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不思議なお話59

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福山での仕事を終え、今日那須の自宅に戻りますが、明日は北海道に向けて出発です。

忙しいことはいいことなのか。

今月は、自宅に5日しかいないことになります。

さて、ちょっと変わったお話となる臨死体験編の後編です。





気づくと、目の前に母美奈子の顔がありました。

「あっ、気付いたわ。大丈夫、紀英。」

母の問いに、紀英は直感的に答えました。

「大丈夫。おもちゃは諦めた。」

美奈子は、わけがわからず聞き返しました。

「体のことよ。どこか痛いところはないの。」

紀英、自分の体については自覚していなかったのですが、母に聞かれて、自分はどうやら病院のベッドの上であり、頭の後ろが痛いことをようやく自覚した。

「ああ、後頭部が痛い。」

「そうよ。紀英、後頭部に切り傷があるのよ。でも、それだけで済んだのが奇跡よ。」

そうか。自転車ごと空を飛んで岩に激突したんだっけ。普通なら死んでるよな。

「自転車でダイビングしたんだった。ところで、自転車どうなった。」

紀英、自分よりも自転車のことが心配になった。

「自転車の方も、木の枝にひっかかって奇跡的に無事だったわ。」

母美奈子の答えに、紀英は安心しました。

「よかった。父さんに買ってもらった大事な自転車。」

「あんたねえ、自転車なんてどうでもいいわ。どうしてあんなことしたのよ。」

そうそう、すごい勢いで坂を下ってきて、この勢いでジャンプしたら空を飛べるかって一瞬考えてしまったのでした。

「あはは、つい空を飛べないかって考えてしまったんだ。」

正直に答えると、母は目に涙を溜ながらも怒りの表情に変わった。

「あんたねえ、死んだらどうすんのよ。しょうもないことして。」

紀英、眼前の母に、本当にありがたいと感謝の気持ちがわきました。

「そういえば、三途の川見てきたよ。」

「三途の川だなんて、大丈夫なの。」

「うん。大丈夫だ。心配かけてごめん。」

美奈子はほっとしていましたが、三途の川のことは気になりました。

「ほんとに大丈夫かしら。紀英、今、三途の川って言ったやないの。」

「うん。三途の川見てきたよ。」

「紀英正気。」

「大丈夫だと思うけど。」

「不思議ね。お父さんも同じ様な経験あるらしいわ。」

美奈子は、夫俊一郎から、2歳にもならない頃の臨死体験のことを聞いていました。

「うん。閻魔さまじゃなくて、イギギさまって転生を看視している神様かな、が、父さんは、僕よりももっと凄かったって教えてくれた。」

美奈子は、笑顔で答えました。

「そうだったの。でも、よかったわね、帰ってこれて。」

「うん。三途の川勝手に渡ろうとして怒られたけどね。」

「もしかして、臨死体験ってやつをしてきたんじゃない。」

「うん。きっとそうだと思う。でも、まだ来るはずじゃないからって、帰らせてもらえたんだ。」

「もう。二度と無茶するんじゃないわよ。」

「もうしないよ。何だかとっても大切なこと教えられた気分だし。」

「父さんも、そうだったみたいよ。」

母に言われ、紀英、イギギさまから教わったことを話すことにしました。

「うん。イギギさまから聞いたよ。父さん、その経験がなかったら、もともな人生歩むことができなかったんじゃないかって。」

「あはは、それわかるわ。」

美奈子は、子供の頃の、天才ながら傍若無人な俊一郎のことを聞いていましたから、つい笑ってしまいました。

「でも、不思議だな。」

「何が。」

「いや、何故死ななかったのかなあ。どう考えてもあの勢いでまともに岩にぶつかったんだから、生きているはずがないんだけど。」

「そうね。たまたま見ていて、救急車を呼んでくれた人も同じことを言ったわ。頭からぶつかったから、生きているはずがない。ましてや、後頭部の軽傷だけで済むはずがないと。」

美奈子、目撃して救急車を呼んでくれた近所の農家の人から連絡を受けて病院に駆けつけたのですが、その人は、紀英が生きていることがどうしても信じられないと何度も美奈子に話したのでした。

「そうよねえ、私も現場見てきたけど、あんただけでなく、自転車が無事だったことも奇跡だわ。」

美奈子、夫から聞いたことも続けた。

「お父さんは、2歳にもならない時に同じ様なことしてるわ。お父さんの時は、本人、頭が砕けた感触まであったって言ってたわ。でも、紀英と全くおんなじで、後頭部の切り傷だけで済んだのよ。」

