A Day In Musashino

 秋も今が一番いい時期のような気がします。
 ここは国立の杜深い一橋大学構内にある兼松講堂。観ることができました、その名も「渋さ知らズオーケストラ」。昨年の東京JAZZ、私は某局BShiで、この集団の映像を初めて観ました。なんだこれ?雑然とした音楽の中、アングラのような半裸の男女、ふんどし姿の男、ジャズ?ロック?演劇?天井桟敷?何だろう、なんだかよくわからん。でも気になる、謎めいたパフォーマンス集団といった印象。
 今回、ステージを観て全て氷解しました。寺山修司がいたら「これだ!」と思ったかもしれません。彼らのパフォーマンス、それは、おそらく舞台上表現しうる全てのもの。また、同じ空間にいないと決して共感できないもの。おそらく今まで、誰もが考えなかったこと!もしくはできなかったもの。理性が追走できない疾走するリズムの上に多面体のパフォーム!聴衆も一体となった、混沌の中からの彼岸への誘いなのかもしれません。そうです!この雑駁さは、対比的な価値観から多面的なそれへと成熟している現代社会の比喩です。
 彼らのパフォーマンスによって、会場にいた10代からおそらく70代までの熱狂した聴衆は、多少の戸惑いはあるにせよ彼岸を観たはずです。それは、まさしく混沌の中に射す一条の光、多様な価値観を持つ聴衆が多面的な劇場空間というフィルターをとおして得た、日本古来の祭りの浄化作用にも似た、原初的な意味で「人々と同じ価値を共有する!」老若男女たちの回帰する絆だったような気がします。
 一抹の心配事、「渋さ知らズ」が問題を投げかけた以上、彼らは永遠の疾走を余儀なくされるということです。これは全ての芸術家が直面する問題でもあるのですが…….

閉じる コメント(5)

閉じる トラックバック(0)

Der Tod in Venedig

 暑い夏が、10月上旬にしてようやく過ぎ去りようとしています。たとえ記録的な猛暑だったにせよ、過ぎ行く夏に一種の感傷と諦観を感じます。30年以上も前、高校一年生だった頃、夏がとても身近であったにも関わらず、夏という季節の偉大さにおぼろげながら畏怖の念を覚えてました。
 夏の午後、実家の風通しのいい座敷で大の字になりながら本を貪り読みました。ドイツ文学、中でもトーマスマンが好きでした。「ヴェニスに死す」「トニオクレーゲル」「ブッデンブローグ家の人々」「魔の山」等に夢中になりました。とても難解で所謂ドイツ観念論的な抽象的な比喩やら饒舌な議論に頭悩ませながらも、観念の世界の無限の広がりに感動していました。中でも「ヴェニスに死す」は短編で解り易い方でした。老境にさしかかった高名な作家グスタフアッシェンバッハが、ヴェニスへの旅を突然思いつき、ヴェニスでタッジオという美少年に出会い心奪われる。初恋に陥った少年のごとくヴェニス中を追いかけ回した挙句、ヴェニス特有の季節風シロッコが運んだコレラに罹患し、朦朧とした意識の中、少年を思い浮かべながら死んでゆく......と言うストーリー。聖と俗・芸術と大衆・美と醜・活気と退廃・生と死等の対比が美しく鮮やかに描かれていました。
 同じ頃、ルキノヴィスコンティ監督が映画化した標題作が公開されました。タッジオ役の美少年ぶりにため息をつきながらも、人生の儚さ、切なさ、希望、絶望、永遠、別れをいやと言うほど思い知らされ揺さぶられました。ヴィスコンティは原作では作家であるアッシェンバッハを音楽家として描いており、後で知ったのですが、このモデルがグスタフマーラーだったのです。このとき全編に流れているのが、マーラー5番の第4楽章弦楽とハープによる「アダージェット」です。これが映像とあいまって美しいことと言ったらありません。ハープのアルペジオの中をすり抜けるかのような弦楽、中間部の最高音部に達するクライマックス、一瞬の静寂直後の弦のグリッサンドによる急下降.......これには参りました。10年後、エリアフインバル指揮フランクフルト放響による生演奏を聴いた時の感動が今も蘇ります。
 トーマスマン、ルキノヴィスコンティ、グスタフマーラー3人の天才が文学、映像、音楽というそれぞれ違う芸術分野で同じことを表現していることが実感できたのも、この大いなる夏のお陰だったと思っています。ごく普通の日常生活の裂け目から覗える非日常の世界を彼らは人間の本質の一部として表現しているのだと確信しました。マーラーは「Das Lied Von Der Erde」の最終楽章「告別」で永遠の別れを表現しています。管弦楽が先細る中、ギターとマンドリンの清澄な響きが通り過ぎ無常観を醸成し、囁くようにアルトが詠う,,,,,, Ewig.... ewig...  ewig...   ewig..

