オーダーダブル・第二話
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前回のあらすじ M.I.C.Rの派遣調査員カラスミに協力して、仮想空間での模擬戦を行うザプラスとナギサ。だが本気になれないためか連戦連敗で思うようなデータがとれない。そこに、あのアクロデウスが現れたという通報が入った。 詳しくはこちら ここは、ホタルミの地下に広がる、広大な倉庫区画。余りに広大すぎるため、現在では実際に倉庫として使われているのは一部のみで、大半は殆ど物の無い、がらん、とした殺風景な光景が広がっている。 そこに、一台のパトカーが滑り込むように走ってきた。 パトカーから降りてきたのは、ザプラスとナギサだ。 ザプラスがぼやいた。 「お前・・・・・・・・見かけによらず運転は荒いなぁ」 「えー?そ、そんなことないでしょ!?」 「まあ良いや。デウスの野郎の位置は把握してるよな?お前は右のルート、俺は左から行って、挟み撃ちだ」 「ちょ、ちょっと待ってザプラスさん。本気であの化け物と二人だけでやりあうつもりっスか?無茶っスよ!あの時だって三人がかりで漸くだったのに・・・・・」 「仕方ねえだろ?増援待ってたら逃げられちまう。第一、ピースキーパー程度じゃ、言っちゃ悪いが来て貰っても無駄に犠牲者増やすだけだぜ」 「そ、そうかも知れないっスけど・・・・そういやザプラスさんもデウスと戦ったことあるんスか?」 「え?ああ、模擬戦まがいのものなら、まだボルテックの野郎の所にいた頃にな」 いきなりナギサの眼が輝く。 「そっか!だから自信あるんスね!デウスに一人でも勝てるという!」 「・・・・・・・・・・・いや、当時は一度も勝てなかった」 「それじゃ駄目じゃないスか!」 「五月蝿ぇ!おめーはヤツに勝ってるだろうが!二人合わせりゃイーブンだ!」 「ンな無茶苦茶な!」 「いーからとっとと行け!」 ザプラスが一声吼えると、ナギサは飛び上がり、慌てて駆け出す。その後姿を見送りながらザプラスは呟いた。 「へっ。こっちだって前と同じじゃねえっての。あの怪物にどこまで通用するか・・・・・・試したくはなるよな」 握り締めたザプラスの拳から、瞬間、ぼっ、と炎が舞い上がった。 走りながら、ザプラスは端末で自分の位置を確認する。まだ、デウスの移動予測地点までは少しある。デウスはどういうわけか、何か大きな荷物を運んでいるらしく、そのため移動速度はかなり遅い。その荷物の確保も、ザプラスたちの任務の一つだ。 ナギサのあの様子からして、心配は無いとは思うが、少し急いだ方が良いかも知れない。そう考えたザプラスだが―――――次の瞬間、彼は足を止めていた。 通路の隅に、無造作に放置された、コンテナ。 その上に、一人の少女が座っていた。黒い髪に、だぶだぶの黒いコート。テックスキンも黒系で、上から下まで黒尽くめである。 少女の瞳が、すっ、とザプラスの上に動いた。 その瞳は、黒尽くめの彼女の中で、違和感すら感じるほどに赤い。 少女が口を開いた。 「戯れに作られた模造品と、廃棄された欠片。それなりにお似合いの組み合わせだと思わない?」 「は?」 少女はザプラスの疑問符にはお構いなしに、音も無く立ち上がり、コンテナから飛び降りた。ザプラスを赤い瞳が、じっと見つめる。 「もっと色々見たいけど、今は無理か・・・・・・そうだ、ザプラス。お前に訊きたいことがあったんだ」 「俺の名前を知ってるのか」 「有名人だもの」 ザプラスは苦笑いする。 「かもな。っと、それどころじゃねぇ。これからここでドンパチ始まるぞ。巻き込まれるかも知れねえから、さっさと避難しろ」 言いながら、ふとザプラスは少女の手に眼を留めた。華奢な外見とは不釣合いな、異形の手首。 「お前・・・・・・・アクロイヤーか。見たこと無いってことは当然未登録だよな。参ったな、こんな時に・・・・・・・」 「ねえ、ザプラス。世界と愛が天秤に掛かったら、お前はどっちを選ぶ?」 「はあ?さっきから良く判らんことばっかり・・・・・もう少し判り易く言ってくれ」 「だからさ。お前の最愛の人を殺さなければ世界が滅ぶ、ってなったらお前はどうする?どっちを選ぶ?」 「ンなの決まってらぁな」 ザプラスは胸を張る。 「その、最愛の人とやらを助けて、世界も救う。それがヒーローってモンよ」 「だーかーらー」 少女は赤い瞳で上目遣いにザプラスを睨んだ。 「それじゃ前提条件壊してるじゃない。そりゃ両方獲れるなら誰だってそうするよ。どうしてもどちらか選ばなきゃならなくなったら、ってこと」 「それは・・・・・・・・・その時になんなきゃ判んねぇよ」 「それって逃げてるよね」 少女は明らかに不満そうな顔を見せる。ザプラスはそんな彼女に言った。 「だー!そんな話は後にしようぜ。さっきも言ったがここは危険だ。お前・・・・・名前は?」 「無いよ」 「はぁ?じゃあ、形式番号とかは?」 「それも無い。お前の好きに呼んで良いよ」 「ヘンな奴だなぁ・・・・・・・うーん、だったら真っ黒けだから暗黒神(アーリマン)から名前とって、『アリマ』とかどうだ?」 少女――――アリマは眼を細めた。どうやら笑ったらしい。 「アリマか・・・・・良いね、気に入った。じゃあね、ザプラス。多分、また会う」 その言葉が終わるか、終わらぬかのうちに、少女の姿はかき消すように消えた。呆気に取られるザプラス。 「・・・・・・・・・何だったんだ?参ったな・・・・・冗談のつもりだったんだが。本気ならもっと可愛い名前にしてやれば良かったかな。にしてもこの消え方・・・・・意外とタダモンじゃないのか?」 ふと、ザプラスは頭を上げる。 「って、こんなことしてる場合じゃねぇ!急がねぇと!!」 ザプラスは再び、今度は全速力で駆け出した。
次回は六月二日の予定です。
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