「そんな小さい頃のこと、父さんよく覚えていたね。」

紀英、複数の前世記憶を持っている父でも、2歳にもならない時のことを覚えているのは不思議でした。

しかし、賢明ながらも破天荒な面を併せ持つ父らしいなとも思いました。

「僕の場合、頭に岩が食い込んだところで記憶が途切れているんだけど、どう考えても後頭部に傷があるのは変なんだ。前向きに岩に向かってダイビングしている体勢だったから、ぶつかる直前に空中で反転しないとあり得ない。時間を止めて、体の向きも変えて、ゆっくりとぶつかるように調整し直したとしか思えない。」

美奈子は、紀英が助かっただけで十分でした。

「わけのわからんこと言ってないで、助かったんだから、頭が少し切れただけで済んだんだから、神様に感謝しなさい。」

「うん。確かにそうだな。まずは感謝だ。神様、仏様、イギギ様に感謝。」

美奈子、最後のイギギ様がわけがわからなかったので、聞き返した。

「さっきから言ってるけど、イギギさまって、なあに。」

「ああ、三途の川で遊んでたら、叱られて、その後いろいろ教えてくれた神様かな。転生を看視する存在って説明してくれたけど、姿は見えなかった。」



その時、父の俊一郎が駆けつけてきた。

「紀英、大丈夫か。」

勤務先から呼び戻したわけで、紀英、心苦しかった。

「ごめんなさい、父さん。」

「父さん、仕事休んで大丈夫だったの。」

美奈子も心配した。

「あのなあ、息子よりも大事な仕事はしとらん。それよりも、本当に大丈夫か。」

「ああ、紀英、後頭部の切り傷だけだって。CTも撮ったけど、脳には異常ないそうよ。」

「絶対死んだはずなんだけどなあ、頭に岩が食い込んだ感覚もあったから。」

妻と息子の報告に、俊一郎、何故か苦笑した。

「父さんと同じだな。当時はCTなんて便利なものはなかったが。」

「そうなの。母さんにも言われたし、イギギさまにも言われたんだけど。」

「何、お前、イギギ様にもあったのか。」

驚く父が何か知っていそうなので、紀英聞いてみた。

「あれ、お父さんも、イギギさまのこと知ってるの。」

「お父さんも、臨死体験したんだよ。」

「うん。母さんに聞いた。」

「その時、蒼い光の満ちた空間にしばらく居て、帰るように言ってくれたのが、イギギ様だったんだ。」

「あはは、お父さんには困ったってイギギさま言ってたよ。」

「別に困らせた覚えはないのだが。」

俊一郎、素直に言葉に従って帰ってきただけで、困らせた覚えは無かった。

「いや、普通の亡者というか、死んだ人の霊魂は、三途の川の手前でチェックされるんだって。」

「された覚えは無いな。」

俊一郎、正直に答えました。

「そう。父さんはそのとおりだったらしいんだ。イギギさまが言うには、どこをどう間違ったのか、父さん、三途の川を飛び越えて、中間生まで直接行ってしまったんで、慌てたって言ってたよ。」

「そうだったのか。父さん、三途の川には全く覚えがないが、何だか蒼い光の満ちた空間に居た覚えがある。あれが、中間生って言うのか。」

「そうだって。そこで癒やされて、多くの霊魂は現世での記憶を忘れてあの世に行くんだって。」

「あなた、そんなところまで行って戻ってきたんだ。」

妻の美奈子にも呆れたように言われて、俊一郎はまた苦笑した。

「でも、残念ながら2歳にもならない時だったから、どういう状況だったのか、余り理解はできなかったな。その点、お前はいろいろ聞き出してきたんだ。」

「うん。気付いたら三途の川のほとりに居たんだ。どうせ死ぬんだったら何でもやってみるかと思って、川に飛び込んで見たら、めちゃくちゃ浅くて、歩いて渡れそうだったんだ。だから川の中走り回ってたら、イギギさまに叱られた。」

