詩的な昼下がり 〜ブロッコリーの小説〜

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少年小説

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ぼく かなしいよ

『ぼく かなしいよ』







遠くを見たよ。展望台だよ。雨の日だったよ。100円玉をいくつか入れたよ。望遠鏡を覗き込んだよ。ぼく かなしいよ。


きもち わかんない。半ズボンさむい。ぼく かなしいよ。あめをもらったよ。風船をくれたよ。ピンク色のくまのきぐるみのひとに。ぼく かなしいよ。


エレベーターで地上におりたよ。ひとりでおりたよ。すこしせきこんじゃったよ ぼく。


このあとどこにいくかわかんない。電話はあとでするよ。まだお金はのこしてあるよ。夜になったっていいよ。べつにいいよ。


こんなことならはやくおとなになりたいよ。ぼく かなしいよ。


せかいはずるいや。あしたはいやだよ。このまちはまちまち。ぜんぶバラバラ。ぼくね もういやなんだ。


レインコートがぴったりくっついてきたよ。さむくなったよ。雨を見上げたよ。ぼくはめをあけてたよ。


ずっと歩くよ。どこまでもずっと。海か山まではたぶんいくよ。


迷子じゃないよ。うろうろしてないよ。長靴のかかとがつぶれてペコペコいってるよ。


さがさないで下さい。春までは。


さがさないでよ。さがせないなら。


きのう歯が抜けたよ。子供の歯。下の歯だったから屋根の上に向かって投げたよ。だからどっかいっちゃったよ。


どっかいっちゃったよ。


ぼく かなしいよ。


おひるねの時間におひるねしてたよ。ちょっとまえのぼくはね。夢を二回みたよ。ふたつあわさったよ。あめのゆめだよ。


もう遠くかな。ずっと遠くかな。かぜひいたかな。


たすけてほしいよ かぼちゃのスープに。


たすけてほしいよ アップルパイに。


おたよりするよ。だからまってて。ぼく そっちいくよ。これからいくよ。すごくかなしいよ。だからまっててよ。


おたよりください。おたよりほしいよ。


つー・つー・つー


ぼく そっちいくよ。


こっちだとひとりぼっちだもん。


すべり台の下でまってて


ぜんぶのすベリ台だよ。


ローラーすべり台はちがうよ。


わかった?


ねえ わかった?


きもちのきもちだよ。


あしたのあしたじゃやだよ。


きもちのきもちだよ。

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大熊猫とはちょっぴり話した

                   
               
              
              


            『大熊猫とはちょっぴり話した』





上野公園には里桜が咲いていました。ましました。


顔だけの大仏様を拝んでから少し歩きまして。ましまして。


ぼくとけいいちは上野動物園にいきました。うん。ましました。


けいいちがおしっこをがまんできなくなって、ぼくもがまんできなくなりまして。ましまして。


トイレはいくつもあったんでした。んでんでした。


ぼくのブルーベリーガムとけいいちのブルーベリーガムを交換しました。ましました。


けいいちが何もないところで転んで、魔法瓶の水筒のなかが割れまして。ましまして。


『パンダがやってきた!』って書いてある旗でぼくとけいいちは手を拭きました。したました。


ゲートをくぐる前にしなくちゃいけないことってなんだ?ってけいいちがぼくにクイズを出しまして。しましま。


「わからない」ってぼくはこたえました。


でも二人とも、動物園に入ってからはわりと静かにしていました。


大熊猫を見るために並びました。


警備の人が子供優先の列に誘導してくれたけど


けいいちが泣くほど嫌がったので


大人の列に並びました。ましました。


フラッシュ撮影が禁止だとウルトラセブンは変身のとき困るねってぼくがいったら


けいいちもそうだよっていってくれました。ました。


少しずつひとの列が動いて


ぼくたちは大熊猫に近づいていきました。きまきま。


ぼくはおしっこをがまんできなくなったけど、けいいちがまだがまんしてくれていたので、それでセーフということになりました。


結局、大熊猫とはちょっぴり話しまして


わりと仲良くなったけど


ちょっと遠かったし


なんだか退屈だよって言ってみようとしてたし


ずっとおなかをだして


ずっと食べていたし


大熊猫とはちょっぴり話して


それでおしまい。


大熊猫とはそういう関係。ご関係。


けいいちと不忍池でお弁当を食べて


ミートボールとミートボールを交換しまして。


ぼくの魔法瓶の魔法はでもやっぱり解けていて


池の鳥。タンチョウ、ねえ、タンチョウ。


タンチョウの毎日。どんな毎日?


