そうだ、ブルゴーニュに行こう

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ルイ11世を主人公にしたアメリカの小説『The Spider King』関連です。
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The Spider Kingのルイとマル(の下書き)

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Louis: “And let there be roses here,Margaret,when I return.”
Margaret: “If you promise to return.”
Louis: “I always return. Tell me,thou Scottish princess,can you find a French rhyme for
     the German city of Strassburg?”
Margaret: “Not for German Strassburg,but for Strasbourg,the French city,yes,a beautiful rhyme.”
(The Spider King・2章17節から原文を適当に引用)

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

「やっぱりさ、The Spider Kingなんていっても、日本語で訳すこと自体無理があるわけだしさぁ。
 でもローレンスの力は認めざるをえないよね。」

「なーにが『ローレンスの力は認めざるをえないよね』だ!もういっぺんゆーてみ!」

「くっ、くりかえさなくてもいいじゃないですか…」(岡田あーみん風に)


いや、冗談抜きでルイ11世に『バラのようでいてくれ』と言わせたローレンス氏のセンスは認めざるをえないよね。
作中のルイはメロン頭とかキャベツ頭とか不恰好な頭だとか犬みたいな曲がった足だとか色々言われてますが、
忠実に描き起こそうとしたらRPGのモンスターみたいになりそうだったので、特に変更は加えませんでした。
マーガレット・ステュアート(マルグリット・デコス)は黒髪にして、薄幸のお姫様ぽくなるように線を細くした
つもりですがやっぱりゴツいですね。しかもシャルロットと描き分けができてなくてカブってます。

イメージ 2

いつものノリで描いたルイとマーガレット。二人ともいけ好かない表情をしている。

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お 前 が 言 う な !

クサいんです…このシーン。ホントにギップルが出てきそうなくらいクサいんですよ。
多分The Spider Kingの作中でも『これはないベスト5』にランクインしますよ?
史実のルイはこんなこと絶対言わないだろうとかマーガレットといい雰囲気すぎるだろうとか、そもそも
この作者(ローレンス氏)は絶対このシーンをノリノリで書いているとしか思えません。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

(゚Д゚,, )『国王陛下は「おまえにあるのは人殺しの才能くらいだな」とおっしゃられた。
      なぁマーガレット、わたしのために筆をとってくれないか。
      神様にこのたびの戦で亡くなったフランスの兵士たちのための赦しを請う詩を書いてほしいんだ』

マーガレットはルイにそっと耳打ちした。

(゚ー゚ )『ルイ様、それはあの街々のことかしら』

それからルイにしがみついた。

(゚ー゚ )『あなたはコルマールとシュトラースブルクの猛攻を食い止めたんでしょう?』

暗い面持ちになったマーガレットは、本を読みながら談笑する侍女…コルマールやシュトラースブルクになど
行ったこともないような人たち…のところにいまにも駆け寄って、王太子のために赦しの詩を書こうとしていた。
そんなマーガレットの頬をルイは軽く撫ぜて、

(゚Д゚,, )『きみはここで薔薇のように美しくいてくれればいいんだ、マーガレット。
      わたしがまた戻ってくるまでね』

(゚ー゚ )『ええ、あなたが必ず戻ると約束してくださるのなら』

(゚Д゚,, )『戻るよ、必ずね。ところでスコットランドの姫君はドイツの街のシュトラースブルクを
      フランス語でなんと言うか知ってるかい?』

話をそらしたのだった。

(゚ー゚ )『ドイツ語ではシュトラースブルクだけど…』

マーガレットは自信ありげに答えた。

(゚ー゚ )『ストラスブールともいうでしょう?そう、フランスの街よ。素敵な響きだわ』

彼女の声には愛おしげな調子が含まれていた。   
ルイはそんなマーガレットにさよならのキスをした。彼はとても嬉しそうな様子だった。
スコットランドの姫君はきっと素晴らしいフランスの王妃となることだろう…。
(The Spider King・2章17節から)

