やさしく噛んで

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猫は足音をたてないようにそーと歩いている。

猫「…ぬき足さし足しのび足…と。ぬき足さしあ、あっ!」

猫の視線の先に男が仁王立ちしている。

男は猫を見下ろして怒鳴った。

男「ちょっとジョニーウォーカーさん!逃げたって無駄ですよ!」

ジョニーウォーカー「べ、別に逃げてるわけじゃないけどね。
          なんで私がネネムさんから逃げなきゃなんないわけ?」

ネネム「営業妨害やめてくださいよ!」

ジョニーウォーカー「私が私のビルでどんな商売しようがネネムさんには関係ないでしょ?」

ネネム「そりゃあね、ジョニーウォーカーさんがペンネンネネムの裏でどんな商売しようがネネムには
    関係ないですけどね。いくらなんでも絵本カフェするこたぁないんじゃないですか?」

ジョニーウォーカー「仕方ないでしょ?偶然かぶっちゃったんだから」

ネネム「偶然?かぶった?まるでペンネンネネムを意識してないみたいな言い方ですね?」

ジョニーウォーカー「なんで君んとこのしょーもない店意識しなくちゃいけないの?この私が?」

ネネム「そのしょーもないペンネンネネムを意識してないジョニーウォーカーさんの
    絵本カフェの名前が、え?ペソネソネネムですか?いったいどういうつもりですか!?」

ジョニーウォーカー「(ちょっと考え込むポーズをしながら)ペ・ン・ネ・ン・ネ・ネ・ム…
           ペ・ソ・ネ・ソ・ネ・ネ・ム…ん、そう言われれば少し似てるかもね?」

ネネム「ペンネンネネムの善良なお客さんを横取りしようとしているとしか思えませんよ。
    今すぐペソネソネネムのオープンは取りやめてください…取りやめ…ヒックヒック…」

ジョニーウォーカー「な、泣くなよそんなことで…だけど取りやめと言われたってねぇ…
          もう絵本も揃えて、ペソネソネネムの看板出すだけだからねえ…。
          だれかかわりにやってくれないもんかねえ…
          はっ!そうだ。ネネムさんがやりゃいいんじゃない?」

ネネム「え?やですよ、ペソネソネネムなんて」

ジョニーウォーカー「だから、ネネムさんの場合ソをンに変えるだけでいいんだから
          一番手っ取り早いしさ」

ネネム「冗談やめてください。ネネムは今のお店だけで十分です。それに3階だてのビルなんて
    ネネムには広すぎて持て余してしまいますよ」

ジョニーウォーカー「ネネムさんならできるって。そう難しく考えなさんな。今より広いということは
          今よりもう少しお客さんを感動させればいいだけのことだろ?」

ネネム「今よりもう少しお客さんを感動させるぅ?」

ジョニーウォーカー「そうだよ。ネネムさんの今の店は…んん、まあ三感ってとこだな」

ネネム「サンカン?何を言ってるんですか?」

ジョニーウォーカー「ネネムさん、君はどういう時に感動する?」

ネネム「…感動するときですかぁ?…やっぱりいい絵本を読んだときとかでしょうか?
   『100万回生きたねこさん』なんて感動したなあ」

ジョニーウォーカー「なるほど、でもそれは一感だね」

ネネム「は?…どういうことですか?」

ジョニーウォーカー「本は見る感覚つまり視覚オンリーなので一感なんだよ。きっと本より映画で
          感動する人の方が多いだろ?それは映画が視覚、聴覚を刺激する二感だから
          なんだよ。突き詰めれば人が最も感動するのは五感がフルに発揮されたときと
          いうことになるってわけさ」

ネネム「はあ…五感ですか…?」

ジョニーウォーカー「私が思うにネネムさんの店は見る感覚、匂う感覚、味わう感覚なんかは
          そこそこいい線いってると思うんだよ。視覚、嗅覚、味覚この三感は
          まあいいだろ。さあ、残る2感だよ。そこをクリアできれば広かろうが
          階建だろうが心配ないよ」

ネネム「あと二感ですか…?」

ジョニーウォーカー「簡単だろ?目、鼻、舌、ときたら、さあ、あと二感はどこだ?
          あとふたつの感じる部分だよ?」

ネネム「目…鼻…舌…あと二感…んん…どこですかねえ…?」

ジョニーウォーカー「目、鼻、舌とくればあそことあそこだろ?なんでわからないの?
          自分の体に置き換えて考えてみなよ?さあ、あとはどこを刺激すればいい?
           さあ、あとどこが感じる部分だ?」
ネネム「…」

ジョニーウォーカー「さあ、どこが感じる?」

ネネム「…く、首すじです…」

ジョニーウォーカー「だれが君の性感帯聞いてるんだよ」

ネネム「ち、違うんですか?もお、へんな質問しないでくださいよぉ」

ジョニーウォーカー「君が勝手に発表したんだろ。ったく、キモチわるい奴だなあ」

ネネム「え?」

ジョニーウォーカー「キモチわるいこと言うなっつってんの!」

ネネム「いえいえ、キモチいいとこ言ったんです」

ジョニーウォーカー「おい」

ネネム「はい?」

ジョニーウォーカー「噛むぞ」

ネネム「え?」

ジョニーウォーカー「調子に乗るなよ?いい加減にしないと噛むぞ」

ネネム「なんですかぁ、もおジョニーウォーカーさんたら怖い顔しちゃってえ〜。もうどうせならね、
    ネネムの首すじ、やさしく噛〜んで♡」

その時、

風が止んだ。

音が消えた。


世界が止まった。



一匹の猫だけが大地を強く蹴った。














病院のベンチ。

並んで座る首に包帯の男と猫。

ネネム「なにもほんとに噛むことないでしょう」

ジョニーウォーカー「君がくだらんこと言うからだろうが」

ネネム「先生があと1センチずれてたら危なかったって言ってましたよ!」

ジョニーウォーカー「急所ははずしてやったよ」

ネネム「それはどうも恐縮です。ってなんでネネムがお礼言わないといけないんですか!
    …(首の包帯あたりをおさえて)イテテテテ…で、結局答えはなんだったんですか?
    その五感のやつの」

ジョニーウォーカー「だから視覚に味覚に嗅覚ときたら、あとは聴覚、触覚でしょうが。そこさえ
          クリアできればネネムさんだってもう少し大きい店でも勝負できるだろうね」

ネネム「はあ・・・わかったような、よくわからないような・・・ネネムは結局その聴覚と触覚で
    なにをすればいいんです?」

ジョニーウォーカー「さあ、それは自分で考えることだね。自分で考えて自分の弱点を見つけ出して、
          克服してこそ真の成長がうまれるんじゃないか」

ネネム「弱点…」

ジョニーウォーカー「そうだ。よく考えるんだ。そして自分で答えを導き出して乗り越えろ。
          さあ、ネネムさん、君の弱点はどこだ?君はどこが弱い?」

ネネム「く、首すじ…」

ジョニーウォーカー「……君、よっぽど、首感じるんだな?」

ネネム「へへへ」

ジョニーウォーカー「なに笑ろとんねん















さて、


いよいよ


ジョニーウォーカーさんのビルで


ペンネンネネムのあたらしいお店が始まることになってしまいました。


こんどは3階建のビルまるごとペンネンネネムです。


ペンネンネネムgreenのすぐ裏、徒歩30秒です。


7月オープン予定です。


だけど、どんな店にしたらいいかまだ全然わかりません。


まずは看板のソをンにかえるところから始めようと思います。


それにしてもジョニーウォーカーさんの言う聴覚だとか触覚だとかなんなんでしょう?


わからないことだらけです。わかっていることといえば、



ネネムは首すじが弱いってことぐらいです…よね?



