福島の医療過疎状態をなんとか食い止めたい
震災前より、福島県・浜通り地方の医療過疎については問題視されていましたが
震災が起きたことで、さらにその問題が深刻になっているということは
放射線の問題よりも大変という意見もあります。
今、放射線の影響はどうなのか、このさき5年、10年どうなのか・・という
目に見えない問題にばかりスポットが当たっているような気がしますが、
目の前の、「今の地域医療をどうするか」という点も、
もっと患者側として考えていったほうがいいのではないでしょうか。
震災前、医師不足で存続の危機にあった小高病院の事例をひきます。
震災前の事例ですが、崩壊寸前・小高病院が復活した理由
平成20年7月の南相馬市立病院改革プラン策定委員会。
小高病院の遠藤院長が、兵庫県の柏原病院小児科の事例
(母親たちが不急の救急受診を抑制するため、
受診フローチャートを作ったり、
医師への感謝の気持ちを伝えるなど
患者側としてできることを繰り広げ、小児科医の退職を防いだ)
などを引きながら、
「今、世間の状況が変わってきている。国の方向性も変わってきたし、
住民がなんとかしなくてはという人が出てきている。
せっかく良くなってきている機運ができている。
多分、地域の力がためされている。
19床の入院病床と老健それでも私は小高病院の役割としてやれると思う。
ただ2人の医師ではどうか。最低限2人でやれるが。もう一人のパートナーがいるかだ。
どこからか地域医療が大切だと医師が現れるのではないかと思っている。
そのためには、まちにそういう雰囲気があることだ。
住民が立ち上がることを期待したい。」と言っておられますね。
この後、住民の方が中心に自主的に、病院を守るための運動を起こし、
医師は4人となり存続となったそうです。
遠藤院長は月12回当直ですが、
院長としてはできるだけのことをやっていきたいという決意ができたそうです。
それがこの震災で警戒区域で閉鎖に・・・です。
今は、一時的に診療所を立ち上げたようですが、小高病院が再開されれば、戻るとのことです。
私、柏原病院のことは知っており、
長野県にいたときに、長野版・子供の病気受診フローチャートを事務局の方に送っていただきました。
茅野市の子育て支援ブック作成に当たってのモニターだったので、
これを入れるといいのでは。。。と
市に提案したことありますが(その後引っ越したのでどうなったかわかんないです)
小高でもこんな成功例があったということは、最近知ったところです。
きっと地元では大きく取り上げられたのでしょうか。
返す返すも、それが警戒区域で閉鎖となってしまったとは、残念な限りです。
医師不足は、医師だけが頑張ってもダメなのに、
私ら患者は、どこか医師任せにしているところがあると思います。
もっと医師と患者の思いのすれ違いが埋まればいいと常に感じています。
医療者のことを思いやる住民がたくさんいるところで
医療者は診療したいと思っているにきまっているからです。
遠藤先生が言っています「まちにそういう雰囲気があること」。
医療者の活動を、住民ひとりひとりが大切に思っているか。
住民の行動に、遠藤先生はぐっときたんではないでしょうか。
「ここでやっていきたい」と。
医師が減っているのは、これは浜通りに限りません。福島県すべてに言えることですよね。
産婦死亡で刑事事件になってしまった大野病院問題の起きた福島、
さらに原発事故の起きた福島ですから。
財政破綻の夕張の医療が復活した理由
財政破たんした夕張市では「在宅」「予防」中心医療へと
頑張っている医療者がいます。
(2012.1.21読売)
村上智彦氏(夕張医療センター長、50歳)は高齢医療をモデル化。
(高齢化率44%で、夕張で成功すれば全国の高齢医療先進地たりえるという発想)
171床の市立総合病院を19床の医療センターに縮小し、
老人保健施設、在宅医療を中心に方向転換しました。
救急医療は切り離し、隣町の栗山赤十字病院へ機能分担。
救急車所要時間は67分と以前の倍だが、
予防医療に力を入れたことで、救急車件数自体は4割減。
とにもかくにも「救急医療だけは守ろう」という動きはどこでもあると思います。
公立病院は、不採算部門の救急をやる意義があるということも聞いたことはあります。
しかし、財政破綻している以上、そんなこともいっておれず、
ならばどうやったら、救急車要請件数が減るかと考えて
