愚者の住処

ここは矢本が書いた絵や読みものを放置しておく場所です。かなりの不定期。

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Fate×エレメンタルジェレイドSS 予告編

それはすべてを救おうとした正義の味方の物語である

「おおーし、今回も何とか最後まで成功したな」
「ラグドール、みんな、無事に帰ってきたか」
「シロウ。迎えに来てくれたのか」
「ああ。戦利品や道具をおいてきたらすぐに手を洗って、いつもの場所に来てくれ。
 暖かい食事が冷めてしまう」
「おっしゃぁ、すぐにしまってこなくちゃな!」
「シロウの作る飯はうめぇからな! これがあるからいつも生きて帰ってきたくなるぜ!」

全身に怪我をして倒れているところを空賊、紅山猫<レッドリンクス>のお頭に拾われたシロウ。
空賊といってもあくどい方法で私服を肥やす金持ちしか狙わなく、ときには貧民街の人々を助けたりする義賊のようなもので気が良いものたちであった。
それなので、シロウは怪我がいえてから五年の間、魔術の鍛錬をしながら飛行艇のコックを務めていた。

「あれ、まったく。誰だ。宝物庫を開けっ放しにする者は」

トイレに席を立った帰り、シロウは宝物庫の扉が少し開いているのを発見する。
根はいいだが大雑把な者たちである。
これではせっかく手に入れた宝も乱暴におかれているかもしれない。
仕方ないので中を少し片付けようとするが・・・

「なんだ、この箱は」

他の戦利品とは明らかに雰囲気の違うまるで棺おけのような箱。
ちょうど人ひとり入るくらいの。
気になって<解析>を使ってみると

「な―、女の子!?」

あわてて箱を開けてみると人形のような女の子。
息しているか確認するとわずかにだがちゃんと呼吸していることが分かる。
しかしどうにも意識を取り戻さない。
失礼だとは思ったが再び女の子を<解析>してみると彼女を包むように巻かれている布が彼女の生命力の流れを邪魔していることが分かる。
早速はずしてみるシロウ。
するとしばらくしてから彼女はゆっくりとそのまぶたを開いた。

「良かった、意識を取り戻したか。」
「・・・それ、あなたがはずしてくれたの?」
「ん、ああ。もしかしてまずかったか?」
「そう、・・・ありがとう」

身体を起こすとすぐにエディルガーデンという場所に向かおうとする少女。
一人で旅に出ようとする少女にシロウはついていこうとするが

「人にはそれぞれやるべきことがあるでしょう?」

「!! なにがあった・・・!?」

すぐに少女を連れてラグドールのところに向かうと飛行艇が何者かに攻撃されていることを知る。

「て、シロウ! 何この非常時に女なんか連れ込んでやがる!」
「い、いや、これにはわけがあって・・・てそれどころじゃないって!!」

見ると先ほどまでこちらを攻撃していた小型戦闘艇がこちらの天翔艇に突っ込もうとしていたところであった。
すぐに投影しようとするが間に合わない

「っ」

とんだ来る瓦礫から身を挺して少女を守るシロウ。
そんなシロウを少女は無表情ながら目を開いて、驚いたように見つめる。

「夜分遅くに失礼しますね❤ エディルレイド完全保護団体<アークエイル>です!!」

「エディルレイド・・・?」

小型戦闘艇から降りてきたのは三人の男女。
代表格の女性から少女を渡す代わりの5000万Gを渡すと持ちかけられるが

「ふざけるな!人を物のようにいうんじゃない!!」

「―そうですか、残念です」

取引を断られた女性は武力行使に出ようとするが

「―そうはいかない」

瞬間脚力を<強化>して一瞬で背後に回ったシロウによって取り押さえられていた。

「ローウェン! せめてエディルレイドだけでも保護するのです!」
「そ、そんな!」
「いいから!先輩命令です!」
「っ!キーア」

決意したように唇を引き締め、ローウェンと呼ばれた男性は隣の褐色の女性の名を呼ぶ。
するとキーアという女性は人の姿から別のものの姿に変わっていく・・・

「人が・・・剣になった・・・!?」

驚き、力が緩んだ隙をついて拘束から抜け出す女性。

「形勢逆転ですね❤」

「思い出したぜ、エディルレイドってやつ」
「ラグドール、エディルレイドってなんなんだ!」
「エディルレイドってのはな、平たく言えば人の形をした武器だ!
 自分の身体を変化させて人間と一つになっちまうんだとよ!」
「そう、そして人間と一つになったエディルレイドは、最強の武器になるんですよ」

