院長のひとりごと

美容外科歴45年、今になって思う昔話、あの事この事

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2007年1月9日

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医者冥利

新聞・テレビを覗いていると、毎日のように報道される交通事故。
悲惨な事故がこれでもか、これでもかと続きます。
特に運転手よりも助手席に乗っていらしゃった方がより致命的な傷を
それも特に顔面部に受けている場合が多いような印象を受けます。
カップルで乗っていれば奥さんか女性同伴者が被害者です。
砕け散るフロントガラスの破片が無数の凶器となって、
女の人にとって命より大切とされる顔に飛び散ります。

ある日当院を訪れた、結婚式を目前に控えたカップルがその一組でした。
助手席に乗っていたというその女性の顔は小さく抉り取られたり、盛り上がったりしたキズ跡が
顔一面にニキビのように散らばった状態でした。
怪我をして担ぎ込まれたのは一般の外科病院です。
「形成外科」なんていう診療科はまだありません。
太い糸でブツブツ縫いこまれていました。
親戚から「札幌に綺麗に傷を縫ってくれる病院がある」と聞いたとの事で来院されたのでした。

糸は太く縫い方も雑でしたので、全ての糸を抜いて細い糸針で縫い直ししました。
今の時代であれば形成の先生も増えたし、外科の先生もかなりキズ跡に気を使うようになりましたから
こんな事は無いかもしれません。
いずれにせよキズ跡の形成は3ヶ月、半年単位で経過を追っていかなくてはなりません。
小さく残った皮膚の盛り上がりはヤスリで削ったり、赤いシコリには軟膏を処方したりと
治療は約2年にわたって続きました。

札幌市内ではなく、確か地方の方だったと思います。
彼女の傍にはいつも彼が影形の如く付き添っていました。

その5年後、分厚い封書が届きました。
中にはお二人の結婚式のスナップ写真が4〜5枚入っていました。
「良くぞここまで治ったものだ」と思うのはもちろんですが、
暖かく見守り続けた彼の愛情の深さ、
そして彼女の根気よく治療に通い続けた意志の強さがあってこその効果だったのでしょう。

医者冥利に尽きる、とはまさにこの事です。

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