『鋼鉄都市』 アイザック・アシモフ
★題名 『鋼鉄都市』 ★著者 アイザック・アシモフ ★発行 早川書房(早川SF文庫) ★発刊 1979年03月20日アシモフ(正確な発音はアジモフ)の代表的な作品とか、優れた名作を選べと言われると困るのが当たり前だろう。60年代から70年代にリアルタイム(とはいえ、翻訳などで遅れた国内刊行)に読んでた頃は…そうだなあ、やっぱ「ファウンデーションもの」だろうな、いやいや「ロボット工学のカルヴィン博士シリーズ」になるかな、ああ、SFではないけど「黒後家蜘蛛の連作」もアシモフだったと覚えている。 何というか、すごい人なんですね、引き出しは多いわ、アイデアは突出してるわ、文章やプロットは老練で読ませるし、またまたタイムリーというか科学の最先端を作品化するのが得意だし、上記のように本格ミステリなんぞも遊び半分で書くとかさあ、SFの世界には「天才だね」と関心させられる人が多いけど、中でも上位、下手すりゃトップと言えるのではないだろうか。 (ちなみに、トップは誰かと考えてみたら、ハインライン、ヴォクト、ニーヴン、アンダースン、カード、グィン、2人のスミス、ブリンなどと候補は多い。それぞれのジャンルでトップとしか言えないね) で、ロボット物の開拓者であり先駆者であり、宣教師とも言えるのがグレート・アジモフなのだ。短編連作の「カルヴィン博士(女性の設定が上手い!)」は、科学的想像だけでなく、社会への考察、人間意識の在り様なんぞも考えさせられたシリーズだった。そこで発表された「ロボット工学三原則」は、多数の作家に踏襲され、もしかしたら実際に利用(適用)されるかも知れない。 そんなロボット物の大家が、草創期のカルヴィン博士シリーズに続いて書き継いだのが、「ロボット探偵ダニール」のシリーズなのだ。これは長編を何冊だっけか、間を置いて書いていたのだが、その最初が本書だった(ようだ)。 巨大な鋼鉄都市として描かれる未来のニューヨークは、帰ってきた支配者「宇宙人」と職場を奪う「ロボット」の挟間で「人間」は苛立っている。う〜む、ネオコンと移住民の間で悩むリベラルな「市民」という現在の構造に似ていると思うのは考えすぎか。 ロボットは登場するが、中味はアシモフがこの頃に傾斜していた「本格推理小説」の路線といっていいだろう。推理小説として読むのが楽だし、本道だろうな。 このダニールは、アシモフの晩年にも登場する。よせばいいのに、ロボットとファウンデーションを結合させて「アシモフ未来史」などの完成を目指したんだなあ。元々違う世界で違う設定だろうに、無理してつなげようとするから「狂い」が生じる。それは史実関係や登場人物の設定での狂いではなく(そんなのは上手くこなすのがアシモフの力量)、作品のトーンが微妙に音程を違えてくる。
ファウンデーションの素晴らしい時間の歩み(物語のタッチ)が、3部作から続編を書き始めたことで気ぜわしさに似た歩調になってしまう。つまり、壮大なオーケストラの響きだったのが、エレキギターやシンセサイザーが加わることで騒音に近くなる。確かに現代的な演奏なのかも知れないが、そこには深遠な音調は埋もれてしまう。さらにだ、マルチトラックでデジタル編集なんぞを試みるものだから、あああ、自然楽器の音色は消滅となる。 どうも、続ファウンデーションの3部作(本人)だったか6部作(オフィシャル3人組)だったかを、早川のハードカバー(高いのよね)で買わされた恨みが強いようだ。今では文庫化されたものもあるから、それを読むならば感想も変わるかも知れないけどね。 |