キーアというエディルレイドの力はすさまじく、干将・莫耶を投影するもまだまだ彼の域まで行かないシロウは互角が限度であった。

「・・・ラグドール、その娘を脱出艇まで連れていってくれ!」
「な、シロウ!」
「そうはさせませんよ」

少女を捕まえようとして女性が少女に迫る。

「そうはさせるか!」

そうはさせまいとシロウは女性の邪魔をする。
結果的に二対一となってしまい、シロウは次第に追い込まれていく。

「もういいわ。私をあの人たちに引き渡して。」
「わたしは・・・エディルレイだもの。人間にとって私たちの力は武器になるわ。」
「そんな危ない力を持った私がうろうろしたら、いつか誰かを傷つけてしまうわ。」
「恐ろしい力でしょう? 私も同じなのよ」

「そんなのかんけいあるか!」

「エディルレイドだろうがなんだろうか関係あるか! 君はただの女の子だろう!」
「君はエディルガーデンにどうしても行きたいのだろう!」
「人にはやるべきことがあるって言ったな!なら―!」


それは大切な人から受け継いだ理想―

「正義に味方として、君を守るのが俺の役目だ!」

正義の味方が、小さな女の子の夢一つ守れないでどうする!

「最後に名前だけ教えてもらって言いか?」
「・・・レヴェリー・・・=メザーランス・・・レン」
「レン・・・か。うん、この響きは君にとても似合っている」

「・・・ねえ!あなたの名前は!」
「・・・エミヤ・シロウ。呼びにくかったらシロウでかまわん」

「シロウ!」
「あなたは言ったわ。私を守ってくれるって」
「シロウ、私と一緒に来てくれる?」
「私を守ってくれるように、私にもあなたを守らせてくれる?」

「いいよ、俺でよければ」

シロウとレンを中心に突風が吹き荒れる。

「あれが七煌宝樹の一つであるメザーランス一族最終血統、レヴェリー=メザーランスの戦闘形態!!!」

シロウとレンはその圧倒的な力で女性たちを圧倒するが、女性が放ったミサイルを知らないレンがそれを切ってしまい、その爆発で船は致命的なダメージを追ってしまう。

「おかしら!!!高度がどんどん落ちてるぜ!」
「ラグドール、・・・すまない!」
「気にするんじゃねえよ。お前には料理や戦利品の鑑定やらで世話になってたんだ。
 それよりもこの脱出艇に乗れ!」
「・・・ラグドールたちは!?」
「小型艇がある!行け!」

「何とかみんな無事に脱出できたようだな」
「シロウ!後ろ見ろ!」

「っなかなかしぶといじゃないか」
「士郎はこれを動かせるの?」
「・・・なんとかな」

「威嚇って言ったのに!!?」
「ちがっ・・・だって自分から的に・・・」
「あんのバカ飛空挺の運転だけは苦手なんだよな〜」

「どうするんですか!七煌宝樹まで殺しちゃうなんて!・・・わわわッ」

撃墜されてたと思われたが、シロウとレンはシロウが投影した天の鎖で女性たちの飛空挺にぶら下がって無事だった。
しかしぶら下がるときに飛空挺のプロペラを壊してしまい、シロウ達は結局落ちてしまう。

「なんとか木に引っかかってたすかったな・・・だいじょうぶかレン?」
「・・・レン?寝てるのか」
「力の使いすぎで充電中なんですよ」

「・・・まだやる気か?俺はかまわないが・・・」
「そんなに警戒しないでください。ご覧の通り私たちの船も壊れてしまったし。これではもう彼女を連れて行くことはできませんよ」

「私たちアークエイルもお供します」

そんなことで女性の名前がシスカということが分かり

「お金がないってどうゆうことですかー!!!本部を出るときにたくさんいただいたじゃないですか!!!」
「だって全部燃えちゃったもん」

悲劇もあったりしたが

「ねーねーシスカ。お取り込み中のところ悪いけどさぁ。あの男たち、いっちゃったわよー」
「ああっ!?ま・・まってくださーい」
「はぁ、やれやれ。本当についてくるつもりなのか」

