<経営>債超企業の共通点
|
『債務超過』へと転落した企業には、一定の共通点が存在する。それは、『平成20年度』または『平成21年度』決算において、『資産超過』である状態から、一気に数千万円から数億円の『債務超過』へと、転落したのである。
私が金融機関を退職した時期は、『平成22年2月末日』であった。金融機関在職中の『平成19年』に、一体何が起こったか。『サブプライムローン』問題の表面化である。誰もが、『海の向こうの、自分たちには関係の無い話題』と認識していたに違いない。この時点において影響を受けた日本の中小企業は、極めて限定的であった。
『平成20年9月15日』に、何が起こったか。『リーマン・ブラザーズ』の『チャプター・イレブン』(連邦倒産法第11章)の申請である。俗に言う『リーマン・ショック』は、負債総額にして史上最高額である、日本円換算にて『64兆円』という、世界最大の大型倒産である。しかしこの時点において、一部経済学者や金融機関を除き、中小企業の誰もが『海の向こうの、何だか凄い話』程度の認識しかなかった。
リーマン・ショックの3日前、『平成20年9月12日』の『日経平均株価』の終値は、『12,214円』であった。それが約1ヵ月後の『平成20年10月28日』、日経の終値は『6,000円台後半』の値を付けていたのである。これはつまり、日本における『東証一部上場企業』の『主要225社』の『時価総額』が、1ヵ月にして『半分程度』まで下落したことを意味する。
『サブプライムローン』は、相対的に信用力の低い低所得者層に対し、『不動産価格』が上昇し続けることを前提に、担保価値のみを審査基準としたようなローンであった。不動産価格が下落に転じれば、経済の破綻が訪れることを、誰もが知っていた。
一方で、この『サブプライムローン』は、『CMO』(不動産担保証券)や『CDO』(債務担保証券)、『ABS』(資産担保証券)といった『有価証券』または『債券』の名の下に、『一枚の紙切れ』として、世界中に撒き散らされた。これらを総称して、私は『WMD』(Weapons of Mass Distraction;大量破壊兵器)と呼んでいる。
さて、『海の向こうの、気の遠くなるような話』が、日本の実体経済に影響を及ぼすまでに、1ヵ月を要しなかったことは、前述の日経平均株価の推移を考察しても、理解出来る。日本の中小企業の収益構造の多くが、大企業の一次・二次・三次下請けや、若しくはそれら下請け企業の孫請けであることを鑑みれば、日本を代表する大企業225社の時価総額が僅か1ヵ月で半減した事実は、下請け・孫請けの売上及び利益に、直撃した。
平成20年度または21年度決算にて、売上高が前年対比にて『半減』した企業など、もはや珍しくない。『20億円』あった売上高が『7億円』へ、『10億円』あった売上高が『3億円』へ、というケースも、私が実際に案件として抱えている実例である。売上減少に伴い『固定費』が吸収出来ず、『営業利益』ベースにて赤字転落することは当然である。
しかし、そもそも大手企業の収益が逼迫していることから、その下請け・孫請けに対する工事・受注単価等は、極端に下げられる。従って、『変動費』は一定ではなく、極端に悪化し、『粗利率』そのものも大幅に悪化した。『売上減少』に加え、『粗利率』が低下することにより、『粗利額』そのものが減少することは、明白である。結果、どれ程に『一般管理費』を削減しようとも、その削減幅は粗利額の減少幅に追い付かず、たった1期のみの決算で、数千万円から数億円の『債務超過』へと転落したのである。
ここで『金融庁』は、政策的見地より、セーフティネット5号要件である『緊急保証融資』(信用保証協会の制度融資)を創出した。その後、『中小企業金融円滑化法』(通称:モラトリアム法)を施行し、中小企業の財務支出におけるキャッシュアウトには、一定の寄与を果たした。これら制度の是非を、ここで論ずるつもりは無いが、私見として、これが政策的な『制度設計』上の、限界であったと考える。
従前の通り、『債務超過』へと転落した中小企業において、金融機関からの『追加融資』は、前述の『緊急保証融資』を除いては、基本的には行われることは無い。何故ならば、『債務超過』の企業については、基本的にはその『債務者区分』は『破綻懸念先』であり、『破綻懸念先』に対する追加融資は、原則的に行われることは無いからである(統一的見解として、全てのケースにおいて有り得ないことではない)。
余談であるが、一定以上の企業においては、多数の金融機関が協調で融資を行う『シンジケート・ローン』と呼ばれる融資が行われている。これについて、金融機関各行が独自で『モニタリング』を行うのではなく、『コベナンツ』と呼ばれる『財務制約条項』を設けて、この財務制約条項に抵触すれば(これを『コベナンツ・ヒット』という)、即時『期限の利益の喪失』を行う、というものである。基本的に、『債務超過へ転落してはならない』という文言が含まれていることが多く、上記のような原因により、多くの『コベナンツ・ヒット』が生まれた。また、一定以上の企業では『時価会計』が採用されており、保有有価証券等の『含み損』が、P/L上で実現される。営業収益のみならず、時価会計の採用による含み損の影響により、多くの企業が債務超過へと転落したことも、特筆すべき事実である。
さて、現在のB/Sを分析し、『純資産勘定』において数千万円から数億円の『毀損』を内包している中小企業においては、過去からのP/Lの推移を見るまでもなく、このような経緯で『債務超過』へと転落しているのである。次回以降のブログにおいては、このような『債務超過』から、(財務分析上の)正常な状態である『資産超過』の状態にまで誘導するための『経営改善実務』について、言及を行う。尚、『債務超過』の状態から『資産超過』の状態にまで回復することは、『財務分析』上の『改善』であり、『企業経営実務』における『経営改善』とは、また意を異にする。それらの点についても、今後言及を行う。
--------------------------------------------------------
総合経営コンサルティング・オフィス 『管理業務を引受け、経営者様は収益業務に専念を』 APM, Asia Pacific Management
アジア太平洋マネジメント URL: http://www.APHD.jp |



