|
週刊東洋経済10月31日号の特集「民主党でどうかわる?!年金激震!」が、一部で話題を呼んでいるようだ。私は、この記事の取材を受けていたが、余りに内容がひどいため、出版の翌日、週刊東洋経済の鈴木編集長に、反論記事を書かせて欲しいと要望していた。1週間ほどして、鈴木編集長から、「反論記事掲載はご遠慮いただきたい」との返事が来た。
以下、それに対する私の返事を転載するが、私が感じたことは、週刊東洋経済は内容はもちろん、取材姿勢も大変問題があるということである。石橋湛山の名を汚すことのないよう、現編集部には、自覚を持ってもらいたい。ちなみに、週刊東洋経済の記事の内容に対する反論は、近いうちに、別途、このブログに掲載する。
週刊東洋経済 鈴木雅幸編集長さま
1)丁寧なご返事をいただき、ありがとうございます。週刊東洋経済10/31日号「年金激震」の記事に対する私の反論を、週刊東洋経済にご掲載いただけない件、残念ですが、了解しました。
ちなみに、「弊誌の特集内容について、一部の方からは「厚生労働省の主張に迎合しているだけ」とのご意見もありましたが、編集部としてはこのような意見を大変残念に思っております。」とのことですが、私は「迎合」ではなく、厚生労働省、同省OB、同省お抱えの御用学者の主張そのもの、ほとんど一字一句違わないといって良いほどの内容だと感じました。今回の記事は、「年金官僚の詭弁」の総集編と言えると思います。
2)私の反論はいずれ他の場所に書きますので、その際にはお知らせしたいと思いますが、経済学者の主張に対して、週刊東洋経済の記事ではかなりの事実誤認と誤解があることがわかると思います。
一つだけ例を挙げれば、選挙前の民主党や、マスコミが煽ったとされる年金破綻論に、そもそも経済学者は組していません。「エコノミスト」と呼ばれる人々の主張はともかく、まともな経済学者で年金財政が破綻するといっている学者はそもそも居ないと思います。それは、2004年改正やそれ以前の年金改革が全てそうだったように、保険料を上げたり、給付をカットすれば、年金財政を維持できることは、そもそも当たり前のことだからです。
経済学者が問題にしているのは、その結果として起こる巨額の世代間不公平や国民負担の増大であり、それが将来の国民に許容されない水準になれば、政治的に年金が破綻する可能性があるという点です。ですから、民主党・マスコミが商売柄大げさに主張している破綻論と、経済学者の主張を一緒くたにするのは、全くの間違いです。
3)それはともかくとして、今回、私に取材に来た副編集長の野村明弘記者の取材姿勢には疑問を感じざるを得ませんでした。
9/30に私の研究室にいらして、2時間ほど、私の本の説明をさせられましたが、記事ではきちんと説明していることが意図的に削除されたり、本に書いていないことが書かれたりしています。例えば、私は、
(1)財政赤字を途中で発生しない(積立金を枯渇させない)という現状の制約の元では、「2重の負担」を一部の世代に集中して負わせることになるので、積立方式移行の成果は少ないが、
(2)2重の負担を基礎年金税源化によって別会計にし、途中経路として財政赤字を発生ができるようにすれば、2重の負担を超長期で幅広い将来世代に負担させることが出来、その結果として、積立制度移行の果実は大きいことを主張しています。
その全体の主張を取り上げず、(1)の主張だけ部分的に引用され、積立制度移行は意味が無いという結論を私が述べているかのように紹介されているのは、悪質な「揚げ足取り」というべきものであり、大変残念に思いました。また、私が主張しているのは、記事に書かれていたような(問題が多い)個人勘定の積立方式ではなく、世代勘定といって世代全体でリスクをプールするやり方ですから、これも事実に反した紹介になっています。
そのほか、私の主張を捻じ曲げて引用したり、紹介している例がいくつも散見されます。こうした点は、9/30の取材、あるいはその後、野村氏の求めに応じてお送りした論文やメールなどで、きちんと理解していただいていたはずなので、恐らく意図的に行なったものと思われます。
3)野村氏にも言いましたが、私は好意的な記者にも批判的な記者にも、公平に取材を受けています。それは、様々な対立意見があっても、論理的にお互いの意見を戦わせることで、やがて真実に到達できると、科学者として信じているからです。不快な取材にも耐えています。
今回も、明らかに批判的で不快な取材に、誠実に長時間応対しているのですから、せめて、私のインタビューや本を引用するのであれば、それが私の主張として正しいかどうか、事前に確かめていただきたかったと思います。
また、驚くべきことに、私の本を引用することは、一言も野村記者からは伺っていませんでした。図表を含めて、これほど広範に引用するのであれば、取材にもわざわざ来ているのですから、著者に一言断るのが一般的なマナーであると思います。
さらに、細かいところですが、出版後の週刊東洋経済10/30日号すら、私には送られてきませんでした。取材謝礼の無いこの種の取材は、せめて、出版後の雑誌や記事を送るのが最低限の礼儀だと思います。私は取材時間として少なくない機会費用をかけたのですから。雑誌、新聞取材を含めて、東洋経済以外の雑誌は、(たとえ批判的な記事であっても)これまで一つの例外もなく、きちんと送られてきましたから、非常に違和感を感じました。
こうした「食い逃げ的」取材姿勢をされると、一回限りのお付き合いにならざるを得ませんが、それは他のトピックスで取材にくる他の記者の迷惑というものでしょう。私は、翌週に保育改革の取材に来た週刊東洋経済の記者にも取材を受けましたし、これからも、週刊東洋経済の取材は受けるつもりですが、私の身近な経済学者の中には、野村氏を初めとする週刊東洋経済の取材は断ることにしている人も居ます。今回の記事も名前の挙がっているほとんどの経済学者に取材を断られたのではないでしょうか。そうすると、益々、一方的・偏向的な記事にならざるをえないわけですから、週刊東洋経済のためにもならないと思います。
わが国有数の経済誌として、これからも週刊東洋経済に期待していますから、どうかこのような取材姿勢を改めて、石橋湛山の名を汚すことのないよう、お願いしたいと思います。以上、(雑誌を購入した)一読者としての意見です。
|