詩的な昼下がり 〜ブロッコリーの小説〜

詩的で私的な短編小説などを書いています。よかったらお立ち寄りください

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アメショ、ありったけル 3

                     
                    
                   
 
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リビングに入ったとたんエキゾチックなきつい香りが鼻をついた。煙が部屋の中に充満している。どうやらお香をたいたようだ。すごく息苦しい。

アメショは・・・、アメショはいったいどこだ。僕は部屋中を見まわす。カーテンを閉め切った薄暗い部屋の中は、煙のせいもありひどく視界が悪い。

なんだか、とてもねじ曲がった感じの音楽が流れている。ボリュームがやけに大きい。ザ・スミスとブルーススプリングスティーンとあとモータウン系の誰かの曲を足して2で割ったようなそんな曲だ。

耳がつんぼになっちまうじゃないか・・・。僕は思わず両耳を手で覆った。

「ここだよ、坊や〜。オレはここにちゃんといるぜ〜」

アメショの声が聞こえた。強烈なエコーがかかっていて頭の中で揺れて聞こえた。

僕はその声を目で追った。

「ここだよ、おい、生まれ変わっちまったオレは生まれたままの本来のオレさ〜」

アメショの声は光を発しているようにさえ聞こえた。やがて、その声の光は、僕の小さなこころのすき間を通って、ちょうどピンホールカメラの原理のように、アメショの像をテーブルの上につくりだした。

僕はそこでようやくアメショにたどりついた。アメショは水平線を見つめるような透き通った眼差しで僕を見つめていた。

それは強い悲しみを乗り越えたあとの眼差しだった。

「いったい、なにがどうしたっていうんだい?」

僕はそう尋ねた。

「解放区へようこそ。たったいま。坊や、おまえを参謀長に任命することにする」

アメショは仁王立ちになり不敵な笑みをうかべている。髭がいつもよりも少しだけ長いような気がする。

「なんのまねだ、ときいているんだよ」僕は声を荒げた。

「いったいなんのまねかっって?へっ。ちゃんちゃらおかしいね。おとといきやがれとくらあ。逆にお前さんにききたいもんだ。坊や、いったいお前はなにをしてた?」

アメショは長い尻尾でクエスチョンマークをつくった。

「なにって、つかれてねてたんだよ。みりゃわかるだろ」僕はいくらか平静をとりもどして質問にこたえた。それにしても咳き込みそうなくらいの煙の量だ。近所のひとに消防車をよばれなきゃいいが・・・。

「そうだ、そのとおりだ。おまえはねてたんだ。夢のなかでかわいこちゃんとねんごろぴーすけのすけだ。スケベの神が降臨ベロベロなんだ。このおれが革命のともし火をたかくかかげようとしたまさにそのとき、お前は欲望の碇をザブンっとおろしたのさ」

「僕がどんな夢を見ようがかってだろ。いいかげんにしろよな。あさっぱらから。すこしはこっちのみにもなってくれよ」もうこれ以上はつきあってもむだだなと僕は思った。

それにだ。だいたい僕は、ピングーVSキングギドラが巨大なエリンギではたきあいをする壮絶なる戦いの夢をみていたのだ。

さてと・・。もうひと眠りするかな。

僕はアメショに背を向け寝室へ戻ろうとした。

すると、アメショが危険球並みの口調を僕へ放り込んできた。

「ほー、権利ってやつかい。へー何を担保にそんなことぬかしやがってんだあ。いっとくがおれは治外法権なんだ。ペットをペットたらしめる気だな。じゃあな、オレがみつけた七不思議のうちの一個目を特別に教えてやる。坊や、いいか」アメショは指をこきこき鳴らした。

そろそろつめを切ってやらなきゃな、と僕はふと思う。

「坊やいいか、人間には人権がある。ちゃんとある。おんぶにだっこでちゃんとある。だがどうだ、ペットにはそれがない。ペッ権がない。みつけられない。井上陽水だって、踊りませんか?っていいだすだろうよ。じゃあ、いったいそれはなぜだと思う?」

「主張しないから・・・かな」と振り返った僕は答えた。

「そうだ、そのとおりだ。俺達ペットは従順すぎたのさ、美徳と下僕をはきちがえていたのさ。それにしても、お前はとにかく汚らわしいやつだ。つくづくそうおもうぜ。もしもここにRCサクセションの面々がいたならきっとこうゆうだろうぜ。けがらわC〜ってよ」

アメショの口からネコ科特有のふてぶてしいよだれが一本垂れた。

アメショには誠に申し訳ないのだが、残念なことに、ここにはRCサクセションもいなければ、アジアアンダブファンデーションもいない。それからクラウドベリージャムもいない。

「でも・・・」と僕は口をとんがらした。

「でも・・・、人間には、というか飼い主にはペットを愛する義務がある」

「おいおい、お前さんはいつのまに脳みそと海ブドウをとりかえちまったんだい?人間の倫理観なんて薄氷よりもはくい。は・く・いんだぜー。法は無知を許さず。ザル法はコルセットをはずせずってえもんだ。そんなこたあ、ペティグリーなチャム野郎の犬っころだってわかってるぜ、まったく」

アメショはそこでおおげさにため息をついた。

アメショに言いたい放題いわれているうちに、すっかり目が冴えてしまった。二度寝はあきらめることにした。

それにしても、よくもまあよどみなくしゃべるネコだ。感心してしまう。こんなべらんめい調をいったいどこで覚えたのだろう・・・。

父母と教職員の会(PTA)のめのかたきだ。

有識者のお仁がこの光景を目の当たりにしたらきっとこういうだろう『こんなアメショに誰がした』ってね・・・。


                   
                                                                             つづく
                            
                                 
                          
                              
                         
 

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