遊覧飛行【5】 ケータイ投稿記事

忙しく廻る日常に、あなたは流れて来ない。


仕事に没頭していれば、他のことはとりあえず忘れていられた。
四六時中想っているなんて器用なこと、私には到底無理だ。


向いている向いていない、好き嫌いは別として、
仕事に追われる日々は、そんなに苦ではなかった。


しかし、
いつからか、頭痛薬が手放せなくなっていた。


定時になり、張り詰めた糸が解ける。
食事でもどうかという同僚の誘いを断って、足早に会社を後にした。



疲れきった帰り道。
揺れるバスの中で、少し眠った。

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遊覧飛行【4】 ケータイ投稿記事

夜と朝の境目。
少し早い朝に、あなたの出て行く気配を感じた。
寝たふりを決め込んで、少しの期待を募らせてみる。


きっと振り向きもしないで出て行ったあなたが響かせたドアの閉まる音。
わかっていた。
でもそれでよかった。


誰もいない虚空に、まだ僅か残るあなたの温もりを感じた。
目を閉じ、指でなぞって輪郭を描く。
開いた視界に望んだ姿が在るわけもなく、独りきりになったの部屋を見つめるだけだった。


返らない応えを期待するのはもうやめよう。

あなたにとって『都合のいい女』
演じるのはもう止そう。


何度も思って、思うだけで流される。


昨日、あなたが一度でも、
もし一度でも愛を囁いてくれたなら、
今日をこんなに悩む必要はなかったかもしれない。
軽々しく愛を口走れる人なんだって見切ることができたかもしれないのに。

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遊覧飛行【3】 ケータイ投稿記事

イメージ 1

一枚ずつ脱ぎ捨てていくのは、服じゃなくて、心。


物分かりのいい大人の顔をしてみても、
本当は誰より愛されたい、
わたしだけを想って欲しい、
抱きしめて欲しい。


割り切れない気持ちを脱ぎ捨ててしまえば、
残るのは打算と、僅か繋ぐ見えない明日。


言葉は嘘を吐く。
躰は正直。
今はこの体温だけがリアルなの。
髪の毛の先まで満たされていると感じる。



無防備な背中に爪をたて、わたしと共有した時間を刻み込んでおくわ。
いまのあなたはわたしだけのもの。

さぁ誰に見せつける?
そうしてわたしの存在を知ればいい。



体温が離れる瞬間の喪失感。
私の中に、また虚空が広がる。

淋しい。





浅く上下を繰り返す胸に、やがて聞こえる寝息。


永遠に交じり合うことのない想いだけを抱えて眠る。

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遊覧飛行【2】 ケータイ投稿記事

とりわけ悪びれる様子もなく現れたあなたに、
来てくれただけマシだと微笑みを返してしまう。

浴びせたい言葉はいくつもあったが、
そのどれもがあなたの眼差しには敵わない。
視界いっぱいに収める。


内容を伴わない話でも、あなたとならいい。
このまま何時間でもこうしていたい。

けれど、せっかちな人がそれを許すはずもない。


途切れた会話に見た、
頬杖をつき一点を見つめる視線や、指先が刻む不規則なリズム、

薄く開いたあなたの唇が欲しがる時間を、

黙認してはグラスのカフェオレと一緒に飲み下す。
いつも同じ。


早合点で席を立つあなたに、いくつかの想いが萎れていく。



汗をかいたグラスの中で、最後の氷が崩れて溶けた。

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遊覧飛行【1】 ケータイ投稿記事

いつもどおり、
遅れて来るはずのあなたと、定刻過ぎの待ち合わせ。
いつもの喫茶店、いつもの窓際の席。


気にしていないつもりの時計ばかりが目に映る店内には、
さして興味もない流行り歌が流れていた。


だれもが無関心に過ぎ行く交差点を眺めては、
自分の想いと重ねる。

きっとあなたもわたしを通り過ぎて行くのだろう。


ため息を重ねる毎に傾く陽。
待ち詫び人の影を長くしてゆく。

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