた、あまりにも美味しいしゃぶしゃぶの汁でガビーンと来た。
昆布ダシなの、でもただもんの昆布ダシではない、なんかじわっとくるコクが素晴らしい。それで、これいったい何が入っているの?と聞いたら、「しょっつる」だったのです。

しょっつるは、調味料として使うと、とっても上品なコクが醸し出されると、旅館の主に教えてもらった。
しかも、最近すごくいいしょっつるがあって、それが、ハタハタだけで作られたしょっつるだとのこと。
その旅館では、それを使っている。
すげーなー、ハタハタのしょっつる、どうやってつくるんだろー?と思っていたら、これがまた天啓のように、次の日の男鹿半島の魅力のツアーの中に、唯一ハタハタのしょっつるを造っている「諸井醸造所」が入っていた。
ハタハタは漢字で「鰰」神の魚、今回の旅は、ハタハタ神の導きによる旅だったのではないか?と思ったカンチョなのでした。
さてさてここが、諸井醸造所のしょっつるづくりの現場。
イメージ 2

諸井醸造所では、かつての伝統的なハタハタのしょっつるが途絶えようとしていたのを、試行錯誤の上で復刻し、より完成度の高いものにまでしたのだそうだ。
イワシやアジでつくったしょっつるは、魚臭さや癖が強いのが、ハタハタでつくるととても上品なしょっつるに仕上がる。それが、前夜にいただいたしゃぶしゃぶのダシ汁の隠し味だったというわけ。

ここでのしょっつる造りは、実にシンプルで美しい。
原料はなんと、ハタハタに天然塩だけ! 工場には機械らしい機械もない。
見せてもらったのがこれ、左が半年前の12月に漬けたハタハタ。右は8年貯蔵もの。
イメージ 3

ハタハタは発酵しながら溶けて液体になり、3年目に漉して熱を加えればしょっつるになる。
8年醸造したこの味噌みたいなのを舐めさせてもらったら、ぜんぜん魚の匂いもしなくて、そのまま野菜とかに付けて食べたら美味しそうなお味でした。
(尚、8年醸造は、味の変遷やいつまでもつかなどの実験のためだそうで、しょっつるは3年で美味しくいただけます)

さてところが、原料のハタハタ、まったく獲れなくなってきていたのですね。
それを、3年間のハタハタの禁漁という大技で、なんとか取り戻したのが、漁業者や関係者たちの偉いところ。
漁獲高を数字で表すと、数10年前までは毎年1〜2万トン→1991年にはなんと70トン!→禁漁後3千トンと、絶滅が奇跡的に止まったことが分かる。
魚の禁漁は世界的にも例がないのだそうで、そのことが評価されるとともに、諸井醸造所の努力によってしょっつるの伝統の味が途絶えなかったということで、このハタハタしょっつるは、イタリアに本部のある世界スローフード協会が、世界的に希少価値がある食品として指定する『味の箱船』という栄誉ある認定を受けたのだそうだ。

さてハタハタの減少、ボクはなんとな〜く過剰漁獲によるものだろうと思っていたのだけど、地元ボランティアの方々の話を聞けば、どうやらそれは違うらしい。
港に建つハタハタの供養碑が、それを物語る。「供養費は獲れすぎたからですか?」と聞いたら、なんと「いえ、本当はこのあたり一帯がハタハタのブリコ(卵)が大量に流れ着く場所だったのを、大規模な港湾整備で潰してしまったからです」という答え。

港湾整備、国と建設系資本による巨額な無駄遣い行政施策の一つとされているけれど、漁港を整備するために、漁獲物の産卵場所を根絶やしにしてしまうなんておバカなこと、いったいどんな仕組みでできちゃったのだろう?
地元の有識者は猛反対したらしいのだけど、地元の人には見えている本当のことが、世の中を動かしている人たちには、どうやっても届かない・・・。そんな悲しい日本の現実です。
きっと、建設省の役人も、県の役人も、政治家たちも、ハタハタが神の魚だってことを知らなかったのだろうね。
でも、神罰は下っちゃうのです、それも地元の庶民にだけに。

