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 放送から少し時間がたってしまったが、
 3月26日放送の土曜ワイド劇場『タクシードライバーの推理日誌39 スキャンダルな乗客!!』について書く。


 元刑事のタクシードライバー夜明日出夫(渡瀬恒彦)が、ある日乗せた客は、劇団「城塞」に所属する有名女優・三条亜希子(高橋ひとみ)だった。

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 目的地の劇場に着いてみると、そこにはなぜか夜明の娘のあゆみ(林美穂)がいた。あゆみはその劇団で、創立30周年を記念して出版される本の編集をするアルバイトをしていた。

 三条亜希子のファンだった夜明は、稽古場を見学させてもらうことになるが、そのとき案内をしたのが、劇団の演技マネージメ
ント部に所属する森川時枝(中山忍)だ。


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 時枝は、もともとこの劇団の女優だった。しかし5年前、舞台の本番中に、奈落に落ちて頭を強く打ち、その時の後遺症で左足に小さな麻痺が残った。舞台に立てなくなった時枝は、いったんは劇団をやめて故郷に帰ろうとしたが、三条亜希子に引き止められて劇団に残り、現在は、三条亜希子のマネージメントのかたわら、若手俳優の演技指導にもあたっている。


 その頃、劇団「城塞」では、創立30周年記念として近く上演される舞台『奇跡の人』の、ヘレン・ケラー役のオーディションが行なわれていた。27年前、三条亜希子もヘレン役を演じてスターとなったが、今回はその三条亜希子がアニー・サリバン役で出演するという。

 
 オーディションを受ける者たちの稽古を見学した夜明は、沢田梓美(荒川ちか)という高校生の演技を見て
「あの子、凄いですね」と思わず口にするが、それを聞いた時枝は
「芝居だけなら、あの子が抜けているのに…」
 と呟いた。

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 じつは、このオーディション、出来レースではないかという噂が立っていた。
 劇団代表で演出家の椎名一馬(西岡馬)をはじめ、劇団の主だった幹部たちは、ヘレン役に島本エリカ(尾碕真花)というアイド
ルを選ぶよう、エリカの所属する大手プロダクションから圧力を受けているようだった。



 フリーライターの戸川聡(土屋佑壱)は、そんな劇団「城塞」にまつわるスキャンダルについて嗅ぎまわっていて、森川時枝にも接触してきた。

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「オーディションなんて八百長だ。椎名のやつ、プロダクションからいくら貰ってるんです?」
 と話す戸川に、時枝は
「情けなくないの?  仮にも昔は、椎名先生にも期待された戯曲家だった。それが落ちぶれて逆恨みなんて…」
 と軽蔑をこめた言葉を返した。

 しかし戸川は言う。
「落ちぶれたのは、お互い様ですよ。
 27年前、三条亜希子と最後までヘレン役を争ったのはあなたでしょう?
 そのあなたも落ちぶれて、舞台に立てなくなった。
 あなたは、三条亜希子を恨んでる。彼女のせいで、あなたは舞台に立てなくなったんだから」

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「あたしは誰も恨んでなんかいないわ」
 と時枝は言ったが、それでも戸川は
「三条亜希子の近くにいるのは、いつか復讐するためでしょう?」
 と時枝に言い、
「何が30周年記念公演だ! そんなもの、ぶち壊してやる!」
 と言い捨てて立ち去った。


 後日、夜明は 三条亜希子から指名を受け、亜希子を西伊豆の堂ヶ島のホテルまで乗せて行く。
 堂ヶ島は、亜希子の故郷だった。
「時々、生まれ育った海が見たくなるんです」
 と亜希子は言った。


 その翌朝、東京お台場で戸川聡の遺体が発見される。
 前夜、後頭部を強打され殺されたあと、海に投げ込まれたらしい。

 戸川は殺される前、記事を売り込んでいた雑誌の編集者に、
「今からお台場で森川時枝を張ります。
 劇団『城塞』がひっくり返るくらいのネタを出しますよ」
 と電話で話していた。

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 警察は森川時枝に事情を聞くが、時枝は戸川が殺された時刻には、自宅にいたと話す。しかし、それを証明するものはなかった

 また、殺された戸川のパソコンには、三条亜希子を撮った写真が多数残されていた。


 しかし、三条亜希子は、戸川が殺された時刻には 西伊豆の堂ヶ島にいた。そのことは、亜希子を西伊豆まで乗せて行った夜明がよく知っており、亜希子のアリバイは完璧かと思われた。


 そんなある日、オーディションを受けていた沢田梓美の母親が怪我をし、夜明は再び指名を受けて、梓美を西伊豆の松崎まで乗せて行く。

 梓美の母・小百合(中島ひろ子)の怪我は大したものではなかったが、小百合は梓美が東京に戻るのを引き止めようとした。
 小百合は、娘の梓美がオーディションを受けることを、あまり歓迎していないようだった。
 結局、梓美は翌朝の電車で東京に戻ることになる。