正義の味方とエディルレイドの少女の旅は始まったのだった。













はい、四月バカです。といってももう一日が終わるというのにアップするのでまったく意味がありません。
矢本は四月ばかではなく、ただのバカだということでしょう

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駄文

注)この小説は矢本の自己満足だけでできています。


 

 僕には悩みがある
 
 だけどどんな悩みなのか、自分でも分からない
 
 いや、むしろ分からないことが悩みなのかもしれない。

 だけど確かなのは、近頃この悩みが大きくなってきたということだ。

 確実に重みを増してきているのだ。
 
 このまま大きくなっていったら僕は悩みにつぶされてしまうんじゃないだろうか。
 
 僕は不安になって、友人に相談してみた。
 
 今年で20年の付き合いになる友人は僕の悩みを真摯に聞いてくれた。

 本当にいい友人を持ったと思う。

 しばらく白目で考えた上で、彼はこういった。

 どこかに捨ててくればいいんじゃないか?

 僕は思わず耳を疑ってしまった。

 何を言い出すんだい君は。

 しかし友人はなんでもないように。

 別にいいじゃないか。君は知らないのかもしれないけど、みんなも実はやっていることさ。
 リサイクルはおろか回収もしてないんだ。じゃあ、どこかに捨ててくるしかないだろ?

 そうか、みんなもやっていることならば仕方ない。

 僕は思わず納得してしまった。

 協調性を重んじるこの社会でみんながやっていることならば、自分もそれに倣うべきだろう。

 いま、この背負っている悩みが少し軽くなった。

 しかし、そのとたん友人の顔色が変わった。

 なんてことをしてくれたんだ!

 彼は本気で怒っているようだ。

 眼球をむき出しにして、鋭い犬歯は今にも僕を噛み千切りそうなほどとがっていた。

 僕を突然の友の豹変に怖気つきながらも友人を刺激しないように、背中をなでるようにして何が悪かったのか慎重に尋ねた。

 何が悪かったのかって?君は自分が何をしたのか気づいていないのか!?なんてやつだ。人間の心を持っているとは思えない。まるでごみくず以下だ!ちり以下だ!僕は確かに悩みを捨ててくればいいとは言ったが、まさか他人の家の中に悩みを捨てるなんて!信じられない!君とはこれっきりだ!さっさと出て行け!二度とその腐った顔を見せるな!

 彼のの剣幕に押され、僕は家を追い出されてしまった。

 外はいつの間にか雨が降っていた。

 青い雨が赤い空から降り注ぐが、あいにく傘を持ってきていなかった。

 全身が青く染まるがそれを気にせず、僕は先ほどの自分の失態を恥じていた。

 僕はなんてことをしてしまったんだ。無意識とはいえ、他人の家に悩みを捨ててしまうなんて。

 後悔してももう遅いとはいえ、貴重な友人を失ったのは辛かった。

 俯き、足元を見ると僕が先ほど落とした悩みともう一つ別の悩みが転がっていた。

 彼が最後に僕に対して投げつけたものだった。

 それを見て僕は思い出した。

 そうだ、まずは悩みを捨ててこなければいけないんだった。

 それがなによりいま優先するべきこと。友人のことはどうでもいい。

 僕は足元の二つの悩みを拾うと歩き出した。

 さて、どこに捨ててくるか。

 

