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[書評][スペースプローブ][機本伸司]

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あらすじ
『西暦2030年、地球に接近する長周期彗星“迩基”へと向かった無人探査機が、謎のメッセージとともに消息を絶った。有人月着陸計画のパイロット・石上香蓮は、みずからの存在に疑問を抱えながらも日々を送っていたが、ある日“迩基”の進路上に、ニュートリノ信号を発する謎の物体が存在することを知る。香蓮たち6名のクルーは、夜な夜なカラオケボックスに集い、月計画にかわる“裏ミッション”の実行計画を練るが…。』(「BOOK」データベースより)


以前に同著者作の[神様のパズル]の感想を書きました。
「神様のパズル」がなかなか面白かったので、作者繋がりで今回の「スペースプローブ」も読んでみました。
僕が読んだのはJコレクションで出ていたものが文庫化されたものです。
内容の違いがあるかどうかわかりませんが、表紙のイラストが違うようです。
まぁ作中のイメージをするならJコレクションの表紙イラストの方が良いでしょう。



物語の舞台は2030年の日本。
主要な登場人物は皆、日本初の月面着陸ミッションを目前に控えた宇宙飛行士達です。
月に降り立つ事を夢とする主人公の曽我部臣太と臣太と共に宇宙船に乗る橘緑郎、石上香蓮。
地上から3人のバックアップをする大友伴人、額賀千世、藤原友里。

以前行われた無人探査機による彗星探査ミッションの失敗の責を問われ組織を辞した天野博士。
事故の原因を是が非でも知りたい博士は、臣太らクルー達にその調査を頼んでくる。
そしてその彗星探査事故の奥に、博士の娘の琴美が発見した未知の何かがあることがクルー達に伝えられ…。


という感じのイントロダクションです。
非人類とのファーストコンタクトが予想される状況で、そのコンタクトのための計画の遂行とそこまでの過程を描いています。
クルー達がよく集まり、相談事をする場所となっているカラオケボックスが主に舞台となります。
そこでコンタクトのための計画、裏ミッションの実現可能性について延々議論するというのが序盤から中盤。
終盤は実際に宇宙に向かい計画を実際のものに移すという流れ。
臣太達は裏ミッションの遂行の末何を見たのでしょうか?
それは実際読んでみてのお楽しみ。


以下感想。

個人的に合わない作品でしたね。

第一にキャラクター像。
それぞれ口調や性格、考え方などなどはっきりしていてしっかり区別されていて良かったです。
とは言うもののこういう不安定な性格の人達が宇宙飛行士をやれるものかと疑問に思った。
歴代の宇宙飛行士の方々がどういった性向をお持ちなのか僕は知りません。
が、作中の登場人物の多くはどうにも個人主義が強すぎる気がする。
とりわけ香蓮は天才型の人間故に周りがついていけないような性格ですし。

そもそも裏ミッションの立案、言うなれば組織への裏切り・クーデターを起こす原因も独断が過ぎる印象。
もちろん単なる好奇心や恩義からくるものではないことが物語を読めば分かりますが、落ち着いて見れば色々なものを蔑ろにしている。
香蓮個人の想いが強すぎてみんなが流されてしまった感があり、それは1つの大きな計画に従事する人間としてはいかがなものかと。
しかしながら新たな発見というものはこういう無茶をやらなきゃ見つからないかもしれないというのも納得。
まぁ地道にやっていては新たな発見ができない、なんてこともないんでしょうけど。

そんな印象があるから、クルーらの議論が大学生を通り越してもはや高校生の議論のように感じられた。
もちろん専門用語は飛び交うのだけど、裏ミッションを実現するための理由を必死に議論しているだけで具体的な計画の内容を議論しているようには感じられなかった。
実際に宇宙に行くのは自分達だ、ということだけで夢物語を論じている、そんな感じ。


第二に物語の持っていき方がやや強引な印象を受けた。
未知の現象に対してはあらゆる事が想定されるはずなのに、香蓮はじめ関係者殆どが非人類の存在ありきで話を進めている印象を受けた。
臣太も当初は物理現象での解明、科学による説明ができると主張してはいましたが、結局香蓮に流されるような形で意見を固めるし。
誰かしら、というか天の声でも何でも良いから「科学」の可能性を主張し続けないことにはファンタジーに過ぎないのでは?
作中不可知な力に対して幾度も言及されていますが、どうしても「神」って思わせたいんだろうなって思った。
なのに何故か「神」という単語は1つも出てきていない(意地でも出さないようにした感じ)。
お話の作り方は僕は知りませんが、神様とかそういう宗教性を出してはいけない決まりとかあるのでしょうか?
ちょっと不自然な程に意図的なような気がしたのでマイナスの印象。

クーデターを起こした所で当人らに結局未来は無いのではないでしょうか?
自分達が宇宙飛行士として実際に宇宙に出る事はできなくても、やり方によっては未来に可能性を残すには十分な事ができたはず。
結局の所、当人らのわがままが重なり過ぎた結果のドタバタという印象。


どうにも香蓮のキャラクターにかき回されてトラブルが多々引き起こされた印象しかない。
個人的にあまりこういうキャラクター像が好きではないということからくるものかも。
そういう意味では実に印象強い。


とは言うものの、観測データから不思議な規則性を見つけ、そこから未知の存在へと繋がるようなSFミステリ的物語展開は面白いです。
キャラクター同士の会話が多い(ラノベのような感じではなく、専門性のある議論のようなもの)のも退屈にならずに済んで良かった。
もしかして遭えるかもしれなかった非人類的存在がありきたりな「エイリアン」で無かったのも面白かった。
ここはまた違った意味で大いに可能性に満ちたものだと思いました。
明らかに高位の存在であると思うから、こちら側を感知できないというのはちょっと残念な気はしますが…。


「神様のパズル」でもそうでしたが、機本さんの描くキャラクターはどうにも個人的に合わない。
特に天才型キャラクターのピーキーな性向が見ててイライラする…のは周りに合わせ過ぎることを良しとしてしまう己の性格故でしょうか…。
物語は目的もしっかりしるし、風呂敷を広げ過ぎることもなくスッキリと収まっていて非常に読み易いです。
最後の方は結末が早く知りたい!!というか物語に引き込まれてしまったのでやや斜め読みな感はありましたが、内容はちゃんと理解できます。
続編も作りやすいかもですね。
「神様のパズル」も確か続編があるんですよね(読んでしばらくして知りましたよ)。
もしかしたらこの「スペースプローブ」にも続編あるのかな?
調べてみることにしましょう。




満足度:★★★★★★☆☆☆☆




どちらかというと「神様のパズル」の方が好きかな。
比べるような話でもないんでしょうけど、物語の方向的にということで。

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