「何だそれは。ところで、お前はイギギ様の姿を見たか。」

俊一郎、興味を覚えたので確かめてみた。

「いや、声だけだったよ。転生を看視する者だって名乗ってくれたけど。ところで、イギギって何か意味があるの。」

「父さんも声しか聞いていないな。でも、確かイギギって、古代のシュメール語で、見まもる者、看視する者という意味だ。」

「うん。僕には、転生の看視者だって教えてくれた。」

「してみると、お前はずいぶんお世話になったようだな。」

「そうかもね。イギギさまも、面白がっていたようだったよ。親子して、掟破りだからって。」

「まあよい。二度とはお世話にならないように、気を付けることだ。」

結局、紀英は軽傷で、検査の結果も異常無しと判明したため、そのまま退院し、家に戻ることができました。

しかし、父と違って相変わらずあまりいい子にはならなかったところが、紀英の個性だったのでしょう。





画像はセキレイです。

結構人なつっこく、まわりをうろうろしていたのですが、巣立ってから間もないのか、まだ餌くれーと鳴いているような感じでした。



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不思議なお話58

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福山は、二日続けていいお天気です。

今日も暑くなりそうです。



さて、続きです。

今日は、ちょっと変わったお話になります。





俊一郎美奈子夫妻の長男紀英が小学生になった時、彼の身に大変不思議な出来事が起こりました。

自転車に乗っていた彼は、急な坂から猛スピードで降りてきたところで石に乗り上げて自転車ごとジャンプし、頭から岩に激突したのです。

目撃していた人は、絶対死んだと思ったというほどの事故だったのですが、頭が岩に激突し、頭蓋骨に岩が食い込んだと感じた次の瞬間、彼は向こうが見えないほど大きな川のほとりに立っていました。



空は一面の雲に覆われて全く太陽が見えず、かといって一様な明るさがあり、薄暗いというか薄明るいというか、奇妙な世界でした。

周囲を見渡して見ましたが、誰もいません。

目の前の川が、向こう岸が見えない大きいものであると同様、後ろを振り返ると、これまたどこまで続いているのかわからないほど広大な荒野がありました。

うーん、この川って、もしかしたら、三途の川という奴なのかな。

紀英は思いつくと、自分が死んでもおかしくない事故に遭ったことを思い出しました。

そっか、僕は死んだんだな。じゃあ、ついでに試してみよう。

ふと思いついた紀英、川に飛び込んだのです。

あまりにも大きく、かつ底が見えない濁った流れの川でしたから、当然深いだろうし、溺れるかも知れないが、どうせ死んだのなら溺れても一緒だと思って飛び込んでみたのですが、彼の予想は見事に裏切られ、川の深さはなんと膝の下、くるぶしの上ぐらいまでしかなかったのです。

しかも、全然濡れた感じがしないのです。

こりゃおもしろいと思った紀英、川の中を走り回ってみました。

水のような抵抗もないし、これなら簡単に歩いて渡れそうだから、渡ってみようかと思いついた時、姿の見えない存在に話しかけられました。

「おやおや、変わった亡者だね。一体どこから来たのかな。こんなところに一人だけでいるはずはないのだがね。」

紀英、姿の見えない声に問い返しました。

「あなたは誰なのですが。そして、ここはどこなんですか。」

声は答えました。

「私かい。そうだな、転生の看視者、名前はイギギとでも答えておこう。それからここだが、君が思っているように、日本では三途の川と表現してよいだろう。」

三途の川となると、やはり自分は死んだことになります。

「やっぱり、僕は死んじゃったんですね。」

すると、イギギはうなりました。

「うーん、微妙なところだな。」

「と言いますと。」

「君は、神坂紀英君は、まだ死ぬはずではないんだ。だから、君がここに居ること、三途の川で遊んでいること、その事実に、正直私も戸惑っている。」

「普通、あの勢いで岩に頭からぶつかれば、死にますよ。」

紀英、あれで死ななかったら奇跡だと、冷静に捉えていた。

「そうだな。しかし、私が関知している世界の記録では、そんな出来事が起きるはずではなかったのだよ。」

「それって、運命なのですか。」

「そうとも言えるかな。だから、君がここにこうしていることは、私にとっても非常に不思議なのだよ。いや、不都合と言ってもよいかな。」

「ということは、僕が生き返るって可能性もあるのですか。」

一瞬イギギは沈黙したが、正直に答えてくれた。

「あるな。そういえば、君の父親は、君以上にとんでもない例外だったな。親子続けての例外にするか。」

「できるなら、お願いします。」

紀英、自分の命よりも、家族を悲しませてしまうことの方が気がかりだった。

「いや、私としても、君がここに居る。死者ではないはずの亡者がここにいる。その上、勝手に三途の川に飛び込んで走り回っている。これらの事実は、大変都合が悪いのだよ。とりあえずは、川から上がって、そこの小屋に入って待っていてくれ。」

