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全部わかっちゃった!

 夏休みに入る前、中3の女子が教室の講師を通して「塾長面談」を依頼してきた。
 生徒からの申し込みは100%OKすることにしている。
 面談の日、中3の女子は遠慮そうに塾長の前に座り、「忙しいのにすみません!」と礼儀正しかった。「暇ではないが、そう忙しくもないよ。」よく見かける女子なので、気軽に会話が始まった。
 「部活はどうした?もう、終わったのかな?」
 「はい、終わりました!」
 「そうか。それで何か相談かな?」例年のことながら、この時期の生徒の相談は、塾長には想像ができたが聞いてみた。
 「はい、今年の受験なんですけど、部活が終わって何をしたら良いのか、わからないのですが?」
 「中学の先生から、何か具体的なお話は、ありませんでしたか?」
 「はい、まだありません。」中3の女子は不安そうだった。
 「そうか。もうすぐ夏休みだから、何か指導があると思うが、君の力なら、まず、書店で自由に問題集を買って、何も考えず1週間で100時間の学習をやってきなさい。それから具体的な相談をしましょう。」と言われて、中3の女子は若干やれるか不安そうだった。
 そんな学習の経験は、過去に無いはずだと塾長はわかっていた。
 「ここに、実際に塾長の提案を実行した生徒がいるんだ。」
 塾長は実際に1週間で101時間実践した生徒の、学習記録表(本人が記載し、母親がサインして、塾長のコメントが書いてある)を見せた。
 「すごい!」中3の女子は驚いた顔をした。
 「この生徒は、ここに名前があるように、小6で実践したんだ。今はK大の3年生だよ。君も出来ると思うんだがね。」
 「6年生ですか?」中3の女子は考えていたが、「やります!」と宣言した。
 「大変だろうが、がんばりなさい!」と塾長は未記載の学習記録表を10週間分渡した。
 それから、1週間が過ぎ2週間が過ぎ、夏休みに入っていた。
 3週間目が過ぎると中3の女子は、担当講師と一緒に学習記録表を持って現れた。
 「やれました!」
 「おお、すごいね。」塾長が見た学習記録表は、ぴったり100時間で母親の確認サインがあった。
 「それで感想は?」
 「あの、私、勉強、全部わかっちゃいました!」
 「そう、それじゃ、塾長の指導はいらないのかな?」
 「はい!」中3の女子は、見違えるほど自信に満ちていたが、塾長としては指導はいらないと断られて、どこか寂しいような?、何となく嬉しいような?
 あの中3の女子の受験は心配ないだろうとは思った。                             by 塾長

