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「舟を編む」(三浦しをん) 

     舟を編む            
             三浦しをん            光文社
 
荒木公平は、中学の入学祝いに叔父から貰った『岩波国語辞典』に夢中になり、辞書のおもしろさの虜になる。
大学四年の時に出版された『日本国語大辞典』に感銘を受け、大手総合出版社・玄武書房に入社し三十余年間、監修の松本先生と共に『玄武現代語辞典』、『玄武学習国語辞典』、『字玄』などたくさんの辞書を作り上げる。
 
馬締光也は、真面目で律儀さが行き過ぎてトンチンカンだが、言葉に対する鋭い感覚を持つことを荒木により見出され、荒木の後任としてスカウトされる。
春日の下宿『早雲荘』で、大家のタケばあさんと、猫のトラと静かな日々を過ごしていたが、同居することになったタケの孫の板前・林香具矢に一目惚れし、我を見失ってしまう
 
西岡正志は、辞書にはなんの興味も思い入れもなかったが仕事だと割り切り五年頑張ってきたが、異動通達を受け『辞書編集部の無駄な人員』かと落ち込み、学生時代からの腐れ縁の恋人・三好麗美にだけ打ち明ける。
 
異動してきた変わり者の同期の馬締の、辞書つくりのセンスと桁外れの適性を認めざるを得ず、焦燥感に駆られ嫉妬心を覚えるが、何故か彼のために働いてしまい、彼を支えなければならないであろう後任のために、仕事のノウハウがつまった丸秘ファイルと、便箋十五枚にも及ぶ馬締の香具矢宛のラブレターのコピーを隠す。
 
岸辺みどりは、夢だった花形部署の女性向けファッション誌の編集部で名実共にきらめいていたが、突然辞書編集部に異動させられ、変人の馬締と、事務能力は極めて高いが無愛想な佐々木の中で、途方に暮れていたが、丸秘ファイルとラブレターを見つける
馬締と、あけぼの製紙の宮本慎一郎が、辞書・『大渡海』の用紙をマニアックに試行錯誤をする様子にたじろぐ。
 
松本、荒木の長年の夢であり、馬締の執念の賜物である『大渡海』は、無事出版の運びとなるのか

 
星間商事株式会社社史編纂室」 は、社史を編集する会社員のお話でしたが、本書は辞書編集部の半世紀に渡る歴史といった感じ。
 
 
辞書の編集作業は、ほかの単行本や雑誌とはちがう。大変特殊な世界です。気長で、細かい作業を厭わず、言葉に耽溺し、しかし溺れきらず広い視野を併せ持つ』能力が求められるとありますが、確かに。
 
その能力があるか否かの簡単な見分け方は、『要領よく、ものを所定の場所に収めていける』とのことなので、私は絶対にそのお眼鏡にかなわないことでしょう
 
辞書は出版社にとって、だそうです。
 作るのに莫大な金がかかるのはたしかだが、辞書は出版社の誇りであり財産だ。人々に信頼され、愛される辞書をきちんと作れば、会社の屋台骨は二十年は揺るぎないと言われている。
 
謎の題名と、彼らが情熱を傾けている『大渡海』の意味とを併せてに抜粋。
「辞書は、言葉の海を渡る舟だ」
 魂の根幹を吐露する思いで、荒木は告げた。「ひとは辞書という舟に乗り、暗い海面に浮かびあがる小さな光を集める。もっとふさわしい言葉で、正確に、思いをだれかに届けるために。もし辞書がなかったら、俺たちは茫漠とした大海原をまえにたたずむほかないだろう」
「海を渡るにふさわしい舟を編む」

 
 
 どうか、いい舟を作ってくれ。荒木は願いをこめて目を閉じた。多くのひとが、長く安心して乗れるような舟を。さびしさにうちひしがれそうな旅の日々にも、心強い相棒になるような舟を。
 
 
 有限の時間しか持たない人間が、広く深い言葉の海に力を合わせて漕ぎだしていく。こわいけれど、楽しい。やめたくないと思う。真理に迫るために、いつまでだってこの舟に乗りつづけていたい。
 
 
 
