浜崎ヒカルのブログ推理小説

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急行きたぐに殺人事件(その19)

 荻田勲を連行中の覆面車は、大破し、道路わきの畑で、変わり果てた姿を見せていた。
 後ろを走っていたパトカーのうち1台が、停止した。状況を確認するとともに、消防の救助隊や救急車を呼ぶのだろう。
 残り2台のパトカーは、サイレンを鳴らしながら、ダンプカーを追尾した。
「よし、俺たちも、ダンプを追いかけよう!」
 高野内運転の覆面車も、追尾に加わった。
 パトカーは、サイレンを鳴らしながら、ダンプカーの後ろをついて走った。
 そして、警察官の1人が、スピーカーで、
「そこの大型ダンプカー、左によって直ちに停止しなさい!」
 しかし、ダンプカーは、止まる気配がないどころか、加速した。
「繰り返す。前の大型ダンプ、左によって止まりなさい!」
 突然、ダンプカーは、急減速した。
 そして、突然、荷台が上がり、土砂や砂塵が宙を舞った。
 ダンプカーの直後を走っていたパトカーは、急ブレーキで止まろうとしたが、道路上にできた土砂の山に突っ込んだ。
 その後ろを走っていたパトカーは、慌てて左にかわそうとしたが、道路標識の柱に激突して、フロントを大破した。
「畜生!」
 高野内は、運転席で叫んだ!
 そして、車を止めて、高野内と園町は、パトカーの制服警官たちに、
「大丈夫ですか」
 と、声をかけた。
 幸い、制服警官には、負傷者はいなかった。
 警察官の一人が、ダンプカーのナンバーを無線で伝えてきたので、緊急手配は、すぐできるという。
「ダンプカーは、やはり、盗難車両です。瀬戸内市内で強奪されたそうです」
 と、警察官の1人が言った。

 荻田勲に、笠松、宮本の2人の刑事は、病院に搬送されたが、死亡が確認された。
 高野内と園町は、県警本部に、いったん戻ることにした。
 妹尾、難波のほか、真由子もいた。
 窈子や江波も戻っていた。
 赤磐南署の近藤警部と真野刑事も来ていた。
「すいません。情けないことになってしまって…」
 と、高野内が頭を下げると、妹尾は、
「西住が絡むと、そう一筋縄ではいかないよ」
 と言った。
「宮川さん一家の放火心中事件について、不審な点が出てきたんじゃ」
 と、近藤は、言った。
「どういう点ですか?」
 と、高野内が聞くと、
「宮川さんの近所に住む主婦何人かに聞いてみたんじゃが、宮川さんの家で火事があった夜、不審な黒い車を目撃したという証言を得たんじゃ」
「どうして、今になってですか?」
「わしも、それがひっかかってなー。なにがなんだか、わけーわからん」
「近藤警部は、聞き込みされなかったのですか?」
「わしも、近所を聞き込もうとしたのだが、刑事課長に、わしと藤野さんがするから、おまえはせんでいい、と言われたんじゃ」
「刑事課長に、藤野巡査部長ですか」
「そうじゃ」
「じゃあ、当時の刑事課長と、藤野巡査部長が、何か隠していた可能性が高いですね。その放火自体が、西住が関与していて、刑事課長と藤野巡査がグルになっていたのでしょうか?」
「わしもそう思うのー」
「当時の刑事課長にあたって、尋問してみませんか?」
「そうだな」
 と、近藤が言うと、
「その元刑事課長は、野崎征太郎(ノザキ・セイタロウ)さんですよね」
 と、妹尾が確認するように言った。
「そうです」
 と、近藤。
 話によると、野崎征太郎は、赤磐南署の刑事課長を務めたあと、警視に昇格と同時に、県警本部に異動し、捜査一課長を務めて、5年前に定年退職したという。
 だから、長年、捜査一課にいる妹尾も、よく知っていた。
「あとで野崎元課長にも、話を聞きに行きたいが、西住と深い関わりのあった暴力団員もマークしたいと思うんだ」
 と、妹尾。
「西住と関わりの深い暴力団員は、特定できているのですか?」
 と、高野内が聞くと、
「谷合正生(タニアイ・マサオ)と、神崎武彦(カンザキ・タケヒコ)の2人だよ。どちらも、N組の組員で、寺山殺害の日も、アリバイがはっきりとしないんだ。組長は、2人とも、組をやめて、カタギになったといっているが、どうも信用ができん」
 と、妹尾は、説明した。
 谷合と神崎の2人の組員の写真とデータの書かれた紙を渡された。
 谷合は、28歳で、元トラック運転手だったが、やめて組に入ったという。
 神崎は、40歳らしい。
「西住親子だけではなく、野崎元捜査一課長、谷合と神崎の2人も、要注意なのですね」
 と、江波は言い、
「あと、ダンプの運転手も、犯行に関わっていると言うことは、ありませんかね。盗難届出があったというそうですが、実は、共犯だと言うことは…」
 と、園町は、言った。
 すると、妹尾は、首を横に振りながら、
「それはないと見ていいと思うよ」
 と、否定する言い方をした。
「どうしてです」
「そのダンプだが、村上(ムラカミ)という33歳の運転手が、運転中、電柱の影から飛び出してきた人を引いたと思い、車を止めたんじゃ。そうしたら、後頭部を殴られて、気絶して、気が付いたら、車がなくなっていたそうだよ」
「人をひいたのですか?」
「いや。それが実は、人じゃなく、マネキン人形だったんだ。いたずらだとわかって、車に戻ろうとしたら、気絶させられて、車を奪われたんだ。村上運転手は、後頭部を負傷しているし、西住親子とは、面識はないらしい。それに、嘘をついている感じはなかった。だから、事件には、一切関係ないと見ていいはずだ」
 妹尾は、説明した。
「ダンプを強奪したのは、谷合という男でしょうか?」
 と、窈子が言うと、
「おそらくな。奴は、トラック運転手の経験もあるし、大型免許も持っているからな」
 と、妹尾。
「警部、ダンプと谷合を捜しましょう」
 と、難波警部補が言うと、
「ダンプは、緊急手配されているから、そのうち見つかる。車が見つかったら、調べて、谷合が運転した証拠を見つけよう」
「でも、まだダンプカーが発見されたという知らせはありませんね」
「そのうち見つかるよ」
 その矢先、捜査一課の電話が鳴った。
 妹尾が出て、なにか話をしている。表情が変わった。
 そして、電話を切ると、
「悪い知らせだ!谷合と思われる男の絞殺死体が見つかった。あと、谷合の発見現場から少し離れた箇所で、ダンプカーも発見された」
 それを聞いた高野内たちは、
「現場へ急ぎましょう!」

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