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ドイツ語→Straßburg(シュトラースブルク)・フランス語→Strasbourg(ストラスブール)
ドイツ語→Kolmar・フランス語・Colmar(どちらもコルマール)


どちらもアルザス地方の街で、このアルザスというのがちょうどドイツとフランスの国境地帯にあたります。
ドイツ語だとエルザス。ロレーヌ地方…ドイツ語だとロートリンゲン…とともに歴史上ドイツ(神聖ローマ帝国領)
になったりブルゴーニュ公国領になったりフランス王国領になったりと非常に忙しい地域です。

作中ではマーガレットが思いっきり『ストラスブールはフランスの領地』とかのたまってますが。
しかも作中でのルイ王太子(ルイ11世)はとにかくライン川に異様なこだわりを見せていて、
ことあるごとにライン川以東、要するにブルゴーニュ公国領とか神聖ローマ帝国領あたりに攻め込もうと
画策しているんですよね。

マーガレットとバカップルやったりシャルロットとほのぼの夫婦漫才をやってる合間に、虎視眈々と東を狙って
いやがるわけです、この将来メタボハゲになる予定のメロン頭野郎は。全く油断も隙もありませんね!
このThe Spider Kingはなんといってもルイが主人公だから、当然ながらヒーロー補正が掛かりまくってます。
作中のルイはまさにスーパーヒーローキングです。もうチートレベルの超人っぷりを見せ付けてくださいます。
欠点といったら奥さんとのろけすぎるところとか顔と鳩胸くらいしかないんじゃないかと。

それに比べてシャルル突進公は……。
いいところもないでもないけど、欠点のほうが明らかに多いんだよ…鼻につく人物造形してんだよ…。
そもそも、ローレンス氏がルイ(フランス側)以外の登場人物を明らかに微妙に貶めてるっていうか…。
なんか割を食わされまくってるというか。
特にブルゴーニュ側にその傾向が著しいんだよね!

フィリップ善良公も晩年の描写は結構おざなりです。ぶっちゃけただのボケ老人扱いです。
シャルル突進公に至ってはなんか漫画でよくあるムカつくライバルみたいなキャラクターな上に、死に様に
至ってはわずか5行で済まされてます。おいコラ、ふざけんなローレンス!!
ブルゴーニュがそんなに嫌いか!!!嫌いなのか!1!!!

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たった5行

僅か5行である。
なにがって、『The Spider King』の作中におけるシャルル突進公の死が5行で済まされているのだ。
ルイの死がわざわざ1節まるまる使って事細かに描写されているにもかかわらず、である。
中盤からこっち、ず〜っとルイのウザいライバル役としてがんばってきたシャルルの死については
伝聞形式でたった5行だ。これはどうも解せない。許せない。5行ってどういうことだ。
ローレンスさん、あなたふざけてらっしゃるんですか?と問い詰めたくなる。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

1月5日の日曜日に行われた非常に一方的に圧倒した戦で、ブルゴーニュ軍はズタズタにされ、
ある者は虜となり、またある者は殺戮された。ブルゴーニュ公は名も無い兵卒に殺された。
次の日にブルゴーニュ公の供が彼の酷い有様になった遺体を…みごとな黒の鎧は剥ぎ取られ、
吹きだまった雪の中に半ば埋まって凍り付いていた…見つけることとなった。
(The Spider King・5章51節から)

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

5行で済まされた(訳してみると4行にも満たなかった)シャルルの死のあと、ルイ狂喜乱舞の描写が
30行にわたって続く。またルイが年甲斐もなくはしゃぐんだ。大はしゃぎだ。フィリップ・ド・コミーヌと
踊り狂うんだ。もう読んでいてガックリくる。確かにシャルルは作中でいけ好かない嫌なヤツだった。
だけどこんなにあっさり死亡退場させることないじゃないか!!!

