出石通坂下の決闘
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萩は夏みかんの匂う街である。といっても、わたしの訪れたのは、季節を外したころばかしではある。 名物の夏みかん一個を丸漬けにしたのは美味しい。あの大きなのをぺろりと食べる快感は、おもわず生唾 ごっくんである。 萩から瀬戸内海の三田尻までの道を萩往還という。、その昔には、この道を通って京へといそいだ「長州 脱藩」浪人が多くいた。桂小五郎しかり。頬が落ち、目だけがやけに光っている、そんな痩せ浪人、長州 脱藩浪人というと、そんな姿しかわかない。しかも行動と思考は狂である。この狂が明治維新を生み、こ の国をあの敗戦まで突き動かす国の礎とした。 「そこの痩せ猫、このあたりでは見かけぬ顔だが、まさか長州脱藩の不逞浪人ではあるまいな。」 「お前こそ誰だ」 「名を聞いて驚くな。市中見回り、新撰組局長近藤ビワタローだ。どうした、刀に手をかけて、止めて おけ、そこじの腰つきでは、わたしを切ることはできぬ。悪いことは言わぬ、藩にでも帰って二親の 面倒でもみてやれ。さっさと、この場を去れ。」 「局長、何故奴を切りません。面体といい、たしかに長州浪人です。」 「沖田、もういい、時代の流れは、わしらの刃を振っても止めることはできぬ。ただただ、自分らの死に 場所を探すだけだ。」 なんてというわけで、階段のとこで出会った猫を、ビワの眼光いっぱつで退散させてしまいました。
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