日々是雑感

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 引き続き、11月25日のJ−CASTニュースに掲載されたドングリまき(置き)を行っている団体の責任者である日本熊森協会の会長さんの主張を見てみましょう。
ネズミばかりがドングリを食べているかについては、こう反論した。

 「それは全部ウソですよ。クマが食べた証拠写真など、うちはいっぱい撮ってあります。農作物を食い荒らすようなネズミは、山にいるネズミと種類が違います。山にいるのは、半径10メートル以内にあるドングリを食べるアカネズミです。まいたドングリは、タヌキやシカなどいろんな動物が食べており、バランスが取れているので、ネズミだけが増えるようなことはありません。批判している人たちは、奥山を歩いていないので、そんなことを全然知らないんですよ」
 意図的に回答をはぐらかしているのか、他人の言葉が理解できないのかわかりませんが、「ネズミばかりがドングリを食べているのではないか?」という指摘に「熊が食べた証拠写真がいっぱいある」という主張はまるでかみ合っていません。

 証拠写真があるのなら、熊も置いたドングリを食べたのでしょう。当然ですね、思いがけず、本来あるべきではないそんなもんが置いてあれば。
 しかし、「熊が食べた=ネズミが食べない」ということにはなりません。
 もちろん、「熊が食べない=ネズミが食べない」ということにもなりません。
 そして「ネズミが食べた=熊が食べない」ということにもなりません。
 つまり、熊が食べた証拠写真であっても、ネズミが食べていないという証拠には全くなっておらず、全然回答(会話)になっていないわけです。

 ちなみに、私も行っている自動撮影ですが、赤外線(体温などの温度感知)センサーを使いますと、ネズミのような小動物はよくよくセンサー近くまで近づくか運動量が多い場合を除いて、普通、センサーが感知しません(逆に、ネズミなどまで敏感に感知するような精度の高いセンサーでは、日光のゆらぎなどでも誤作動を起こし過ぎ実用的ではなくなる)から、ネズミが食べているところが撮影できたことが無いからと主張されたとしても、それはネズミが食べていない理由にはなりません。単に撮影ができていないというだけに過ぎません。

 都会での衛生被害や農作物の被害を多く出すネズミは、確かにドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミの3種です。アカネズミはそれらの勢力に圧されているため、街中では確かに見かけません。この点では、会長さんの主張は間違っているとは思いません。

 しかし、置いたドングリのためにアカネズミが増えることに懸念する理由は、「農作物被害が出るか否か」が論点ではありません。
 一番の懸念は、以前書いたように、木々の成長戦略として実の豊作・不作の循環を行っている=不作の年にネズミなどを淘汰し、豊作の年に子孫を残すことを目的としているのに、餓死すべきネズミを生き残らせるのは、その地域における木々の勢力拡大を阻害する恐れが強い、という懸念をしているのです。
 こんなことは、少しでも山に関心をもって歩いたことがある人ならば、誰でも知っている程度のことのはずなんですが…?

 さらに、「まいたドングリは、タヌキやシカなどいろんな動物が食べており、バランスが取れているので、ネズミだけが増えるようなことはありません。」などとおっしゃっていますが、仮に「増える」ことが無くとも、「餓死すべきはずのネズミを生き残らせる」ことには間違いなく、それが問題だと言っているわけですが、何を指摘されているのか、ご理解できないのでしょうか?
 また、ネズミの出産と生まれたネズミがさらに出産するまでの期間と、その天敵となりうる動物のそれとでは、はるかにネズミが早いわけで、過剰な食料によってネズミが急激に増えることはあっても、それに抑制がかかるまでには時間がかかるということは、理解できませんかね??

 動物たちにしても、以前紹介したように、ドングリに含まれるタンニンは有害であり、身体を慣らさずにいきなり人工的に食べさせると、動物にとって深刻な害(最悪の場合は死に至る)ということも懸念されます。
 これらについては、どうお考えなのでしょうか?