予防医療充実の命題を掲げた村上医師ですが、
効果は表れているようです。
「1つの病院でなにもかも」ではなくて、各病院ごとに得意な分野を集約化し、
移動手段を確保するという選択もこれから必要なのだと思います。
救急医療を切り離した分、センターからは、
その後方支援の赤十字病院に当直医を派遣し、支援しています。
「助成金の出る救急指定病院の方が職員も医療機器も備わっており我々も安心できる」とのこと。
なるほどです。
高齢化社会は、
「高度医療とかかりつけ医療の住み分けがカギ」だと村山医師は主張しており、私も全く同感です。
軽症の患者が救急医療、時間外診療におしかけて、
本当に救急医療が必要な患者が後回しになります。
全国各地で、医師は疲弊が見られるでしょう。
「医師が大切にされず、報われない環境では辞めていく」、その通りかと思います。
「いつでも安く高品質の医療を求める非常識を改めなくてはならない」、
これは住民の努力にかかっているということです。
村山医師のてがけた予防医療の一例を書いておきます。
禁煙、食事、運動の指導、ピロリ菌除去、口腔ケア、理学療法士によるリハビリ。
センターに通う高齢者のほぼ全員が肺炎球菌ワクチン、定期健診を受けている。
その結果、
肺炎や脳卒中、心臓病などの重症者減少。
5年間で新たな透析患者は2、3人。
胃ろうはたった1人。
「高度な医療が必ずしも幸せでないことを理解してもらい、普段の健康指導に力を入れている」
福島のため頑張る医療者を支えるのは福島県民しかいない
1)お医者さんの指示に従い、
健康(食事習慣、生活習慣、ストレス減等)に気をつけること
2)軽症なのに安易に救急や夜間診療を利用しないこと
3)お医者さんに感謝の気持ちを伝えること
小高の事例と夕張の事例を書きましたが、
これからやってくる超高齢化社会に非常に有用な事例だと思います。
大事なことは、医師が頑張るだけではダメで、住民が呼応しなくてはならないこと。
医師が予防を訴えるだけでは空回りで、
住民は、しっかりとそれに応えて健康に気をつけること。
そして、感謝の気持ちをお医者さんに伝えること。
夜間や救急車は、本当に大変な時だけ利用すること。
それから、医師と患者は、なんとなく医師は、専門的知識があって、
いろいろ言いづらい雰囲気もありますが、
本当はどっちかが上でも下でもなく「健康」「快癒」に向かって、
お互いが歩み寄り努力するパートナーだというのが理想です。
私の読んだ医療小説で、きまじめな医師が、
なんとか治ってほしいと患者に一生懸命いろいろと指示をしているのに、
まったく食生活などを改めないのでその患者に憎しみを持つ・・というくだりがありました。
耳の痛い話ですが、確かにそれはあるかもしれません。
医療者も人間ですから、嫌いな患者というのは必ずいると思います。嫌われたら、
自身の健康回復への道が遠のきます。
また、クレーマーも同様でしょう。
わからないことを聞くのは患者の権利ですが、
あれこれあれこれ難癖をつける患者もいることでしょう。
医師は、自分だけの医師ではない。
自分は多くの患者のうちの1人だということを知らない人。
震災後、あちこちに散見する「自分さえよければ」、タイプの人に多く見られるのかもしれません。
これから、県民健康調査など、福島県は、医療者の確保・質ともに大切になってきます。
そして、原発事故によって福島県から出て行かれた医療者も多いと思います。
そういう方々が、「また福島で医療をやりたい」を戻ってこられるように、
県民の皆様は、「医療者を守ろう」という意識を高めていってほしいです。
なるべく医療機関にかからなくてもいいようにしようとか、
(病院にかかる人が減れば、医師1人当たり診る患者も減って、医師に余裕が生まれます)
万が一病気になって、医療機関にかかることになっても、
医師任せではなく自分でも病気を学んだり、生活を見直したり、
また、医師への感謝の気持ちを伝えるようにすることで、
互いに信頼関係が生まれ、病気も早く治るというもんではないでしょうか。
いい雰囲気の県に。
お医者さん思いの人のいる県に。
出ていったお医者さんが、福島に戻ってきますように。
そして・・・原発事故があっても、変わらずここで県民の心と体を守り続けてくださる医療者が、
加えて、原発事故を契機に福島に入ってくださった医療者が、
心豊かに、ゆとりを持って働きつづけられますように。