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『象の消滅』(その3)

「最後の午後の芝生」

1982年、「中国行きのスロウ・ボート」ののち「羊をめぐる冒険」をはさんで書かれた短編。

小説家である僕が14・5年前を振り返る。
18・19歳の僕は遠距離恋愛の同い年の彼女から手紙で別れを告げられ、お金の使い道がなくなってそれまで続けていた芝刈りのバイトをやめることにする。僕は芝刈りが好きで、実に丁寧な‘いい仕事’をしていた。そして最後のバイトとして読売ランド近くの家に向かう。

“記憶というのは小説に似ている、あるいは小説というのは記憶に似ている。”

この最後の芝刈りのときの不思議な体験は既に昔の記憶として語られているのだが、朝からお酒ばかり飲んでいるあやしい女主人は、僕と超現実の間をつなぐ羊男的な役割を果たしているように見える。なぜなら彼女に案内された鍵のかかった少女の部屋は彼女の記憶のメタファーと読めるから。そこで僕は既に彼女の着ていた服を思い出せないことから、彼女のことを忘れつつあることに思いいたる。

“あなたは私にいろんなものを求めているのでしょうけれど”
“私は自分が何かを求められているとはどうしても思えないのです。”

ふたりは恋愛していたが、結局それは若いときにありがちな、お互いに相手のなかに自分の勝手な幻想を追い求めていたものだったのではなかったか。
彼女が先にそれに気づき、遅まきながら僕も気づいて呆然とする。

“僕の求めているのはきちんと芝を刈ることだけなんだ”

‘芝を刈る‘という行為は’小説を書く‘ことの暗喩であることが容易に想像される。
それは青春3部作を書き終えてなお、これからも小説を書き続けようという、村上春樹の決意表明だったのではないだろうか。

Tシャツ、テニス・シューズ、トランジスタ・ラジオ、FEN。。
この小説の1シーン、1シーンは大瀧詠一「A LONG VACATION」のジャケットのような鮮やかな夏の日を思い起こさせる。僕の履いていたテニス・シューズはアディダスのスタン・スミスだったんじゃないだろうか?などと思ってみたりするのも楽しい。


「四月のある晴れた日に100%の女の子と出会うことについて」

ひと目見て惹かれる女性に出逢ったとき、

”二人は忘れてしまっているが、実は二人は昔恋人同士だった。そしてこんなストーリーの末、ぼくたちは離れ離れになったのだ。。”

などと考えるのって、なんだかとても楽しそうだ。

0.01秒くらいのあいだにこのような無意識の思考回路がはたらいた結果が‘一目ぼれ’という現象だとしたら、なんてロマンチックなんだろう。

そんなことを考えてしまう素敵なショートストーリーです。


【閑話休題】


学生の頃小田急線はよく利用していたので、読売ランド前あたりの街並みは今でも頭に浮かんでくる。80年代前半はまだ向ケ丘遊園も健在で、新百合ヶ丘駅前は麻生区役所のほかは空き地しかなかった。多摩川以西の小田急線沿線はおだやかでのどかな郊外だった。

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☆閑話休題☆こんにちは、ねじまき楓です。実は、読売ランド前下車の大学に通っていました。といっても、キャンパスは目白でしたが。入学式と卒業式は読売ランドのキャンパスに行きました。あの辺りはホント、のんびりしてますよね。芝生のある家もたくさんあるのでしょう。

2005/6/15(水) 午後 4:02 かえで

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☆閑話休題☆楓さんコメントありがとう。実は、村上春樹の後輩にあたります。目白キャンパスとはご近所さんですね。

2005/6/15(水) 午後 9:34 [ my_*ver*c*angi*g*mood ]

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はじめまして、私は午後の最後の芝生がすごく好きです。もともと読んで知ってたんですが、少し前にJ-WAVEで長塚圭史が朗読していました(10分ぐらいの番組のためかなり抜粋されていましたが、、、)今までも好きでしたが、朗読が新鮮で、面白かったです。また来ます!!

2005/6/22(水) 午後 8:49 [ リタ ]

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コメントありがとうございます。ラジオで小説の朗読っていいですね。カトリーヌ。ドヌーブ朗読の「悲しみよこんにちは」のCDを持ってますが、おやすみ前の子守唄にしています。>team tacoriceさん

2005/6/25(土) 午後 5:30 [ my_*ver*c*angi*g*mood ]

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中国行きのスロウ・ボート

『中国行きのスロウ・ボート』中央公論社(1983) 村上春樹の初めての短編集。 1980年春から1982年夏にかけて発表された、7つの短編が収められています。 時期的には、「1973年のピンボール」から「羊をめぐる冒険」のあとだそうです。 春樹さんのエッセイ、「村上朝

2005/6/15(水) 午後 4:03 [ 村上春樹と生活する ]

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