「男と女」

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白雪の夢−01−

白雪の夢−01−

  私が50歳を前にして脱サラし、山奥に引き込んだのにはわけがあった。

若い頃から仕事一筋にやって来て、ある事件の責任を問われて閑職に追われた。私には、その事件に関して

何の落ち度もなかった。ただひたすら上司の言うとおりにしただけだったのだが、結局会社の責任問題になる

のを恐れた上司は私に言い含めて詰め腹を切らせたのである。

  当時、しばらくするとそれなりの地位は約束するとのことだった。しかしそのときの口約束は何も果たされず、

結局私は閑職に追われたまま何年もの歳月が過ぎた。私に責任を取らせた上司は今や重役になっていた。


私は部下のいない役職につかされたまま暇な日々を送らざるを得なかったのである。私は、会社を辞める決心

をするとともに、世の中が嫌になっていた。僅かな退職金で信州の山奥に、山小屋のような小さな古い家を買

って、そこに隠遁したのである。

  妻や子供達は、「何を馬鹿なことを言っている。」というふうで、相手にもされず、とうとう離婚されてしまった。

私は、僅かな身の回りの物以外は総て妻子に渡して、山中に引っ越した。生計は、僅かな田圃や菜園で採れ

る米や野菜の他、山で採れる果実や山芋などで立てた。必要な現金は、それらの余りを売ったもので得ていた。

贅沢さえ言わなければ、人間はけっこう生きて行けるものである。
 
  その日は、朝からどんよりと曇っていた。

暮れも迫っていたし、私は冬越しの品物を買うために町に買い物に行くことにした。途中で小さな村を通り過

ぎるものの、町に出るまでには山をふたつも越えなければならなかった。峠の道を2時間ほど歩いてからバス

に乗って町に出るまで更に1時間かかる道のりである。

  ちょっとした出来事があって、町で買い物を済ませたときには3時を過ぎていた。帰りのバスに乗り遅れ、

1時間後のバスを待たなければならなかった。

バスの終点の村に着いたときには既に4時を過ぎていて、太陽は山の端に沈み、あたりは暗くなり始めていた。

それとともに、とうとう雪が降り始めきた。

  私は、寂しい山道を一人荷物を背負って歩いていた。森に入るとあたりは余計に暗さを増して、私は雪明

りだけを頼りに歩いて行った。

  ひとつ目の山を越したあたりから、周りの景色は雪ですっかり白くなっていた。雪道用の靴ではなかった

し、背中の荷物は重いしで、私はすっかり疲れていた。ふたつ目の峠を越すときには、周りはすっかり暗く

なっていて、雪の明りでさえ何も見えない状態になっていた。すっかり疲れ果てて、もう進むこともできない

し、戻ることもできない状態だった。

  私は途方に暮れた。考えあぐねた末に、枯れ木を集めて焚き火をして体を温めようとしたが、雪で濡れた

柴に火は点かなかった。私は焚き火を諦め、木陰で雪を避けながらじっとうずくまっていた。

  その時である。遠くで何か物音のようなものが聞こえた。

振り向くと、何かぼんやりとした白い物が見える。狭い山道の向こうから、だんだんとこっちに近づいている

ようである。こんなところに人がいるはずもないし、私は恐怖と不安におののきながら、じっとうずくまった

ままでそっちの方向を見守っていた。

                                                −続く−

閉じる コメント(8)

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どんな話が展開されるんでしょうか?雪女の話ですか?

2005/11/14(月) 午前 7:36 rei

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真冬の怪談話でしょうか?

2005/11/14(月) 午前 9:04 めにい

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エヘヘッ、reiさん、どうなるのでしょうね?

2005/11/14(月) 午後 2:16 遊太郎

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めにいさん、雪の森って寂しいものですね。何となく不安になりますもの。

2005/11/14(月) 午後 2:17 遊太郎

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全く同じ様な境遇で和歌山の山奥で暮らしている人がいます。友達は、その人の事を「仙人の○さん。」と言っていますよ。生計は、川で魚を獲ったり山のものや、野菜作り。お金は、皿や湯のみ。花瓶など焼き物を頼まれたら造る。この前は、個展まで出したらしい。それにそこに来る2度目の奥さんまでいたという。(離婚して子供もいる。)

2007/8/8(水) 午後 10:25 さち

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なるほど、さちさん。こういう生活に男が一度は憧れるんですよねえ。でも現実を考えると・・・・・

2007/8/9(木) 午後 7:12 遊太郎

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トラバありがとございました。

その白い正体は・・・・・

2012/2/12(日) 午後 3:42 pipin☆

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pipinさん、雪女でこれを書いたのを思い出したんですよ。妖艶な雪女、憧れます。

2012/2/12(日) 午後 4:32 遊太郎

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