 「言葉の海は広く深い」
 松本先生は楽しそうに笑った。「まだまだ修行がたりず、海女さんのように真珠を採ってくることができないのです」
 
 
 
 「言葉は、言葉を生み出す心は、権威や権力とはまったく無縁な、自由なものなのです。また、そうであらねばならない。自由な航海をするすべてのひとのために編まれた舟。『大渡海』がそういう辞書になるよう、ひきつづき気を引き締めてやっていきましょう」
 
 
 
 俺たちは舟を編んだ。太古から未来へ綿々とつながるひとの魂を乗せ、豊穣な言葉の大海をゆく舟を。
 
学生時代、国語の試験で語句の意味を説明せよという問題が出ましたが、意味は分かっているけど簡潔な言葉で説明できず、四苦八苦した覚えがあります。
そのため、辞書を引くたびいつも感心したものです。
 
しかし、Aを引くとBのこととあり、Bを引くとAのこととあったりし、結局答えを見つけられずメビウスの環のようだと思ったことも暫し。
それと似たようなことが作中に記されていて、思わず(そう!そう!)と共感する場面も多々ありました。
 
多々あるといえば、随所にエッセイなどに繋がるネタ( ̄ー ̄)ニヤリ
 
西岡が松本先生に言う「もしかしてディズニーランドにも行ったことがないんですか」を、私はそのまましをんさんにお返ししたい( ̄ー ̄)ニヤリ
 
目を閉じて辞書のページに触れるだけで、どの出版社のなんという辞書かほぼ言い当てられるようになったという件には「ふむふむ おしえて、お仕事!」の、ビール職人・真野由利香さんを連想。
 
 
香具矢を『女版高倉健のように渋くて格好いい』と形容する件には、しをんさんが健さんファンだと知っているので( ̄ー ̄)ニヤリ
 
( ̄ー ̄)ニヤリとしたといえば、歴代の辞書編集部の人間が、嬉しい時に『頬の裏側の粘膜を軽く噛み、できるかぎり真面目な表情を保つよう努める』という癖も伝承されている場面。
こういう、細かい描写まで凝っています。
 
登場人物も相変わらずキャラ立ちしており、語り手のバトンの渡し方もウマイ。
 
荒木から馬締にバトンが渡るのも自然で、十五年という歳月が瞬く間に過ぎ、脇役の近況報告など時間経過がさりげなく書かれているのがニクイ。
 
子供の頃から辞書の紙の独特の風合いや質感を不思議に感じていたのですが、その影には製紙会社の製品開発というご苦労があることを、馬締と宮本のやりとりから初めて知りました。
 
しをんさんの本の装丁や挿絵は凝っていていつも感心するのですが、本書の第一印象は地味に思え意外でした。
しかし、終盤を読むと、この装丁の意味がわかり、愛着が増しました。
 
最近めっきり紙の辞書を引く機会がなくなり、ネットや電子辞書に頼っていましたが、久しぶりに言葉の大海に舟を漕ぎ出したくなるような作品です。
 

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舟を編むと言うタイトルはそう言う意味だったのね。。。
最近の子供達は電子辞書ばかりで、次女なども辞書の引き方がイマイチわからないみたい。
電子辞書世代の若者は本書を読んでも、あまりピンと来ないかも?そう思うと寂しい限りだけどね〜

2011/10/28(金) 午後 4:29 YUKO

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まさに「岸辺みどり」が登場した所です
面白いです。また、読み終わったら帰ってきますね〜(^^)

2011/10/28(金) 午後 5:04 く〜みん

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YUKOさん。たった一つの言葉でも説明しようとすると難しいものだから、考えれば辞書って本当に偉大ですよね。今は、学校で辞書の引き方の授業がありますよね。次女の小学校ではそれがテストに出ていました。学生には辞書は嵩張るし重いから持ち運びには電子辞書が便利でいいのよね。

2011/10/29(土) 午前 11:11 金平糖

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く〜みんさん。楽しみに、お待ちしていま〜す♪(*^^*)