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風信雲書自天翔臨

「塾長!相談があるんですけど!」
「おう・・・?いいよ!」
中三の男子で成績は良い。本人の希望は東大に入ることが目標だ。小三の頃から見てきている生徒だから気心は知れている。塾に入会した当初から教室でつかみ合いの喧嘩をするような、元気の良い生徒だったから手のかかることおびただしい時期もあった。
「何か困ったことか?」
「はい・・・!あの・・・僕の将来はどうなるのか心配で・・・・・!」
「う〜ん!そうか!」
また弱気の虫が動き出したと直感した。事前に担当講師からは「親の期待にストレスを感じているようです!」との報告があったばかりなので、受験を3ヵ月後に控えいよいよ苦しくなってきたな?
と直感した。
「お前の将来か・・・?お前は誰のために、何のために勉強に努力しているんだ?」
「はい!自分のためです!」
「馬鹿者!それは小学生の答えだろ・・・!塾長の弟子の答えとしては非常に不満足だ!」
「はい!」
だいぶ落ち込んでいる様子で神妙な態度で聞いている。
「いいか良く聞け!塾長の最後の教えだ!お前の勉強は父親のためでも、母親のためでも学校の先生のためでも、塾長のためでもないのだ。ましてやもはやお前自身のための勉強でもない!この世にはお前を必要とする人間が100人いや1000人、1万人、10万人、100万人それ以上が、お前が世に出てくるのを待っているんだぞ!その人たちのためにお前の勉強はあるのだ!この高い理想が感じられないようなお前の勉強だから、悩み、迷い、苦しむんだ!お前の勉強には喜びというものがないのか?」
「はい・・・!」
「塾長は先日、どうしても空海さんに会いたくて京都高雄山の神護寺に行ってきた。だが、塾長は足が弱くてね。400段の石段を登れず、神護寺さんに電話をしてどうしても空海さんお会いしたい、とお願いしたら緊急用の道路を開いてくれて、秘仏の空海さんとお会いできた。空海さんはこの高雄山から有名な風信帖を高野山の最澄さんに書いたところで、どうしても行かなければならないと以前から考えていた。真筆の風信帖は国立博物館に秘蔵されているんだが、その冒頭の風信雲書自天翔臨と言う一句が好きで、その意味を実感したかった。だが、わずか400段の石段が登れないんだ。その時思ったんだよ。もっと早く来ていれば、もっと体調が良かったらとね。後悔したね自分の情けなさに!はいつくばっても昇れないんだ!わかるか?」
「はい!」
「後悔先に立たずだ!あの時こうしておけば、あの時こう考えておけば、すべては後悔だ!この歳になって塾長にも後悔することは多いのだよ・・・!お前には後悔の前にまずチャンスが来ているんだ。それをつかめ!大きなチャンスだぞ!わかるな?」
「はい!わかります!」
「たった数日しか空海さんに会うチャンスのない時に、塾長のようにたった400段の石段が、登れないようなぶざまな後悔を、お前にはさせたくない!巡ってきたチャンスを喜べ、夢中で勉強できることを喜べ、勇気がわいてくるぞ!結果は考えるな!小四の時の塾長との約束を思い出せ、あの時のお前は無敵だったはずだ!それを塾長は今でも信じている!いいな!」
「はい!」
数日して偏差値の結果が出た。70を超えていた。努力は報われる!by塾長

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隠しちゃった?

今年も全国学力調査の結果と分析が発表になって、各方面から議論百出・百花繚乱の様子である。「成績結果は公表しない」「いや、公表すべきだ」、などが代表だ。文科省は「過度の競争や序列化を招く」と市町村別成績や学校別成績の公表を禁じている。
地方自治体は公表したりしなかったり右往左往、専門家と言われる先生方は、出題の問題点や問題の妥当性を議論、ある新聞の編集委員にいたっては、全国学力調査3年間で200億円を使ったがその異議は、と実にごもっともなことだが、3年連続で1位の学力を示した秋田県は立派ではないか?
ちなみに、教育費の国家支出はOECD加盟国の中でGDP比3,3%で、日本は27位で最下位である。この国は教育意外にも大切なものがずいぶんあるようだ。さりながら、最下位とは情けない経済大国とは聞いてあきれる。
「競争や序列化云々・・・」の文科省はなんと答えるかな?「予算がないので・・・」とでも言い訳するかな?「3年間200億円云々・・・」の新聞はなんと答えるかな?「それはそれ、これはこれ・・・」とでも言い訳するかな?
まず、日本はOECDが公表したように、教育に予算を使っていない。逆に1家庭の教育支出は世界トップレベル、OECDの発表では2位だったかな?高額な塾に頼りきった姿が透けて見えてくる。なんとお粗末なことか!
成績公表で言えば、昔は生徒個人の成績を1番から、ずらりと学校の廊下に張り出されたものだ。それはそれで結構楽しかった。「勉強では負けたが、走るのは負けないからな!」と子どもながらの気概があった。そういうやつが餓鬼大将だったり、番長だったりして子どもの世界にもそれなりの秩序ができていた。
今そんなことを言うと「古臭い!」「時代が違う!」と一蹴される。ごもっともごもっとも、だが考えてみて欲しい。公表を隠して得をするのは誰?生徒それとも保護者、文科省それとも教育委員会、予算配分の地方議員それとも校長や先生。誰、誰なの?
「競争や序列化云々・・・」の文科省の綺麗ごとにはつき合いきれない。世の中は競争と序列化で蔓延していませんか?嘘はいけません!隠しごとはいけません!綺麗ごともいけません!子どもたちは賢く大人たちをすっかり見抜いていますよ。
どこかに誰か、公表されては困ると考えている人はいませんか?
「隠しておかなければならない、不都合な責任!」がそれぞれにあるのではないですか?
教育には仕事柄一家言ありますが、今日はこのあたりまでとしましょう。by塾長

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塾長マジック!