ふと見ると、川岸に水車小屋のような小屋がありました。

「おや。ここにこんな小屋ありましたっけ。」

ついさっきまで、川岸はおろか、見渡す限り何もなかったはずだと思った紀英、聞いてみました。

「まあ、その辺は堅いことは言うな。普通は、この川を自分勝手に渡るような不届き者はいないのだから、君のために急遽作ったわけだ。」

紀英、父のことは知らなかったので、確かめました。

「イギギさん、父も不届き者だったのですか。」

イギギは苦笑しているようでした。

「ああ、君の父、神坂俊一郎は、とんでもない不届き者だったよ。」

「僕とどう違ったんです。」

「そうだな。君は、まだ三途の川のこちらに居る。つまりは、渡ってはいない。それに対して君の父親は、ここを飛び越えて、あの世の手前まで一足飛びに行ってしまったのだよ。」

「何故そんなことになったのですか。」

いろいろと破天荒な面を持っている父でしたから、紀英、興味を覚えて聞いてみました。

「私にもわからない。だから余計に困ったのだよ。今、君にも困っているがね。」

紀英、生きて帰れる可能性が見えたので、頼んでみました。

「じゃあ、帰らせてください。僕は、自分自身の人生はどうでもいい気がしているんですが、父と母を悲しませたくありませんから。」

紀英、これで死んだら、両親は悲しむだろうと心配していました。

「わかった。とにかく君には戻ってもらおう。」

「ありがとうございます。」

紀英、安心ついでに聞いてみました。

「この川、飛び込んでも浅いし濡れないし、走って渡れそうな気がしたんですけど、そもそも渡れるものなのですか。」

イギギ、困ったような声になりました。

「うーん、難しい質問だな。正直に答えると、渡ることはできる。そもそも川は幻のようなものなのだ。しかし、亡者にとっては、絶対に渡ることができない、一種の精神的な障壁でもあるはずで、歩いて渡ろうとする者が出ることは全くの想定外だった。君は、もしかしたら死に対する恐れをもっていないな。」

言われてみますと、父には、死は次の生への単なる関門に過ぎないと言われていましたし、確かに恐れは無かったのです。

「そうですね。死は、次の生への関門でしかありませんから、死に対する恐れは持っていないと思います。ところで、普通はどうするのです。」

「渡し船というと少し違うのだが、亡者が通るべき関門としての川渡しがあるのだよ。つまり、死者のチェック場所が。」

「つまりは、ここではないのですね。」

「そう。普通の亡者はこんなところに来るはずがないんだ。他に誰もいなかっただろう。この小屋はあくまで、私が急遽作ったものだし。」

「確かに。」

川のこちらは、見渡す限り誰もいないどころか何もない荒野で、先ほどまでは、今居る小屋自体存在していなかったのです。

「普通は、川を越えてようやく転生の資格が生ずると同時に、そのためのチェックもしているのだよ。あの世への入国管理のようなものと考えてもらえばわかりやすいだろう。」

「渡ればあの世なのですか。」

「いいや、違うんだな。渡ると、そうだな、今度はトンネルのようなところを通り抜けていくんだ。そこには、中間生というあの世とこの世の境目の場所がある。」

「どんな場所なんですか。」

「蒼い光に満ちた安らぎの空間だ。そこで、この世での人生を癒やされ、多くの者は前世のことを忘れ去ってあの世に行く。」

「父が、川を飛び越えてあの世の手前まで行ったと言ってましたけど、それがその場所のことなんですか。」

「そう。そのとおりなのだよ。どんな不手際でそんなことになってしまったのか、私にもわからないが、君の父親は、直接中間生まで移動してしまったのだ。」

つまり、父も死にかけた経験があることになります。

「それで、父さんをどうしたの。」

「慌てて戻した。君の父親は、もしかしたらそのことを覚えているかも知れない。君も元の世界に帰ってこのことを覚えていたら、父親に聞いてみればよい。」

紀英は、もっと根源的な問題があるように思えました。

「そもそも、父や僕のように、まだ死ぬ運命じゃないのに、ここに来たのは何故でしょう。」

難しい質問だと思ったのですが、イギギさまは、即答してくれました。

「そうだな。人生の真の意味を、その大切さを知るためだったとでも言っておこうか。普通の人間は、魂は、前世のことは覚えていない。しかし、中間生まで行った君の父親は、前世のことも覚えているのだろう。」