閉じる コメント(0)

閉じる トラックバック(0)

中秋の名月

 今夜の月は中秋の名月。やっと秋の気配が...。秋といえば、そう”枯葉”ですね。音楽ファンなら一度は耳にしたことがあるヨゼフコズマの名曲。Jazzファンなら枯葉と言えば”Somethin' Else”ブルーノート畢生の名盤です。真っ黒のジャケットに白抜きのタイトル文字、裏を見れば中央に談笑するマイルスとキャノンボールの小さな写真、レナードフェザーのライナーノート、聴いても、眺めても、読んでも、本当にどれをとってもいいですねえ。ピアノとベースのあのGmの印象的なイントロ。マイルスのリリカルなミュートによるテーマの後、キャノンボールの淀みない息をつかせぬよく歌うソロ、抑制されたマイルスのソロ...続くハンクジョーンズの珠玉のピアノ...もう胸キュンですね。後テーマの後、またあの感情を引きずるような重たいベースとピアノが再び....静寂の闇の中消えてゆく。一編のドラマをみるような....
 50年代半ば、フランス映画”死刑台のエレベーター”の録音のためにパリに渡ったマイルスは圧倒的なパリ社交界の歓待を受けます。ジュリエットグレコと恋に落ちる話は、特に有名ですが、そういう中で”枯葉”の存在を知ったのでしょうか。マイルスがいなければ、この曲がこれ程人々に愛されたかどうかはわからないと思います。多くのJazzmenにとっても然りですね。マイルスとジュリエットの恋は、それぞれの仕事の都合で、引き裂かれ叶わぬものとなります。切ない切ないですねェ。この曲と彼らの出会いから別れまでが重なって聴こえてきます。

閉じる コメント(1)

閉じる トラックバック(0)

The Man I Love

 1954年12月24日は、プレスティッジ時代のマイルスにとって、その後多くの人に語り継がれたいわくつきの日です。標題は「私の彼氏」ガーシュインの名曲ですが、この日のセッションにおけるこの曲ほど有名なものはないと思います。メンバーはマイルス、ミルトジャクソン(Vib)、パーシーヒース(Bs)、ケニークラーク(Ds)、そしてピアノがあのセロニアスモンクです。セッションに際し、マイルスが「オレのソロの時は、モンクよあんたはピアノのバッキングを入れるな!」と言った。殺気立った雰囲気の中で、タイトル曲になった。マイルスが緩やかに優しくテーマを吹く、引き続きミルトジャクソンから倍テンとなりスリリングな展開となる、そしてモンクのソロ、テーマをデフォルメしたメロディ、しかし途中でピアノの音が止まる。パーシーヒースのベースとケニークラークのドラムのみ...................  
 闇の中に突然の光明「パララッ、パララッ、パララーッ」とマイルス。その後はっと我に返ったようなモンクの、これまた素晴らしいソロ。続くマイルスもソロ途中でミュートに変えるなどテンションの高いプレイ.........カッコイイんです。「クリスマス喧嘩セッション」と名づけられたこのセッションは、プレスティッジ”Miles Davis & The Modern Jszz Giants”に収められています。セッション中のハプニングは様々あると思いますが、これほど美しくもスリリングなものは無いかと....Jazzの素晴らしさ余すところなく伝えています。
 

閉じる コメント(3)

閉じる トラックバック(0)

マイルスとサンタナそれから〜

 ”Bitches Brew”とサンタナの”Abraxas”はジャケットデザインは同じデザイナーだと以前お話しましたね。カルロスサンタナはマイルスに音楽的に大きな影響を受けていると語っています。昨年発売されたDVD”ワイト島ロックフェスティバルのマイルス”(ジミヘン、ドアース、ジョニミッチェル等が参加'70に開催)ではマイルスの音楽をチックやハービーハンコック等とともにカルロスがギター片手に熱く語っています。'71には既にサンタナがあの”In A Silent Way”を閉鎖直前のフィルモアイーストで演奏しているのです。
 その後カルロスはマイルスグループに在籍していたジョンマクラフリンとともにインド哲学に傾倒していきます。カルロスはサンタナ”Caravanserai”の録音と同時期にマクラフリンと”Love Devotion Surrender”(邦題:魂の兄弟達)を録音。このアルバムでは、あの、あのコルトレーンの”A Love Supreme ”を演奏しています。甘い音とトレモロを駆使したカルロス、超絶技巧の速弾きマクラフリンの掛け合いが聴きものですが、私はあの最後の読経のような「あら〜ぶすぷり〜む」の繰り返しもトレーンと同じかと苦笑したものです。まあ、そんな関係で、その後もカルロスはスリチンモイ師(ヒンドゥー教の伝道師)繋がりでトレーンの妻のアリス、デイブホランド、ジャックデジョネットと”Illuminations”(邦題:啓示 これはもうジャケットがスピリチュアル、スピリチュアルしてます)をレコーディングしますが、これは多少無理があるのではと当時感じました。カルロス=マクラフリンの”A Love Supreme” ”Naima”等コルトレーンと真剣に聴き比べていた当時が懐かしいです!今でもサンタナは”Caravanserai”までが好きです。後は殆ど聴きませんねェ.....

閉じる コメント(0)

閉じる トラックバック(0)

[ すべて表示 ]


.

mac**yty*er
人気度

ヘルプ

Yahoo Image

1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
検索 検索

開設日: 2007/8/29(水)


プライバシーポリシー -  利用規約 -  ガイドライン -  順守事項 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2012 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.