|
死因究明法案 犯罪見逃さぬ態勢整備を急げ
2012年05月23日愛媛新聞
犯罪による死亡を見逃す恐れが指摘されてきた死因究明制度について、抜本策を盛り込んだ関連2法案がまとまり、国会に提出された。
法案は、事件性のはっきりしない遺体を遺族の承諾がなくても解剖でき、解剖しなくても医師や警察官が血液や尿を採取し薬毒物検査することを認める。
保険金殺人などで身内が容疑者となる事件もある。社会の安全確保を目的に犯罪を見逃すことのないよう、さまざまなケースを考慮し解剖の機会を増やす意義は大きい。
むろん、勇み足で遺体を傷つけるようなことがあってはならず、警察は慎重かつ的確な判断が求められよう。専門の検視官による現場立ち会いや、初動捜査の徹底が不可欠なのは言うまでもない。
犯罪死の見逃し事例は、大相撲時津風部屋の力士暴行死事件や、一審で死刑判決が出た首都圏の連続不審死事件が記憶に新しい。警察庁は統計が残る1998年以降で45件確認しているが、これは「氷山の一角」との見方も強い。
全国の警察が昨年扱った遺体総数は17万体余り。犯罪死見逃しをなくすには、事件性が濃い場合の司法解剖や、事件性が不明確で伝染病などを調べる行政解剖の対象から漏れる遺体の扱いが鍵となる。
しかし、全国の解剖率は11%。スウェーデン89%、フィンランド78%と同庁の有識者研究会が調査した先進国との差は歴然としている。
解剖率の地域間格差も深刻だ。行政解剖を手掛ける監察医制度がある東京、神奈川、大阪、兵庫の4都府県の平均は約23%だが、残る43道府県の平均は約5%でしかない。
こうした現状では、立法措置だけでは解剖率の大幅な向上は見込めそうにない。政府は、法に実効性を持たせるよう態勢整備を急ぐべきだ。
捜査現場では、遺体の外見から事件性の有無を判断する検視官が足りない。昨年の検視官の臨場率は36%。5年前に比べ3倍余りに増えたが、警察庁が当面の目標とする50%とは大きな開きがある。
解剖医は全国で約170人しかいない。大半は大学の法医学教室の教授で、研究との掛け持ちだ。定員や経費の削減で逼迫(ひっぱく)状態にある法医学教室への支援も考えたい。
有識者研究会は昨年4月、都道府県への国立の解剖専門組織設置を提言した。だが、立法化は将来目標とされ具体化していない。解剖医の育成や施設整備には文部科学省、厚労省との連携が不可欠だが、現時点で両省とも具体策は持ち合わせていない。
警察庁は解剖率の目標を16年に20%、将来的に50%とするが、現状では困難だろう。厚労省や文科省も含め関係省庁は、態勢整備に本腰を入れて取り組まねばならない。
>>>>>>>>>
愛媛は、法医学教室に教授がいない特殊な県だ。この県が法律制定で今後どうなっていくのか、注目すべきだろう。
愛媛をはじめ、各県で状況はばらばらだが、新たな法律ができた場合、各県でしっかり検討し、整備していく必要がある。まずは、各自治体で、いったいどの程度の解剖率を達成したいのか目標を定め、さらには、それを達成するためには、どの程度、人員(医師だけでなく補助や書記など含む)や設備を整備すべきなのか、具体的な数値を定めるべく、各大学、各法医学教室と自治体間で協議し、それに則って、実際に設備人員を整備していく必要がある。
自治体による責任ある計画なしに、大学と契約した場合、人員の整備が不十分になり、法医学が壊滅的な影響を与えられる可能性があるが、それは絶対に避けなければならない。今後の成り行きに十分注意していく必要がある。
|