小説「SAP=AR(DYN)」-1
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太古の咆哮(Ancient roar) 第2章 鑑識官「野村由子」(Discernment official Yoshiko Nomura) Chapter 05 数日が過ぎて、そのデータがMG県警の鑑識に送られて来た それを受け取った野村由子巡査部長は、その報告書を読み始めた 特に内容の理解が大事だ 報告書を渡すにしても、概略だけでも掴んでおきたい できるなら、説明できるようにしたい そんな思いが、彼女をそうさせていた それと、データをメモリにコピーすることを忘れなかった ところが、その内容は鑑識報告書というよりは、病理学の論文のようだ そこには科警研の意地のようなものが見える これが特機(特別機動捜査班の略称)からの依頼である以上、その背後にサイエンス・アカデミー・プロジェクトがいることは、簡単に予想できたろう それが故に、科警研の力の入れようは、半端じゃなかった 要請されたことは、確実に実行している それは、老人の死体のDNAが28歳の若山敬一のDNAが一致したことから始まっている その90歳を超える死体が、若山敬一のものであることが確定したのである それにより、次の作業に移っている そして、最低要件の2項目以外についても、詳細に調査している それが多岐にわたっているのだ 由子はそれを読みながら、資料を検索し、自分の知識を埋めるのに必死だった その日の午後である 見星イブは、研究棟に地下にある駐車場にいた 搭乗場所に立っていた そこに青色の自動車が入ってきた シアンという青色である スポーツタイプの車体が、イブの前に止まった その車のロゴは、「EVE-mira」となっている そして、前後のあるエンブレムは、矢を番えた弓が上向きに描かれていた イブはそれに乗り込むと静かに発進させた スムーズな動きで、道路に出た ゆっくりとハンドルを切っていく 鼻歌でも出そうな優雅な走りだ 「楽しそうじゃない? イブ♪」 中央にあるカーナビが話している 「そうでしょ♪ イブミラ だって、県警本部なんて、初めて行くのよ それに特機もね」 「そうね」と、イブミラも楽しそうに応えた 美しいシアン色の自動車「イブミラ」は、優雅に国道を走り抜け、SD市街へと入っていく そして、MG県庁の隣にあるMG県警本部の地下駐車場へと向かった 一方、地下駐車場に事務所を構える整備班では、大騒ぎになっていた 榊整備班長が檄を飛ばしている 「今日はSAPが来る 失礼のないようにしろよ!」 「はい」と全員が合唱した 駐車場の入り口は、バーで閉じられている それにカードを入れて、初めて開くシステムになっていた ところが、イブミラが近づくと、自動的にバーが上がった それをイブミラが優雅に通り抜けた イブミラは、静かに地下駐車場を走っていく 「停車場所は解っているよね」 「うん データがあるよ 地下3階の37番♪」 カーナビが場所を示している 「了解」 イブミラが、その場所に向かう すると、その付近に交通整理用のシグナル棒を振る男が立っていた どうやら道案内をしてくれるようだ 「その必要もないのに。。」と思いながらも、それに従うことにした 男は、37番の駐車区域に案内してくれた その男がイヤホンマイクに向かって言っている 「青のハチロクです」 すると、イヤホンに榊の声が言っている 「なに? パープルのスカイラインじゃないのか?」 「いえ 青のハチロクです ロゴは『EVE-mira』です」 「なんと。。 新しい車か? それとも、新しいスタッフか?」 そうしている間に、彼の言う「ハチロク」こと「イブミラ」が定位置に一度でバックで止まった ドアが静かに開き、車から女性が降り立った 青系のワンピースを着た女性が降り立った 緑がかった金髪を綺麗にまとめ上げた美しい女性だった それを見た男が絶句している 「どうした?」 イヤホンから榊の声が響いた 「イブ。。です 見星イブです」 その男が、やっとの思いで応えた それにイブが、自動車の脇で美しく礼をして言った 「ご案内、ありがとうございます」 「いえ。。 どういたしまして。。 