|
南シナ海における島嶼の領有権をめぐるASEAN関係諸国と中国間の紛争は、かなり古くからある問題であるが、近年新たな様相を見せており、特に最近、世界が注目する重要な国際紛争として関心を集めるようになった。
その背景には、近年における中国の周辺海域への支配力強化・資源開発の動きがあり、しかも中国がそれを近隣諸国との多少の摩擦を厭わず、実力をもって強行しようとする覇権的姿勢を示していることが指摘される。これは、東シナ海における近時のわが国と中国間の緊張増大にもつながっている問題でもある。
さらに特筆されるのは、ASEAN関係諸国の側にもベトナムやフィリピンのように、このような中国の強硬姿勢に泣き寝入りせず、敢然として自己主張を行う強い姿勢が次第に高まってきていることである。
ASEAN側も一枚岩ではなく、ベトナムの強い姿勢に対し、カンボジアやラオスのように無関心を示し、またタイ、ミャンマーなどのように中国からの働きかけに従順な国もあるが、現議長国のインドネシアがASEANとして対中関係をコレクトなものとしたいとの観点から上手にとりまとめ役を果たしているようであり、来る月末のARF外相レベル会合、その後のASEAN首脳会議を控える本年中に何らかの具体的成果を中国側より勝ち取れるかが焦点となろう。
最近の米国のASEAN寄り態度は、ASEAN側にプラスとなっているが、わが国としても必ずしも厳正中立の立場にこだわらず、深い関心を示し、客観的立場から積極的に発言していって然るべきと思われる。
(Y. I.)
**********************************************************************
1.国際情報センター所長の茂田 宏氏監訳による下記「最新インテリジェンスの入門書」が刊行され、アマゾン等で発売中です。
【インテリジェンス―機密から政策へ】マーク・M・ローエンタール 著 茂田 宏 監訳
(慶應義塾大学出版会 http://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766418262/)
2.「ペンタゴン報告書:中華人民共和国の軍事力―2009年版」(全和訳完全版)が販売中です。 アマゾン( http://www.amazon.co.jp/ペンタゴン報告書-中華人民共和国の軍事力-米国防総省/dp/4990474104)をご参照下さい。
******** ******* ******** *********
「国際情報センター」(http://blogs.yahoo.co.jp/kokusaijoho_center/)) ブログをご存じでしょうか。
同ブログには、現下のホットな重要国際問題の事実関係に関する正確なな情報と分析および専門家の見方が示されています。 姉妹ブログ「現下の国際問題」 (http://smartpower.cocolog-nifty.com/blog/),(http://angelpower.at.webry.info/)でも本欄と同一記事がご覧になれます。
*********************************************************************
7月日16日国際情報センター」記事
「南シナ海問題」
1、 7月23日、ASEAN地域フォーラム(ARF)が開催されるが、南シナ海における中国とASEAN諸国の対立が大きな議題となることが予想されている。
南シナ海には、200以上の島と岩礁があるが、南沙諸島〔スプラトリー諸島〕については、中華人民共和国と台湾がその全体の領有を主張し、ベトナム、マレーシア、フィリッピン、ブルネイがその一部の領有を主張している。西沙諸島(パラセル諸島)については、ベトナム、中華人民共和国、台湾の3カ国が領有権を主張している。
実際にどの国がどの島、岩礁を支配しているのかの地図を見てみたが、台湾が支配しているイツアバ島の北と南に中国が支配する島がある、中国が支配するミスチーフ岩礁の北と南に比が支配する島がある、ベトナムがかなり多くの島、岩礁を支配下においているなど、複雑にいり込んでおり、この領有権問題を話し合いで解決するのはきわめて困難であると思われる。
2、 この問題を考える際に、大きな指針となるのが2002年の「南シナ海における当事国の行動に関する宣言」である。この宣言全文は次のとおりである。
ASEAN加盟諸国政府と中華人民共和国政府は、
21世紀に向けた善隣と相互信頼のパートナーシップを推進するために彼らの人民と政府の友好と協力を強化し、発展させる決意を再確認し、
地域における平和、安定、経済成長,繁栄の強化のためにASEANと中国が南シナ海で平和的、友好的、調和的な環境を推進する必要性を認識し、
