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2008年12月1日

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現世の不思議体験・大学編44

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今日は、那須のお山は頂上が白くなっていました。
いよいよ冬到来です。
さて、しつこく続きます。

万博記念公園での惣一郎と小百合と3人での奇妙なデートの後、清子は阪急茨木駅で二人と別れ、恋人と言うよりは婚約者でありセックスの相手である鷹野英一の元に向かった。
清子にとって今日の今までのできごとは、小学生か中学生のころにタイムスリップして校外学習に行ってきたような、いや、昔の校外学習の経験を思い出しただけのような、妙に現実感に乏しいものに感じられたのだ。
楽しくなかったわけではない。3人で過ごした一時は、小学生や中学生のものではなく、大学生の教養レベルにふさわしいものであったし、3人とも青春の大切な思い出となるものでもあったろう。
しかし、それが遠い昔の美しい思い出のようにしか感じられなかったのも事実だったのだ。
思い起こしている内に不安になった清子は、大阪の帝塚山の英一の自宅を直接訪ねた。
彼とのセックスで、現実を取り戻そうとしたのである。(この後、清子と同じ18歳の鷹野家の女中、鳥塚君子を巡って大変な物語が続き、結果的に以前英一の恋人であった君子と清子は仲良くなるのですが、今回は残念ながら大部分省略します。)