ヘヘヘ。





ジョニーウォーカー「なに笑ろとんねん


ネネム「まだいたんですか」






参考文献:佐野洋子「100万回生きたねこ」

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デパオラの葡萄 〜赤い風船のはなし〜

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ラジオのビジネス番組に出ることになってしまいました。

「経営とかそーいうの全然わからないので、逆にご迷惑おかけしますよ」と正直にお断りしたんですが、

「またまたぁ。そこをなんとかお願いします」と言われてしまいました。

どうも謙遜しているように受け取られたみたいです…。マジやねんけどなあ…。

アナウンサーさんがぼくにマイクを向けて、録音機材の赤いRECボタンを押しました。

「なぜ絵本カフェをしようと思ったのか?」
「一番好きなおすすめ絵本は?」
「客単価は?」
「ターゲット層は?」
「このビジネスモデルで一番苦労した点は?」

だんだん質問が難しくなってきましたよ…。やばいですよ…。

ぼく「んん…一番苦労した点ですか…あれですかね、
   壁に釘打ち込むのがちょっと特殊な壁やったんで大工さんに何度も聞きに行きましたねえ」

アナウンサーさん「や、店長さん、そうじゃなくて、経営上のことでお願いします」

ぼく「あ、ハハハ、そ、そうですよね…そっちですよね…んん…」

アナウンサーさん「あ、じゃあ結構です」

ぼく「すいません」

アナウンサーさん「大丈夫ですよ。では、差し支えなければソンエキブンキテンはどのあたりに
         なるか教えていただけないでしょうか?」

ぼく「え?…いやぁ、ちょっとわからないですねぇ…すいません…」

アナウンサーさん「とめますね」

録音機の四角い印の停止ボタンが押されました。

アナウンサーさん「店長さん、いいんですよ別にだいたいの数字で。あれやったらあとで編集しますし」

ぼく「い、や、すいません、違うんです。そ、そのなんとかテンっていうのがわからないんですけど…」

アナウンサーさん「え?あ、…そ、そうですか。えー、そうですねえ、どう言ったらいいかなあ?
         えー、これだけの売上がなかったら赤字になるぞというラインですね」

ぼく「あーなるほど。んん〜…いくらぐらいですかねえ?…んん…」

アナウンサーさん「は、はい、わかりました・・・大丈夫です」

再び赤いボタンが押されました。

アナウンサーさん「では質問をかえまして、若い女性層から強い支持を得ているペンネンネネムさん
         ですが、その若い女の子たちの心をとらえている要因はどこにあると
         お考えですか?」

ぼく「んん・・・なんでですかねえ?・・・んん・・・」

アナウンサーさんはマイクをぼくに向けて、ぼくの目をじっとのぞきこんでいます。

な、何か言わないと…。

ペンネンネネムが若い女の子の心をつかんでいる理由?

わからんそんなん…。

アナウンサーさんがぼくをじっと見ています。

若い女の子の心をつかんでいる理由?

んん…もうええわ。

ぼく「そ、そうですねえ、あれちゃいます、ぼくのルックスのよさちゃいますぅ?ハハハ
   ぼくの顔見たさに店に来るぅみたいな?ハハハ」

アナウンサーさん「…ハハ…」

四角いボタンが押されました。

すべりました。


その後もぼくはどんどん質問に行き詰まり、すべりました…。

アナウンサーさん「それでは最後にペンネンネネムさんの次なる夢を教えてください」

ぼく「夢?夢ですかぁ…んん…別にぃこれといってぇ…すいません」

アナウンサーさん「…えーと、たとえば、こんな経営者になりたいとか?年商いくらを目標にしている
         とか?よくお店の経営者の方だと多店舗展開していきたいとかっていうのが多いん
         ですけど?」

ぼく「んん…前はそういうの思った時期もあったんですけど、今はそんなに…んん…夢ですよねえ…」

アナウンサーさんはマイクをぼくに向けて、ぼくの目をじっとのぞきこんでいます。

心なしかちょっと睨んでるような気がしてきました…。

怒ってはるんかなあ?

でも、夢ないしなあ…。

アナウンサーさんは黙ってマイクを向け続けています。

ああ、どうしよ夢…なんか言わな。

ぼく「んん、そうですねえ、寝てる時ならよー見るんですけどねえハハハ」

四角いボタンが押されました。

おもいっきりすべりました。


ぼく「や、すいません。だからぼくほんとなんも考えてないんすよ。思いつくまま店やってるだけ
   ですから。なんというか、うちの店はぼくの夢というよりお客さんの夢って気がしてるんです」

アナウンサーさん「お客さんの夢?」

ぼく「京都の店の時も大阪の時も、店が完成したとき、ぼくは完璧やなと思ったんです。
   こんな完全な絵本店はないやろ?ってへんな自信を持ってたんです。
   だけどそれは営業をはじめるとすぐに不完全な店だってことにお客さんが教えてくれるんです」

アナウンサーさん「それは、ここはこーした方がとかってお客さんが言ってくれるということですか?」

ぼく「いえ、直接言われることはほとんどないんですけど、行動で教えてくれるといいますか、
   それはたとえば接客だとかメニューだとか居心地だとかもっといい店になるヒントを
   さりげなくぼくに与えてくれるんです」

アナウンサーさん「ほお」

ぼく「だからこの店はぼくが作ってるんではなくて、お客さんがこんな絵本店あったらいいのにって
   描いた夢の形で、ぼくはそれを作らされてるだけかなって。
   なんで、今はとりあえずお客さんからそのヒントが出なくなるまでがんばりたいなと。
   お客さんが完全な絵本店やなって思ってくれる店になることがぼくの夢って感じですかね?」

アナウンサーさん「店長さんいいじゃないですかそれ!もう一回お願いします」

赤いRECボタンが押されました。










バイトの子の友人が店に来ました。

バイト「昨日の友達、めっちゃ喜んでました。メニューもスタッフも100点って言ってました」

ぼく「その採点あまないかなぁ?なんか悪いところはなかったんかなあ?」

バイト「悪いところというか、待ってる時がしんどかったって言ってました。
    やっぱりうち通路せまいじゃないですかあ」

友達はちょうど混雑時に来られたので店内の通路で待ってもらっていたんですが、

通路にはガーデン用のアーチを置いていてそれが余計にしんどくさせていたようです…いかんなこれは。

もう少し通路幅のとれるアーチってないもんかなあ?






少年が空に飛ばした赤い風船は、
やがて蝶になりました。花になりました。
そして傘になって、少年の手の中に戻って来ました。




若いお客さんの多いペンネンネネムに珍しく老夫婦のお客さんが来店されました。

注文されたものを持って行ったバイトの子がいろいろ話を聞いてきました。

バイト「お客さん、絵本が好きで、今でも家に50冊ぐらい絵本持ってられるそうですよ。
    で、ウチの店が載ってる雑誌を見て来てくれたんですって。
    『あかいふうせん』って絵本が店内の写真に写ってて、家ですごく大事にしてる絵本らしくて、
    同じ絵本を置いてるこの店は絶対行こうってなったんですって」

ぼく「へえ〜。『あかいふうせん』で来てくれたんやぁ。そんなことあんねんなあ?」




赤い風船が、ペンネンネネムと素敵な老夫婦を結んでくれました。


ぼくは、またどこかの素敵なお客さんとペンネンネネムを結んでくれることを願い、


全開にしたペンネンネネムの窓から赤い風船を風に飛ばしてみました。






「どうすればぼくにも手紙はくるんだい?」かえるは腕組みしてぼくにたずねた。
「そりゃあ自分からも手紙を書けばいいのさ。手紙をくださいって」
ぼくはかえるに教えてやった。




朝、店の郵便箱を開けました。

中には手紙が入っていました。

手紙は先日来店された絵本好きの老夫婦さんからでした。

ぼくはすごく楽しみになって、

じっくり読もうと店の前の公園のベンチでそれを読むことにしました。

好きな絵本のことや、店員のサービスが良くてうれしかったことなどが書かれてありました。

そして、スタッフのみなさんでご覧になってください、といっしょに写真集が入っていました。

その写真集は空に浮かぶ美しい雲の写真集でした。

ぼくはとても幸せな気分になり、写真集より美しい雲はないものかと空を見上げました。

しかし、雲はありません。というより空がありません。それは空とベンチの間に藤棚があったせいです。

もうジャマやなあ藤棚・・・。藤棚・・・?藤棚!