それはけいいちのクイズ。


大熊猫、タンチョウ、毎日。


帰り道。けいいちが靴下をなくしてしまいまして。どうやって?


でも靴はまだ履いていたから


ぼくも大熊猫と話したことは全部忘れちゃいました。





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ひざを抱えて ずっと待ってた

                                           
                                 
                                
 
 
                 『ひざを抱えて ずっと待ってた』
 
 
 
 
 
「そのためには失わなければならないものがある」
 
 
そのため・・・・・。ヒーローのいつものそのセリフ。
 
 
ぼくは悲しくなる。悲しくなるんだ。
 
 
テレビを消す。宿題をする。悲しい気持ちのまま。
 
 
宿題が終わる。お風呂の掃除をする。
 
 
その間もずっと考えている。失わなければならないものについて。
 
 
ならない  ということについて。
 
 
晩御飯は味がしなかった。おかわりはしなかった。テレビの音がうるさくてやだった。
 
 
自分の部屋に戻る。鍵をかける。ぼくは本棚の奥のあの本をてにとる。
 
 
ずっと読まなかったあの本を。
 
 
『おわりのおわりのおはなし』の本。何も書いてない表紙。白い色。
 
 
おわりのおわりが気になった。今のぼくはそうなった。薄い本だった。ぼくが知りたいことに答えがちゃんとあるとは思えなかった。
 
 
お風呂が沸いた音がする。ぼくは本を読み終える。誰かと誰かが笑ってる。外で誰かが笑ってる。
 
 
ぼくはよそゆきの服に着替えた。本の感想はそのポケットにしまった。胸にはしまわなかった。どうせ入らなかった。
 
 
家を出るときサヨナラとつぶやく。靴がうまくはけなくて靴べらをつかう。ドアは静かに閉める。水槽の中の金魚が最後にぼくを見る。ぼくはサヨナラとつぶやく。
 
 
公衆電話から誰かに電話しようと思った。おわりのおわりのおはなしのその結末を伝えようと思った。でも、やっぱりそれはやめた。
 
 
もしもその誰かが、今、楽しい時間をすごしていたら、わるいから。楽しい時間を邪魔しちゃ、わるいから。
 
 
テレホンカードが吐き出されて、音がする。ぼくは電話ボックスからでる。夜の道を歩く。
 
 
『失わなければならないもの』について考えながら。
 
 
石ころをひとつけった。花の匂いをかいだ。花の名前は知らなかった。パトカーが2回通り過ぎて、それ以外は何も通り過ぎなかった。
 
 
ぼくはいつもの場所にむかう。いつも一人で行く場所に。悲しい気持ちのときいつも。
 
 
坂を上って、街灯がともってくれなくて、鉄塔のところは暗くて、でもたどり着いた。
 
 
鉄塔によじ登って、その中ほどに腰を下ろす。街明かりが揺れる。ぼくはそれを見下ろしてる。
 
 
『おわりのおわりのおわりのおわり』
 
 
おわらないはずのストーリーのその結末。
 
 
家を出る前にしまったはずの感想は
 
 
いつのまにかポケットの中から消えていた。まるではじめからなにもなかったみたいに。
 
 
風が吹いた。くしゃみが出た。何も思い出さなかった。居場所があればよかった。
 
 
ぼくはもう待つしかなかった。
 
 
ひざを抱えてずっと待ってた。
 
 
おわりのおわりがおわるまで。
 
                                       
                                      
                                  
                                        
                                  
                                   
                        

