小説「SAP=AR(IEM)」-2
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太古の咆哮(Ancient roar) 第4章 情報管理官「見星イブ」(Information curator Eve Mihoshi) Chapter 11 ところが、見星イブの話しは、これから本題に入っていくのだ それが彼等に彼女の新たなイメージを作り上げることになる それで、イブの話しは本題に入ろうとしていた だが、その話しを聞いていた細川奈津美巡査部長の顔色が良くない 我慢して、その場にいるという感じである 「それで、頭部を開けてみたらね。。」 本当に楽しそうに話す 「遥さんの予想通りだったの♪」 それに皆が、身を乗り出す 「何があったんです?」 「注射痕よ」 「注射痕。。? どこにですか?」 「視床下部よ」 「ししょうかぶ。。? それって、どこですか?」 その質問が、見星イブがどんな人物であるか、明確にすることになる 「それね。。」 そう言うと同時に、ミーティングテーブルの上にディスプレイが切り出された それは、カラーの3DCGの映像だった それに全員が息を飲む それに交通課全員も同様だった それは人間の脳の映像だった それもリアルな生々しい姿だった 大脳があり、小脳がある 小脳の前に脳幹があって脊髄に繋がっている しかも眼球まである それがテーブルの上で、ゆっくりと回転している 皆が、それが息を飲んで見つめている お茶の時間にする話しではない まして、そのような場で見せる映像ではないだろう 突然、奈津美はガタッと立ち上がった そして、口を押さえると部屋から飛びだした そのまま、廊下を駆けて、トイレに飛び込んだ 彼女は、それまで食べたものを全て吐きだしていた それに太田博美警部が、額に手を当てて深い溜息をついた 「あら。。 奈津美ちゃん、どうしたのかしら。。」 イブが、不可思議な顔をしている それに博美が、静かに言った 「その映像です。。」 「え。。? だって、ただのCGですよ アニメーションと変わらないのよ」 「しかし、リアル過ぎませんか?」 「そうかな〜?」 イブは、不満そうだ 「それで、その視床下部というのはどこです?」 すると、フォークで刺したケーキを口に放り込んだ そして、そのフォークをCGの脳に突き刺して、こことばかり突いて見せる 「この部分よ」 そう言って、示したフォークで残ったケーキを口に入れた そして、それについて説明し始めた 「視床下部(ししょうかぶ)は、間脳(視床の前下方で、第三脳室下側壁)に位置していて、自律機能の調節を行う総合中枢なのです 中脳以下の自律機能を司る中枢は、それぞれ呼吸運動や血管運動などの個々の自律機能を調節しています それに対して、視床下部は、交感神経・副交感神経機能及び内分泌機能を全体として総合的に調節しているのです 視床下部には、体温調節中枢、下垂体ホルモンの調節中枢、浸透圧受容器などがあります それに、視床下部は、摂食行動や飲水行動、性行動、睡眠などの本能行動の中枢、及び怒りや不安などの情動行動の中枢でもあるのです」 そう言って、映像を消した その直後、ドアを開いて、細川奈津美巡査部長が戻ってきた 青い顔で座る奈津美に、イブが申し訳なさそうに言った 「奈津美さん ごめんなさい」 真摯に謝罪した それに奈津美が目を見張る それにイブが、自分に呆れたように言う 「もう、これって研究者の驕りね。。 あんなもの見慣れているものだから。。 皆も同じだと思っていたから。。」 それに思わず博美が聞き返す 「見慣れてる。。?」 「そうなの 遥さんって、法医学の資格もあるのよ だから、そんな嘱託も受けることがあって、お手伝いしていたの」 その時、博美は伊藤光二警部の言葉を思い出していた 彼は、あのときにこう言ったのだ 「あんな綺麗な顔して、スプラッタなことを考える」と。。。 それは、的を射ていたのかも知れない それを知ってか知らずか、佐藤が言った 「その薬が、視床下部に注入されたのは解りましたが。。 その薬って、どんなものなんですかね〜 どうすれば、あんな死体ができるんですかね〜」 それにイブが応える 「これは、私の考えなんだけど。。 仮説にもなっていない、私個人の考えよ」 「はい」 すると、また、テーブルの上に3DCGの映像が出現する それに奈津美がビクッとした ところが映し出されたのは、染色体の映像だった それがゆっくりと回転している 「これはヒトの染色体です 46対あります ところが、ヒトを生み出すために必要な染色体は、1対で充分なのです 1対に含まれる情報は、遺伝子数5220個、塩基対数はざっと5億5千万。。」 そう言いながら、指を回すと1対の染色体が引き延ばされて、美しい二重螺旋を描き出す それが美しい映像となって描かれている 「この中に、人間を生み出す情報があるのです それがどうして、46対もあるのか。。? そこには、46億年の歴史があるのです。。」 それは正しく、ムーンレクチャーのナビゲータ「見星イブ」の姿だ 奈津美がキラキラした目で見つめている 彼女が憧れるイブがそこにいた すると、クスッとイブがイタズラっぽく笑った 「嘘ですよ 地球誕生が46億年前です 生命の基である有機分子が生まれたのが38億年前ですから。。 