ぼくは公園をでて、ペンネンネネムの階段を駆け上がりました。

そして、一冊の仕掛け絵本を手にしました。





ピンクの葡萄のぶらさがった藤棚の下で
6人の男女とやぎが楽しそうに幸せそうにパーティーをしています。




これや!

このノナおばさんの藤棚にすれば木製やから絵本も並べれるぞ!

お客さんは絵本と緑の中を通って客席に向かうと。お、悪くないぞ。

混雑して順番待ちの人がいても、待ってることが楽しくなるかも!?


藤棚つくりは順調に進行しました。

だけど、1点問題が出てきました。葡萄がありません。

いろんな店を見て回りましたが、このノナおばさんのピンクの葡萄になるものがありません。

まあ、別に葡萄ぐらいええかぁ…?



そーして不完全な藤棚が完成しようとしたクリスマスイブ。

ぼくが梅田ロフトの下りのエスカレーターに乗ろうとしたとき

店員の人が大きい声で言いました。

「ただいまより、クリスマスグッズ全品半額でーす!」

なるほどクリスマス過ぎたらただの売れ残りやもんなあ。

ツリー、サンタの衣装、緑の電飾、白の電飾、ピンクの電飾…。ピンク…?

はっ!ピンクの電飾っていっぱいつけたら葡萄に見えるんちゃうん!?

でも電飾ってそこそこ値段しそうやし…。

店員「ただいまより、クリスマスグッズ全品半額でーす!」








藤棚につけたピンクの葡萄で


またペンネンネネムが完全な絵本店になりました。


でも、きっとほんとは不完全な絵本店のはずです。


それはペンネンネネムのお客さんしか知りません。


お客さん、


不完全なペンネンネネムに気づいたら、


どうぞ遠慮なく言ってください。


え?


言いにくい?


そうですよねぇ?


そんなの言いにくいですよねぇ?


じゃ、


手紙をください。


不完全な絵本店に手紙をください。


え?


めんどくさい?


じゃ、


赤い風船にそのヒント結んで


風に飛ばしてみてください。


ぼくの窓、全開にしておきます。







参考文献:イエラマリ「あかいふうせん」
参考文献:村上勉「てがみをください」
参考文献:トミーデパオラ「Brava、Strega Nona!」

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クリスマスには気をつけて

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ネネムは物件地図を頼りに森の奥へ奥へと進んだ。

すると森の中に一軒ポツンとカラフルなかわいらしい家が出てきた。

その家はジョニーウォーカーさんのいうとおり、

ほんとにおいしい家だった。

ネネムはまず、壁のチョコレートケーキをかじった。

甘くておいしい壁だ。

屋根の窓も、石畳のクッキーも、

池のシュークリームも金平糖も、

家も庭もすべてがおいしかった。


ネネムは『おかしの家』の契約書にサインした。


しかもネネムはジョニーウォーカーの所有する『おかしの家』を


すべて買い占めることにした。


2008年


ペンネンネネムのクリスマスは『おかしの家』です。


2〜4名様用のサイズです。

シャンパンなどのドリンク付きで4500円です。

12/19〜12/25のクリスマスの期間に完全予約での販売になります。

テイクアウトはありません。店内の販売のみです。

お早めにご予約を。




もしかしたら、


ジョニーウォーカーさんは


お菓子の家でお客さんたちをおびき寄せて


油断させて食べてやろうと企んでいるのかもしれませんよ?


みなさん、


ペンネンネネムのクリスマスには


気をつけて。




詳細は後日HPにて告知します。





参考文献:グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」

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捨て猫不動産

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お母さんが木こりのお父さんに言いました。
「ねえおまえさん、あす朝早く、森の一番奥のところへ、子供を連れだしましょう。
そこで焚火をたいてやって、パンをひときれずつあてがって、それから私たちは仕事に行く。そしてそのまま置いてきぼりにしてしますのさ」二人の子供たちはひもじくて寝られなかったので、お母さんが言ったことをすっかり聞いていました。レミーはしくしくと泣き出しました。ジョニーはレミーをなぐさめました。「安心しておいで、レミー。神様はぼくたちを見捨てたりはしないから」夜が明けるとお母さんがやってきて、二人の子供をおこしました。「起きるんだよのらくらもの!みんなで森にたきぎを拾いにいくんだよ」二人はその晩暗い森を夜通し歩き回りました。ジョニーはレミーに言いました。「道は大丈夫。きっとわかる」次の日も次の日も朝から晩まで歩きました。それでも森からはでられません。レミーがジョニーに言いました。「お兄さん、きっと神様が助けてくれるよね。森から出れるよね…ジョニーウォーカーさん…ジョニーウォーカーさん…」

猫が飛び起きると、

目の前には心配そうに見つめる男の姿。

男「ジョニーウォーカーさん、大丈夫ですか?ずいぶんうなされてましたけど、
  怖い夢でも見てたんですか?」

ジョニーウォーカー「や、やあネネムさん。心配しなくていいよ。いつもの夢なんだ」

ネネム「いつもの夢?」

ジョニーウォーカー「母親に捨てられた日の夢を今でも見てしまうんだ」

ネネム「え?す、捨てられたって…」

ジョニーウォーカー「実は私は捨て猫なんだ。でも、大丈夫、妹と捨てられた時は確かに辛かったけど、
          そのあと私は森の魔女をやっつけたおかけで今日のこの不動産王としての確固たる
          地位と名声を手に入れたわけだから運命なんてほんとわからんもんだよ」

ネネム「えーと、お聞きしたいことがたくさんあるんですけど…まずジョニーウォーカーさんには
    妹さんがいらっしゃるのですか?」

ジョニーウォーカー「うん。レミーマルタンっていうんだ。今は別々に暮らしてるけどね。
          結構かわいいよ。惚れるなよ」

ネネム「惚れませんよ。森の魔女って?」

ジョニーウォーカー「最初私とレミーをだまして食べようとしてたんだけど、
          パン焼き窯に突き飛ばして丸焼けにしてやったんだ。
          その魔女は家と宅建免許を持ってたんで、それをそっくりそのまま妹と頂戴して
          からは、信頼と実績のジョニーウォカー不動産を開業して何不自由のない豊かな
          暮らしをしているというわけさ」

ネネム「魔女さんでもネコさんでも家を売るのに宅建免許がいるのですか?」

ジョニーウォーカー「家は人生で一番高価な買いものだからねえ、
          猫でも魔女でもそのへんはきっちりしておかないとね…そうだ!
          そういえば掘り出しもんのおいしい物件が出たんだけどネネムさん買わない?」

