読書記
[ リスト | 詳細 ]
☆「読んだ本」「読みたい本」「読めなかった本」・・・文字と文章についの自分の気持ちです。 俳句や短歌にも手を広げたいと思ってます。
入院中に消化した積ん読本(4)
包帯クラブ The Bandage Club 天童荒太 ちくまプリマー新書 \760『傷ついた少年少女たちは、 戦わないかたちで、自分たちの大切なものを守ることにした・・・・・・。 いまの社会を生きがたいと感じている 若い人たちに語りかける長編小説。』 『いま、 この作品を出さないと、 間に合わない、 と感じた。』 −−−−−天童荒太 以上が、裏表紙に書かれたストーリーの概略と帯に書かれた作者のメッセージということになる。 既にこの夏に映画化され公開された?と思いますので、そちらをご覧になった方もあるかと思います。 さて、読んでみての第一印象は「天童荒太らしくない」というものです。かと言って面白くない訳ではありません。その逆で大変面白い青春グラフティーになっています。 話しの途中に挿入される現在の「元包帯クラブ員」からの現状報告が、チョッとした時間の経過と書かれなかった彼らのその後の学園生活から社会へどのように出て行ったかを想像で補ってくれています。 やはり、中学生・高校生あたりに読んで貰いたい本だと思いました。 では、敢えて難癖を付ければ、「いまこれを書かなくては」という思いに後押しされ、7年ぶりに書き下ろした。と言っているが、7年も旧作の改稿や新作の構想を練っていたのは判るが、何故、これが絶対的に今書かれなければならないか、という著者の思い入れがそれ程には、読み手に伝わってくるのか疑問だ。また、物語全体が「もしもこういう青春を送っていたら」という【大人の視点】から書かれているような感じがするのが残念である。勿論、同時代人にしかその時代を書けないと言っている訳ではないが、登場人物の一人としての視点でもう少し書けたのではないかと思える。 『色々と書いたけど、やっぱり面白いという事に変わりはありません。』
|
入院中に消化した積ん読本(3)
あふれた愛 天童荒太 集英社文庫 \600天童作品にしては珍しい短編四話を集めた一冊となっています。ただし、どの物語にも通底して流れている「傷つき脆い心とそれでも快復しようする強い心」とが描かれているように思えます。 一話から四話まで、それぞれのシュチュエーションはバラバラであり、夫婦であったり、恋人であったりするのですが、各々が傷つくことに恐れ、もう一歩の勇気を出せずに、或いは、優しくしようするのだがその要領を上手く掴みきれず結局は反対の結果に陥ってしまうといったすれ違いが発生してしまう。 それは、私達のごく身近で発生する様な些細な出来事の一部であったりするのだが、相手の感情や反応に対する自分の把握出来る限界や想像力によって、全く違ったものになってしまうということをが良く書かれていると思う。 なんと言っても『最後までマイナスのイメージで終わらず、仄かでも明るい未来を予感させてくれる』 終わり方をしてくれることに、微量ながらも今後への期待を持ってページを閉じることが出来る。 生意気に言わせて貰えば、作品全体として、キチキチとした締まった文体で簡潔な描写になっており、登場人数も必要最低限に抑えて、後はエキストラの様な扱いで事細かく描写することをしていない事で、会話体で登場する主要人物だけを追うことで、より物語を鮮明にしていると思える。ただし、第二話は「愛」には違いないがこのシリーズの中にあっては異質な感じを強く受けた。
|
入院中に消化した積ん読本(2)
孤独な歌声 天童荒太 新潮文庫 \552天童荒太が描く作品には、必ず『家族』という大きなテーマが貫かれているような気がしてならない。 今回の作品は、「家族狩り」や「永遠の仔」のように重苦しいテーマが、しかも長大なストーリーの中に 描かれている訳では無い。しかし、他人にはわからない自分だけが抱える家族との間の傷を、どう向合い どう克服していくかというテーマが隠されていることは間違いない。 大まかなストーリーは、中学時代のちょっとしたしかし心に残る過ちを克服できず、自分を許すことの出来ない風希、故郷で最も大切にしていた第二走者を失ってしまった潤平、そして誰よりも家族を欲し、猟奇的犯罪に手を染めていく松田、が微妙なバランスですれ違いながら徐々にある接点へと凝縮していくのです。 前出の二作品に比して、内容・ストーリー展開・文章力ともにやや落ちていると感じるのは仕方が無いことでしょう。この作品を通して、作者の書きたいものや方向性が確実になってきたのではないかと思える点で、著者にとっても重要な位置づけにある作品だと思います。きっと、この作品を書き上げたことで 一筋の光の向こう側に「永遠の仔」が見えていたように感じて成りません。 そんな意味でも、彼のこれからの展開の岐路にある作品だと思って呼んでみると案外色々と見えてくる ものがあるのではないでしょうか? 『孤独な歌声』とは、実に物語りを暗示する良い題名になっていると感心しました。
|
入院中に消化した積ん読本(1)
江藤淳と少女フェミニズム的戦後 大塚英志 ちくま学芸文庫 \945・今の日本に蔓延するサブカルチャー(私にとっては多大なる恩恵を享けている)と優れた 文芸批評家であると同時に、優れた文明批評家として評価している「江藤淳」に対する筆者 のオマージュの現れである。 第一章では、サブカルチャー文学というものとキッパリと対峙し、一切を認めようとしな かった批評家:江藤淳の根底にあるものは何か?彼の中には「サブカルチャー文学」なるも のは存在しなかったのか?そうであれば、何が彼をそこに位置に追いやり、他の批評家とは 峻烈した立場の違いを漫画の編集・原作者として知られる大塚英志が探っていく。 受け入れないのでは無く、戦中・戦後を生き、特に戦後派海外留学を果たすことで改めて 「戦後の日本文学の在り方」という観念がどのように形成されて行ったかが読み解ける。 田中康夫の「なんとなくクリスタル」を一個の文学として評価する理由についても批評家 とはこんなことで区分し、自分に区切りをつけているんだと感心もさせられ。 第二章では、三島由紀夫、村上春樹、村上龍といった、チョッと古いめから現代における トップランナー的作家を取上げ、江藤淳が彼らの作品と生き方までを絡めてどのような発言 しているを追いながら、彼の中のいかなる思考で「サブカルチャー文学」と「文学」峻別し ているかをハッキリさせようとするものである。 全体的に議論・理論好きな人にしかお勧め出来ません。私は、大塚英志の著作を収集して
いる関係上読んではみましたが、回りくどい説明と江藤淳の生前の仕事を良く知らなかった 事により、首肯することの出来ない物言いに数多く直面しました。 江藤淳の仕事の一端でも読んでから取り掛かった方が得るものは多いと感じました。正直 苦しい第一冊目となりました。 |