英一は君子と清子2人の間で笑っていたが、新旧の恋人同士が仲良くしてくれたことは有難かったし、何よりも君子が笑顔を見せてくれるようになってくれたことが嬉しかった。
これも清子のお陰だとまた感謝すると、清子は微笑みながらちょっと違うかも知れないと言い出した。
君子が打ち解けてくれたきっかけは、確かに自分が彼女に働きかけたことにあるかも知れないが、最初は自分が梅田でデートする代わりに直接鷹野家に来たことであり、その原因はと言えば、小百合と神野惣一郎と3人でのデートが妙に現実感に乏しかったことであるから、本当のきっかけは神野惣一郎にあると言うべきだと言ったのである。
風が吹けば桶屋が儲かる式の考え方だなと英一は笑ったが、確かにそのとおりであり、神野惣一郎は不思議な人間であることは彼も認めていた。
清子は次に惣一郎の不思議さに触れ、自分のように彼の良さを評価する人間は、彼の側に居ると不思議に幸運に恵まれるが、反発する人間は不運に見舞われることも話した。
君子が惣一郎に興味を持って更に聞きたがったし、英一もそ知らぬ顔をしつつ本当は聞きたいようなので、清子は知っていることを全て話すことにした。
彼は入学してきた時から1年生ながら体力技術とも4年生より上だったので、サッカー部で即レギュラー入りしたのだが、そのことに文句をつけ、彼の悪口を言ったり意地悪しようとした先輩たちは、ほぼ例外なく不運に見舞われたと言うのだ。
君子は、惣一郎が仕返ししたのかと疑ったが、清子が聞いている限り、彼が意図的に仕返ししたことは一度もないだけでなく、その不運の現場に居合わせたこともなく、そんな先輩たちのことを教えられるまで知らなかったし、そのことを聞いても心配するだけで、決して悪口は言わなかったし、いい気味だと思っているふしもなかったと言うのだ。
元恋人の田中恵子にしても、最初は彼の非人間的といってもよいほどの心遣いに感謝して幸せだったのに、少しステディーになると、余りにも正しく自分のことだけを考えてくれる彼に反発するようになった。
すると、よくもまあこれだけ不運が続くものだと思うぐらい連続して事故に見舞われた。
最初は、部室のトイレに鍵をかけずに入っていたところを惣一郎が開けたことからはじまったのだが、夕方だったし、いくら目のよい彼でも暗くて見えなかったはずだし、彼も謝ったにもかかわらず、恵子はついおちょくって、「神野さんって本当はすけべ。」と小百合たちに面白おかしく話したところ、翌日通学の京阪電車の定期を無くした。
恵子は懲りずにこれもまた「神の呪い。」とおちょくっていたら、その日の練習の時、グラウンドでゴールポストの10メートルぐらい後ろで予備のゴールネットを繕っていたら、怪力の巨漢中道彰のシュートがゴールポストにかすって方向を変え、恵子の方に飛んだのだ。
彰は、恵子の姿がちらっと見えたので、「危ない。」と叫んだところ、それが逆に災いして彼女が顔を上げたため、ボールが顔面を直撃した。
30メートル以上離れたところからキックしたボールだったが、キック力では西都大一を誇る彰のシュートだから、本人も周囲の部員も慌てて駆けつけたところ、恵子は鼻血を出して気絶して倒れていた。
幸い骨は折れていないようだったので、部室に運んで氷で冷やしていると恵子は気が付き、謝る彰に自嘲気味に「鼻が低くて良かったわ。」と言っていたところに、講義で抜けていた惣一郎が現れた。
恵子は大丈夫と言い張ったが、彼は心配してその日の練習を休み、定期を無くしたことも聞いていたので、彼女を自分の車で大阪の南の自宅まで送って行った。
出てきた母の光子に、惣一郎が深々と頭を下げて謝ったので、恵子としては少し体裁悪かったが、光子は「どじな娘で、逆に神野さんには迷惑をかけたわね。」とさらっと流してくれた。
光子はその時、駅から電話があって、恵子の定期が届けられていたので、ついでに受け取ってきたわよと付け加えてくれたので、顔直撃は不運だったが、それはラッキーと惣一郎も喜んでくれた。
それで吹っ切ればよかったのだが、惣一郎がとても優しくしてくれるものの、1対1でデートに誘うところまで行かないのが少し引っかかった恵子は、1週間後彼に「二度あることは三度あるかもよ。」と妙につっかかったのだ。
すると惣一郎は、変な答えを返した。
「じゃあ、中道君には近づかない方がいいぞ。」
そう言われると反発したくなるのが恵子の悪いところで、1週間ぐらい後にたまたま部室で彰と2人だけになった時、外に出るのに彼の後ろの壁際に天井まで荷物が積んである狭い場所を通るか、机の周りをぐるっと回って広い窓際を通るかの選択で、わざと狭い方を通ったのである。
彰は避けてくれたのだが、恵子も避けて荷物に接触したところ、天井まで積んであった荷物が崩れ、恵子は下敷きになった。
物音で駆けつけたほかの部員とともに彰が恵子を救出したのだが、何と彼女の右足の膝の下あたりに、ゴールポストを固定するのに使うアンカーが突き刺さっていた。