ネネム「どんな家なんですか?」

ジョニーウォーカー「南向き庭付き池付き一戸建てで、なんと破格の4500!どうだい?」

ネネム「まあ庭付きで4500万なら安いといえば安いのかもしれませんが、
    でもそれぐらいなら探せばあるような気しますけどねえ?」

ジョニーウォーカー「ん?4500万?えーと、あれだよ、4500円だよ?」

ネネム「はあ!?冗談やめてくださいよ。一戸建てが4500円??馬鹿にしないで下さいよ。
    そんな物件あるわけないでしょ」

ジョニーウォーカー「だから掘り出しもんっていったでしょうが?」

ネネム「それ掘り出しすぎでしょ!4500円の家なんて逆に怖いですよ。
    何かあるからそんな値段なんでしょ?」

ジョニーウォーカー「そりゃまあ多少条件はあるけどね」

ネネム「条件?」

ジョニーウォーカー「食いしん坊の人の招待だけは固く禁止されてるから」

ネネム「なんですかそれ?なんで家に食いしん坊の人が来たらだめなんですか?」

ジョニーウォーカー「まあまあ、そんなに心配なら明日見学においでよ」

ネネム「は、はあ…あっ、携帯鳴ってますよ」

ジョニーウォーカーのポケットが鳴っていた。

ジョニーウォーカーすばやくポケットから携帯電話を取り出して、

ジョニーウォーカー「あっ、お母さん、元気?…まあ、ぼちぼちやってるよ。
          どうも人間どもも余計な知恵付けて来やがったからさあ、
          なかなか商売しにくくなってんだけどね。
          でも最近カフェやってるっていうバカがいて結構カモってるから心配ないよ。
          んん、ほんじゃ元気でねぇ。犬に気をつけてねぇ」

ジョニーウォーカーが電話を切った横でネネムが睨んでいる。

ネネム「ちょっとちょっと、そのカモってるバカってネネムのことじゃないんですか!?」

ジョニーウォーカー「ち、違うよ。なんで私がネネムさんのことだますんだよ?」

ネネム「…それに今、『お母さん元気』って言いましたよね?
    ジョニーウォーカーさんはお母さんに捨てられたんでしょ?」

ジョニーウォーカー「え?お、『お母さん元気』なんて言うわけないじゃない?捨て猫の私が」

ネネム「じゃあなんて言ったんですか!『お母さん元気』って絶対言いましたよ!」

ジョニーウォーカー「え?だ、だからあ…あ、あれだよ…『マッカーサー元帥』って言ったんだよ」

ネネム「なんでかかってきた電話でいきなり『マッカーサー元帥』なんて言うんですか!?
    おかしいでしょ?」

ジョニーウォーカー「知らないよそんなこと言われても。それが猫電(猫の電話)なんだから。
          君ら人電(人の電話)でいうところの『もしもし』みたいなもんだよ。
          じゃあ、なんで君らは『もしもし』なんだよ?え?
          なんで『マッカーサー元帥マッカーサー元帥』じゃないんだよ?」

ネネム「なんで『もしもし』かは知りませんけどねぇ?
    わざわざ連合国軍最高司令官の名前を2回言うのはどう考えてもおかしいでしょう?」

ジョニーウォーカー「そんなに『マッカーサー元帥マッカーサー元帥』がおかしいって言うんならねえ、
         『山本五十六山本五十六』って2回言えよ」

ネネム「『マッカーサー元帥マッカーサー元帥』って連合国軍最高司令官の名前を2回言うのが
    おかしいからって『山本五十六山本五十六』って連合艦隊司令官長の名前2回言って
    どうすんですかっ!?そういう問題じゃないでしょお?
    なんでぼくたちは太平洋戦争の中心人物の名前を2回繰り返し言い合ってるんですか?
    そもそも捨て猫ってところからあやし…」

また、ジョニーウォーカーのポケットが鳴り出した。

ネネム「鳴ってますよ。どうぞ出てくださいよ…」

ジョニーウォーカー、ちょっと困ったような表情で電話に出て、

ジョニーウォーカー「ああ、もしも…(ちらっとネネムを見て)あっ、えーと、えーと、あっあれ?…」

ネネム「フフフ、誰の名前言うか忘れたんでしょお?」

ジョニーウォーカー「(あせって)え、えーと…『東条英機東条英機』…」

ネネム「ムチャクチャやなもう…」





どうも

この捨て猫不動産あやしいですよねえ?

明日見に行くのどうしましょうかねえ?

でも一軒家が4500円ですしねえ…?

そうだ!

ひとりで行くのは不安なので

みなさん一緒に

掘り出し物のおいしい物件見に行くのついてきてくれませんか?

明日

ペンネンネネムのペン集合です。


もし、道に迷ったら、

捨て猫の携帯に電話してみてください。


『マッカーサー元帥マッカーサー元帥、道教えてください』


ってね。






参考物件:グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」

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まろやか職人

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ぼく、消防士になれるやろか。船乗りはどやろ。

パイロットやったら?バレリーナ?ピアニスト?

どないしたらええのんやろ。

ま、ぼちぼちいこか。


いろんな職業に憧れるカバはどれをやっても失敗ばかり…。

結局、ハンモックに揺られて「ぼちぼちいこ」って昼寝しちゃいます。


ぼくもこのカバみたいにすぐにいろんな仕事に憧れてしまいます。




厨房内に食器棚が必要になりました。

だけど適当な場所がありません。強いて言えばこの窓をふさげば・・・。

腕のいい大工さんを紹介してもらい、そのへんを相談しました。

ぼく「ここに食器棚を取り付けてほしいんですけど」

大工さん「この窓の前にですか?窓はふさがない方がいいと思いますよ」

ぼく「まあ、そうなんですけど…でも場所がないですし…」

大工さん「ここに角材で支柱立てましょうか?」

ぼく「いや、厨房の中なんで支柱はちょっと…やっぱ窓ふさいでもらうのが一番簡単やと思うんで、
   それでいいですよ」

大工さん「ちょっと考えさせてもらえませんか?いい方法見つけます。
     窓はね、やっぱりあった方がいいですよ」


大工さんの心意気に、

僕の気分はその窓から差し込む陽の光みたいにまろやかになりました。

かっこええなあ。

ぼく、腕のいい大工職人になりたいなあ。





よく行くラーメン屋さんはいわゆる行列のお店で、

だいたい1時間は並ばないといけません。

まだかなまだかなと特に行列の長い日なんかはイライラした気持になります。

だけど、長い時間待ちぼうけをくらったラーメンが口の中に溶けると、

そんなイライラした気持はすっかりまろやかになってしまいます。

そして、いかにも職人らしいイカツい風貌のご主人は、

帰り際いつもぼくに「おおきに」と笑顔で言ってくれます。

ぼくはこの笑顔でさらにまろやかな気分になります。

この笑顔のあと、

ぼくはほかのどの店より気持ちをこめてご主人に「ごちそうさまです」と言って帰ります。

イライラした気分をまろやかな気分にかえてしまうラーメン職人もかっこええなあ。

ぼく、笑顔の素敵なラーメン職人になりたいなぁ。





長年通い続けているカレー屋さんがあります。

ぼくはペンネンネネムを始める時、このカレー屋さんの味に近いものにしたいと思っていました。

ずいぶん通い詰めたかいあってか、それなりに近い味になれたかなぁと思っていました。

しかし、先日久しぶりにこのカレー屋さんに行ったところ、

うちのカレーはまだまだやなぁと感じてしまいました…。

そこのカレーはとてもマイルドというかまろやかなのです。

ぼくは食べながら

「んん〜このまろやかさどうやったら出んねやろぉ・・・?」

とその秘密に頭をひねっていました。

この店は作っている人の顔は見えないけど、きっと中には凄腕の職人がいるに違いありません。

カレー職人もかっこええなあ。

ぼく、その味の虜にさせるようなカレー職人になりたいなあ。





ぼく、

大工職人にも

ラーメン職人にも

カレー職人にもなりたい。

でも、

ほんとのところはどの職人に一番なりたいんか、自分でもよーわからへんなあ…?