確かに父は、複数の前世記憶を持っているようでした。

「ええ。父は、いくつもの前世記憶を持っている不思議な人なんです。」

「だから、不思議なことができたとこじつけておこう。別の見方をすれば、君の父親は、その経験が無ければ、まともな人間にはならなかったかも知れないということだ。」

紀英、万能の天才で京大卒の父が、田舎の高卒の母と結婚し、普通の生活をしていることが不思議だったのですが、彼の答えでその謎が解けた気がしました。

「きっと父は、その経験があったからこそ、ソウルメイトと確信した母との今の生活こそが最上の幸せであると、知ることができたのですね。」

「そうかも知れないな。その経験を生かすも殺すも、その人間次第だ。君がどうするかは、君次第だ。」

紀英、自分が今ここに居るのは、何らかの警告だったのかも知れないと考えることにしました。

「わかりました。では、僕は帰らせてもらえるのですね。」

「帰る気になったのなら、最後に一つ選択してもらおう。無条件で帰すわけにはいかないからな。その選択によって、君が元の世界に戻ることができるか否かが決まる究極の選択だ。どちらを選ぶか、それも君次第だ。」

紀英、恐らく一つは元の世界に、もう一つはあの世へとつながる選択であろうことは理解したので、聞いてみた。

「どんな選択なのですか。」

「この小屋から出ればわかる。私が教えるのはここまでだ。では、賢明な選択を祈る。」イギギの声がしなくなったので、紀英は外に出ました。



そこには、二つの光が見えました。

一つの光には、父と母、妹たちの笑顔が見えた。

そしてもう一つの光の中では、自分がほしかったおもちゃが並んでいたのです。

あはは、これはいい。わかりやすすぎて涙が出る。

悟った紀英は、迷わず両親と妹たちの笑顔の光を目指しました。





続く。



画像は、福山郊外のお寺明王院です。

一度参拝してみようと思いつつ、果たせないでいます。



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不思議なお話57

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広島県の福山市に来ています。

昨日とは一転、暑くなりそうです。



さて、続きます。



幸いなことに、美奈子は、感情の動きを余り表さない夫と、彼の驕りを含んだ愛情を優しく受け止めることができました。

ただ、結婚して直ぐに二人は悲しい決断を迫られることになったのです。美奈子のお腹には、既に俊一郎の子供ができていたのです。

しかし美奈子は、できちゃった婚の形になって、実際はそうではなかったのに、色仕掛けで彼をたらしこんで結婚を迫ったように言われるのが死ぬほど嫌でしたし、きちっと筋を通したかったので、俊一郎は産んだらいいと言ったにもかかわらず、彼の出張中に、自分だけの意思で中絶してしまいました。

俊一郎は、この時自分が強く決断しなかったことを後悔しましたが、子供を失った悲しみから美奈子は本当に子供が欲しくなり、程なく再び妊娠し、1年後には長男紀英が皆の祝福を受けながら誕生することになったのです。



二人の結婚は、そんな当人同士の危機もありましたが、それは大した問題では無く、本当の危機は、美奈子のことを、息子にふさわしくない田舎者の嫁と蔑んだ母高子の理不尽な行いによるものだったのです。

一度は、美奈子が家出するところまでこじれたのですが、俊一郎が駅まで追いかけて連れ戻し、何とか事なきを得ました。



また、行方不明になった父常和も、縁は切れたもののろくでもないことをしているのは相変わらずで、俊一郎の名義で借金をしていたことが判明したこともあったのですが、弁護士に相談の上、本人は全く関与していない本人確認もせずに貸し付ける方がおかしいと信販会社にかけあって、きっちり片をつけました。



俊一郎は、よくよく親には苦しめられるものだと呆れましたが、由紀子のことがあってから、両親を恨むことはよくないと肝に銘じ、ひたすら我慢し、父は無視、母と妻には忍耐で接して何とか危機を乗り切ったのです。



そんな俊一郎でしたから、感情を表に出すことは余りしませんでしたが、妻の美奈子のことをとても大切にしていました。

いいものを知ることが大切と、美術館や博物館に連れて行きましたし、自分の外見にはこだわらない彼が、彼女には本当に良いものを身につけさせようと、高価な宝石や着物も買い与えたのです。

世間一般に言われる、釣った魚には餌を与えないなんてことはなく、逆に釣った後で十分な餌を与えて磨いたわけです。

結果として、美奈子は、純朴さを保ちつつも、上品な若奥様と見なされるようになりました。

でも、俊一郎は、どこかで自分は偉い、自分は妻の美奈子を大切にする、だから文句は無いだろうという傲慢な気持ちも捨て去ってはいませんでした。

そして、由紀子を結果的には捨てたのも、彼女の心に芽生えた貧しさとともに、彼自身の傲慢な気持ちが作用していたことには気付こうとしませんでした。



俊一郎美奈子夫婦の関係は、母高子の理不尽な行いによって度々波風が立ったものの、結婚1年後に長男紀英が産まれた後は、比較的順調に過ぎて行き、その2年後には長女の友乃が、更にその2年後には次女の文香も産まれました。