 その場所は簡単に見つかった。

 遠くからでも見つけられる目印があったからだ。

 それは森だった。

 悩みの森とでも呼ぼうか。

 捨てられた悩みが芽を出し、気となり、群れ、巨大な森を成していた。

 ざっと見ただけでもいろいろな悩みが群生していた。

 男女関係、受験、人生、病気、お金。

 中には公務員の悩みをすぐに分かるものまであった。

 なるほど、友人は隠れて捨てているといっていたが、ここは政府黙認の悩み処理場だったようだ。

 ならば僕の悩みを捨てても問題にはなるまい。

 すでに悩みの重さは限界に近くなっている。

 重みのあまり地面にめり込む足を一歩一歩前へと踏み出し、比較的真新しい悩みが捨ててある箇所に向かう。

 僕の前に来た人もなかなかの悩みを持っていたようだ。

 僕の身の丈をゆうに超える悩みを避けて奥に向かう。

 と、そこにはすでに先客がいた。

 月色の髪を地に着くまで伸ばした少女だった。後姿だけで分かるほどそれは完璧な少女だった。

 少女の表情は分からないがじっと悩みの木を眺めているようだった。

 先ほどから重い荷物を背負っているためいまの僕はかなり息が荒いのだが、まったく僕に気がついていない様子だ。

 少女のいる位置まであ戸に散歩というところで少女はやっと僕に気がついた様で振り向いた。

 少女は僕を見ると

 あら、と言った。

 これまた月のような声だった。
 
 少女はさらにあらあらを続けると

 これは立派な悩みですね。

 と言った。

 どうやら見ていたのは僕ではなく悩みのほうだったらしい。

 見事なアウトオブ眼中だった。

 まあ、それも仕方ないだろう。

 月のような彼女にとってはすっぽんのような僕など見る価値もないのかもしれない。

 まさに天と地ほどの差があるのだから。

 少しだけ落ち込んだが僕はさっさと悩みを捨ててこの場を去ることにした。

 悩みを捨てようとしたとき、少女はようやく僕に気がついたようだった。

 あなたは何をしようとしているのですか?
 
 心のそこから不思議そうな声だった。

 僕は正直に悩みを捨てようとしていると答えた。

 まあ、なんてことを!

 少女は口を両手で多い、顔全体で困惑を表した。

 もうすぐその悩みは孵ろうとしていますのに。

 なんだって?

 今度困惑したのは僕のほうだった。

 悩みが孵ろうとしているだって?

 そんな話は生まれてはじめて聞いた。

 そうなんです。そうなんです。

 二回同じ言葉を言うと少女は物分りの悪い僕に説明を始めた。

 そうなんです。悩みと言うのは夢と言う卵なのです。もちろん、産みの苦しみを伴いますし、生まれた悩みはあまりにも重く、醜い。そのためほとんどの人は気がつかずに捨ててしまうのですが。

 そこまでいうと、先ほどの木を悲しそうに見た。なるほど、先ほどは表情が分からなかったが、今のような顔をしていたらしい。 

 しかし立派に育てれば夢がそこから生まれます。

 よかったですね、と穏やかな笑顔を向ける少女。

 しかし僕は困惑するばかりだ。

 もうすく夢が生まれると言われてもその実感がない。

 第一、僕の家は僕一人が入るのがやっとのほどの小さいものだ。

 これ以上誰かを養える環境ではないのだ。

 そのことを少女に打ち明けると少女はしばらく考えていたが、じきに何かを思いついたように手をぽんとたたいた。

 ならば私が変わりに育ててあげましょう。

 僕が驚きのあまり固まってしまうと少女はわずかに笑い、

 大丈夫です。夢に関しては私はすぺしゃりすとですよ。何せ、私、少女ですから。

 もとよりこの場にいたのもこのようなことがあるかもしれないと思ったからなのです、といたづらっぽく笑う。
 
 なんて良い少女なのだろうか。

 見ず知らずの男の悩みを引き取り、育ててくれるとは。

 思わず目からうろこが落ちる。

 落ちたうろこが地面でからからと落ちる音が聞こえたとたん、僕は思わず少女の小さな手を両手で握っていた。

 すみません、よろしくお願いします。

 もちろん敬語は忘れない。

 早速悩みを渡すと少女は愛しいわが子のようにその胸に抱きしめたのだった。


 