それが生命の起源と考えると、30億年の歴史がこの中に織り込まれているのです 美しいでしょ?」 「はい!」 奈津美が目をキラキラさせて言っている さっきの状態が嘘のようだ 「つまり、この中にヒトの進化の歴史が刻み込まれているのです あの死体は、急激な老化の結果です それを生み出すのは、過剰な生命反応 それを必要とするのは、強力なエネルギーです」 イブが静かに言っている 「そして、あの死体の大脳。。 特に前頭葉の部分が萎縮している その萎縮を意味するものは、大脳の退行。。 つまり、人間を退行させて、強力なエネルギーによって発散させるもの。。 それをつなぎ合わせると、ヒトが進化の過程で失ったもの復元 。。という推論が成り立ちます」 そして、周囲を見て言う 「さて、皆さん ヒトが進化の過程で得たものはなんでしょう?」 その言葉に皆が考え込む その中で、奈津美が手を挙げて「テクノロジーですか?」と言った 「そうです しかし、もっと重要なものがあります それは言語です 言語は、意思伝達に欠かせないものです そして、言語があるからこそ、テクノロジーを得た だとしたら、人類が言語を得る前の意思伝達は、どうのようにしていたか? 。。ということです」 すると、弥生が少し考えて言った 「テレパシーとか。。ですか?」 「そうです 弥生さん 自然と同化したときの開放感。。 気持ちいいでしょ? あの時の感覚のようなものがあったと思うのです」 「ありそうですね。。 超能力って、あんなものを言うのかな〜?」 「そうですね〜 あんなものかも知れません 私には、解りませんけど。。 テレパシーとか、サイコキネシスとかいう言葉があるのですから。。 あるのでしょう 教授は、そんなトンデモ本をいっぱい持っていますから。。 そんな教授が言うんですよ 人類もそんな能力を持っていた時代があったのじゃないかと。。」 「すると、人類は超能力を持っていたのでしょうか?」 奈津美が身を乗り出して言っている それに弥生が言った 「そうだとして、どうしてそんな便利なものなくしちゃったのよ」 「それは、きっと進化したからですよ さほど便利なものじゃなかったのではないでしょうか だから、退化した。。」 「退化。。? 退化って、進化の逆でしょ?」 「いえ。。 進化と退化は同義だと、教授は言っています 進化して得たものと同じくらい、退化して失ったもがあるはずだと。。 天は二物を与えない。。ということです」 「ふーん。。」と言いながら、弥生は鬼ぐるみを手にした それを親指と人差し指で挟んだ それをパキッと割った 中の胚乳を手にとって、口に放り込んだ それは、弥生が考えるときの癖のようなものだ すると、それにイブが手を出して、「私にも頂戴♪」と言った それに弥生が、「いいよ」と言って渡す それを受け取ったイブが、弥生と同じように指で挟んで、パキッと割った そして、同じように胚乳を手に取って口に入れた イブは割れたクルミを手にして言った 「これは、気功の運用です 気を発生させ、接触面まで導き、作用させる。。 この3つの作業を同時に進行させるわけですね」 それに弥生が、「うんうん」と頷いている それにイブが言った 「弥生さん 胡桃餅を作るので、クルミを50個割ってくださいと言ったら、どうします?」 「え〜 めんどうだね〜 金槌を持ってくるよ」 「そうですよね 私もゴメンですね それだけの集中力を要するとしたら、金槌の方が便利。。 PSI(サイ:超能力)を失ったのは、それだけの理由があったと思いますよ」 なるほど。。と、皆が頷いた 「ただ、時々、PSIの事例が出てくるのですが。。 どれも自由に使えないようですね 使いたいときには使えないし、勝手に暴走する ポルターガイスト現象というのもその事例だ聞きますけど。。 それほど便利ではないみたいですね ただ、そのようなことが起きるのは、退行ではないかというのです DNAが記憶している進化の歴史を過去に遡るからという考え方です」 イブの言葉に博美が言った 「すると、奴らがしている人体実験って。。 これ。。?」 それにイブが頷いた 「おそらく。。 その薬品は、遺伝子に作用し退行していくようなものじゃないでしょうか。。? そうすると、あの駐車場の変死体の状況も説明がつくのです 被害者である若山敬一は、自動車であの駐車場に入って来た その時、PSIが暴走した その結果、車内で爆発が起きたような状態になった PSIの暴走が生命エネルギーを急激に消費させる その結果、急激な老化となって死亡した。。」 それに深刻そう千秋が言う 「誰がそんなことを。。」 イブが応える 「解らないわ。。 でも、第二次世界大戦中に、旧陸軍でこのような研究がされていたという記録があるの でもね〜 記録があるだけで、その内容については不明なのよ 終戦のゴタゴタの中で、証拠隠滅のために焼却されたんじゃないかと思われるだけ。。」 それに青井が頷く 「なるほど。。 それでは、その関係者を探せば。。」 それにイブが困ったように言う 「でもね〜 あれから70年近く過ぎているわけだし。。 生きているかどうか。。 生きていても、聞き出せるかしら。。」 それに佐藤が応えた 「そうですね。。 ですが、その家族もいるでしょうから。。 探してみましょう」 20120209 |
