「三島由紀夫と戦後」 中央公論特別編集
★題名 『三島由紀夫と戦後』 ★著者 中央公論特別編集 ★発行 中央公論社 ★発刊 2010年10月25日橋本治の「なにものだったのか」読んだ後に、本書のタイトルを見てついでに読むことにした。その程度の興味だったのだが、意外と読みごたえがある。 思い出すに、ほんの数年前まで書棚の一番下に古い週刊誌が並んでいた。1970年11月に三島由紀夫が割腹自殺をした後に発売された週刊誌であり、その頃に発刊されてた全部をコレクションしてたのだな。そのくせ読み返すこともなく放置してたのを整理してしまった。惜しい! 期待もしなかった本書は、冒頭の時代フォト+エッセイ(三島記述)で一気にあの時代に引きつけられ、戦後における三島由紀夫の位置づけを再認させられた。 「昭和34年皇太子ご成婚」 「昭和35年安保闘争」 「昭和39年東京オリンピック」 「昭和41年ビートルズ来日」 「昭和43年円谷幸吉自殺」 「昭和43年川端康成ノーベル賞受賞」 なぜ「70年安保闘争」や「72年沖縄返還」がないのかと不思議に思い、そういえば「昭和45年11月」は三島由紀夫が「市ヶ谷自衛隊基地で割腹自殺」となるわけで、無いのが当たり前かと納得する。それぞれのエッセイが時代を(現場)記録する意味で秀逸であり、70年安保への記述や遡って昭和20年敗戦に対する記述を読みたくなる。 松本健一と猪瀬直樹の対談で始めて知ったのだが、猪瀬の師匠筋にあたるのが橋川文三であり、「ペルソナ 三島由紀夫伝」ってのを猪瀬が書いてるらしい。対談が平成8年だから、没後25年くらいになるのか、いい時期だろうな。これは探して読んでみたいもんだ。 吉本隆明、司馬遼太郎、江藤淳など当時に書かれたコラムが掲載されているが、現在の作家もコラムで思い返している。中に関川夏央の名前を見つけ、喜んで読みふける。この作家は駆け出し(漫画週刊誌にアルバイト原稿)の頃からオモシロイヤッチャと気になってたライターで、その後の漫画原作やノンフィクション、コラムといった記述に感心してるファンなのだ。 関川は淡々と三島由紀夫の執筆経緯を追い、1963年夏の「日本の文学」編集委員会における事件を取り上げる。この事件については他の人も触れてるように、単に三島由紀夫と松本清張のライバル意識でなく、三島由紀夫の文学観(あるいは自負)に関わるものであり、関川は、 「社会派」三島由紀夫にとって、官僚の堕落を指摘する程度で「社会派」と呼ばれる松本清張は笑止であった。そのうえ松本清張は『日本の黒い霧』などで「陰謀史観」を展開している。それは三島由紀夫にいわせれば荒唐無稽にすぎなかった。たんに、敗戦以来永く禁じられ、あるいは自主規制してきた「民族主義」に飢えた俗耳に入りやすい「史観」にすぎないと思われた。
三島由紀夫が「耽美派」と目されがちなことに不満を持ち、単なる「社会派」を超えた社会そのものを描く作家を目指してたというのが関川の分析であり、分水嶺を1963年夏(「剣」執筆)としている。作品としての「剣」に対する注目度は高い。作品としても、話題になった割には読んでも「ホモ小説かぁ」で終わる「仮面の告白」、後追い事件小説なのにくどい「金閣寺」なんかを読んで何の感慨もないだけだった。「豊穣の海」だけはタイトルが気に入って読もうとしてたのだが、あの事件で話題沸騰がイヤになり読まずじまい。作家としての記憶は残らない。 つまり同時代的でありながら、まだこちらが幼かったことと世間の扱いに反感を持ったことで、三島由紀夫は過去の人でしか無かった。 あれから何年も経ちながら何歳になっても、三島は参考になる先人ではないし、目標とすべき先達でもない。思想的、哲学的、文学的、倫理的、反面教師的……いかなる面においても三島は無関係な存在であり続けたような気がする。 しかし、こういう風に読み返してきて、「戦後」というキーワードで取り組むことができそうな気がしてきた。三島由紀夫に関する評論などを読むと、必ずといっていいほど「戦後」というテーマがにじみ出てくる。その理由が、ようやくにして分かる年齢になったようだ。 |
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「三島由紀夫」とはなにものだったのか 橋本治
★題名 『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』 ★著者 橋本治 ★発行 新潮社 ★発刊 2002年01月30日 図書館の書架に並んだ本を見てて、「橋本治」で引っかかり、「三島由紀夫」で引っかかる。つまり、2つの関心対象の相乗効果で読むことになった。 本文とあとがきでクドクド書いてるのだが、新潮からの原稿依頼(100枚)を3回引き受けて300枚の書籍が出来上がる予定が、結局は350枚の加筆となる。それでも、まだ「終わったけど終わらない」気分を拭い去ることはでき...
2010/11/27(土) 午後 1:40 [ 読書まみむ〜メモ ]