こちらです」 男が案内してくれた 庁舎に向かうエレベーターのまえに、整備班の職員全員が整列していた 榊が代表となって、その後ろに2列に整列していた 全員が姿勢を正している すると、イブは榊と向かい合うように、正面に立った そして、手にしていたハンドバッグを両手で持つと、お腹の前に置いた 「サイエンス・アカデミー・プロジェクトの見星イブでございます 常日頃の当社への心遣い、心より感謝申し上げます これからもよろしくお願い申し上げます」 そう言って、深々と礼をした それに皆が「ハッ」と言って敬礼した イブはそれに小さく礼をすると、エレベーターに向かった 彼女が乗り込みドアが閉じた すると、それで全員が敬礼を解いた 「あれが見星イブか。。 彼女がSAPの情報管理官『見星イブ』か。。」 榊が呟いた 「それにイブは、売れっ子の歌手ですよ」 「そうですね スカしていると思っていたけどな〜」 「うん そんな感じじゃなかったですね」 「そうだな 海石榴嬢ちゃんにも驚いたが。。 イブ嬢ちゃんも大したもんだ」 榊は、感心したように言った そうしている間に、班員達はイブミラの周りに集まっていた 車体に触れないように、隅から隅まで見回している 触れないように舐めるように見ていた 「綺麗な機体ですね〜 ハチロクを元にしているようですが、全然違いますよ」 「町中でも、目立たないように。。 それがコンセプトだからな しかし、よく見れば、完全なオリジナルだからな」 「しかし、綺麗な色ですね このブルー」 すると、タブレットを見ていた榊が言った 「それは、シアンだそうだ」 「シアンですか。。 いい色ですね〜」 見星イブが、警察庁舎の中を歩いている 8cmはあろうかというヒールの紺のパンプスが進んで行く それに合わせて、床を打つヒールが、カッカッと小気味良く響き渡る すれ違う警官達が、その美しさに立ち止まり、振り返っていた その内、芸能関係に詳しい職員が言い始めた 「あれ。。 見星イブじゃない?」 それは直ぐに広がることになった 県警本部に見星イブが来ているという噂である ところが、イブはそんなことなど気にする様子もなく、毅然と歩みを進めた 彼女が指定された場所は、特別機動捜査班のオフィスではなかった 本部内の会議室だった 彼女は、会議室のドアの前に立った イブが太田博美警部に送ったメールには、「14時00分」にお邪魔すると書いてあった 原子時計が刻む時刻を基にしたネットワーク・タイム・プロトコル(Network Time Protocol)の時報に従って、イブはドアをノックした それは、日本中が14時になった瞬間であった 時間きっかりのノックに、細川奈津美巡査部長がドアを開いた ドアが開き、見星イブが入室した それに従い奈津美がドアを静かに閉じた イブは、その場に立つと姿勢を正した それに従い、会議室にいた全員が起立した その場には、特別機動捜査班のみならず特別機動公安班の警察官全員が揃っていた それに、鑑識の山本警部と野村由子巡査部長もいた その全員が起立し姿勢を正していた イブは、手にしたハンドバッグを両手に持ち、お腹の前においく 「みなさま、こんにちわ サイエンス・アカデミー・プロジェクトの見星イブでございます」 そう言って、深々と礼をした すると、全員が「ハッ」と敬礼した 「本日は、よろしくお願いします」 すると、奈津美が席に案内した 席は学校形式に列べられていた それに全員が座っている そして、イブの席は、演壇の正面の席が用意されていた 二人が使う机が、イブの一人用に用意されていた その机の真ん中に、資料が置かれている その資料の上に、USBメモリが置かれている 資料は、ホッチキスで止められている訳ではなく、ダブルクリップで止められていた それはサイエンス・アカデミー・プロジェクトが求める会議資料のあり方だった それが忠実に守られている イブは、それを満足そうに見ると、資料を手にした それをパラパラとめくっていく SAPの人間は、それで読み取れるのだ その資料は、文章と画像が別に用意されていた 文章を読みながら、画像を照らし合わされるように作り上げられている これは、科捜研から送られた資料を基に、由子が作り直したものである 内容は的確で、誤字脱字はない イブは、満足そうに頷いた ここには、角田沙矢の理念があった 彼等は、ここに全てを再現していた 次に、イブはUSBメモリを手にした ヤクシが、内容をチェックしている ウィルス等の危険性はない オールグリーンだ それをイブの指が一瞬で読み込んだ データを解析して、それを構築し直す そして、自分用のデータとして作り上げた イブとしては、その資料で十分なのだが、特機や特公が総出で設定してくれた会場なので、彼等自慢の鑑識の心証というものを聞いてみることにした 20120201 |
