マグカップ
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「横になりましょう?」
車いすの彼女に向かって両手を広げると
日によって暴力団のような彼女の両手が私の方に伸びてきた。
ベッドの方にうつる体制にしようと
足の角度を変えている途中で
彼女の両手が私の体をギュッと抱きしめる。
何度も何度もギュッと・・・・・。
きっと寂しいんだろうな。
いつも車いすの上で忘れられているから。
その彼女がマグカップをお腹にかくして
渡してくれようとしなくて困った時があった。
隙を見て回収しようとすると
彼女の二本の手が私の方に向かって攻撃してくる。
じっと睨みあった末
彼女が言った。
「探してみろ!」
(?)
何年も認知症の方に関わってきて
「探してみろ。」と言われたのは
初めての経験だった。
Tシャツの裾を上げてもマグカップはない。
そのままで怪我をされても困るので
勇気を出して枕の下に手を差し込んだら
見事隠してあったマグカップがあった。
「探してみろ!」といった割に
見つけられた時の逆上した体制は、予想通り。
買い物にも行けない彼女にとって
マグカップ一個でも手元にあると安心なのかな。
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