それまでまったく遊びほうけていた小学生が、ある時から猛然と学習に夢中になることを、誰言うともなく「塾長マジック」と呼ぶようになったらしい。たぶん保護者の誰かがそれらしきことを言ったのだろう。確かにそう見えたのかもしれない。
だが、それは大いなる間違いだ。塾長は魔法使いでもなければ手品師でもない。生徒を自在に操れる杖も呪文も持ってはいない。故に「塾長マジック」など存在するべくもないのである。そんな便利な杖や呪文があったらと、ハリーポッターの世界を考えないこともない。それほど小学生と付き合うことはたいへんだが、これほどおもしろく愉快なことも、世の中には少ないと考えている。
浅学菲才ではあるが、長い年月、生徒と学び蓄積してきた知識が、言葉や行動となって生徒の秘められた能力を、強烈に刺激していることは考えられる。
それは決して「マジック」などではない。
たとえば「勉強は誰のためにするの?」と聞けば、1年生でも「自分のため!」と自信満々で答える。中には「お母さんのため!」と答えて笑いを誘うこともある。
だが「じゃ。人間はどうして勉強するのだろう?」と聞くと、答えはバラバラになってくる。「いい中学に入れるから!」「いい会社に入れるから!」などはまだ可愛い。「将来金持ちになるため!」とか「将来えらくなるため!」と答えられると愕然とする。「幸せになるためです!」などと答えられると、この子は絶対幸せにしてやりたいと思う。
「じゃ。いい中学に行かなくてもいいや、と決めたら勉強しなくてもいいのかなぁ?」「幸せになんてならなくてもいいと決めたら、勉強しなくてもいいのかなぁ?」と聞くと誰も答えられない。大人でも答えにくい問題である。
それを塾長は知識を総動員して、大脳学的に歴史学的に人類学的に哲学的に科学的に、詳しく説明していくと、生徒は不思議な世界にでもいるように、真剣に自分のことを考え始める。
そんな時、子どもの脳とは「なんとしなやかなことか?」「なんとみずみずしいことか?」と強烈な嫉妬すら感じる。
塾長は決して「勉強しなさい!」とは言わない。言ったこともない。むしろ、「君ならできる!」「君の脳みそは大天才なのだ!」「君自身と君を信じる者のために努力せよ!」「夢はあきらめない限り必ずかなう!」と大袈裟ではあるが、褒めて励ましている。
子どもであれ大人であれ褒められて、気分の悪い人間はいないだろう。そのうち、生徒は自らの力で何かをしなければならないと、気がつき自覚して実践を始める。もちろん、ここまで3ヶ月ぐらいはかかるが、2〜3週間で目覚める子も多い。
あとは学習習慣の自己管理、生活習慣の自己管理の方法を教え実践させるだけである。もし、「塾長マジック」と言えるようなものがあるとすれば、「自分とは何者なのかと言う種をほんの少しパラパラとまいている?」に過ぎないと思う。
その種は早ければ4年生、普通であれば5年生で芽を出してくる。子どもたちは鬼に金棒を持った、立派なチビ哲学者に生徒自ら変貌していくのである。by塾長

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ママがふて腐れちゃった!