冷蔵庫に二つ並んだタッパーの左側の方を取り出しました。

かぼちゃスープのタッパーです。

これから煮込んだかぼちゃを漉していってスープにします。

ぼくは右手に木べら、左手にうらごし器を持って、かぼちゃスープを漉しはじめました。

ボールの中にに漉されたかぼちゃスープがたまりました。

・・・んん?

なんかいつもと色味が違うような…?

ぼくはボールにたまったかぼちゃスープを匂ってみました。

わっ、これカレーやん!

色に大差がないのでかぼちゃとカレーのタッパーを間違えてしまいました。

ああ、やってもーたあ…。

どないしよこれ…。

カレー漉してどうすんねん?

はあ…。

裏漉し器には、カレーの余分な脂分や残りかすがカラカラになって残っていました。

漉されたカレーはきれいな黄金色に輝いています。

ぼくは少し胸騒ぎがして、その漉されたカレーを手鍋で温めました。

スプーンにとって口に流しました。さらっとなめらかに流れいきました。

う、うまいがなっ!

余分な部分をそぎ落としたカレーは、

とてもマイルドになって食べやすくなっていました。

こ、これや!

あのカレー屋の

あのまろやかさ

うらごししてたんや!

よーし、

少し量が目減りすることと、

少し味が薄くなる問題さえクリアできれば

これはきっとなかなかのカレー職人になれるかもしらんぞぉ!?

よっしゃー!

やっと見つけた!

俺はカレー職人や!俺は今日からカレー職人になるでぇ!



・・・ん?




・・・んん?






ほんじゃ、カレー屋しろよ?






なんでカフェやってんねん?


なんで絵本なんか並べてカフェやってんねん?


なんでわざわざ古いビルの3階なんかで珈琲淹れてんねん?


なんのために?


誰のために?


なんで絵本カフェ?


なんで絵本?


なんでビルの3階?


なんで息も切れるよな29段もある階段の上でカフェ?



なんで??








それも

どれも

あれも

これも


みーんな

お客さんの心をまろやかにするためちゃうの?


お客さんの

イライラやら

さみしさやら

悲しさやら


心の中の余分な部分を


絵本で漉すためちゃうの?


絵本といううらごし器でお客さんの心をまろやかにするためちゃうの?


右手に木べら、左手にうらごし器を持って、


お客さんの29段上で待ってなあかんのちゃうの?








ぼく、


なれるかなぁ、うらごし職人


なりたいなぁ、うらごし職人


でも無理かなあ、人の心を漉すなんて・・・。


ちょっとぼくには荷が重いかなぁ・・・?




ま、


ぼちぼちいこか。







参考文献:マイクセイラー「ぼちぼちいこか」

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ペンネン五輪

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北京オリンピックが終わった日、ペンネンネネム京都店も終わりました。

ではみなさん、ペンネンネネムのメダル獲得数、集計してみましょう。


≪京都店最終日≫

開店時間前から表には常連さんの姿がちらほら…。

最終日の最初のお客さんは前日に満席で入れなかった常連さんでした。

ぼく「いらっしゃいませ。昨日はすいませんでした」

お客さん「いえいえ。どうせ今日も来るつもりやったんで」

ぼく「ありがとうございます。今日は表で開くの待ってくれてたんすか?」

お客さん「ええ。今日はどうしてもここに一番に入りたかったんです」





そういえば、

楽しみにしていたチェブラーシカの映画を、ぼくは初日に観に行こうと決めていたのに、

結局、初日どころかそれを見ることなく、映画の上映は終わっていました…。





そういえば、

ペンネンネネム大阪店とはせずに、ペンネンネネムgreenとしました。

みどり系の絵本を中心に品揃えしているということと、

実はもうひとつ、ぼくが一番好きな女の子の名前なんです。

もしも将来ぼくに女の子ができたらたぶんこの名前にするでしょうね。



ペンネンネネム開店当初からの常連さんが来られました。

しかしお客さんは店内に上がろうとしません。

ぼく「(店内に手招きしながら)どうぞどうぞ」

お客さん「ちょっとこのあとあって、行かないといけないんです。
でも今日最後やしご挨拶したくて来ました」

ぼく「えー、そんなんわざわざ…ありがとうございます」

お客さん「どうもお疲れ様でした。楽しかったです。これよかったら…」

お客さんが持っていた花束をぼくに手渡してくれました。

ぼく「わあーうれしい。ぼくも楽しかったです。
   また大阪の方来るときあったら寄ってくださいね。みどりさん






そういえば、

ぼくが今乗っている自転車は盗難届が出ている自転車です。

警察に止められないようビクビクしながら運転しています。

スーパーに自転車で買い物に行き、歩いて帰り、盗られたと思い、警察に泣きつきました。

1週間後、スーパーで自転車を見つけて乗って帰りました…。



よくお仕事帰りに来られていたお客さんと清算時にお話ししました。

それまでご挨拶程度だったんですが、

少しお客さんのことを知ることができて、さみしいけどいい気分でした。

お客さんが帰られて、テーブルを片づけていました。

そして、そうまだ遠くないであろうお客さんをダッシュで追いかけました。

ぼく「お、お客さん!」

お客さんが振り返りました。

ぼく「忘れものです」

お客さん「あ、それよかったらどうぞ」

ぼく「え?」

お客さん「今までお世話になったんで」

ぼく「な、なにを言ってはるんすか?お世話になったのはこっちの方ですよ!」

ぼく「いえいえ、ほんといい時間をありがとうございました」

ディックブルーナのハンドタオルはぼくの右手の中です。

このハンドタオルは警察の目なんて気にせずに

堂々と、ずっと

使っていくつもりです。







そういえば

その昔ビートルズの日本公演の前座バンドはドリフターズやったそうですねえ。

毎月京都のどこかでビートルズが

「イエスタデー」だったり「レットイットビー」だったりを歌っているそうです。

その京都のビートルズを観る前に

毎月ウチによってくれる大阪のお客さんがいました。

お客さん「びっくりしましたよ。ホームページ見たら今日最後やったんで急いで来ました」

ぼく「すいません。遠いとこ…。今日はビートルズじゃないんですよね?」

お客さん「もうビートルズ終っていいんで、ペンネンネネム終わってほしくなかったです」


その日、京都ではドリフターズがビートルズを超えました。





そういえば

お客さんは大阪店の開店祝いもくれました。





そういえば

お客さんは年賀状もくれました。





すごい速い水泳選手でも、なかなかメダル3個は獲れません。

お客さん、チョーすごい!





閉店の告知をしてから毎日来てくれたお客さんがいます。

そしてこの日もご来店してくれました。

「アイスコーヒーと何か書くもの貸してください」と言われたので、

メモ用紙とボールペンとアイスコーヒーをお持ちしました。

帰り際に、

お客さん「また京都でやってください」

ぼく「そうですね。いつか戻ってきたいと思います」

お客さん「それで、もしまたされるときは…ご迷惑でなければお電話してもらっていいですか?」


『メモには3年間ありがとうございまいした』の下に

お名前と電話番号が書かれていました。

ぼく「ええ!?そんなん全然いいんですけど・・・逆にいいんですか?
   ぼくみたいなんに電話番号なんか教えてしまって・・・」







お客さん、新しい店をする時しかぁ…電話したらぁ…ダメですかねぇ…?



みなさん!