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1じかん目はこくごだった

          『1じかん目はこくごだった』





1じかん目はこくごだった。


こくごからのスタートでよかった。


先生は黒板にたくさん字を書いて消した。


先生はこの前、25さいだといってた。


恋人はいますかって質問は誰かがその時した。


女子の誰かだった。


先生は男の大人のひとだったからそれにはちゃんとこたえなかった。


男の大人のひとはちゃんとこたえないことになってる。


たぶん


損したくないんだと思う。


教科書をひらいたら


こくごはぼくを見てた。


スイミーのおはなしだった。


スイミーは5回読んだけど。


5回目までちゃんと読めた。


たぶんぼくは損したくなかったんだと思う。


出席番号順の音読がはじまった。


先生が「はい、いいですよ」と言うまではその人が読んだ。


ぼくの番が来て、僕は起立をした。


ちょうどページの変わり目だったから


ちょっと困った。


「ページをめくってください」と先生がいうのかと思ってずっと待ってたけど


先生はいわなかった。


みんな勝手にめくってたからぼくもめくって読んだ。


声を出して読んだ。


ぼくが読んでいると先生が「はい、そこまででいいですよ」とぼくにいった。


先生は教卓を指でたたきながら何かのリズムをとっていた。


何のリズムなのかはよく分からなかったけど


すこし急いでいるのだけはわかった。


先生は「上手に読めましたね」といって、ぼくのことを誉めてくれた。


だからぼくは上手に読めたんだとわかった。


スイミーのおはなしを上手に読めて本当によかった。


そしてぼくは


2じかん目が始まるちょっと前に学校から脱走した。


2じかん目はさんすうだった。


ぼくはこくごよりももっとさんすうがすきだった。


2じかん目がさんすうでたぶんきっとやっぱりよかった。


脱走したぼくは、最初、神社にいくつもりだった。


何かおねがいごとがあった気がした。


でもそれはわすれちゃったから駅に行った。


駅からどこに行くかはまだ決めてなかった。


電車での移動になると思った。


電車ののりかたはこころえてたけど


切符の買い方って知らなかった。


『よびだし』のボタンを押したかったけど手が届かなかった。


うしろでだれか知らないおじさんの咳払いがきこえたから


ぼくはそこをどいた。


おじさんは急いでるみたいだった。


それから重そうなカバンを抱えていた。


ぼくは何も抱えていなかったから余計そう思った。


そのあとで


ぼくは何とか駅のホームまでいけたけど


そこでつかまった。


はさみうちだった。


きらいな先生とすきな先生の二人だった。


ぼくはじたばたしたりはしなかった。


売店のおばちゃんがぼくに手を振ってた。


ぼくは両腕をつかまれていたからそれにはこたえられなかった。









学校の授業が全部終わると


ぼくは学童保育所にいった。


預かってもらうためにいった。


学童保育所にはぼく以外にも預かってもらっている子がたくさんいた。


みんなとあそんでいるとすごく楽しいから


ぼくはそこが大すきだった。


今日は先生が竹とんぼのつくりかたを教えてくれた。


ぼくにナイフで竹を削らせてくれた。


ナイフで竹を削れて楽しかった。


ぼくはまだ少年くらいのもんだからそれくらいのことでよかった。


そういえば先生は25才だとこの前いってた。


上級生の男子の誰かが恋人はいるのかと質問してた。


先生は女の大人のひとだから「たくさんいる」といって笑ってた。


女の大人のひとはだいたい、たくさん欲しがったあとに笑ってみせる。


たぶんそれは損したくないからなんだと思う。


ぼくは完成した竹とんぼであそんだ。


ともだちのけいいちが来て野球しようよとぼくにいった。


だからぼくも野球をしようっていった。


竹とんぼも野球もできるなんて本当にうれしいことだと思った。


そしてそのあと


おやつのじかんのちょっと前に


ぼくは脱走した。


今日のおやつはプリンとソフトサラダのせんべいだった。


どっちもぼくは大すきなおやつだった。


脱走したぼくは


最初、神社にいくはずだった。


この前何か忘れ物をしたような気がした。


でも何を忘れたか思い出せなくてやめた。


だから結局駅にむかった。


駅は何回行っても大丈夫な場所だったからそうした。


だけど


その途中で、ぼくはつかまっちゃった。


こんなに早くにつかまるのって初めてだった。


先生が「もう、手に負えない」といった。


そのとき、カナブンが飛んできて先生に体当たりしようとしたから


ぼくはそれを追っ払おうとした。


でも先生はそれをぼくが暴れたのと勘違いして


ぼくをすごく怒った。










家に帰ったらすぐにテレビをつけた。


部屋は暗くしたままでいた。


テーブルの上にはいつも書置きがあった。


ぼくはそれを読んだことはなかった。


教科書をひらいてスイミーを読んでみた。


スイミーが元気に泳いでいたからぼくはすこし安心した。


家から脱走したことは一度もなかった。


いつもぼくはずっと待ってるだけだった。


ひざを抱えてずっと待ってた。




 