 その後少女とは会っていない。

 今思えば名前くらい聞けばよかったと思う。

 次にあったときこそは絶対聞くことにしよう。

 僕は新しい悩みを撫でながらそう思うのだった。

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昔の恥

HDDを漁っていたら昔書いた小説を発見。
懐かしくなったから載せてみました。
ちなみに続きの予定はない!!
あと読みにくかったらごめんなさい。




 両親が死んだ。 
 
 古ぼけた旅館の、昔懐かしい黒電話の受話器越しに聞いた家族の訃報はとてもあっけないものだった。
 思わずこれも合宿のまったく笑えない冗談の一つじゃないのかと思ってしまう。
 あまりのあっけなさに目は乾いたままで涙が出てくる気配がまったくない。
 もちろんそれは男だから泣かないといったつまらない見栄ではない。
ただ、電話越しに聞いたことで両親の死がまるで他人事のような、自分とはまったく関係のない出来事のように感じてしまっていた。
だから、両親が死んだと聞いても(ああ、あの人たち死んだのか)くらいにしか思わなかったりする。
 (親が死んだ時ぐらいは泣けるかなと思ったんだけどな・・・)
 なんか、自分がさらに駄目になった瞬間だった。
諦めのため息をつき、ほんの少しだけ自己嫌悪をしてとりあえず警察の人に詳しい話を聞くことにする。
 隣で無駄に泣きそうになっている担任や、少し離れたところから俺を眺めているクラスメイト達の視線がうっとうしい。
警察から聞いた話では大体一時間前、妹を乗せた両親の軽自動車が病院に向かって走っていたところに反対車線を走っていた四トントラックが車線を超えて正面衝突してきたらしい。
 両親は即死だったそうだが、まぁそれは当然のことだろう。
 むしろ、四トンの鉄の塊に車ごと潰されて生きていられるほうがどうかしている。もし生きていたとしたらそれは化け物だろう。
 しかし、苦しまずに死ねたのだから両親は幸せに死ねたともいえるかもしれない。
 幸せな死?そんなものがあるのか?
 「馬鹿馬鹿しい・・・」
 どうやら事故の原因は、ダンプカーの運転手の飲酒運転らしい。
 しかも、事故を起こした本人はかすり傷だけで済んだらしく、今は酔いが醒めてパトカーの中で事情聴取を受けながら頭を抱えて泣いているそうだ。
 泣くぐらいならなぜ飲酒運転などしたのか?
聞けば聞くほど、実に下らない話だ。本当に、馬鹿馬鹿しい。
 そういえば、我が妹はどうなったのだろうか?
 さっきまでの話の中では出てこなかったけど、聞いた限りの状況ではとても生きているとは考えにくい。
 だけど、それは困る。
 家族が死ぬのがつらいわけというのもあるが、それ以上に「約束」が果たせなくなってしまう。
 俺はこれでも約束は守る男を自称している。
 本人も覚えていないだろうが、それでも約束した以上果たすべきだろう。
一応妹はどうなったのか訊いてみると、幸運にも妹は生きていたらしい。体が丈夫な大人でも即死するような状況でよく生きられたものだ。
 まさかバカみたいな奇跡でも起きたのだろうか。
 そのことを更に詳しく話を聞いてみると妹は半分以上潰された車体の後部座席で母に抱かれていたらしい。
 どうやら衝突の瞬間とっさに母は隣に座る妹を抱くことでクッション代わりとなり、ぶつかったときの衝撃や車の破片から守っていたそうだ。自身が死んでからも。
 そのことを聞いて俺は思わず、母親っていうのはやっぱり強いものなんだなぁ、などと間抜けに場違いなことを感心してしまった。
とはいえ、妹はまったくの無事とはいかなかったそうだ。体には傷一つないが、妹は母親の死を間近で見ることになってしまったのだ。中学生に上がったばかりの妹にはとても想像できないぐらいの衝撃だっただろう。警察が車体の中から救助をしたとき、妹は全身に母親の血を浴びながら、ただ呆然としていたらしい。
 茫然自失というのか。
 妹は心を閉ざし現実を拒むことで、壊れてしまいそうなココロを守ろうとしていたのだろう。妹は警察が話しかけても何も答えずにただ動かなくなった母親とそこにいない兄を繰り返し呼んでいただけで、どうしようもなく妹はそのまま病院へと連れて行かれたそうだ。
 
(   。)

 そんな事を聞いても俺の頭の中は冷たく、凍ったままで何も感情が沸いてこない。なんとも思っていない。
 そんな自分が気持ち悪くなってくる。
もしかしたら、俺は本当に人間の根幹、感情というものが壊れているのかもしれない。

(いや、それこそ今更か・・・)