ところが、子供が生まれてみて美奈子が一番驚いたのは、俊一郎が、自分の子供には異常に厳しかったことでした。

特に、彼自身が社内の教育研修を行う部署に配属になってからは、自分自身の仕事に対しては、非人間的とも言える忍耐を持って接する反面、家族には厳しく、時として辛くあたるようになったのです。



彼は、両親で苦労した時に、その筋の人や危ない人々と付き合った経験から、人を見抜く能力を身につけていました。

それで、妻の美奈子には、事ある毎に、この男は信用できないから注意しろとか、あの女は嫉妬しているから近づくなとか大変的確に指示していました。

確かに彼の言うことは正しかったのですが、その命令に妻や家族は絶対従うものと信じていたところが傲慢でもあったのです。



美奈子は、自分の理想を満たしていただけでなく、子育てにも協力的で、周囲も羨む夫であることは認めていましたが、些細なことでも、家族にはかなり厳しい言い方をし、子供に、特に反抗的な長男紀英に対しては容赦なく手を上げる夫の態度は不満でした。

また、夫が、母の高子の横暴に対しては、無視して何も言ってくれないことも、彼女には大きな不満となりました。



実は俊一郎、離婚調停で両親の間に立ったものの、裏切られて双方からののしられた時、決して逃げたわけではなく、一度は負けずにやりあったのですが、いくら理路整然と反論したところで、父常和は逃げるだけ、母の高子は逆恨みするだけであり、二人には言うだけ無駄だと悟ったのです。

そのため、母高子の横暴に何も言わなかったのですが、そのことを美奈子にいくら説明しても、彼女にはそんな親が存在すること自体が理解不能でしたから、途中から説明さえしなくなったのです。

そして、そのことが、彼女の不満を募らせていきました。


続く。

なお、この物語は、あくまでフィクションとお考えください。



画像は、京丹波の家のクレマチスです。

植えてから30年以上たっているはずなのですが、初めて花が咲いているのを見ました。

実は、灯籠をぐるぐる巻きにして茂って咲いています。

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不思議なお話56

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大阪は曇り空です。

今日、京丹波の家に行ってきてから広島県の福山市に移動します。



続きです。



美奈子にとっての俊一郎は、結婚前提で付き合い、セックスを経験しても、感情を余り表に出さないため、ある面不気味ではありましたが、誠実で、頭が良く、しかも、運動能力も抜群で、ルックスも悪くない、その上タバコを吸わず、酒癖も悪くないというより全く酔わない、自分の考えている限りの理想を全て満たす男性でしたし、田舎の高卒の自分には、望んでも二度とは得られない相手であることは明らかでしたから、彼と結ばれ、結婚できることになっただけで、幸せだったのです。



それでも、もしかしたら嫌われるのではないか、捨てられるのではないかとの不安が、セックスを知った美奈子を、更なるセックスに駆り立てました。

二人は毎日のようにデートし、その後、美奈子が姉の雅子と同居していたマンションで、雅子に見つからないように、彼女が帰宅するまでに慌ただしくセックスに耽る関係になっていきました。

俊一郎から求めることはまずありませんでしたから、美奈子はセックス中毒に近い状態だったと思われます。



君園家と神坂家とは言っても、神坂家の場合は、母の高子と妹二人だけでしたが、両家に挨拶を済ませた後も、美奈子が毎日のように俊一郎を求める状態が続き、特に、俊一郎が出張で何日か会えなくなることがあると、その前には1日に何度も求めるようになったのです。

俊一郎にしてみると、いまだに高校生と言っても通用しそうな童顔で、清純を絵に描いたような美奈子が、控えめに乱れながらも淫らに求める様子は大変魅力的でしたから、喜んで応じていました。

彼、精力も絶倫というか、意外な強さを見せて美奈子の欲求を満たしたのです。

しかし、相手が普通の男だったら、これほど迫っては単純に飽きられるか、貞淑な処女かと思ったらとんだ淫乱娘に変身したと誤解されて捨てられかねないところだったとも思われますから、この点も、美奈子は幸運だったのでしょう。