                    おわり

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四角四面の世の中だからさ

                             
                 
                   
                
       


          『四角四面の世の中だからさ』






♪ キケンな恋を  wow wow wow


しちゃいけないぜ   スキャンダル


  いくら好きでも  お前は  あいつのステディーガール ♪




  ぼくはカセットテープに録音したチェッカーズの曲をウォークマンで聴きながら口ずさんでいた。



  だからそれほど待たずに幼稚園バスが来た。



  間の抜けたピーっていう音と共にバスのドアが開いた。



  ぼくは歌いながらそれに乗った。



  「よう、たか坊、今日はご機嫌だな」



  運転手のモカ吉おじさんがぼくにいった。



  「べつにご機嫌ってわけじゃないよ」



  ぼくはヘッドフォンを少しだけずらしてそう答えた。



  「なんだ、そうかい、朝から恋だの愛だの言ってるから、てっきりご機嫌なんだとおもっちまったよ」



  「モカ吉おじさんひとつきいてもいい?」



  「うんにゃ、この老いぼれにいったい何がききてえのかい?」



  「キケンな恋ってどんな?」



  「うーん、そーさなー・・・・、信号なしの道路をブレーキなしで走るみてなもんさな、そりゃもう、おっかないでさ」



  「止まらないんだね」



  「ノンストップでさ」



  モカ吉おじさんは顔のしわを増やして笑った後でぼくにウインクした。



  ぼくも親指を立ててそれに応えた。



  「ありがとう、モカ吉おじさん、ところでこのバスはどこゆき?」



  「そりゃ、たか坊、幼稚園にきまっとるがな」



  「本当は?」



  「幼稚園」



  「なんだ、ツマンナイ」



  ぼくがそう言って運転席の横でヤダヤダ踊りをしながら口を尖らせていると、えみこ先生が「ほらほら」とか「まあまあ」とか「こりゃこりゃ」とかいいながらぼくを後部座席の方まで連れて行った。




 ♪愛さーずにー  いーられーないー



  たとえー  禁じられーてもー ♪



 
 ぼくは歌いながら、じゃっかん抵抗した。



 えみこ先生はすごく力が強いから、キケンな恋にあっても大丈夫だと思う。



 ぼくは今日はゆっこちゃんの隣の座席だった。そこに今日は身を固めた。



 ゆっこちゃんは窓の外を見ていた。



 「ゆっこちゃん、おはよう」



 「うん」



 ゆっこちゃんはあまり元気がないのか、窓の外を見たまま小さくそう頷いた。



 だからぼくは歌うことにした。



 ♪あきらーめがー   できれーばー


  お前くるしめなーいねー   悪いのはオレのほーさー♪



 ぼくが歌うとゆっこちゃんがすぐにこっちを見て言った。



 「うるさいけど」



 「うん、ごめん、でもゆっこちゃんのために歌ったんだ」



 帽子のゴムのところが首にきつくしまっていたい感じがした。



 「うるさいけど」



 「うん、でもとりあえず2番も聴いてね」



♪夜汽車の窓に   wow wow wow



指で書いたね   アイ ラヴ  ユー ・・・・・・・



 「うるさいんだけど」



 「・・・・・・・・・・」



 ゆっこちゃんは今朝はなんだかすごくキケンな状態みたいだった。



 空き巣に注意の看板みたいな目になってる。



 でも・・・・・・、ぼくはときめく必要があるんだとおもった。今のゆっこちゃんに。



♪かなしいーねー   オレたちー ♪



 キケンな恋ってある日突然やってくる。



 四角四面の世の中の
 


 四角四面のバスの中



 ♪せつない恋にかけたよ  あの娘と  スキャンダ 〜  ル





お  し  ま  い
                           
                                            
                         
                                               

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