腸管出血性大腸菌食中毒でのHUS治療に抗体医薬のSoliris(Eculizumab)が効果あり
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ドイツ全土で大発生しているEHEC食中毒事故は、29日の日曜日時点での患者数が約1200名となり、WHOも懸念を表明した。
そのうちHUS(溶血性尿毒症症候群)を発症した入院患者は300名を超えている。 既に10名の死亡が確認されており、患者数の増加と共に、死亡数も増えるのではないかと心配されている。 原因となった食品としてスペイン産キュウリが特定され、O104:H4に汚染されていたと発表された。 しかし、原因は単一ではないとも指摘されており、他の食品や流通ルートの調査が引き続き行われている。 そして、感染拡大を防ぐと同時に、HUS発症患者を治療することも最優先課題だ。 このような状況の中でタイミングがよいと言ってよいのか、5月25日にオンラインで公開された New England Journal of Medicine の論文では、抗体医薬の Soliris (Eculizumab) がHUSによる志賀毒素に対して効果があったと報告された。 www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc1100859 Soliris は既にヨーロッパでも認可されているが、EHECでのHUSに対しては、実験的使用のみであった。 そして今回の論文の結果を受けて、ドイツの大学病院では患者に投与することを決めた。 この抗体医薬 Soliris を製造しているのは、アメリカにある Alexion Pharmaceuticals 社で、NASDAQに15年前に上場している。 www.alxn.com/Default.aspx www.soliris.net/ 5月27日の Nature News によると Alexion 社は、1回の投与分が 5,500ユーロ(約60万円)もするこの抗体医薬を、ドイツに無償提供することにした。 www.nature.com/news/2011/110527/full/news.2011.332.html 既にハンブルクやエッセンなどにある大学病院で実際に Soliris を投与したところ、数名の患者の容体は改善に向かったそうだ。 現在投与中の患者も10数名おり、その結果はこれから発表されるだろう。 www.aerztezeitung.de/news/article/656764/ehec-erste-erfolge-neuer-hus-therapie.html この薬を使った先の論文の主著者が、ドイツのハイデルベルク大学の教授だから、新たな共同研究になるのかもしれない。 300名を超える患者全員に投与できるかどうかは不明だが、会社側としては大宣伝になるし、貴重なデータが得られて好都合かもしれない。 論文では3歳児3名での実験的投与だったので、あまり考えたくないが、大規模臨床試験の論文を出すチャンスと思っている研究者もいることだろう。 ところで、日本でも Soliris は販売されているが、用途が 「発作性夜間ヘモグロビン尿症における溶血抑制」 に限定されているので、先日のユッケ食中毒のときに使ったとは思われない。 もしNEJMの論文がもっと前に出ていたとして、厚生労働省は実験的使用を許可しただろうか。 ドイツでは300名を超えるHUS患者が発生し、これからも増加することは確実だから、副作用を覚悟してでも治る可能性があれば使おうとしている。 しかし日本では慎重になりすぎて、そしてもしもの場合の責任を取りたくなくて、実験的使用を選択しなかっただろう。 高額治療費の問題もあるが、人命優先で考えれば、今後のHUS発生時には、Soliris を使ってもよいのではないだろうか。 |