突然ですが

大阪店も明日閉店します。そして明後日再開します。

めんどくさいですが、向こう一年そんな感じでお願いします…。





そういえば、

京都店に置いていた「さくら」という小説は作者直筆のサイン本です。

まあ言えばちょっとした宝物なんです。

正直言いますと、お客さんが手にするたびにビクビクしていたんです・・・。

あーああー、そんな読み方したら折り目つくから、あーああー…って。



伊勢丹で働くお客さんはこの日ウチに来るために

上司に相談してわざわざ勤務時間を変更してご来店してくれました。

ぼく「どうも最後にたくさん来てくれてありがとうございました」

お客さん「ペンネンネネムさん、お忙しいですよね?」

ぼく「は?まあ…」

お客さん「実は読んでもらいたい絵本があるんですけど」

ぼく「まあ、絵本読むぐらいでしたら全然大丈夫やと思うんですけど」

お客さん「古本屋で見つけて大事にしてる絵本で、ペンネンネネムさんにどうしても
     読んでもらいたくて、今日お持ちしたんですけど」

ぼく「いやあ、それはうれしいんですけど、今日店最後やし、お返しできないと思うんですけど…」

お客さん「まだお店の片付けとかしてはりますか?」

ぼく「ええ、そうですね。やってますけど」

お客さん「家近くなんで、よければ立ち寄らしてもらいます」







みなさん、

ペンネンネネムで読み損ねた本ありますか?

貸しますよ。しかも平気でね。





いよいよ閉店時間がせまってきました。

常連さんがお会計に来られました。

お客さんの目は少し潤んでいるような気がしました。

ぼく「お客さん、どうもたくさんご来店してくれてほんとありがとうございました。
   妹さんにも、お母さんにもありがとうございましたとお伝えください」

お客さん「は…はい…」

お客さんの目から涙が溢れだしました。

お客さん「す、すいま…せん…」

お客さんは声がつまってうまくしゃべることができなくなっています。

お客さん「…絶対がまんしようって決めて来たんですけど…す、すいません」

お客さんの涙がポタポタと落ちていきます。

ぼく「ちょちょ…お客さん、そ、そんな泣かんといてください」

お客さんは「すいませんすいません」とすすり泣きをを繰り返しています。

涙をぬぐうお客さんの右腕が濡れています。

ぼく「お、お客さん、冷静になってください。たかが喫茶店が一個なくなるだけですよ。
   そ、そんな泣かんといてください」

でも、お客さんの涙はもう止まらなくなっていました。

ぼくも胸が苦しくなってきました…。



そういえば、

久しぶりに泣きました。

ぼくは母親が死んで以来泣いていませんでした。




金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金

金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金

金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金金





ペンネンネネム京都店の最後の最後のお客さんは

きっとあの人かなぁ?

とかってなじみのお客さんの姿を想像していましたが、

意外にもあまりお見かけしていないお客さんでした。

お客さん「すいません。もう終わりですよね?記念になにか本買わしてもらいたいんですけど?」

ぼく「ああ、いいですよ。どうせ片づけしてますし、ゆっくり選んでください」

お客さん「すいません。それとなにか書くものいいですか?」


お客さんは村上春樹の本を買って帰られました。

最後のテーブルにはメモが残されていました。

それはこんなメモでした。

『こんなに素敵なお店をありがとうございました。何度か数えるほどしか来られなかったのですが、
 西陣の一角にペンネンネネムがあって、いつでも行けるという気持ちがいつもあって、
 それだけでとても幸せに過ごしていました。今となってはとても悔やまれますが、
 どうしてもっと来れなかったんでしょう!!ブログも楽しませていただいていたので
 余計勝手な親近感を抱いていたのかもしれません。いつまでも待っています。
 また再会できるのが、京都のどの場所でも今度は足しげく通います。本当にありがとうございました』


すいません、お客さん、

とても感激したので勝手に全文書いてしまいました。







ぼくは

もう一度その素敵なメモを隅々まで見かえしました…。

裏も見ました…。


そういえば、

お客さんのメモには電話番号がありません…。


お客さん、

ごめんなさい



です。



そういえば、


お客さんが買って帰った


「羊男のクリスマス」


ほんとはあまり売りたくないやつだったんです…



お客さん



やっぱり…



で。






最終日の京都店はメダルラッシュに沸きました。



金185個 

銀1個
 
銅1個







そういえば、


みなさん、そういえば


オリンピックって、


参加することに意義があるそうですよ。




3年半のあいだ


ペンネンネネム京都店にご来店してくれた



すべてのお客さんに



なにか意義がありますように。





また会いましょう。







参考文献:サマセットモーム「九月姫とウグイス」

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長くないトンネルへ

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長いトンネルの向こうにいくよ。さようなら。アナグマより。




アナグマは死ぬことをおそれてはいません。

死んで体がなくなっても、心は残ることを知っていたからです。

ただ、あとに残していく友達のことが気がかりで、

自分がいつか長いトンネルの向こうに行ってしまっても、

あまり悲しまないようにと言っていました。




ペンネンネネムは閉店することをおそれてはいません。

閉店してお店がなくなっても、心が残ることを知っていたからです。

ただ、あとに残していくお客さんのことが気がかりで、

自分がいつか長いトンネルの向こうに行ってしまっても、

あまり悲しまないようにと言っていました。






ペンネンネネム京都店を今月限りで閉店することに決めました。

ほんと急で申し訳ありません…。

でもきっと、

また京都の別の場所でペンネンネネムをする日が来ると思います。

とりあえず

その日が来るまで

京都のみなさん、

ペンネンネネムのこと

忘れないでいてください。


3年半の短い間でしたがありがとうございました。

もっともっといい店になって戻ってきます。





閉店日は8・24日です。

営業日は8月15・16・17・22・23・24です。

営業時間が12:00〜19:00までで

ドリンクメニューのみになります。

最後は全品半額にします。










京都のみなさん、

そんなにも

長くないトンネルの向こうに行くよ。さようなら。ペンネンネネムより。











参考文献:スーザン・バーレイ「わすれられないおくりもの」

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強く優しく生きる

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8月8日夜。

明日に迫ったロハスフェスタの準備も終えて、ぼくはベッドにはいりました。

でもうまく寝付けません…。

遠足前のワクワク気分というのではなく、

不安と緊張と後悔に押しつぶされそうな気分になっていました。

「はあ、こんな気持ちになるんやったらやめときゃよかったぁ…」

そんなフレーズが心の中をぐるぐるまわっていました…。

どうにも気分が晴れないので何か本でも読んで

少しでも気分を晴らすことに決めました。

でも、適当なものが本棚になかなか見当たりません。

と、はしっこの方に詩集がありました。

岡本太郎の「強く生きる言葉」という本です。

ぼくはそれをパラパラとめくりはじめました。


「他人が笑おうが笑うまいが、自分の歌を歌えばいいんだよ」


「よく、あなたは才能があるから、岡本太郎だからやれるので、凡人には難しいという人がいる。
そんなことはウソだ。やろうとしないから、やれないんだ。それだけのことだ」


「いいかい、怖かったら怖いほど、逆にそこに飛び込むんだ。やってごらん」


「気まぐれでも、何でもかまわない。ふと惹かれるものがあったら、
計画性を考えないで、パッと、何でもいいから、そのときやりたいことに手を出してみるといい。
不思議なもので、自分が求めているときには、それにこたえてくれるものが自然にわかるものだ」