 俺が壊れているなんてとっくに分かっていることだ。
 いまさら何を悩むことがあるのか。
 
 「とりあえず、妹さんのそばにいてあげたほうがいいでしょうし、お父さんとお母さんを確認してもらいたいので一度、來谷病院まで来てもらっていいでしょうか?」
 
 暗い雰囲気を断ち切るように、警察の人がそう切り出してきたので考え事をひとまず止めると、短く
 「はい」と答えて隣で立っている先生を振り返った。
 先生はちょうど鼻をかんでいたところだったらしく、鼻紙を手に、顔をくしゃくしゃにしながら涙目で俺を見上げてきた。
 その目に映っているものは、不慮の事故で両親を亡くした哀れな生徒への同情。
内心で苦々しく思いながら、手早く用件だけを伝える。説明が終わらないうちに先生は首が取れるんじゃないかと思うくらい頭を縦に振り、駐車場に向かって走り出した。
 その足取りは頼りなく、フラフラしていて見ていると危なっかしい。心配なので一緒についていこうとも思ったが、やめた。そもそも生徒が先生を心配するというのは普通逆のことだと思う。
それにこの旅館から駐車場までけっこう距離がある。しかも、今はまだ二月で、ここの旅館があるのは田舎の山奥だ。歩道には雪がまだ残っているくらいだ。
 すでに時計は夜八時を過ぎているし、外はかなり冷え込んでいることだろう。
 ―――要は寒いから外に出たくないということだったりする。
 やれやれ、俺はこんなときまでそんなことを考える余裕があるのか。
 ともかく玄関に車が来るまで俺は暖かい旅館の中で待つことにする。
 先生の後姿が玄関の向こうに抜けていったのを見届けてから、警察の人に乗車の許可がもらえたことを伝えて、電話を切った。
 役目を果たし長い機械音だけを発する受話器を備え付けの場所に戻すと、周りの視線が嫌になるほどたくさん感じられた。
 うっとうしい。
 心底嫌気が差しながら周りを見渡すと、部員達の好奇的な視線と目が合った。
 なんだか自分が見世物の動物になったみたいで気分が悪くなる。
軽く睨みつけてやる。
 それで、やっと俺が視線に気づいていることがわかったようだ。観客どもは空々しく目をそらし、急に自分の役目を思い出したマリオネットのようにそれぞれ自分の行動を再開した。
 まったく、意図的にこっちを見ようとしないようにしているのがバレバレだ。
 まるで無様な演劇のように見えて、あまりの馬鹿らしさに大声で笑ってしまいそうになる。
 だけど頬の筋肉は引きつるだけで笑みを形作る事はなかった。
 なんてくだらないのだろう。
 まったく、俺は、どこまで道化なのだろうか。

「あ〜あ」
 
 軽くうめき、片手で顔を覆う。
 いきなり鬱になることが起きすぎた。自分が今、どんな心境であるのかさえ分からない。脳の処理能力が追いついていかないらしい。とりあえず居心地悪いのでこの場所から離れたいけど、先生をここで待つことにした以上そういうわけにもいかないだろう。
勝手にここで待つことに決めたのは俺なのだし、さすがにこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。
「・・・・・」
 とにかく、疲れた。思わずこのまま寝てしまいたくなる。
 先生があの様子じゃ車が到着するまでもう少しかかるだろうし、それまで休んでいたっていいはずだ―――そうしよう。
 シミの浮いた壁に寄りかかりそのまま足を広げてずるずると座り込むと、壁に触れている背中が程よく冷えて、気持ちよかった。さらに人目を惹くことになりそうだが、もう諦めることにする。
 片手で顔を押さえたまま、他人に顔を見られないようにして目をつぶると、視界が闇に包まれる。

(そうか、死んだんだよな・・・・)

 さっきから何回と聞いた言葉を口の中で噛みしめる。時間がたつにつれ今更ながらにその事実が実感されてきたようだ。
 両親が死んだ。死んだということはつまりもう二度とその人には会えないということ。だけどそれは当たり前のことだ。今更何を言っているんだ。
 だが―――、しっくりこない。たとえ俺でも親が死ねば少しは「カナシイ」という感情を覚えるようだった。
 新しい発見だった。

(―――カナシイな・・・。)

 でも結局、それだけだった。目からは涙は出てこない。
 たぶん俺は、「泣く」という行為をこの世に間違って生まれ出てしまった時から行ったことは無いのではないか。
 悲しいから、つらいから、泣く。そんな上等な機能は俺には無い。
 俺は感情というものが壊れているから。
 それは悲しかったが、別に悲しいとは思わなかった。

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