鉄と政 再審請求編第三話 嘱託鑑定(一)
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高知城下での居酒屋で三人の会話はまだ続いていた。日曜の夜という事で店はいつもよりは少ない客だった。
鉄「旦那 例の新証拠、科捜研の撮影した写真のことなんですが、ちょっとよろしいですか」
いつの間にか酒が麦酒から日本酒に替わっている。鉄はそういうと銚子を手にして、旦那の盃に注いだ。土佐の高知では手酌をすることは滅多にない。それは失礼なことという雰囲気がある。さほど酒の強くない旦那にとっては自分のペースで飲めないことになるが、旦那はまだそれほど酔ってはなかった。
旦那「 新証拠については、未公開写真を掲載しなければ大丈夫って話もあるんだけどね、気になるところでもあるのかい」
鉄「いえ、新証拠の写真そのものよりもちょっと違った話になるんで、差し障りはないと思いますが・・・
11月28日に開示された科捜研の約20枚の白バイ写真の撮影日は07年2月。それまで白バイの損傷状況を記録する目的で撮影した写真はなかった。土佐署は事故の翌日片岡晴彦の運転していたバスと白バイの両方を署内の駐車場にて撮影していたが、それらは片岡に衝突箇所を指示説明させる様子を撮影したものしかなかった。スクールバスの損傷部分は数枚ほどであるが、クローズアップで事故当日に撮影されていた。
鉄「・・・土佐署はバスの壊れた部分を撮影して、白バイの壊れた部分や傷を撮影していないってのはおかしいでしょう。写真は全部出したっていっていますが、バスの方は撮って、白バイのそれは撮らないってのは合点がいきません」
旦「ふむ、土佐署は撮影していなかったのではなくて、撮影はしたがその写真をまだ隠しているってことかい」
鉄「はい。そう考えるのが普通とおもいませんか」
旦「普通だろうね。この事件の捜査は端からまともじゃないからね。」
鉄は盃を空けて旦那に差し出した。旦那が受け取り政がそれに酒を注ぐ。鉄は手を少し動かして政に礼を伝えた。
鉄「警察がブレーキ痕を描いた時点では、叔父貴が証拠捏造だなんてことを言い出すとは思っていません。どう出てくるかも当然わかっていなかった。叔父貴の出方がわからないときには、一応、交通事故捜査要領に則った捜査をするはずなんですよ。しかし・・」
旦「しかし、白バイの写真がない・・か。 まぁ 県警は事故直後に証拠捏造をして・・白バイの傷を撮影したとしたら、捏造証拠と矛盾するものが写るってわけか」
旦那は言い終わるとくいっと盃を空けて、鉄に返盃した。
鉄「ええ 撮影していたとしてもいまだに出してこない。つまり、かなりなものが今回の写真には写っているはずなんですよ。」
それまで黙って二人の話を聞いていた政が口をはさんだ。
政「あっしも兄貴の「読み」は正しいと思いますよ。片岡の叔父貴から聞いた話なんですがね。事故の翌日。土佐署の駐車場でバスの運転席に座らされて何枚も写真を撮られたと言っているのですが。その写真もまだ出てきていません。ですから隠された写真はあると言っていいんじゃねぇですかい。」
旦「・・・・その話は分かったが 二人は私に何が聞きたいんだい。」
旦那は少し笑いながら 鉄と政を見やって自前の盃を空けた。
旦「あまり詳しくは話せないよ」
鉄「わかってます。ただ、いくつか質問に答えてくれるだけで十分です。」
そういう鉄に、今度は旦那が盃を差し出した。鉄は軽く頭を下げて受け取る。
鉄はをすぐに酒を飲み干して盃を返した話を続けた
鉄「旦那 路面擦過痕の数は確か全部で8箇所ですよね。そして それらの痕跡が白バイのどの部分の傷と一致するのか、すべてはわかってませんよね」
旦「検察も全てはは知らないだろうね・・・。そう言えばそこに言及した文書はないな」
鉄「では数の方はどうなんです。擦過痕と白バイの傷の数は一致していないのじゃないですか」
旦「合ってないよ。」
鉄「でしょうね。 それも一つや二つじゃない数だと思うんですが・・・いくつなんですか?」
旦「正確な数はわからないが、私が知っているだけで四、五箇所ってところだ。鉄 これ以上は勘弁してくれないかい。」
鉄「では 最後にもう一つだけ よろしいですか」
旦那は黙ったままだったが、鉄から目をそらさなかった。
鉄「大藪鑑定人は、擦過痕をなんと説明しているんです」
旦「今度は大藪鑑定かい? 擦過痕は白バイの付けた擦過痕と鑑定しているよ。ただし、あの擦過痕は路面が削れていない擦過痕だと、そう鑑定書で説明してるんだ。」
政「はぁ?あれだけ白く削れているのに削れてないってこと何で?」
鉄はそれに構わず話を続けた
鉄「それはスクレープ痕って言うんじゃないですか?」
旦「ほう、鉄は何でそれを知っているんだ」
旦那は少し驚いて答えた。鉄はその旦那にスクレープ痕なるものの説明を始めた。政はにやにやしながら二人の話をきいていた。
続く
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