やさしく噛んで
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猫は足音をたてないようにそーと歩いている。 猫「…ぬき足さし足しのび足…と。ぬき足さしあ、あっ!」 猫の視線の先に男が仁王立ちしている。 男は猫を見下ろして怒鳴った。 男「ちょっとジョニーウォーカーさん!逃げたって無駄ですよ!」 ジョニーウォーカー「べ、別に逃げてるわけじゃないけどね。 なんで私がネネムさんから逃げなきゃなんないわけ?」 ネネム「営業妨害やめてくださいよ!」 ジョニーウォーカー「私が私のビルでどんな商売しようがネネムさんには関係ないでしょ?」 ネネム「そりゃあね、ジョニーウォーカーさんがペンネンネネムの裏でどんな商売しようがネネムには 関係ないですけどね。いくらなんでも絵本カフェするこたぁないんじゃないですか?」 ジョニーウォーカー「仕方ないでしょ?偶然かぶっちゃったんだから」 ネネム「偶然?かぶった?まるでペンネンネネムを意識してないみたいな言い方ですね?」 ジョニーウォーカー「なんで君んとこのしょーもない店意識しなくちゃいけないの?この私が?」 ネネム「そのしょーもないペンネンネネムを意識してないジョニーウォーカーさんの 絵本カフェの名前が、え?ペソネソネネムですか?いったいどういうつもりですか!?」 ジョニーウォーカー「(ちょっと考え込むポーズをしながら)ペ・ン・ネ・ン・ネ・ネ・ム… ペ・ソ・ネ・ソ・ネ・ネ・ム…ん、そう言われれば少し似てるかもね?」 ネネム「ペンネンネネムの善良なお客さんを横取りしようとしているとしか思えませんよ。 今すぐペソネソネネムのオープンは取りやめてください…取りやめ…ヒックヒック…」 ジョニーウォーカー「な、泣くなよそんなことで…だけど取りやめと言われたってねぇ… もう絵本も揃えて、ペソネソネネムの看板出すだけだからねえ…。 だれかかわりにやってくれないもんかねえ… はっ!そうだ。ネネムさんがやりゃいいんじゃない?」 ネネム「え?やですよ、ペソネソネネムなんて」 ジョニーウォーカー「だから、ネネムさんの場合ソをンに変えるだけでいいんだから 一番手っ取り早いしさ」 ネネム「冗談やめてください。ネネムは今のお店だけで十分です。それに3階だてのビルなんて ネネムには広すぎて持て余してしまいますよ」 ジョニーウォーカー「ネネムさんならできるって。そう難しく考えなさんな。今より広いということは 今よりもう少しお客さんを感動させればいいだけのことだろ?」 ネネム「今よりもう少しお客さんを感動させるぅ?」 ジョニーウォーカー「そうだよ。ネネムさんの今の店は…んん、まあ三感ってとこだな」 ネネム「サンカン?何を言ってるんですか?」 ジョニーウォーカー「ネネムさん、君はどういう時に感動する?」 ネネム「…感動するときですかぁ?…やっぱりいい絵本を読んだときとかでしょうか? 『100万回生きたねこさん』なんて感動したなあ」 ジョニーウォーカー「なるほど、でもそれは一感だね」 ネネム「は?…どういうことですか?」 ジョニーウォーカー「本は見る感覚つまり視覚オンリーなので一感なんだよ。きっと本より映画で 感動する人の方が多いだろ?それは映画が視覚、聴覚を刺激する二感だから なんだよ。突き詰めれば人が最も感動するのは五感がフルに発揮されたときと いうことになるってわけさ」 ネネム「はあ…五感ですか…?」 ジョニーウォーカー「私が思うにネネムさんの店は見る感覚、匂う感覚、味わう感覚なんかは そこそこいい線いってると思うんだよ。視覚、嗅覚、味覚この三感は まあいいだろ。さあ、残る2感だよ。