「原発からの撤退」を危険性からの回避だけでなく
人間らしい働き方と暮らし実現のきっかけにしよう
2011年2月○○日 笹山 熊五郎
Ⅰ、「原発からの撤退」と「原発への固執・再運転・輸出」の対決
震災・原発災害直後の、原発災害のあまりのひどさを目の当たりにした国民の真剣な安全確保の探求と、連帯と支援の意識の高揚に対して、政府・電力会社の巻き返しもつよまってきている。
1、原発にしがみつく原発利権複合体
原発推進勢力は、関係官庁、政治家、電力会社や原子力企業など関係業界、御用学者、マスコミなどにまたがる強固な原発利権複合体を形成し、「安全神話」をふりまき、異論を敵視し封殺をはかって、原発の増設と運転などを強行してきた。
2、原発に固執する旨みとは
○総括原価方式の電力料金。
○巨額の原発は関連業界の利益の源泉。
○原発立地を押し付ける利益誘導としての原発立地交付金
○超経済的性格。アメリカの傘の下としての思考停止とマインド・コントロール。
福島原発災害でその姿が見えた。事故後、海軍の事故担当者が来日。事故のデータは日本より先にアメリカに渡されていた。いざ、事故となるとアメリカが直接乗り出してきた。日本には当事者能力がなく、アメリカ頼みだった。
Ⅱ、原発からの撤退を前向きにとらえよう
1、 これまでの24時間活動型の社会は電力浪費型の社会。
2、 夜間操業は可能な限り縮小して、電力の消費を節約する。それは何を生むか。長時間労働がなくなる。昼間操業が拡大し雇用が増える。派遣労働の規制を同時に行えば、青年に過酷な雇用状態の劣悪さの解消に大きく役立つことが期待できる。
3、 こうした制約で、日本の産業はさらに発達することが期待できる。
○電力不足がおきると国民を脅かしたときに、供給力を過小に計算しごまかしていた。政府のごまかしが明るみに出た。
4、 風力発電、太陽光発電など再生可能エネルギーの活用で 原発に頼らない、以前より低電力消費社会、省エネルギー社会をめざす。「がまん社会」ではない。ここにこそ、「人間らしい働き方と暮らし」を実現していく展望がある。
Ⅲ、内部被曝――低線量内部被曝がいちばん心配される。
1、 一番隠され、未解明な点の多いところ。しかし、原発の放射線被曝は低線量長期の内部被曝が特徴である。
2、 チェルノブイリで子どもの甲状腺がんの増加が原発事故で放出されたヨウ素131によるものと証明されたのは20年後に発生が終わってからのことだった。
3、 セシウム137の低線量長期内部被曝が引き起こす障害には、膀胱炎・膀胱がんがあることがチェルノブイリで発見された。
4、 内部被曝のメカニズム。
5、 今回の大地の汚染は一過性のものなので除染が可能だという。国と東電の負担で徹底して除染する。
6、 内部被曝は、未解明な問題の多い分野なので、福島以後では徹底した調査研究で、内部被曝について調査・研究をおこない、健康への影響が現れた場合には先手、先手で対応できる体制を備えていく必要がある。国が福島県の十八歳までの医療費無料化を拒否したことは、国が福島県民の放射線健康影響への責任を果たす意思がないことを明瞭に示した。
注、ではどのくらいの確率で内部被曝の影響は現れるのだろうか。数年〜数十年後には冷厳な事実が明らかになるので、少なくて済むよう願うしかないが、がんなどの死亡率で百人に一人なら多い。10万人当たり何人とかいう確率的な現れ方になるだろう。宝くじで一億円当たるのが一千万本に一本だそうだから、とんだ当たりの多いマイナスの宝くじを押し付けられたようなものである。
さらに、「原発ぶらぶら病」的な不定愁訴が心配される。軽鬱と見分けにくいかもしれない。
注、50代過ぎの年配になれば、事実上、暫定基準値を少しくらい超えていても神経質になる必要はない。放射線の影響は、細胞分裂が盛んな子ども、胎児にとくに大きい。反対に老齢者は細胞分裂が活発でなくなるし、余命が短いので影響が出る頃には天寿を全うしていることになる。
Ⅳ、原発の危険性の特徴を知る。
① 核兵器とは使用する核燃料、ウラン235などの量が桁違いに多い。したがって死の灰の量も桁違いに多い。広島原爆では装荷量60kg、うち実際に核分裂したのは1kgといわれる。電気出力100万kW/hの原発ではウラン235換算の装荷量数トン、一日あたりの消費量3kg、年間消費量約一トンといわれる。
② 核分裂生成物などは炉心に装荷されその場所に保持され集積していく。瞬時に飛散する核兵器の場合と、原発では死の灰の性質に違いが出てきて、原発の死の灰の方が減衰しにくくたちが悪くなる。また、プルトニウム生産炉よりも原発の使用済み核燃料の方が、再処理が難しい。
③ 核分裂を停止させても崩壊熱の発生が続き、今回のように電源喪失などで冷却できなくなると炉心溶融、放射性物質の放出、水素爆発を引き起こす不安定性。核燃料サイクル政策の再処理の危険性。高レベル放射性廃棄物の処理方法がない。
推奨文献
大島堅一『原発のコスト』岩波新書
児玉龍彦『内部被曝の真実』幻冬舎新書
野口邦和『放射能のはなし』新日本出版社
肥田舜太郎、鎌仲ひとみ『内部被爆の脅威』ちくま新書
以上