日記
パリセーズ・パークの慰安婦騒動ニューヨークに隣接するニュージャージー州は米国本土の一番小さな州と知られている。その小さな州の小さな町、パリセーズ・パークで最近起こった慰安婦騒動が現在地元の新聞をにぎわしている。
国勢調査によればこの市の人口は韓国系が半数を占めている。米国籍を持たない韓国系住民を加えれば、おそらく韓国系が過半数を占めることになるだろうから、米国でも珍しい行政区である。
この市の図書館の敷地に、韓国系高校生達がいいだしっぺとなって地元民の理解と協力を得、慰安婦の碑が建てられたのだ。2010年10月の出来事だった。
大体、図書館などは普通の人は見向きもしない。それどころか、私のような図書館通いはある種の偏見にさえさらされている。欲しいものは買うという独立心に欠けるというのだ。そういう批判に対して私は、そこに図書館があるから行くのだ、という態度で対処することにしている。
その上図書館はホームレスの憩いの場であるから、ユーザーフレンドリーなとろことはいい難い。
それから図書館の建物の周りは何やら得体の知れないオブジェクト、現代彫刻か何かの記念碑か、が置かれているのことも多いが、誰も見向きもしない。
だからこのままではどうということはなかったはずだ。
ところがだ、設置から3年も経て、河をへだてた隣のニューヨークにある日本領事館からの御通達が届けられた。これは当市の市長にとっても寝耳に水だったそうだ。
ロトンド市長によれば、コンタクトは先月の終わり頃に始まった。日本領事館の職員が市にEメールを送り、領事館が面会を求めているというきわめて遠まわしの言い方をとっていた。
『私は秘書に、これはどういうことなんだろうか?と尋ねた。
秘書は私に、日米関係についてでしょ、と答えたので、ああそうか、じゃいいよ、と言った』
5月1日に総領事のヒロキ・シゲユキ氏をリーダーとする日本公使館の一行を迎えた。会談はスムーズに進んだ。ヒロキ氏は自分の外交官としてのキャリアを紹介し、アフガニスタンでの経験を披露したりして、話の内容は終始社交的な域を出ることはなかった。
ところが、突然、会談の方向が変わったのだ。総領事は二通の文書を取り出し、全員を前にして大声で読み始めた。
一通は1993年の河野発言であった。その内容は日本が当事者の女性達を脅かしなどで強制的に慰安婦にさせ、苦痛を与えたこと、また慰安婦制度は日本軍によるものであることを認めたものであった。
もう一通は2001年の時の総理大臣小泉純一郎氏のもので、元慰安婦達への謝罪の手紙であった。
その後、ヒロキ総領事は日本政府の要請として慰安婦記念碑を除去するように告げた。
総領事は、日本政府がこの市に桜の木を植え、図書館に本を寄贈、何か市の為になることをしたがっていることを伝えた。理由は世界に私達は互いに対立しているのではなく実は協力し会ってているのだということを見せたいからだ、と述べた。
しかしこのような日本政府の贈り物は記念碑を除去しなければ貰えない、と条件を付けたのだ。
「僕はその時自分の耳が本当に信じられなかった」と同席していたジェイソン・キム韓国系副市長は語った。「一瞬、頭に血がのぼってカーとなった」そうだ。
市長は総領事の申し出を断った。
5月6日には、日本の国会議員達4名が市を公式訪問した。
彼らの態度は外交的とはいいがたい、とロトンド市長。彼らは野党自民党の議員だが、例の石碑を除去するように要求してきた。彼らの理由は、慰安婦が軍によって強制され性奴隷となったという事は絶対に有り得ないから、というのだ。
慰安婦というものは存在しない。それに該当する女達は軍以外の民間人に雇われ、軍人相手に売春をして金を払われていただけだ、と市長に語った。
ロトンド市長は
「私達は石碑を取り除くつもりはないが、市を訪問していただいて、感謝する」
と日本の国会議員団に告げた。
ニューヨークの日本総領事館はこの件に関して非常に口が堅い。
今週のインタビューで、応対に出たイワイ・フミオ副総領事は、前述のヒロキ総領事が市に対して石碑を除去するように要請したのかどうかという質問に対して答えなかった。副総領事は、石碑除去と引き換えに市を援助するという申し出をした事はないと語った。
「ヒロキ総領事はそういう申し出をしていない」ときっぱり否定した。
イワイ副領事は、慰安婦問題は日韓政府のトップ・レベルで交渉が続けられている、それほど非常に複雑な問題となっている、と慎重な口振りだった。
日本政府は歴史上の慰安婦を意図的に消そうとしている、少なくとも彼女らが歴史から静かに消え去ることを望んでやまないようだ。
パリセーズ・パーク市の小さな石碑は第二次世界大戦中に日本軍に性奴隷とされた韓国女性及び少女達を記念するものだ。彼女らは慰安婦と呼ばれていた。
日本領事館から派遣された2つの代表団が、市にこの記念碑を除去するように要求した。市は堂々とそれを断った。
この市の人口の半数は韓国系で占められている。
歴史的事実としての慰安婦については全く議論の余地はない。日本政府は謝罪し、私的基金を設立し、賠償金を子孫に払った。しかしその後については、日本政府はもうそれを思い出したくもないのだ。
韓国系住民は国中にもっと記念碑を建てようと決意を固めた模様だ。
それは当然だ。ニュージャージー州の小さな町で歴史を消そうとしたことに対して誰もが怒りを感じている。それと同時に日本政府のやりかたに対して信じられない事だという驚きの方も強い。
もし日本側の要求をここで受け入れたならば、次に起こることが容易に想像できようというものだ。
日本側は我々に12月7日(真珠湾攻撃)を記念する事をやめろと要求してくるだろう。
ドイツ政府は我々にホロコースト博物館を閉館するように要求してくるだろう。
米政府は、日本に広島・長崎での原爆記念行事を止めるよう要求してもおかしくはないのだ。
米政府は、今日歴史的記念物として保護している元日系人収容所跡の保存をやめた方がよい。戦時中そこに日系人達が強制収用されていたのだが、それは米政府が間違った事をしたからだ。
ある人々は、奴隷制について議論したり書いたりすることを何をおいても是非やめるように要求するだろう。
上述した歴史的出来事はすべて真実であり、それ故に思い出す度に苦痛を伴うのだ。そういったいまわしい過去に対する私達の義務は、ただ一つ:忘れてはならないということだ。
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