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「贖罪」(湊かなえ)

    贖罪
          湊かなえ   東京創元社    

田舎町に建てられた足立製作所の新工場の工場長の小四の才色兼備の一人娘・エミリは、校庭で同級生の紗英、真紀、由佳、晶子と遊んでいたところ作業員風の男に手伝いを頼まれ連れて行かれる。
エミリがなかなか戻ってこないのを不審に思った四人は、プールの男子更衣室で変わり果てた姿で絞殺されていたエミリを発見するが、なぜか男の顔を思い出せず、四年後エミリの母・麻子は東京に戻る際、彼女達を集めて言い放った。

 「わたしはあんたたちを絶対に許せない。時効までに犯人を見つけなさい。それができないのなら、わたしが納得できるような償いをしなさい。そのどちらもできなかった場合、私はあんたたちに復讐をするわ…(略…)」     

しかし、事件は未解決のまま時効が迫り…。

フランス人形
おとなしい紗枝は、エミリが被害者になったのは一人だけ月のものがあった大人だからだと思いこみ、目撃者である自分を犯人が見張っていて大人になったら自分は殺されるのではないかというトラウマを抱えてしまい、生理を身体が拒み続けている。
それを理解の上で、エミリの親戚の孝博は求婚し、お色直しに昔実家から盗まれたフランス人形が着ていたものそっくりのドレスを用意してくれ、エミリから誘われた孝博が、当時子どもの間ではやっていた「フランス人形見学ツアー」に参加していたことを思い出し感動するも、彼の仕事の関係でスイスに住むようになり、彼の異常な性癖が露見し…!?

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麻子の言葉を約束と捉えてしまった紗枝の朝子への独白といった手紙形式で構成された章。

PTA臨時総会
真紀は、エミリの事件直後犯人の顔は覚えていたが、しっかり者と自負していたにも関わらず、エミリの事件の際、自分だけ恐怖心から逃げてしまったことを恥じ、存在価値を失い、みんなの発言に反対意見を言えなかった。

真紀は、麻子の言う「償い」をエミリに恥じない立派な人間になることだと捉え、小学校教師になるが、水泳の授業中に刃物を持った関口和弥が侵入し児童を刺し重軽傷を負わす事件が起こる。
犯人から逃げ隠れた田辺教諭はPTAやマスコミに叩かれ精神的ダメージを受け、関口の父親が地元の有力者だったがために関口自身が自分で腿を刺しプールに転落死したのに浮かび上がってきた彼を足で蹴った真紀がネット上で殺人者扱いをされ誹謗中傷の的となる。

事件の詳細を語るPTA臨時総会の席に麻子を呼び出し、犯人の顔はマスコミで取りざたされているフリースクール経営者の南条弘章に似ているが今は亡くなっている人物にもっと似ていたと告白する…。

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自分のトラウマとなっている過去の事件と類似した事件が起こり、とっさにした行動ゆえに逆に叩かれる羽目になってしまった真紀がPTA臨時総会の場を借り麻子に語りかける形式で構成されている章。

くまの兄妹
自分の容姿がくまのようだというコンプレックスを持っていた晶子は可愛いものが好きだということを誰にも悟られないようにしていたが、エミリだけには打ち明けることができもっと親しくなれるのではと期待していたが…。

事件のショックで引きこもりになってしまった晶子にとっての「償い」とは、「身の丈以上のものは絶対に求めない」というものだが、自分とそっくりの容姿の春花という身の丈以上のものを求めてしまい…!?

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カウンセリングの先生を名乗る女性への告白といった形式で構成されている章。

とつきとおか
由佳は子ども時代に探偵ごっこで遊んでいた廃屋の別荘での話を陣痛の合間に麻子に語る。
暖炉に誰かの形見といった形で手紙と宝ものを隠そうというエミリの提案で隠すが紛失し、その後、別荘でフリースクールを作るために買う目的で訪れた男性が発見し戻ってくるも、エミリの隠した手紙だけはなかった…。

警察官の義兄を好きになったため彼の手柄にしようとエミリ殺しの犯人を捜し始め、男のがテレビに映るある男性の声に似ていることに気づき…!?

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義兄の子を身篭った由佳が陣痛の合間に麻子に語る形式で構成された章。

償い
お嬢様育ちの麻子は大学時代地方出身の垢抜けない秋恵と親しくなり、彼女の友人の男性を好きになり仲を取り持ってくれるよう依頼するが彼女は渋り…。

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自分が激情に任せて吐いた言葉が子ども達を苦しめていたなどと思いもしなかった麻子が彼女達に当てた懺悔の手紙形式で構成されている章。

終章
真紀と由佳は久しぶりに母校の小学校の校庭に忍び込みあの日と同じようにバレーボールをしながら麻子や、その後の自分達四人について話す。

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デビュー作がヒットすると、その後の作品も似たテイストのものを求められるのか、本作は「告白」に、題材や舞台設定や構成など、大変似ている印象を受けました。

何となく二番煎じといった印象の上、本作の場合は「告白」よりも、もっと後味が悪い

真紀に「自分より明らかに弱い子どもを狙うおとな、変質者の存在が許せませんでした。バカなおとなのために未来を狂わされる子どもはわたしたちだけでもう充分です」などと語らせていながら、子ども達に全然愛を感じさせない救いのない内容であることが大きい。

「PTA臨時総会」「くまの兄妹」も、現在の事件を無理やりエミリの事件に結び付けているかのようで説得性に欠け、苦しい気がしました。

人が羨むような物を持っていたというだけの非のないエミリへの仕打ちや、麻子の性格にすべての罪を被せるような安直さにも、そう描けば読者が納得するのではないかと思っているかのようで納得が行きませんでした。

また、犯人の人物像が明確ではなく、その描写や動機づけが甘く曖昧で、どこまで計画的犯行だったのか、本当に麻子への復讐だったのか、そこが一番の重要ポイントであるはずなのに、しっかり書かれていないところも不満です。
麻子の手記では、犯人は犯行当時自分とエミリとの関係を知らなかったらしいとしていますが、現在の犯人がどうなったのか、“皆(真紀や由佳たち)は知っていること”として詳しい記述はされておらず、読者には犯人のその後も、真意も、結局のところわからずじまい。
いささか蛇足に感じた終章は、犯人の独白にすれば、もっと説得性があったのではないかと思いました。

ストロベーリー&ブルーベリーの美味しそうで可愛らしい表紙絵なのに対し、本当に後味の悪い内容。
最初は可愛らしく思えた表紙絵も、読後は毒々しく思えるようになってしまいました…。

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