この日、先の「滝の頭水源」の源となっている寒風山に、ヒーヒー言いながら登った。
そして、男鹿半島の付け根の方を望んだのがこの写真。左上に見えているいびつな形の池は、あの八郎潟の残骸だ。
イメージ 4

八郎潟の干拓は、国家事業として巨額の干拓費を使った、生態と国土の破壊、そして事業目的の不完遂と、将来に渡って取り返しのつかない失敗の記念碑であることは、たいていの人の見方だ。
それを横に見ながら、再び港湾整備で、ハタハタを絶滅に追いやってしまいかけたことに、ボクはちょっと悲しくなった。
男鹿の自然豊かな土地には、国から落ちる程度の補助金や建設の仕事よりも、将来にまで残せる財産がいっぱいあるのだもの。

ショウブの花を摘んで帰ろうとする人に、ボランティアの人たちは「とっていいのは写真だけですよ〜」と諭していた。
そんな風に、花一本を、後からくる人に見せるためだけにでも、残しておきたいと考える人もいる。
この人たちが、まちの将来を提案していくことができれば、たぶん、八郎潟もハタハタもなくならなかったのだろうと思う。

と、なんだか「命をいただきます食堂」らしくなく社会的なことになってしまったけれど、もちろん今回のお土産はハタハタしょっつるでした。

●諸井醸造所は通販もしてるみたいです→諸井醸造所のHP(広告料をもらってるワケじゃありませんw)

●生きているハタハタの写真はこちら→「ハタハタがいっぱい」でGAOのハタハタ展示


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The水族館拝読いたしました。ドルフィンファンタジーの説明をみて研修を懐かしくおもいました。シロイルカをさわらせてもらいましたが見かけと違いザラっとしていました。研修のときにバックヤードにハタハタが入ってきて弱ったのを毛ガニが食べていました。ハタハタもよくみると愛らしい魚で僕も好きです。
ちなみに南極ではニンゲンというユーマが確認さりていますがおそらくシロイルカの見間違いと思います。 削除

2007/6/30(土) 午後 8:21 [ タマちゃん ] 返信する

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秋田に通っております。しょっつるって微妙な量で料理をダメにも旨くもさせてしまう。冷蔵庫にも早く使わなきゃいかん、しょっつるが寝ています。

2007/7/1(日) 午前 0:42 御前加那子 返信する

カンチョさんのところはハタハタの神様ですか。今回ぼくのところも海の神様が登場しています。たぶん読んでおどろいている人が大勢いるでしょう。カンチョさんも神様のことを書いているくらいだからぼくの話も信じてもらえるかなとうれしくなりました。男鹿の話は社会的な面から見てもやはり命はいただくものなんだなとよくわかる記事だと想います。

2007/7/1(日) 午前 1:35 [ - ] 返信する

タマちゃん、さっそくのご高読、ありがとうござい〜!!!
ボクはまだ読んでませんw。
以前にも言ったけれど、できあがると恥ずかしくて恐くて、なかなか読む気持ちになれないのです・・・。
でもまあ、今回のは監修だし、そんなにびびることはないのだけどね。

ハタハタの飼育はとても難しいようです。
ハタハタって、ウロコあるみたいに見えるけれどウロコもないのね。
深海性だから水温も低く保たなくてはならないし、光も嫌がる。
日本海側の代表的な魚にもかかわらず、飼育されているところが少ないのは、ひとえに飼育が困難だからなのですね。

2007/7/1(日) 午後 1:21 kapaguy 返信する

カナーさんの秋田通いと同じくらい、今年は秋田に通うかも。
今年は秋田も、暑いようですね〜。次回は8月末なので、東京で残暑厳しい中、あちらでは秋風が吹き始めているのではないかと、とても楽しみにしています。
今回手に入れてきたハタハタしょっつる、あっさりしているので、醤油代わりというよりも、塩代わりに使えるようですよ。
昨夜もさっそく、カツオ茶漬けに数滴入れていただいたら、なんだかいつもより美味しい気がした・・・w
まあ、気分的な問題なのかもしれないですけど。
それによく考えたら、ダシの王様カツオさんに、ちょっと失礼だったかな・・・・と反省もしております。