 とても仲の良い母子で、一人娘のためか両親や祖父母が、相当に甘やかして育てたようだった。この時代どうしても一人っ子や兄弟姉妹が少ないため、過保護気味になるのは仕方のないことだ。だが、5年生で私立校に受験したいと言いながら、自宅での学習はまったくしないらしい。学習習慣のない生徒だ。
 そのうえ、最近では母親が注意すると、反抗的な態度を取るという。それでも母親は高級外車で毎日塾の送り迎えをしていた。母親は召使状態だったようだ。
 そんなある日母親が相談に来た。
「勉強もしないし、反抗的で困ります。なんとかなりませんでしょうか?」
「お母さんは送り迎えをやめられますか?」塾と自宅はそう遠くなかったからだ。
「それは心配でできません!」と母親がきっぱり答えた。母子関係は熟知していたから、冗談交じりに、「それでは仕方ありませんね。お嬢さんがお嫁に行く時は、お母さんも一緒にお嫁に行くしかありませんね?」と言うと、母親は「はい!そのつもりです!」と真顔で答えたのには驚いた。
 そう言いながらも「困った!」と言うのは矛盾だらけだ。どこにでもいる母親の矛盾だ。
「わかりました!お母さんは本気でお嬢さんを自立させたいと思っていますか?作戦はありますが、お母さんしだいですね?」と一考して提案した。
「本当はパパにも叱られているのです。甘やかし過ぎだと。なんとかなりますか?」
「お嬢さんに自立されると、お母さんは寂しくなりますよ!大丈夫ですか?」
「はい!大丈夫です!自信はありませんが、がんばります!」と決心しているようだった。
「それでは早速ご主人と相談して、ご主人と二人でできるだけ嬉しそうに、映画でもコンサートでもお出かけください。お嬢さんが自分も行くと言ったら、あなたにはやることがあるでしょ。と拒否してお出かけください。食事は用意しておいてお嬢さん一人でする。お母さんはご主人と外で楽しんでください!」と作戦を披露した。
「そんなことしたら、娘は荒れてたいへんなことになります!」と同意しない。
「ご主人がおりますから、大丈夫です!塾でもそれとなく指導しておきますから!」と荒療治を納得してもらい、その日のうちにご主人に作戦の意図を話すと、ご主人はすべて理解して日曜日にすぐ実行してくれたという。
 二人が帰ってくると、娘さんは相当ショックだったのだろう食事もせず、ベッドに潜り込んで返事もしない始末で、母親は困ったようだが、打ち合わせ通りそ知らぬ顔でその日は過ぎ、翌日はショックが大きすぎたのか娘さんが学校を休んだ。
 ここからが母親と相談した本格的な作戦実行である。
「わかったわ!あなたはそうやって、パパとママの仲を裂いて、離婚でもさせる気なのね?あなたがその気ならママはもう、パパのこともあなたのことも何もしない!」と大袈裟に宣言して、母親はふて腐れ昼からベッドに入って寝てしまった。母子の暗闘はしばらく続いたが、夕方になると娘さんは不安になったのか、母親の寝室に来て自分から折れたと言う。それでもふて腐れた母親は取り合わない。
 娘さんは父親の帰りまでに何とかしようと考えたのだろう。一人で台所に立ち卵焼きとレトルトカレーで、父親を向かえ「パパごめんなさい。ママを本気で怒らせてしまった!」と泣いたという。
「そうか!それは困ったな?ママは本当はすごく頑固なんだよ!当分だめかも知れないな?」と父親まですっかり作戦に参加していた。
 母親は娘さんが持ってきた食事は食べないが、父親が持っていくと食べる。娘さんは母親に完全に無視された。母子の暗闘は3日間続き、父親の取り成しで娘さんは母親に、自分のわがままを謝ったと言う。
 この事件以来、娘さんは母親に反抗することもなく、両親が出かけるときは留守番をし、机に向かっていると聞いた。
 作戦大成功だが、誰にでも通用する作戦ではない。状況を掌握し、ご両親の理解と協力がなければ、とても出来ない話である。
 一人ひとりの生徒をよく観察して、今なにをするべきかを判断するのが、大人の役目だと考える。この事件もよくよく考えてみると、子の親離れではなく、親の子離れだったように思えてならない。by塾長

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開設日: 2009/6/22(月)


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