また、美奈子のセックス中毒は、思わぬ効果を生みました。

セックスに没入したことが大変効果的なダイエットになり、元々6頭身でプロポーションの良い美奈子でしたから、以前のふっくらとした体つきで童顔の少女が、全体に引き締まった結果、スタイルのよい大人の美女に変身したのです。

これには、周囲の皆が驚きました。

俊一郎は、彼女が良い意味で変わったことは歓迎していましたが、彼にとっての美奈子は、前世の愛人である以上に運命の相手、ソウルメイトであり、他の誰にも代えられない存在だったのですから、外見はそれほど気にしていませんでした。



その代わりに俊一郎は、交際することで、お互いが良くなる関係でなくてはならないと考えていましたから、理性の塊、据え膳食わない典型と言われた彼が、美奈子と交際するや、由紀子の時と同様、自らの知識と教養を注ぎ込んで磨きました。

また、彼は、セックスも愛情を認識させることに利用し、美奈子を磨く一助としたのです。

その結果は、彼女が美女に変身し、見かけが良くなったことよりも、彼女の雰囲気が上品になったことに表れました。



そんな俊一郎が、美奈子に求めたものは、極普通の幸せ、何も特別なことのない日常だったのです。

そのためにと、俊一郎は、自分が持っている不思議な能力の大部分を、意識的に封印することにしました。

そのためか、無意識に発動していた心の鏡の能力も、弱まったようでした。



俊一郎の両親のその後ですが、父常和は、離婚調停が不調に終わった後姿を消したため、離婚訴訟に移行すると、被告の出頭拒否により離婚は成立しました。

そして、ほとんど残っていなかった財産ではありましたが、友人だった元ヤーさんの不動産会社社長佐々木政夫のうまい入れ知恵で、俊一郎が受け継ぐことになったのです。

この点では、両親の裏切りによって俊一郎が一番得をしたことになったことを認めざるを得ませんでしたので、彼は複雑な気分でした。



俊一郎と美奈子夫婦、10月15日にめでたく結婚式を挙げ、会社の社宅に入居して二人だけで暮らし始めると、セックスの回数が半減しました。

姉雅子のマンションで、彼女が何時帰ってくるかとドキドキしながら耽ったセックス、あるいは、俊一郎に泊まってもらって、雅子が眠った後、夜這いのように別室の俊一郎のところに忍んでいって、声を出さないように必死に我慢しながらするセックスが刺激的だったのに対し、何時でも安心してできるセックスは、美奈子にとって余り魅力的ではなくなっていたのかも知れません。



画像は、17歳の我が家の最長老猫ボコタです。

阪神タイガーズファンなわけではなく、老体でがりがりにやせて寒そうにしていたため着せたものです。

着ぐるみになってから、少し元気になりましたから、効果はあったものと思われます。



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不思議なお話55

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今日は、むっとする暑さの関西でした。

兵庫県での仕事を終え、明日京丹波の家に立ち寄った後、今度は広島県に移動です。

さて、続きます。



美奈子と俊一郎は、交際をスタートさせると秘密の内に愛を育み、程なく肉体関係を除いては十分相思相愛の恋人同士になりましたが、結婚となると、すんなりとは進みませんでした。



年末に美奈子が山形の実家に帰省した時、大阪出身京大卒の22歳の男性、神坂俊一郎と結婚を前提に交際していることを切り出すと、両親は驚きました。

しかし、俊一郎とは、家庭環境も何もかもが余りにかけ離れており、その差を克服するのは大変だから、玉の輿に乗るような相手かも知れないが、諦めた方がいいのではないか、と反対したのです。

その陰には、美奈子に遠縁の村の名士の息子との縁談が浮かんでいたこともありました。



美奈子は、前述のように、山形では、ずっと場違いのところに居るように感じていました。

俊一郎と交際するようになって、ようやく自分の居場所を見つけた彼女でしたから、田舎に帰って嫁ぐのは絶対嫌でした。

だから、俊一郎は結婚の約束もしてくれたと反論したのですが、相手の両親の承諾も得られておらず、具体的な日取りも決まっていないのなら余り意味は無いと更に反対されました。

そこまで言われたし、彼とはまだ肉体関係はないし、所詮かなわない夢だったんだと諦めかけた美奈子でしたが、どうしても彼と結婚したかったので俊一郎に頼みました。

早く結婚式の日取りを決めて、その上で両親に会って欲しい、あなたの両親にも紹介して欲しい、それができないのなら、所詮は夢だったんだと諦めるからと。



俊一郎は、既に美奈子と結婚する覚悟を決めていましたし、既に母の高子には、結婚したい相手ができたことを告げて同意を得ていました。(無理矢理同意させたのが実態でしたが)