 細かなところですが、会長さんは、「アカネズミの行動範囲が半径10メートル程度」であるようなことをおっしゃっていますが、これは何を根拠におっしゃっているのでしょうか?
 私は以前、冬山で、積雪の上に残されていたアカネズミもしくはヒメネズミの足跡を追跡したことがあります。吹きさらしのやわらかく薄い積雪の上にしっかりと足跡を残し、凍って硬くなった場所になって足跡が無くなるまでの数十メートルを追跡したことがあります。見失った場所の周辺には木々も穴も無いので、さらに移動をし続けたであろうことは容易に推測ができます。

イメージ 1
【積雪1メートル以上を掘り登り雪上に出た穴と足跡の写真。ここから追跡】

イメージ 2
【通り道がわかったので、センサーを精密なものに変え、日光の出ない日没後のみに設置し、撮影】

 まあ、写真は、こういうのを撮影する程度のことはしている=少しは語る資格はあるとおわかりいただけるためにUPしただけです。

 さて、念のために少しネットで検索したところ、アカネズミなどを研究されたNOZOさんという方の「Apodemus net」というサイトで、アカネズミの行動範囲が数kmと紹介されています。なお、ヒメネズミに関しては、高さ10メートル程度の木にも登って行動するという旨のことが紹介なされています。
 これらのことから、会長さんの「半径10メートル以内にあるドングリを食べるアカネズミ」と言うことこそ、勘違い、もしくはそれこそ「ウソですよ」「全然知らないんですよ」という感じがしますが?
 会長さんはまるで、「アカネズミの行動範囲は熊よりはるかに狭いので、ネズミが食べる懸念は少ない」かのように思われているか、あるいは読者にそう思いこませようとしているように見えますが、その主張は大いに疑わしい内容というわけです。

 行動範囲がある程度の大きさがあり、そして一定地域においては明らかに熊よりもネズミの方が生息頭数が多いのですから、熊と、ネズミと、どちらがより多くそれを見つける機会があり、そして食べることになるか、ちょっと想像するだけでも、ネズミに大きな影響を与えるということはわかりそうなものですが。

 会長さんの、最後の主張です。
 これに対し、熊森協会の森山会長は、こう批判している。

 「動いていないのは環境省であって、うちはどんどんドングリの木などを植えています。中山間地域で、柿や栗などの木を植えていたのは、凶作のときに街中に出てくるのでクマ止め林として必要だったからです。役人は現場を知らないので、柿を落とせなどと、してはならないことを指導しているんですよ」

 植林については、以前、このような記事の紹介こんな考えを書きましたとおり、植えりゃいい、っていう単純なものではありません。当然、その植林する苗木もその場所や周辺で採取・栽培したものからのものなんでしょうな?
 何も考えずに無責任に動いて良いならば、誰でもできます。深く考え、責任を背負い慎重に動かなければならない人が世の中には相当いるということを、ご存じないのでしょう。
 よく考えもせずに無責任な植林をすれば、また「林野庁の無計画な計画のせいで」などと、結果論で批判だけするんじゃないんですか?実際、戦後の住宅難でスギやヒノキのような住宅用木材を大量に植樹せざるを得なかった当時の事情を一切鑑みずに、今、その植樹は失敗だったと非難を協会さんはなさっているではないですか。
 もし、このように影響の大きさが図れない・疑義の多いドングリまき(置き)で将来重大な悪影響が生じた場合は、どう責任を取られるおつもりなのでしょうか?取り返しがつきませんけど?
 もっとも悪いことに、こういうものの悪影響は因果関係が証明しづらいという点がありますね。ですが、たかが多少熊が当然食べた写真程度だけで、効果が出ているのだと強弁されても困りますね。

 柿やクリを落とすというのは当然、自家消費用に植えていたものが、過疎化・核家族化・高齢化によってその役割を果たさなくなって放置されているものについて語っているわけで、山間部の、高齢者の独り暮らしの住居の近くにかつては大家族を楽しませた果樹が手に負えなくなって残されていれば、野生動物の接近・住人との接触が懸念されるので進められているわけです。
 「クマ止め林」として山間部の住居の緩衝地帯として意図して植えているという話は私は聴いたことがありませんが、そんなものは熊の生存に何の抜本的解決にはなりませんし、仮にそれが正しくとも、上記のような放置された民家・集落近くの果樹を落とすことを「してはならないこと」などというのはまさに「現場を知らないで語っている」に過ぎません。
 そもそも環境省のクマ類出没対応マニュアルでは、集落や人家に影響の無いものは残しておくよう指導しています。環境省をひどく批判しているけれども、実はその環境省・役人の提言を読んでいないで言っているという疑義が生じます。