2011/10/29(土) 午前 11:12 金平糖

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なかなかよさそうで予約の順番が回ってくるのがとっても楽しみです♪「星間商事〜」とはまた違う熱いドラマが読めそうですね。
確かに紙の辞書は最近あまり手にしなくなりました。本にマーカーするのにどうしても抵抗があって、辞書に何にも書き込みしない学生でした^^;電子辞書は便利だけど、やっぱりアナログな方が記憶に残る気がしますね。

2011/10/30(日) 午後 11:20 lime

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limeさん。「星間〜」とは、まったく違うテイストの作品だと思いますよ。熱いけど、静かな青い炎といった印象の作品でした。
次女の学校は、英語辞書に付箋を貼る指導をしています。電子辞書にはチェック機能もついている時代なのにすごくアナログに思えるけど、頭に入りやすいのかもとも考え直しました。

2011/10/31(月) 午後 2:50 金平糖

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本書を読むまで 辞書を作る人のことなんて 考えたことまりませんでした。
あれだけの言葉の数々を 一つ一つ原稿として書きあげ 何稿にもわたるチェックをし作り上げるなんて 正直思いもよらなかったんです。
内容だけでなく 紙質から装丁に至るまで こんなに苦労があるなんて・・・

電子辞書はすごく手軽で いつでもなんでもパっと調べられる利点がありますが 分厚い辞書を本棚の奥から引っ張り出して また利用したいなぁと思いました。
・・・あっ でも言葉は生き物だから 新しいものを購入したいかもっ^^

こちらからもTBさせていただきます〜

2011/12/23(金) 午前 1:59 tammy

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tammyさん。子どもが小さい頃、言葉の意味を聞かれ、わかっている言葉なのに的確な説明ができず、辞書を書かれた方の偉大さが身にしみたものです。普通の書籍にさえ、校正ミスがあるから、辞書の場合はほんと大変な作業なのだろうと改めて思いました。
学生の場合、ただでさえ荷物が多いから重くて厚い辞書を持ち歩くのは効率が悪いですよね。でも、家では、たまにでいいから紙の辞書もぬめり感を味わいながら引いてほしいなあと思いました。
トラバ返しありがとうございました(*^^*)

2011/12/23(金) 午前 9:42 金平糖

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本屋大賞獲りましたね
図書館検索したら予約110件以上!!

2012/4/11(水) 午後 0:05 ing*a*u

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くろさわさん。有川さんがノミネートを辞退し、話題になった本屋大賞。本作は、本屋さんや出版社が売りたいだろうなあと思わせる一冊です。辞書は、高いですしね(*・∀-)☆

受賞後は予約が殺到するので、本賞と直木賞はノミネート決定後興味ある作品の予約を入れることにしています。でも、予約しなかった本が受賞したりもします^^;

2012/4/12(木) 午前 11:39 金平糖

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これ、メディア化されそうじゃないですか?

2012/4/24(火) 午後 1:22 takuji

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たくじさん。ええ、アニメ化も映画化も間違いなくされると思ってます。

2012/4/25(水) 午後 3:18 金平糖

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そうそう、バトンの渡し方が良い♪
西岡の章が、意外と好きでした。チャラ男の西岡も、いろいろと葛藤してて ちょっと西岡の気持ちが分かるような感じもして、好きでした。
言葉の意味。今、自分が使ってる単語の意味が「本当に正しいのか?」って不安になる時があります。ブログを始めてから得に気にするようになった! でも、やっぱり便利だからネットで調べてしまうなぁ〜
トラバ返しさせて下さい。

2012/5/25(金) 午前 9:54 わぐま(*^。^*)

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わぐまさん。辞書の編纂にバトンを受け渡さねばならないほど、こんなに長い年月を要すとは、驚きでした。でも、考えてみたら、ちょっとやそっとで作れないものだものだものね。
次女に電子辞書買ったのだけど、先生は紙の辞書を強要する為学校には重いのに三冊も持っていかなくっちゃならないの。先生はスマホを使っているのにと文句を言ってます。紙って、そんなにご利益あるのかな?電子辞書には何十冊も入っていて引き比べできるのにね…。
トラバ返しありがとうございました(*^^*)

2012/5/25(金) 午前 10:20 金平糖

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