本人は余りの出来事に呆然としていたのだが、巨体の割りに気が小さい彰の方が吹き出した血を見て「救急車を呼べ。」と叫び出し(その割りに本人は突っ立ったままで何もしなかったのだが)、主将の福田勉と、恵子と同期の遠藤忠が冷静に手当てして担架に載せて近くの病院に運んでくれた。
この時も惣一郎は現場におらず、病院で5針縫って治療が終わったところに現れた。
流石に今回は恵子も冗談にはできなかったのでおとなしくしていると、歩かせるわけには行かないからと、またまた車で自宅まで送ってくれることになった。
痛みは余りなかったものの、一生残りそうな傷跡だったし、意気消沈の恵子だったはずなのだが、このシチュエーションになってもまだ笑えることをするもので、彼女、車が京都市内を出た頃には倒してもらった助手席で熟睡していたのだ。
惣一郎は心配で声をかけても答えないし、余りにぐっすり眠っているものだから、信号で停車した時に思わず彼女の鼻の前に手をかざして息をしているか確かめたほどだった。
そして家に着くと、惣一郎が気遣って先に光子に謝りに行ったのだが、2人で戻ってきて見ると、恵子はまだ眠っていた。
結局惣一郎が抱き上げて家の中に運んだのだが、恵子が落ち着いたと見るや、彼は再度深々と頭を下げて謝った。
「申し訳ありませんでした。娘さんに傷を付けてしまいました。」
光子は滑稽なぐらい恐縮している惣一郎を見ると、つい「責任取って恵子をもらってくれない。」と言いたくなったが、彼なら本気にしそうだと思い直した。
光子は、彼は二度目だし、紳士的で気に入ったので、恵子を寝室に寝かせた後、しばらく話しこんでしまった。
再度丁重に謝ってから彼が帰った後、光子は娘に確かめた。
「神野さんって、あんたの何やの。」
聞かれた恵子も、何と答えるべきか迷った。
「うーん、確実なのは西都大の先輩ってことかしら。」
「それだけとちゃうでしょ。」
「とってもようしてくれてんのは確かやけど、何と答えていいか、私もわからへんわ。」
先日もわざわざここまで送ってくれたのだから、単なる先輩後輩の間柄だけとは思えなかった。
「あんた、こないだも送ってもろたやないの。」
「うん。」
「恋人とはちゃうの。」
「うーん、まだそこまでは言えへんと思うわ。」
「それなのに、ここまでようしてくれてるの。」
「うーん、神野さんって、とっても親切やし、他の人でも同じことすると思うわ。」
「した人いるの。」
「いいひん。そこまでどじこいたの私だけやわ。」
光子はずばりと聞いてみた。
「凄い紳士やし、恋人にしてもろたらええんとちゃう。あんたも、恋人いいひんでしょ。」
確かにそのとおりだし、彼にも恋人はいないから何の問題もないのだが、恵子は惣一郎は高級車に乗っているし、如何にもええとこのぼんぼん風なので、自分とは合わないのではないかと思っていた。
「それもそうやし、今日もこないだも2人きりでデートみたいなもんやから、恋人と言えへんこともないけど、彼ええとこのぼんぼんみたいやから、私とは合わへんのとちゃうかしら。」
しかし、光子は違うように感じた。惣一郎は確かに紳士だが、いいところのぼんぼんにしては落ち着きすぎている。むしろ、45歳のおばんのじぶんよりも上に感じられたのだ。
「ほんまやの。私、あの人結構苦労してるんやないかと思うわ。お家のこと聞いたことあるの。」
恵子自身、確かめたことは無かった。
「ないわ。でも、ちらっと家と余り変わりないよって言ってくれたことあったわ。」
光子は、血相変えて確かめた。
「あんた、まさかあのこと話したんやないでしょうね。」
「ううん、話してへん。でも、神野さんってあだ名どおり神様みたいにお見通しみたいなとこあるから、正直に話してもいいかも。」
「あかんわよ、絶対あかん。」
実は恵子、16歳の時に光子の再婚相手の義父の道夫に乱暴されかけたことがあったのだ。
「母さんは信じへんかも知れへんけど、神野さん、正直に話してもほんまに気にせえへんと思うわ。」
光子は、どうしても信じられなかった。
「あの人、そんなにプレーボーイやの。」
考え方の違いに、恵子は吹き出した。
「ううん、純情そのもの、ぴっかぴかの童貞ちゃんよ。」
「それであんなに落ち着いてんの。どこか変やね。」
「そう。だから、好意持ってくれてるの百も承知やけど、いまいち踏み切れへんの。」
しかし、義父に辛い目にあわされた恵子には、彼のような相手の方がいいかも知れないと光子は思った。
「あんた気に入ったんなら、思い切って付きおうてみたらええんとちゃう。いい人なんでしょ。」
「うん。誰に聞いてもいい人。」
「なら、ええと思うわ。」
「そやね。真剣に考えて見るわ。」
そう答えたものの、恵子少しひねくれていたから、自分を素直に表現できなかったのだ。

続く。
画像は、だいぶ戻って、10月にパリから帰る機中から見たロシアあたりの風景です。
既に山頂には雪が積もっていました。

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