ぼく かなしいよ
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『ぼく かなしいよ』 |
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『ぼく かなしいよ』 |
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『大熊猫とはちょっぴり話した』 上野公園には里桜が咲いていました。ましました。 顔だけの大仏様を拝んでから少し歩きまして。ましまして。 ぼくとけいいちは上野動物園にいきました。うん。ましました。 けいいちがおしっこをがまんできなくなって、ぼくもがまんできなくなりまして。ましまして。 トイレはいくつもあったんでした。んでんでした。 ぼくのブルーベリーガムとけいいちのブルーベリーガムを交換しました。ましました。 けいいちが何もないところで転んで、魔法瓶の水筒のなかが割れまして。ましまして。 『パンダがやってきた!』って書いてある旗でぼくとけいいちは手を拭きました。したました。 ゲートをくぐる前にしなくちゃいけないことってなんだ?ってけいいちがぼくにクイズを出しまして。しましま。 「わからない」ってぼくはこたえました。 でも二人とも、動物園に入ってからはわりと静かにしていました。 大熊猫を見るために並びました。 警備の人が子供優先の列に誘導してくれたけど けいいちが泣くほど嫌がったので 大人の列に並びました。ましました。 フラッシュ撮影が禁止だとウルトラセブンは変身のとき困るねってぼくがいったら けいいちもそうだよっていってくれました。ました。 少しずつひとの列が動いて ぼくたちは大熊猫に近づいていきました。きまきま。 ぼくはおしっこをがまんできなくなったけど、けいいちがまだがまんしてくれていたので、それでセーフということになりました。 結局、大熊猫とはちょっぴり話しまして わりと仲良くなったけど ちょっと遠かったし なんだか退屈だよって言ってみようとしてたし ずっとおなかをだして ずっと食べていたし 大熊猫とはちょっぴり話して それでおしまい。 大熊猫とはそういう関係。ご関係。 けいいちと不忍池でお弁当を食べて ミートボールとミートボールを交換しまして。 ぼくの魔法瓶の魔法はでもやっぱり解けていて 池の鳥。タンチョウ、ねえ、タンチョウ。 タンチョウの毎日。どんな毎日? それはけいいちのクイズ。 大熊猫、タンチョウ、毎日。 帰り道。けいいちが靴下をなくしてしまいまして。どうやって? でも靴はまだ履いていたから ぼくも大熊猫と話したことは全部忘れちゃいました。 |
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『ひざを抱えて ずっと待ってた』
「そのためには失わなければならないものがある」
そのため・・・・・。ヒーローのいつものそのセリフ。
ぼくは悲しくなる。悲しくなるんだ。
テレビを消す。宿題をする。悲しい気持ちのまま。
宿題が終わる。お風呂の掃除をする。
その間もずっと考えている。失わなければならないものについて。
ならない ということについて。
晩御飯は味がしなかった。おかわりはしなかった。テレビの音がうるさくてやだった。
自分の部屋に戻る。鍵をかける。ぼくは本棚の奥のあの本をてにとる。
ずっと読まなかったあの本を。
『おわりのおわりのおはなし』の本。何も書いてない表紙。白い色。
おわりのおわりが気になった。今のぼくはそうなった。薄い本だった。ぼくが知りたいことに答えがちゃんとあるとは思えなかった。
お風呂が沸いた音がする。ぼくは本を読み終える。誰かと誰かが笑ってる。外で誰かが笑ってる。
ぼくはよそゆきの服に着替えた。本の感想はそのポケットにしまった。胸にはしまわなかった。どうせ入らなかった。
家を出るときサヨナラとつぶやく。靴がうまくはけなくて靴べらをつかう。ドアは静かに閉める。水槽の中の金魚が最後にぼくを見る。ぼくはサヨナラとつぶやく。
公衆電話から誰かに電話しようと思った。おわりのおわりのおはなしのその結末を伝えようと思った。でも、やっぱりそれはやめた。
もしもその誰かが、今、楽しい時間をすごしていたら、わるいから。楽しい時間を邪魔しちゃ、わるいから。
テレホンカードが吐き出されて、音がする。ぼくは電話ボックスからでる。夜の道を歩く。
『失わなければならないもの』について考えながら。
石ころをひとつけった。花の匂いをかいだ。花の名前は知らなかった。パトカーが2回通り過ぎて、それ以外は何も通り過ぎなかった。
ぼくはいつもの場所にむかう。いつも一人で行く場所に。悲しい気持ちのときいつも。
坂を上って、街灯がともってくれなくて、鉄塔のところは暗くて、でもたどり着いた。
鉄塔によじ登って、その中ほどに腰を下ろす。街明かりが揺れる。ぼくはそれを見下ろしてる。
『おわりのおわりのおわりのおわり』
おわらないはずのストーリーのその結末。
家を出る前にしまったはずの感想は
いつのまにかポケットの中から消えていた。まるではじめからなにもなかったみたいに。
風が吹いた。くしゃみが出た。何も思い出さなかった。居場所があればよかった。
ぼくはもう待つしかなかった。
ひざを抱えてずっと待ってた。
おわりのおわりがおわるまで。
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『1じかん目はこくごだった』 |
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開設日: 2009/10/2(金)