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“ああ、人生なんてなにになるの!そんな話、もうわたしにしないで”

タイトルは王太子妃マーガレット・ステュアートが病床にあって言ったと伝えられる言葉で、
原文は『Fie de ma vie! Ne m'en parlez plus.(フィ ドゥ マ ヴィ、ヌ マン パル プリュ)
The Spider Kingでも当然この台詞は出てきます。が、多少意味が違った形で使われております。
史実においてこの言葉はマーガレットがあまりに報われない人生に絶望して発したものとされています。
しかしThe Spider Kingの作中では王太子ルイと王太子妃マーガレットは読んでるこっちが恥ずかしくなる
くらいの仲良し夫婦!ルイは病床のマーガレットをそれはそれは甲斐甲斐しく世話します。
なんぞこれ。

史実では200%ありえないシチュエーションです。

ルイの看病のおかげか、どん底に思われていたマーガレットの体調はわずかに持ち直します。
そのときにマーガレットは傍らに控えるルイと修道士のジャンに明るい口調でこう言いました。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

(゚ー゚ )『わたしは生きたいわ、生きるのよ!ねぇ、ルイ様もジャンもそんな暗いお顔をしないで。
     わたしの命がどうなるかなんていう話はやめましょうよ』
(The Spider King・2章21節から)

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前後の文脈から判断すると、作中のマーガレットはあくまでポジティヴにこの発言をしたものと思われます。
しかしながらこの話がフランスの宮廷に歪曲されて広がってしまうのです。
曰く、『王太子と王太子妃はなにごとかを言い争っていて、もう自分はこのまま死ぬのだと自棄になった
王太子妃は「ああ、人生なんてなにになるの!そんな話、もうわたしにしないで」と言ったらしい』と。

このねじ曲げられた噂がフランス国王シャルル7世の耳にも入るわけです。
シャルル7世はこの噂を信じてしまい、怒りに満ちた口調で言いました。

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

( ^Д^)『ド・ブレゼよ、わしは近頃どうしようか決めかねておる。あのバケモノ(=ルイ?)が
      ドーフィネに身を隠す前に、あいつをどこぞに放逐してしまおうか、とな』
(The Spider King・2章21節から)

〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜

そして父子が誤解・反目しあう中、マーガレットは治療の甲斐なく昏睡状態に陥り静かに息を引き取ります。
たぶんこの項が作中でのルイとシャルル7世の決定的な亀裂になるのだと思います。

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『The Spider King』におけるルイとシャルル

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『彼のくるんと巻いたブロンドの髪の毛や短く剃られたひげなど、そうした目立った見た目のよさは
 ブルゴーニュ宮廷内の半数に及ぶ伊達男たちの絶望と羨望を呼び起こしていた。』
(The Spider King・4章31節から)


(伊^ω^)達^ω^)男^ω^)<絶望した!シャロレ伯の恵まれすぎた見た目に絶望した!
…えーと、想像するとしたら↑こんな感じ?


以上スミヌキ鍵括弧内が『The Spider King』のシャロレ伯シャルルの容貌に関する簡単な描写。
やっぱりこの作品ではシャルルは金髪なのか〜。なんか2Pキャラみたい。


この描写の前後で腕利きの理容師(オリヴィエ・ル・マルヴェ)を雇ったことを話したルイにシャロレ伯
明らかにお世辞だろっていう返事をするんですが、その発言にルイが内心立腹するんですよ。


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(゚∀゚* )『いとこどの、オリヴィエはきっとあなたを恰好よくスタイリングしてくださることでしょう』
と愛想良くシャロレ伯は言った。


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元から恰好いい人がそういう事を言っても嫌味にしかならない。
ルイは『なんだかんだ言ってあいつはただ引き立て役が欲しいだけとちゃうんか』と内心面白くない。
この辺りで二人の間に埋めようのない溝が出来ているということがとてもよく分かるシーンです。

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