そこをクリアできれば広かろうが 階建だろうが心配ないよ」 ネネム「あと二感ですか…?」 ジョニーウォーカー「簡単だろ?目、鼻、舌、ときたら、さあ、あと二感はどこだ? あとふたつの感じる部分だよ?」 ネネム「目…鼻…舌…あと二感…んん…どこですかねえ…?」 ジョニーウォーカー「目、鼻、舌とくればあそことあそこだろ?なんでわからないの? 自分の体に置き換えて考えてみなよ?さあ、あとはどこを刺激すればいい? さあ、あとどこが感じる部分だ?」 ネネム「…」 ジョニーウォーカー「さあ、どこが感じる?」 ネネム「…く、首すじです…」 ジョニーウォーカー「だれが君の性感帯聞いてるんだよ」 ネネム「ち、違うんですか?もお、へんな質問しないでくださいよぉ」 ジョニーウォーカー「君が勝手に発表したんだろ。ったく、キモチわるい奴だなあ」 ネネム「え?」 ジョニーウォーカー「キモチわるいこと言うなっつってんの!」 ネネム「いえいえ、キモチいいとこ言ったんです」 ジョニーウォーカー「おい」 ネネム「はい?」 ジョニーウォーカー「噛むぞ」 ネネム「え?」 ジョニーウォーカー「調子に乗るなよ?いい加減にしないと噛むぞ」 ネネム「なんですかぁ、もおジョニーウォーカーさんたら怖い顔しちゃってえ〜。もうどうせならね、 ネネムの首すじ、やさしく噛〜んで♡」 その時、 風が止んだ。 音が消えた。 世界が止まった。 一匹の猫だけが大地を強く蹴った。 病院のベンチ。 並んで座る首に包帯の男と猫。 ネネム「なにもほんとに噛むことないでしょう」 ジョニーウォーカー「君がくだらんこと言うからだろうが」 ネネム「先生があと1センチずれてたら危なかったって言ってましたよ!」 ジョニーウォーカー「急所ははずしてやったよ」 ネネム「それはどうも恐縮です。ってなんでネネムがお礼言わないといけないんですか! …(首の包帯あたりをおさえて)イテテテテ…で、結局答えはなんだったんですか? その五感のやつの」 ジョニーウォーカー「だから視覚に味覚に嗅覚ときたら、あとは聴覚、触覚でしょうが。そこさえ クリアできればネネムさんだってもう少し大きい店でも勝負できるだろうね」 ネネム「はあ・・・わかったような、よくわからないような・・・ネネムは結局その聴覚と触覚で なにをすればいいんです?」 ジョニーウォーカー「さあ、それは自分で考えることだね。自分で考えて自分の弱点を見つけ出して、 克服してこそ真の成長がうまれるんじゃないか」 ネネム「弱点…」 ジョニーウォーカー「そうだ。よく考えるんだ。そして自分で答えを導き出して乗り越えろ。 さあ、ネネムさん、君の弱点はどこだ?君はどこが弱い?」 ネネム「く、首すじ…」 ジョニーウォーカー「……君、よっぽど、首感じるんだな?」 ネネム「へへへ」 ジョニーウォーカー「なに笑ろとんねん」 さて、 いよいよ ジョニーウォーカーさんのビルで ペンネンネネムのあたらしいお店が始まることになってしまいました。 こんどは3階建のビルまるごとペンネンネネムです。 ペンネンネネムgreenのすぐ裏、徒歩30秒です。 7月オープン予定です。 だけど、どんな店にしたらいいかまだ全然わかりません。 まずは看板のソをンにかえるところから始めようと思います。 それにしてもジョニーウォーカーさんの言う聴覚だとか触覚だとかなんなんでしょう? わからないことだらけです。わかっていることといえば、 ネネムは首すじが弱いってことぐらいです…よね? ヘヘヘ。 ジョニーウォーカー「なに笑ろとんねん」 ネネム「まだいたんですか」 参考文献:佐野洋子「100万回生きたねこ」
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