黒猫の究美 -浮世絵談義 虎之巻-

シカゴ ウェストンコレクション 初代歌川豊国 「時世粧百姿図」 総解説 全6回予定、毎週金曜日更新。

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「シカゴ ウェストンコレクション 肉筆浮世絵−美の競艶」
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「シカゴ ウェストンコレクション 肉筆浮世絵−美の競艶」 より
初代歌川豊国 「時世粧百姿図」 解説 その四

◆76-13花魁道中
 蝙蝠が飛び交う夕刻、妓楼から茶屋へと赴く花魁の道中を描く。
 対の禿を従えた花魁を先頭に、留袖新造と遣手(やりて)が続く。琥珀地に雲竜文様の厚板の帯を胸前で大きく「のし結び」にした花魁の姿は、文化(1804-18)中ごろから呼出しと呼ばれる花魁の道中時の正装として定着した。針打ち島田に扇状の花簪という定番の髪型をした左の禿に対し、坊主頭に投げ頭巾という右の禿の風変わりな扮装は、文化末から文政期(1818-30)ごろにかけて多くみられる。
 黒地に立体的な羽衣を縫い付けた花魁の打掛に、共布で仕立てた緋鹿子麻の葉模様の禿の振袖が鮮やかで、留袖新造と遣手のクラシカルな衣装が渋味を添える。背後には、常夜灯のたそや行燈と防火用の天水桶(てんすいおけ)という道具立。
 ○花魁(a横兵庫/bのし結び)/二人の禿(a針打ち島田/坊主頭に投げ頭巾)/留袖新造(a島田/b前帯)/遣手(a丸髷/b前帯)

◆76-14茶屋の二階
 茶屋の二階の張り出しから階下を見下ろす三人の人物を描く。
 新吉原仲之町とよばれるメインストリートの中央には、毎年三月一日に合わせて数千本の桜が移植され、大紋日(おおもんぴ)である雛の節句とその翌日は、仕着せ(客が立て替えた衣装)を着て仲之町を歩く花魁と遊客および見物人の波でごった返した。本図は、茶屋の二階からその光景の一部を捉えている。
 パステルカラーの更紗(さらさ)の間着(あいぎ)に御納戸鼠(おなんどねず)の縞の表という、お揃いの粋な衣装に身を包んだ二人の女芸者は、二人一組という茶屋お抱えの吉原芸者である。左巴の紋付を着た茶屋の女将は、階下の通りを歩いてきた顔馴染みへ声を掛けており、背後の座敷には、鯛の大皿や煮物がのった台の物(朱塗りの丸い食台)、木具膳(きぐぜん・簡素な膳)の盃洗(はいせん・酒器をすすぐ器)に懸盤(かけばん・お膳の一種)の大平碗(おおひらわん・大きく平たい碗)などが並び、右奥には、締め太鼓や三味線箱といった鳴り物も見える。
 ○吉原芸者(a島田/b角出し)/茶屋の女将(aしの字髷/前帯)

◆76-15深川の割り床
 茶屋の二階座敷に設けられた割り床で、客をとる呼出し(子供屋と呼ばれる置屋から派遣された私娼)とその朋輩などを描く。
 割り床とは、一つの座敷を屏風で区分けし、臨時で数人の客が泊まれるよう工夫したものである。その蚊帳の中では、養老絞り(ようろうしぼり・木目絞りとも)の単衣に藤色の平絎(ひらぐけ)帯を巻いた寝間着姿の遊女が、花茣蓙(はなござ)の上に腰を下ろして懐紙をとっている。屏風の蔭に隠れて見えないが、床脇の煙草盆の上に置かれた二つの湯呑がとなりに居る客の存在を暗示する。蚊帳の外には朋輩の遊女が立っており、右手で黒絣(くろがすり)の着物の褄(つま)をたくし上げ、楊枝を使いながら、中の女に何ごとかを話しかけている。
 ポーラ文化研究所の村田孝子氏はそのコラム中で、この女性の髪型を「髷(まげ)のわきに短い毛先が出ているので横兵庫(よこひょうご)か」としているが、「横兵庫」(これには、時代の前後で2パターンあり、ここで村田氏がいう横兵庫は前期の方であろう)は、安永期(1772-80)中ごろから寛政(1789-1801)前期にかけて吉原の遊女を中心として結われた髷で、この時代すでに廃れており、ここでは勝山髷(かつやままげ)と見るのが正しい。髷の毛先に見えるのは、切前髪の一部を髷前に突き出したもので、遊女をはじめとした当時の流行である。
 ○蚊帳中の遊女(a島田)/蚊帳外の遊女(a勝山髷/b一つ結び)/仲居の軽子(a達磨返し/b一つ結び)/芸者もしくは遊女(a島田/角出し)
 
◆76-16河岸見世(かしみせ)
 河岸見世とは、吉原の中心部から外れたどぶ沿いにあった店の総称。本図は、その河岸見世にあった小格子(こごうし)の昼見世を描く。
 遊女たちの姿態からは格式の低い見世の雰囲気と昼見世(昼夜の二部構成で昼は閑散期)時の気楽さが伝わってくる。格子の間から遣いに出た禿の帰りを認める遊女、格子横では、三人の遊女が手すりから身を乗り出すようにして女易者の辻占(つじうら)を聞いている。昼見世時に易者(えきしゃ)を呼んで、卦()を見て貰う遊女の姿は、歌麿の大判錦絵「青楼十二時 続 未ノ刻」(寛政6年)にも描かれている。
 ○禿(a坊主)/格子内の遊女(a結い綿/手柄髷/潰し島田/結い綿)/女易者(a菅笠)



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 黒猫の究美。 kuroneko_doo@kce.biglobe.ne.jp

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