ぼくは岡本太郎に少し強さを分けてもらった気になって眠りにつきました。





8月9日、ロハスフェスタ当日。

太陽の塔の背中あたりの広場に

出展者の色とりどりのテントが並びだしました。

なんだかどこのお店も手馴れていて、みるみるうちにいい感じのお店が完成していきます。

ペンネンネネムバスだけがひとり置いてきぼりくらってるみたいで、全然うまく準備がすすみません。

もうこのころには岡本太郎の言葉もすっかり忘れて、逃げ出したい気分でした。

夕方になってロハスフェスタスタートのアナウンスが流れました。

隣のメロンパン屋さんはすぐに行列ができました。

新参者のウチの車には遠めから様子を伺うだけで、あまりお客さんは寄ってきてくれません…。

もうこのころには「ああ、早よ終わりたい…。明日すんのも嫌やわ…」

と心の95%ぐらいを負の部分が占領していました。



そんな気持ちになったとき一人目のお客さんがきました。

アイスコーヒーを注文してくれました。

ぼくはちょっと緊張して声が裏返りました。

お客さんが優しく微笑んでくれたような気がしました。



二人目のお客さんはタンブラーを買っていってくれました。

しかも高い方を買ってくれました。

「いつもブログ読んでいて、すごく楽しみにして来ました」

と優しいトーンでぼくに話してくれました。



3人目のお客さんがドーナッツを買ってくれました。

すぐに戻ってきてくれて「おいしいのでもうひとつください」と

ぼくにとってこれ以上がないほどの優しいメッセージをくれました。


4人目のお客さんは大阪の常連さんで、

すごい楽しみにしてくれていて、カフェオレとドーナツをたのんでくれました。

ウチは入場門からだいぶ遠い場所にあったけど

入り口でもらった案内地図でウチの場所を確認して、ウチだけを目指して直行できてくれたそうです。

お客さんは優しい笑顔で「秋も絶対来ます」と言ってくれました。






となりでアイスコーヒーを淹れるバイトの子がぼくにポツリと言いました。

バイト「店長、めっちゃ楽しないですか?」

ぼく「あれ?ジブンもそー思てたん?そうやねん、オレもなんかめっちゃ楽しいねん」







一晩たったら


ぼくは岡本太郎の強い言葉をすっかり忘れていたけど、


かわって


ウチのお客さんから優しい言葉をたくさんもらいまいした。


そうです。


ぼくは


ロハスフェスタに来てくれたお客さんと岡本太郎の


強く優しく生きる言葉


救われたようです。






ぼくは


バスの絵本を片付けて


太陽の塔に


少しおじぎをして


帰ることにしました。








参考文献:岡本太郎「強く生きる言葉」

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どこぞの空からエアメール

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ロハスフェスタでドーナッツを出すことに決めて、

紙関係のパッケージ業者さんがドーナツを入れる袋のサンプルを

ペンネンネネムのテーブルの上に並べてくれました。

パッケージ業者さん「これぐらいの大きさは?」

ぼく「ああ、そうですねえ?まだもうちょい小さいぐらいでもいいんですけど、
   この大きさの白はないですか?」

パッケージ業者さん「すいませんねえ、白はMサイズまでしかないんですよお。
         じゃあ、茶色のMよりちょっと小さいバージョンやったらどうです?これです」

ベストサイズのサンプル袋がテーブルに置かれました。

ぼく「あっいいですこれ!これにしますよ。これの白ってないんですか?」

パッケージ屋さん「・・・あっ、あのさっきも申しましたように白はMまでしかないんですねえ・・・」

ぼく「・・・ああ、はいはい・・・ですよね?・・・す、すいません・・・」






大阪店が暑いです。

クーラーを2台入れてるんですがあまり効かないのでもう一台追加することにしました。

そこでクーラー業者さんと打合せすることになりました。

クーラー業者さん「今、1.5馬力が2台なんで同じタイプもう一台でいけるでしょ」

ぼく「そうですか。でも結構ウチ電気の要領がやばいんでとんだりしませんかねえ?」

クーラー業者「(分電盤を見ながら)いや、100Vの方はもう結構きついんで、
       こっちの3相200Vの方を30Aからを60Aに変えてこっちに繋ぎますわ」

ぼく「こっちの200Vの方は余裕あるんですか?」

クーラー業者「いや、今のままではちょっとキツイですけど、
       きっと60Aに変えてやったらいけるでしょう」

ぼく「え〜?でもそれってだいぶお金かかるんでしょ?
   100Vのでかいやつとかでは無理ですかねえ?」

クーラー業者「・・・いや、だから言いましたように100Vの方はもう空きないんですって」

ぼく「・・・ああ、そ、そうでしたね・・・」




朝、

洗面所で歯を磨いていると、弟が寄ってきました。

弟「なあ、テレビ見てへんねやろ?消しとけや?」

ぼく「(口の中に泡をためながら)ふぁ?ふぁふぁ、ふぅまんふぅまん」




夜、

風呂上りに、弟が声をかけてきました。

弟「なあ、ジブン風呂場最後に冷水かけてでーや?カビ生えるって前から言うてるやろ?」

ぼく「え?ああ、はいはい。わすれとったわ」




月曜日の夜。

ゴミ箱を見ている弟。

弟「なあ、なんで生ゴミ出してへんねん?次水曜まで出されへんねんで?朝言うたやん?」

ぼく「ああ、ちょっとわすれとったわ」

弟「ジブン、ほんま人の話聞いてへんなぁ?それでよー社会生活に対応してるなあ?
  それがすごいわ?明日からおらんけどちゃんと頼むで」

ぼく「はいはい、任せなさいって」






弟が居なくなって3日。

携帯にメールしても一向に返事もありません・・・。

いつ帰ってくるのか忘れたので

帰ってきて散らかってたらうるさいし、

そろそろぼくは家の中をそうじし始めることにしました。


まずは

ポストにたまった広告やらダイレクトメールやらを整理することにしました。




『即日入金。無担保、低金利、保証人不要だから安心、簡単キャッシング』


いりません、と。ゴミ箱にポイ。



『オープンセール!先着50名様トイレットペーパー100円!お一人様12ロールまで!』


おっ、並ばな、並ばな。置いとこ。



『人妻倶楽部。ダンナが出張中でさみしいわ。お電話ちょうだい』


しませんしません、とゴミ箱にポイ…


と、ま、せーへんけど、一応おいとこか…。





『ペンネンネネム代表様…』


・・・んん?

なんで実家に店の名前が入った葉書が来る?業者さん?

でも、家の住所なんか言わへんしなぁ・・・?

あっそうや一回ウチのスタッフがショップカード置くとこに

間違えてオレの名刺おいとったなあ?

そうかそれ取っていったお客さんかあ?

ま、とりあえず読んでこ。



『はい、どうもどうも・・・』


なんちゅう出だしや?


『日本は暑いでしょ???』


はぁ?


『私は今鳥になっているので全くもって暑さは感じませんが、腰が痛いです』


知らんがな?


『ははは・・・(笑)』


なにがおかしいねん?



『8月はロハスもあるし忙しいと思うけど体壊さんようにね。たまには休みや』


え?だれ?


『どこぞの空より・・・弟』



な〜んやお前かい。

そういえばヨーロッパ旅行するだのなんだの言うとったなあ?

そうや、そうや、

どっかの蚤の市行って、

ブラックベアのペーパーバック見つけたら買っといてくれって言うとったなオレ。


どうりで携帯にメールしても返事ないわけかぁ?


おい!


弟よ!



こっちは大変なんやぞ!



バイクの鍵なくしてもーて、いま駅前の駐輪場に置きっぱなしなんや!!


スペアキーどこにあるか知ってるか?


ヤバイんや!


そろそろ撤去されてまうぞ!?


おい弟!


どこぞの空で、


このブログ読んだら


スペアキーの場所書いて



大至急


エアメールを!