 これらのJ−CASTニュースの記事を何も予備知識も無い人が拝見すると、何となく、この協会の会長さんが様々な指摘や疑問に毅然と明快に回答したかのような印象を持ってしまいそうですが、この記事にある発言どおりならば、実は全く指摘に答えておらず・話がかみ合っていないとか、その内容の信憑性にも著しい疑義があることが含まれていることがこう1つ1つ見て行くとよくわかります。

 J−CASTニュースの記事と、私の考えをご覧になられて、誰のどの主張を支持されるかは、読者の方のお考えしだいです。

 ですが、最後に先に書きましたとおり、この日本熊森協会さんは「マスメディアのみなさんからの当協会取材受付条件」として「1、人間による森林破壊の最大の被害者である哀れなクマを、絶対に悪く報道しない。」と、報道内容に条件をつけるような姿勢の団体である=日本熊森協会について掲載している報道は全て、そういう条件に従ってなされている可能性(恐れ)が高いということを付け加えておきます。
 私はそういう公平性・客観性に欠ける一方的なものを「報道」などとは思いません。そういうのは「広告」「宣伝」と言うと思います。そしてそれは「事実」とは限りません。誰かに都合がいいだけの一方的なものという場合もあるのです。

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これはひどい・・・
山や森にも所有者がいる。
本当にすべての所有者に承諾を得て「ドングリ」をまいたのだろうか?

1人でも承諾を得ていないなら、「ドングリ」という「一般廃棄物」を他人の敷地に不法に投棄したことになるのではないか?
私も山持ちだが、私なら抗議するでしょうね。
「他人の敷地にゴミを捨てるな!」と。

もし私が、人類の歴史よりも遥かに太古の時代より生き抜いてきた「ゴキブリ」に「敬意」を表して、コンビニ弁当の食べ残しを熊森の方の庭先にでもおいてきたら、なんて言うんだろうか?

山や森の地主からすれば、自らの主義主張のために他人の敷地内に「ドングリ」を放置する熊森の行為は、この極端な例と同じなのに。

・・・本当にこれからもまくのか?
頭をよぎる・・疑い・・
宣伝行為で寄付金を集め、集めるだけ集めて・・・解散 削除

2010/12/5(日) 午前 1:44 [ :−< ] 返信する

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「:−<」さん、はじめまして。
今回まいたのは、日本熊森協会さんが寄付金などを募って購入した「原生林を含む原野」だそうで、地権者=主催者なのでその点は問題なさそうです。その他の条例や法令に違反するかしないかまではわかりませんが…。

お出しいただいたゴキブリの例で言えば、住宅地で、自分の庭だからと残飯などを置いた、というところでしょうか。そりゃ、違法じゃないでしょうけれど、近隣住民には大迷惑になりかねない…というような。
「悪臭が漂うし、ハエなども大量発生する」と抗議しても、「ゴキブリが食べている証拠写真がある。既に街は悪臭でいっぱいだ。私たちはそういう悪臭の多い街の所有地で残飯をまいている」と、見当違いな主張をしていると置きかえるとわかりやすいですね。

今、ちょっとかつてUPした批判記事を修正作業中ですが、昨年は会費収入が3800万円で、合計5200万円もの収入があったと言われています。総会では質疑は一切受け付けなかったみたいですし…ううむ。

2010/12/6(月) 午前 1:00 [ 泉ヶ岳 ] 返信する

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はじめまして。いろいろ教えて頂きました。ありがとうございます。

私が熊森の会員であることを公表すると、皮肉にとられてしまいそうですが、そうではありませんのでご理解下さい。

動物保護、環境保護などに関わったことが有りませんでしたが、入会をきっかけにいろいろ勉強中といったところです。

どんぐりまきのことは後で知り、多くの批判を浴びていることも知りました。私も自然界のことに知識が無いとはいえ、これが野生の動物への救済なのかと疑問に思いました。
記事にはうなずくばかりです。最後に書かれている「総会では質疑応答を一切受けなかったみたい」とありますが、最近あった出来事に合点がいきました。

本部からは「指示尊重」なる言葉を受けました。この団体が必要なのは、本部の言いなりで動く人と何も考えなくていいから、会費を納めてくれる人でしょう。

私も無知で行動すると、自然保護どころか、自然を荒廃させることにもなりかねませんので、もう少し勉強してから行動を始めたいと思います。

日付を見ると随分前の記事に辿りついて、コメントしてしまい、お邪魔しました。

2014/3/31(月) 午後 6:07 [ sea*u*enxp ] 返信する

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