ですから、不安の余り別れを切り出した美奈子を本当にいとおしいと思いました。

そして、幸子とのことも既に決着が着いていましたから、彼女の申し出を快諾したのです。

「僕の相手は、美奈子、君だけだよ。僕には父親はいないが、母親の承諾は既に得ている。だから、今年中に、そう、10月には結婚できるようにしよう。その日取りを決めてから、君の両親にもご挨拶に伺おう。」

この言葉に、美奈子の顔が輝きました。

「本当に、こんな私と結婚してくれるのですか。」

言い出した美奈子の方が、俊一郎の言葉が信じられず、何度も聞き返したのですが、彼の決心を信じると、改めて大喜びし、そんな彼女の様子に、俊一郎も幸せな気分になりました。



周囲はと言うと、俊一郎は京大卒のエリートですし、女には目もくれない堅物で通っていましたから、美奈子との交際も、最初に秀子がついばらしたため少し噂にはなりましたが、二人を引っ付けようと言い出した当の彼の同期生たちですら、二人が本当に付き合っているとは思いませんでした。

秀子は、その後も美奈子から全て聞き出していましたが、彼女なりのプライドがあったので、二人の幸福を本当に祝福しようと考えを改め、彼等の交際が婚約にまで進展していることについては、誰にもばらしませんでした。



美奈子は、俊一郎が年明け早々に10月の結婚を約束し、式場の手配までしてくれたものの、それでも不安だったので、東京に大雪が降った2月のある夜、送ってくれた彼を、姉が療養で実家に帰ったために一人だけになっていたマンションに招き入れ、泊まっていくように頼んだのです。

俊一郎は、清純そのものの美奈子が誘ってきたことに驚きましたが、不安でたまらない感じの彼女を見ると、その願いを聞き入れ、二人はその夜肉体でも結ばれたのです。



二人とも、古い貞操観念の持ち主でしたから、このような形で肉体関係を結ぶことになったことが自分でも意外だったのですが、これで完全に覚悟は決まりました。

そこで美奈子は、両親の許しを得るために、彼を実家に連れて行って、紹介しました。

彼も、喜んで彼女の両親の前で結婚を約束したのです。



山形の山中の農村に暮らす美奈子の両親は、俊一郎と対面すると、今でも高校生と言っても通用しそうな娘美奈子に負けず劣らず若く見える彼に驚きました。

しかし、彼が本当に京大卒のエリートであり、話してみると年齢不詳に落ち着いており、こんな片田舎の自分たちのところまで嫌がらずに挨拶に来たからには本気だと信用し、二人の仲を認めました。

彼が片親となっており、苦労をしてきたことも聞きましたが、由紀子の両親と違って、むしろ苦労してきた可哀想な子だと同情し、二人は、周囲に祝福されて結婚することができる運びとなったのです。



俊一郎は、美奈子を抱いた後になっても、由紀子を抱いて安心させなかったことが、学生時代の彼女との交際の最大の過ちの一つだったことに気付きませんでした。

ただ、このことには彼なりの理由はあったのです。

俊一郎は、美奈子に会って思い出す前も、彼女との前世の因縁を心の底で覚えており、セックスが元で彼女を死なせてしまったことから、セックス自体に恐怖感も持っていたのです。

そのため彼は女性を愛してもなかなかセックスには踏み切れず、美奈子に迫られるまで童貞だったのです。

ただ、処女と童貞の組み合わせだったのに、美奈子と俊一郎のセックスはとてもうまく行ったのです。

俊一郎は、不思議がった美奈子に、『美奈子は、前世で何度も抱いた相手だったから、初めてでもうまくいったのだ。』と答えていました。



幸い、美奈子自身は全く覚えていませんでしたが、彼女の前世の記憶、特にその死を前にした悲痛な叫びに触れたこと、そして安らぎを覚える同質の存在であった幸子と別れなくてはならなくなったことは、とても強い精神を持った俊一郎にとっても大きな衝撃でした。

両親の裏切りから相次いだこれらの衝撃に耐えるためだったのでしょう、俊一郎は、防衛のための鏡の怪異を出現させたとともに、自分の心の動きを極端に抑え込んでいたのです。

特に、自分が泣くことを許さなくなっていたのです。

続く。



画像は、尼崎市内の公園で見かけた時代錯誤的看板です。

要は、インベーダーゲームが流行った頃のものですから、30数年前のものであると思われますが、今の子供たち、いや親たちも、この意味がわかるでしょうか。



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