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アンチクライスト (2009年 デンマーク・ドイツ・フランス・スウェーデン・イタリア・ポーランド)デンマークのラース・フォン・トリアー監督のサイコ・ホラー作品。
夫=彼(ウィレム・デフォー)とその妻=彼女(シャルロット・ゲンズブール)は、SEXの最中に、幼い息子(ストルム・アヘシェ・サルストロ)が、部屋の窓から転落して死亡…妻は罪の意識に苛まれて精神を病む…セラピストの夫は、彼女に精神療法を試みるべく、彼女が「苦手で怖い場所」だという“エデンの森”に、2人だけで足を踏み入れる…そこには、この夫婦が所有する小さな山小屋があるのだ…苦手な場所に赴いた理由は、恐怖心から逃げないで、前向きに直面する事で、恐れを取り払い、トラウマを克服する為なのだが、この森に滞在する事で、ヒロインが自我を開放して悪魔的な本質を見せ、思いもよらない行動を取るに至る…。
“エデン”という名の舞台、“彼”“彼女”という名前のない登場人物…旧約聖書の天地創造をイメージさせる設定だ…この現代のアダムとエヴァが、紡ぎ出すのは、≪男性の本質≫と≪女性の本質≫…。
妻は、1年前まで、16世紀魔女裁判の時代に、女に拷問などの悪魔的な仕業を働く男たちの事を論文にする作業をしていた…その時に、人間は≪本質≫に支配される生き物で…男性が“女性を性的に痛めつけたい”という欲望を持つ邪悪な本質の生き物だとすると、女性にも男性に対して同様な本質を持っている事に気づいたというのだ。
妻は、幼い息子に無意識に左右の靴を常に反対に穿かせていた…転落死した息子の検視の際、足がわずかに変形していた事が判明し、夫は、妻の悪魔的な本質の片鱗を感じる…妻にその事実を突きつけた矢先に、彼女は夫が自分を捨てるのではないかと恐れ、夫に性的虐待を行い、それをエスカレートしてゆく…。
ストーリーは、≪1.プロローグ 2.悲嘆 3.苦痛(混沌が支配する) 4.絶望(殺戮) 5.三人の乞食 6.エピローグ≫の6つの章に分かれる。
【 悲嘆・苦痛・絶望は、大きな精神的ショックを受けた時に通過するプロセスで、「悪魔の書」の中では、≪三人の乞食≫と呼び擬人化している…そして、この≪三人の乞食≫が降りてきた後に、≪悪魔≫がやってきて、誰かが死ぬというのだ 】…どうやら本作は、東洋の教えでいうと≪性善説≫では無く≪性悪説≫から成り立つドラマの様だ…この≪三人の乞食≫は、本編の中で、シカ、キツネ、カラスの姿を借りて登場…そして“殺意”という悪魔は夫婦の身体に宿るのだった。
この凄まじい人間ドラマは、聖なる映画を残した=アンドレイ・タルコフスキーに捧げられている…確かに、「ノスタルジア」「鏡」を思わせる美しい演出やパーツが潜んでいるが、本作の、邪悪でオカルティックな展開は、ラース・フォン・トリアー自身の≪男性の本質≫が強く関与した、オリジナルなドラマだと言える。
ラース・フォン・トリアーは、本作を、「自ら患った鬱病のリハビリの為に撮った」とインタビューで述べている…だとすると、彼の心の病の原因を作ったのは、女性の存在だったのかもしれない…“恐怖心から逃げないで、前向きに直面する事で、トラウマを克服する”作業の一環が、女性の悪魔性を問う作品であった事は、とても興味深い。
本作は日本では“18禁”の映画である…過激な濡れ場やクローズアップによる性器を傷つけるシーンがあるので、ボカシは致し方ないが、クローズアップはダミーによるSFXと思われるので、俳優たちが実際“あんな事やこんな事”をしているとは考えない方が良いだろう…あまりにもおぞましい描写もあるのでそう思わずにいられないのだ。
ただし、ヒロインのゲンズブールに至っては、全裸の自慰シーンを含め、ごまかせないカメラアングルで演技しており、役者根性を魅せつける。
2009年カンヌ国際映画祭女優賞(シャルロット・ゲンズブール)受賞。
あまり他人にはお勧めしないが、私は大層気に入って、日本版DVDを2回観た後で、米版ブルーレイを取り寄せて再度見直した…認めたくはないが、私にも≪男性の本質≫が宿っている…?
≪YouTubeで観る≫
本作のプロローグ部分…≪三人の乞食≫が揃うと誰かが死ぬ…テーブルの上に≪三人の乞食≫を思わせる像がある。
2章「悲嘆」の中のシーン…エデンへ向かう列車の中で、夫は妻に「催眠療法」を試みる…苦手なエデンの森の草むらに同化するイメージトレーニング…。
12/04/01 14時30分 (1時間44分) DVD & BD |
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