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卒論

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アメリカ60年代初期の文学「キャッチ22」「猫のゆりかご」「V.」「カッコーの巣の上で」4作品を取り上げた卒論。
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シノプシス

科学至上主義時代の混沌/秩序観


シノプシス
 アメリカにおいて、60年代という時代は一つの重要な過渡期であった。無論、世界においても同様だが、特にアメリカでは、60年代初期に大きな転換期があった。それは、戦後のアメリカの繁栄を象徴する50年代・パクス=アメリカーナの翳りである。
 私が取り上げた、ちょうどこの転換期に発表された四つの作品、「カッコウの巣の上で」(ケン・キージー)、「キャッチ22」(ジョセフ・ヘラー)、「V.」(トマス・ピンチョン)、「猫のゆりかご」(カート・ボネガット)は、この混沌とした時代を大きく反映している。作品自体が当時の文学や社会に波紋を投げかけ、また多くの共通点を持って、一つの問題を提起している。それは、パクス=アメリカーナが崩壊するまでに築かれてきた、アメリカの物質主義、資本主義、そして科学至上主義を基礎とした体制に対する疑問である。
 物語はそれに反抗しながらも、理想の状態を模索していくが、これらは全く科学自体を否定しているわけではない。むしろ、科学的要素を取り入れて結論を導こうとしている。その要素とは、これまで様々な分野に波紋を投げかけてきた、エントロピーの法則という物理学の熱力学第二法則である。
 これから、この法則がいかにこの世界を支配しているかを述べるとともに、物語を順に追って考察していこうと思う。その際、結論との関連も含めて、章構成に化学で使われる原子の化学反応過程を用いた。なぜなら、これらの物語は正にこの化学反応と同様の過程を経て、最後には全く別の状態に変化していくからである。各主要人物の役割を、原子核の陽子・中性子・電子に見立てると、その反応と物語の展開に一致し、エントロピーを説明する上でも最も有効な方法になる。
 その過程は三段階に分かれているので、第一章をapproach(接近)第二章をreaction(反応)、第三章をvariation(変化)とした。つまり、原子核と電子の接近に見立てた第一段階の物語を主要人物の役割と共に第一章で述べ、その反応を社会背景と共に第二章で、最終的な変化と科学的根拠の説明を第三章で、物語のクライマックスと共に考察するつもりである。
 現代社会は、現代物理学の原子・分子運動と力学によって支えられていると考えられる。逆に言えば、この世界は、生半可に進んだ科学という物質世界を操る万能の武器で自然との均衡を破壊しつつあるのだ。自然のバランス――これをhalfnessと呼ぶ――これを壊せば、いずれにしろ世界はそのエネルギーを失っていくことになるだろう。これこそが、これらの作品が読者に喚起するエントロピーの増大であり、これらの作者はこの増大を防ぐために、読者にそれぞれが自己の秩序を回復せよ、つまり混沌から自己組織化をしようと告げているのである。
 文学と科学の結合は決して奇妙なことではない。無論、科学を取り上げることで逆説的に批判している部分はあっても、軽んじているのではなく、物質と精神のバランスを取り、どちらも人間になくてはならないものである、ということを言わんとしているのだと思う。これらのことを踏まえて、これからこれらの作品がどのように混沌から秩序を作り出していこうとしているのかを、組み立てていきたい。

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