2007/7/1(日) 午後 1:28 kapaguy 返信する

ghanaさん、難しい話だけど読みました。文字を書く、言葉を使うというのは、それだけで哲学なんだな〜と改めて実感w。
神は存在します。ヒトが想像力を持つ限り存在します。それは、言葉や文字が存在するのと同じようなもので、地球や宇宙に存在するのではなく、「世界」に存在するのですね。たぶんw。
だから、ヒトがこの世界の主人公はだれなのかという想像できる範囲によって、神の形や、神の言葉、そして神の数も違ってくるものだと思うのです。

ところで、イルカに想像力があるのだとしたら、彼らにも神は存在するんじゃないかとも思う。

2007/7/1(日) 午後 1:39 kapaguy 返信する

カンチョさん、またまたいいヒントありがとうございます。いま考えている物語がありまして、そのはじまりのところで海の神様がいちばん最初のイルカを創ります。科学的にはちがうものでも空想的には信じられるものがあるとわかりました。でもこの物語を知らないカンチョさんからイルカの神様の話が出てくるのって偶然でしょうか?笑。

2007/7/2(月) 午前 11:25 [ - ] 返信する

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ハタハタ、、毎年、鍋しますよ〜〜。今年、四谷のおいしい秋田料理のお店で、初めて塩焼きでいただきました。。。美味い!!この魚、身のほぐれ具合もよくて、味もよし。好きな魚ですが、市場についてあんまり考えることがなかった。禁漁という地元にとっては苦しい解決策はすごく印象に残ってます。。しょっつるは、普段から鍋とかに使ってましたが、、カンチョさんのお話を聞いて、なんだか発酵学の大泉先生のお話を聞いてるみたいで、面白かった。。食に政治の話はもうつきものの時代なんですね。。

2007/7/3(火) 午前 0:06 カッパのまりっぺ 返信する

ghanaさん、いろいろ物語創作して、なんだか楽しそうですね。
ボク、ずいぶん昔に書いた「海より青い海」という写真集に、確か「その人の想像力に合わせて、海は深く、広く、蒼いのだ・・・」と書いた覚えがあります。
ghanaさんの海は、宇宙より広そうだ。w

2007/7/3(火) 午前 1:34 kapaguy 返信する

まりっぺさん、さすが東北!ハタハタには長じてますね。
関西ではね、長い間、ハタハタは見なかった。もちろんしょっつるも。生まれて初めて食べたのが、秋田の友人が土産に持ってきてくれたハタハタの一夜干し。
見たとたん、なんじゃこれは?と思ったけれど、いただいてみてその美味さに感激!柔らかくて上品で、食べ方なんて聞いてなかったのだけど、これは頭から丸かじりできるはずだ!と理解しました。

でも、その秋田の友人も、まさかハタハタの食べ方を知らない人がいるとは思ってもいなかったのでしょうねw。地元じゃ、あまりにもポピュラーな魚だから。
そんな魚が、突然いなくなって、それはそれはあわてたことでしょう。
食と政治、食と経済。生きていくのに最も大切な文化「食」が、政治や経済やさらに地球環境によって崩れていくのは、とても怖い話ですね。

2007/7/3(火) 午前 1:43 kapaguy 返信する

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あ、ハタハタ、、結構骨が固いところがあるから、、カンチョさん気をつけてね〜〜発酵学は小泉さんでしたね、、訂正。。

2007/7/3(火) 午前 8:32 カッパのまりっぺ 返信する

そうなんや!骨の硬いところあるんや!しんなかった。
発酵の味の文化って、なんだか味覚の豊かさを感じません?
日本人が、世界中の全ての料理を、世界一美味しく仕上げてしまうのは、そのびみょーな舌加減のおかげじゃないかな〜と思うの。

辛い、甘い、苦い、酸っぱい、という段階で表せる味だけじゃなくて、発酵と腐敗の違いを見分けなくちゃならないでしょ。
それが、日本人の敏感な味覚の源泉ではないかと・・・・。

2007/7/3(火) 午後 11:28 kapaguy 返信する

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