ASEAN加盟諸国の国家・政府の長と中華人民共和国主席の会合の1997年共同声明の原則と目標を強化することにコッミトし、
関係諸国間の違いと紛争の平和的で持続的な解決のための好ましい条件を作ることを望み、
ここに次の通り宣言する。
(1) 当事国は国連憲章の目的と原則、1982年国連海洋法条約、東南アジアでの友好・協力条約、平和共存5原則 及び他の国家関係を規律する基本的な規範となる国際法の普遍的に承認された原則へのコミットメントを再確認する。
(2) 当事国は上記原則に従い、かつ平等と相互尊重の基礎に立って、信用と信頼を作り上げる方策を探求することにコミットする。
(3) 当事国は1982年国連海洋法条約を含む普遍的に承認された国際法の原則に規定されているように、南シナ海における航行の自由とその上空の飛行の自由へのコミットメントとその尊重を再確認する。
(4) 関係当事国は1982年国連海洋法条約を含む普遍的に承認された国際法の原則に従い、直接関係する主権国家による友好的協議と交渉を通じて、武力の行使や威嚇に頼ることなしに平和的な手段でその領土及び管轄権紛争を解決することに同意する。
(5) 当事国は紛争を複雑化し、エスカレートし、平和と安定に影響を与える活動(その中には現在住民が居住していない島、岩礁、砂州、小島やその他の個所への居住行為を止めることを含む)の実施において自制すること及び彼らの違いを建設的な方法で取り扱うことに同意する。
領土、管轄権紛争の平和的解決に至るまで、関係当事国は協力と理解の精神において、彼らの間での信用と信頼を作る方策を追求する努力を強化することに同意する。それには次のことが含まれる。
(あ)彼らの防衛・軍事高官間で適切な場合対話と意見交換を行うこと
(い)危険や苦境にあるすべての人に公正で人道的な取り扱いを確保すること
(う)関係する他の当事国にあらゆる共同・統合軍事演習計画を自発的なベースで通知すること
(え)自発的なベースでその関連情報を交換すること
(6)紛争の包括的で持続する解決までの間、関係当事国は協力的な行動を探求し行うことが出来る。それは次のことを含みうる。
(あ)海洋環境保護
(い)海洋科学調査
(う)海上における航行と通信の安全
(え)海上における探索・救助活動
(お)不法な麻薬取引、海賊と海上での武装強盗行為、武器の不法取引を含み、かつそれに限られない国境を越えた犯罪と戦うこと
2国間、多数国間協力に関する態様、規模、場所は関係当事国によりその実際の履行前に合意されるべきである。
(7) 関係当事国は善隣関係と透明性を推進し、調和、相互理解と協力を樹立し、彼ら間の紛争の平和的解決を推進する目的をもって、この宣言の遵守に関する定期的な協議を含む彼らによって合意された態様を通じて関連する問題に関する協議と対話を継続する用意があるものとする。
(8) 当事国はこの宣言の規定を尊重することに同意し、それと合致した行動を行う。
(9) 当事国は他の国がこの宣言に含まれる原則を尊重するように奨励する。
(10)関係当事国は南シナ海における行動規範の採択が地域の平和と安定を更に推進するこ
とを再確認し、コンセンサスでこの目標の今後における達成に向けて作業することに同意する。2002年11月4日、カンボディア王国プノンペンで。
(この文書の署名者はASEAN外相と中国の王毅外務次官である)
3、 ASEANはこの行動規範を法的拘束力のあるものにすることを主張しているが、それで十分か否か、疑問である。
中国が他国の主張を否定し、多くの島、岩礁を支配下におき、その領海、領空の侵犯は許さないとした場合、この宣言における航行や上空飛行の自由の尊重規定にかかわらず、大きな問題が出てくるように思われる。
時折、中国は権利主張国と個別に話し合うことを主張し、ASEAN諸国はマルチでの話し合い、すなわち中国とASEANとの話し合いにすることを望んでいるとされるが、この宣言は中国の主張に一定の根拠を与えているようにも読める。
中国はこの問題に米国が介入することを排除することに熱心であり、最近のマレン統合参謀本部議長の訪中の際にも米にベトナム、フィリッピンとの共同軍事演習に異議を挟むなど牽制している。
中国はこのアジアの重要海域を支配する権利を主張しているのであり、それをしっかりと認識した上で、この問題について米、ASEANとの協調を考えていく必要がある。米は航行の自由が死活的利益とする一方、領有権問題には立ち入らない、問題の解決が平和的に行われることには関心を持つという姿勢である。しかし南シナ海が日本、韓国へのシーレーンにとり、持つ意義に鑑み、現状の凍結や特殊な地域としての特別レジームなどもっと踏み込んだ姿勢を打ち出すことを検討する必要があるように思われる。
上記記事の原文は、http://blogs.yahoo.co.jp/kokusaijoho_center/37807931.htmlでご覧になれます。
|