参考文献:Dick Bruna「ブラックベアーシリーズ」

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万博行きのネコバス

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猫が車を運転している。

男が近寄って運転席の窓を叩いた。

コンコン。

男「これ、ジョニーウォーカーさんのお車なんですかあ?」

運転席の窓があいて、

ジョニーウォーカー「おう、ネネムさん。これ?そうだよ、ワタシの車だよ」

ネネム「えぇ〜?まーた誰かだまして勝手に乗ってるんじゃないですかあ?」

ジョニーウォーカー「君ね、会ってそーそー失礼なこと言ってくれるねえ?
          このバスはずいぶん探し回って、やっと手に入れた大事な車なんだよ。
          ちょ、ちょっと、おい、その小汚い手で触らんでくれよ」

ネネムが車から手を離す。

ネネム「なんでジョニーウォーカーさんはこんなバスみたいなお車が欲しかったんですかあ?」

ジョニーウォーカー「これはね、ワーゲンバスっていってね、50年くらい昔の外国の
          マイクロバスなんだよ。何を隠そうバスはワタシの夢でね」

ネネム「夢・・・ですか?」

ジョニーウォーカー「ネコバスっつったらネコ業界じゃそりゃ人気職業だからねえ。そーそーなれる
          もんじゃないよ。中でもネコバス交通社なんつったら選りすぐりのエリート猫
          しか入社できないもの。あそこの制服にゃあずいぶん憧れたよなあ・・・。
          ま、このワーゲンバスは言うなら、昔の果たせなかった夢の続きってとこかな?」

ネネム「へー。ネコバスかあ。素敵ですねえ。やっぱりあれですか?ネコバスってことは
    バス代はどんぐりで払えばいいんですかぁ?」

ジョニーウォーカー「いいけど、でも最近はけっこうレート上がってるけどねえ」

ネネム「レート?」

ジョニーウォーカー「今、たしか、1どんぐり480円じゃなかったかなあ?
          どうにも止まらんねこの円安どんぐり高傾向は」

ネネム「え?それって、どんぐり1個480円もするってことですかあ?」


ジョニーウォーカーはすばやく携帯電話を操作していた。

そして、その携帯画面をネネムに見せつけた。


「世界的な景気不安でどんぐり相場大荒れ!午前の終値1どんぐり500円!」


ジョニーウォーカー「また上がったよ」

ネネム「・・・じゃあ聞きますけど、ネコバスは1どんぐりでどこまで行けるんですか?」

ジョニーウォーカー「そうだね。だいたい3りで奈良くらいまで行けると思うよ」

ネネム「さんり・・・?」

ジョニーウォーカー「ああ、すまんすまん。省略形ね。3どんぐりなら1500円だろ。
          そういう時は「3り」って言うんだよ」

ネネム「万博まで乗せてもらおうかと思ったんですけど・・・なんか高そうなのでふつうのバスに
    乗っていきます」

ジョニーウォーカー「なに遠慮してんだよ。友達だろ。サービスしとくよ」

ネネム「やったー!」



ネネムがジョニーウォーカーのネコバスに乗りこむ。

バスの行先表示が「万博行き」になって光った。

たった一人の乗客を乗せたワーゲンバスは北へと北へと走っていった。

ねこの運転手は上機嫌にハンドルを握っていた。


乗客「運転手さん、なんだか楽しそうですねえ」

運転手「そりゃそうだよ。ずいぶん憧れたからねえ。
   ・・・あのぉ・・・どうせだから、本格的にやっていいかなあ?」

そう言って猫の運転手は後部座席に置いていたネコバス交通社のマークの付いた帽子をかぶった。

乗客「あらま、帽子までかぶっちゃって。ほんと夢見るねこさんだったんですね」

そして、ねこの運転手はなぜか右手にマイクを掴んだ。

乗客「え?」

運転手「えぇ〜みなさまぁ〜、右手をご覧下さいませぇ〜、大阪城でござますぅ〜」

乗客「なんでバスガイドやねん!」

運転手「えぇ〜みなさまぁ〜、その昔ぃ〜豊臣の秀吉はぁ〜、猿と呼ばれておりましたぁ〜」

乗客「もうええねんッ!なんやその猿んとこ!?
   ・・・ったくもう運転手さんに憧れてたんじゃないんですか?」

運転手「バスガイドはワタシの永遠の夢だよ」

乗客「はぁ・・・」

バスガイド「ところでネネムさん、万博には何しに行くの?」

乗客「いえね、こんど8月にロハスフェスタというイベントがあるんですよ。その説明会に行くんです」

運転手「ふ〜ん。なにすんのそこで?」

乗客「ペンネンネネムをしようかと」

運転手「絵本カフェを万博でするってこと?」

乗客「そうです。いうならば「青空ネネム」ってとこでしょうか・・・・・・あっ!そうだ!
   このバス貸してくださいよジョニーウォーカーさん?」

運転手「まあ、べつに車ぐらい貸してあげるけどさぁ、ネコバス議定書はちゃんと守ってよ」

乗客「なんですかそれ?」

運転手「別にそんな難しいことじゃないんだ。ネネムさん、なぜ人はネコバスに惹かれるんだと思う?」

乗客「・・・まあ、そりゃぁ、かわいらしいからでしょう」

運転手「違うね。それはうわべだけのことだよ。ネコバスの行先はいつだって幸せの場所なんだよ。
    乗客が望む一番幸せな場所なら、山道だろうが、夜中だろうが、あっという間に運んでくれる。
    乗客はみんな幸せを求めて乗り込んで来るんだよ。だからネコバスを運転するものは必ず
    乗客を幸せな気分にさせないといけない。これがネコバス議定書だよ」

乗客「守れなかったら、ネネムのバスでお客さんが幸せを感じなかったらどうなるんですか?」

運転手「大変だよその時は」

乗客「ど、どうなるんですか?」

運転手「その時は、ネコバス議定書第86条に従って、一年間かつおぶし禁止だ」

乗客「・・・べつにいいんですけど・・・」






ぼくは


ジョニーウォーカーさんのネコバスを借りて、


千里万博のロハスフェスタで


ペンネンネネムをオープンすることにしました。


お店の名前は


「ペンネンネネム・バス」


です。


でもまだ、


このバスで何を売ろうか?


何を積んでいこうか?


迷っているところなんですが、


ネコバス議定書にのっとって、



幸せなもの



たくさん積んで行こう


と思います。










万博の中央ゲートあたりでネコバスは停車した。


運転手「はーい。お客さーん、到着ですよー」

乗客「ありがとうございます。えーと、おいくらですかぁ?あ、今、手持ちのどんぐりございません
   ので、円で払ってもいいですかあ?」

運転手「かしこまりました。円のお支払いですね。ではレート計算いたしますので
    もう少々お待ちください」


そー言って、猫の運転手は電卓をはじいた。


運転手「えー、1り500円ですので・・・千里万博までとなりますと・・・と・・・」

乗客「・・・」

運転手「・・・え〜、お客様、非常に申し上げにくいんですが、千里万博までのバス賃の方がですねぇ・・・」

乗客「・・・おいくらですか?」

運転手「50万円でございます」

乗客「は!?ご、50万!!???ふざけないでくださいよ!
   50万もするバス料金なんて聞いたこともないですよ!?」

運転手「そう言われましてもお客様、きちんとレート計算いたしましたらそーなりますもので・・・」

乗客「どんな計算ですか?その計算教えてください?いったいぜんたいどんな計算すれば、
   そんなばかげたバス賃があらわれるわけですか?」

運転手「つまりですね、現在1り500円でございますので、お客様の行先は千里万博ということで、
    『1り×千里』となりますので、えー『500円×1000り』で・・・50万円、
    で、ござーますね」

乗客「ふ〜ん。『1000り』ねえぇ・・・。
   ねえ、ジョニーウォーカーさん、それ、今思いついたでしょ?」

運転手「バレた?」












ちょっとばかし交通費はかかりそうですが、



夏のペンネンネネムの行先は



千里万博になりました。







8月のお客さんの行先が



ペンネンネネム・バス






ありますように。











あっ、


安心してください。


ペンネンネネム・バスの商品は


「円」で買えますよ。


「り」じゃないですから。


一応ね。










参考映像:宮崎駿「となりのトトロ」

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開設日: 2006/1/29(日)


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