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プクプクプクプクプク・・・・
犬 「フワァ〜・・・・」
プクプクプクプクプク・・・・
犬 「いいなぁ・・・・」
プクプクプクプクプク・・・・・
店 「ねぇ、犬バカさん〜 もう店閉めたいんだけど・・・・」
犬 「あぁ・・・もうそんな時間?」
店 「飽きもしないで何時間も見て・・・買っちゃえば?」
犬 「そうだねぇ・・・・いや、また来るわ」
もう25年前の話だ。こいつを手に入れたのは。今でも昨日の事のように思い出される。
先日私の大事にしていたその 学名/ Protopterus aethiopicus が死んだ。
全長125cmの巨体を水面に浮かべて息絶えていた。
私は共に歩んできた水槽の中の君をただ見つめながら立ち尽くしていた。
今から25年前、行きつけの熱帯魚ショップにそれはいた。
私は基本魚は飼わないことにしている。商売以外の生き物を増やすと大変なことになるからだ。
また魚はphや温度管理など小難しいし、何やら器具を揃えたり大変だからである。
それもあって今まで魚を飼った経験は非常に少ないし、知識もそれほどない。
今でも好きなランチュウ以外はうちに魚はもういなくなった。
行きつけのショップに突如として入荷したそれ。私はそいつを見て衝撃を受けた。こいつは本当に魚なのだろうかと。
まるでニョロニョロとウナギのようでいて何故か鞭のような前足と後ろ足がある。
口は今で言うアヒル口で真ん丸のお目目は私をじっと見つめキモ可愛い。
割り箸ぐらいの大きさしかないそいつは揺ら揺らと水槽を泳ぎ、やがて水面に口を出して空気を吸い出した。聞く所によるとこいつは魚の癖して肺呼吸を行う「ハイギョ(肺魚)」なのだという。
もしかしたら魚に心を奪われたのはこいつが始めてかもしれない。
なんなんだニョロニョロ君!なんなんだハイギョ!なんなんだプロトプテルスエチオピクス!
あっ、そうそう。こいつの種類。プロトプテルスエチオピクスって言う。学名がそのまま名前になっちゃってるんだけど、魚では結構多い。
何だか舌を噛みそうな名前なので種類はマニア間では「エチオ」と呼ばれている。
今でこそ幼魚が¥5000〜10000ぐらいで手に入るが、当時いくらしたか忘れたが、清水の舞台から・・・・ってぐらいの値段だったと思う。そんなに流通量が多い種類でもないし、美しいわけでもないから売れる魚ではなかった。
それに結構凶暴で、他の魚との混泳は一切出来ない。それに1メートルを超える大きさに手を出す勇者は中々現れなかった。
地元ではマニアックな熱帯魚を仕入れることで有名なショップだったが、私は毎日そこを訪れ、3ヶ月ほど売れないエチオを見に行っていた。
店が閉店する3時間ぐらい前に入店し、ずっとエチオを見つめていた。半ば店長も諦めムードで水槽を見つめる私に声をかけることはなくなった。
ある日のことである。いつものように熱帯魚ショップに顔を出し、エチオの水槽に足を運ぼうとすると店長が私の顔を見てハッとしたような表情を浮かべた。
不審に思いながらもエチオの水槽に向かうといつものように揺ら揺らと泳いでいるではないか。
しかしその「いつも」とひとつ違うことと言えば水槽の右端に張られている 「堀内様 御売約」 の札だった。
犬 「えぇ!!!!」
口をあんぐり開けて立ち尽くす私に店長がやってきて
店 「済まんねぇ。さっきお客さんが前金持ってきて売約した所なんだよ」
と、申し訳なさそうに言った。
しかしここは店であり、販売することが前提で水族館ではない。それに私の魚でもない。
売れてしまったことは残念だが仕方がない。それが・・・・それが商売ってもんだ。自分が一番分かってるではないか。
しかし、それからも寝ても覚めてもエチオエチオ・・・・。
他のショップにも問い合わせたがどこにも在庫しておらず、それどころか入荷しませんと言われることもあった。それだけ売れないのだろう。
確かにウナギのお化けみたいなのを欲しがる奴など変わり者に決まっている。
そんな一部の変わり者のためにいつ売れるか分からない魚を入荷するなんてリスキーなことをする店はいるわけがない。
諦めよう。そう思ったその時!!!って最近のバラエティのお決まり文句のようだが、本当にその時に例の熱帯魚ショップから電話があり、エチオが返品されるからどうですか?という話が来た。
なんでも元の飼い主の奥さんが痛くこいつを気味悪がり、また他の魚と混泳できないのをつまらなく思った飼い主は返品を求めたと言う。
もう買うしかない!飼うしかない!これを逃したらきっともう会うことはない。
カンガエルヨチナシ、コウニュウセヨ!
まるで自分へのミッションのように頭の中でエチオを飼う心の準備を無理やりさせた。
犬 「直ぐ行きます!」
と言って90センチ水槽に水を入れ、ハイポ(塩素を抜く薬)をぶっ込んで財布を持ち、急いで熱帯魚ショップへ向かった。
店に着くと店長は満面の笑みで
店 「ふふふ、いつもン所にいるよ」
と言った。
いつもいたあの水槽にエチオは 「やぁ!また会えたね」 とでも言うようにこちらを向いて揺ら揺らと鞭のような手足を振りながら泳いでいた。
店長は一度売れて出戻った魚だから安くするよと言ってプライスダウンしてくれた。
値段は覚えてないが、相当安くしてくれたと思う。
網でこいつを掬い、ビニール袋を二重にして酸素を入れる。
安くなった分、ろ過装置とヒーター。沈下性の餌と餌金と呼ばれる餌用の金魚も購入してワクワクしながら持ち帰ったのだった。
つづく
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