 しかし、東京に戻った梓美は、歩道橋の階段から転落して重症を負う。何者かに突き落とされたものと思われた。

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 母親の小百合も、東京の梓美のもとへ駆けつける。
 さいわい梓美の命に別状はなかったが、オーディションの最終審査は受けられそうにない状態だった。



 だが梓美は、ヘレン役選考の最終オーディションに ギリギリで駆けつけ、劇団幹部の椎名たちの前で その卓越した演技を見せた

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 オーディションのあと、梓美は、母親の小百合と三条亜希子が 小学生時代からの親友であったことを初めて知らされる。

 小百合は高校3年の時に、劇団「城塞」の『奇跡の人』ヘレン役のオーディションを受けていた。
 一人で行くのが怖かった小百合は、友人の亜希子に頼んで一緒にオーディションを受けてもらうが、結果的にオーディションに受かったのは亜希子のほうだった

「悔しくて、帰り道、口もきかなかった。子供だったのねぇ。応援しようっていう気持ちにもならなかった」
 と小百合は話した。

 その後、亜希子のほうも気をつかって連絡は途絶え、仲直りできないまま現在に至ったという。
「でも、梓美のおかげで亜希子に出会えてよかった」
 と小百合は言った。

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 けど、梓美がオーディションを受けることに乗り気でなかったのは、梓美にそばにいてほしかったからだと小百合は言った。
 オーディションに合格しても、亜希子のように成功するとは限らないし、演劇の世界がとても厳しいものだと思っていたからだと小百合は梓美に話すのだった。



 梓美の上着に残っていた指紋から、梓美を突き落とした犯人は、アイドル・島本エリカのマネージャーの三池紀夫(深沢敦)という男だということが判明する。
 三池は、梓美を殺すつもりはなかったが、島本エリカのヘレン役抜擢の邪魔になる梓美を オーディションから外したかったのだ

 しかし、三池は、ライターの戸川が殺されたことについては何も知らないと言う。



 オーディションの結果について、劇団代表で演出家の椎名は、ヘレン役については自分に一任してほしいと劇団の幹部たちに頼み、幹部たちもそれを了承した。椎名は、この公演を最後に、劇団の代表をやめることを公言していた。


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 その夜、三条亜希子と同じく劇団の副代表を務める女優の長谷麻里子(筒井真理子)が、椎名の部屋を訪れ、自分と島本エリカを、サリバンとヘレン役にしてくれれば、広告代理店がそれなりの前売りを約束してくれていることを伝えた。
 しかし、椎名は、三条亜希子と沢田梓美のキャスティングにすることをすでに決めていて、麻里子にもその旨を告げる。


 しかし、その夜遅く、椎名は神社の階段から転落して死亡する。何者かと争って、突き落とされたものと思われたが、階段の上には23.5センチのパンプスの足跡が残されていた。


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 長谷麻里子は、記者会見を開き、椎名代表の「遺言」として、サリバン役-長谷麻里子と ヘレン役-島本エリカの名前が書かれた紙片を見せた。しかし、本来それは椎名の意思とは無関係の、単なる走り書き程度のものにすぎなかった。


 麻里子のついた嘘は、後日 藤山次郎(河西健司)という演劇評論家によって暴かれる。
 藤山のもとに、椎名が殺される2時間前に吹き込んだ留守電の肉声が残っていたのだ。椎名は、サリバン役とヘレン役は、三条亜希子と沢田梓美に決めたということを はっきりと伝えていた。

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 森川時枝は、稽古場で長谷麻里子に
「椎名先生の遺書は偽造だったんですか?」
 と問い詰める。

 麻里子は、自分はもう二度と舞台に立てなくなったと嘆いたが、
 その一方で、時枝に協力してほしいと頼んだ。

 5年前、時枝が奈落に落ちたとき、一緒に舞台に立っていた亜希子は、奈落の口があいているのを知っていた。
 だから、時枝は亜希子に対する「切り札」を持っているのだと麻里子は言う。
 そして「あたしと組みましょう」と麻里子は言った。


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 しかし時枝は、麻里子の手をふりほどき、そしてきっぱりと言った。
「確かにあたしは切り札を持ってるわ。
 三条亜希子を奈落に突き落とす切り札をね。
 でもあたしは、あなたの道具にはならない」



 だが、その長谷麻里子も、西伊豆で崖から転落した遺体となって発見される。
 崖の上には争ったあとがあり、やはりサイズ23.5センチのパンプスの足跡が残されていた。

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 劇場のモニター映像に、長谷麻里子と言い争う森川時枝の姿が残っているのを見た警察は、時枝から話を聞く。
 長谷麻里子が殺されたと思われる頃、時枝は伊豆の松崎に沢田梓美の実家を訪ね、ヘレン役として舞台に立ってもらえるよう
、梓美と母の小百合を説得していたのだった。

 そして、そのことは、長谷麻里子殺しについて、時枝のアリバイが成立していないことを意味していた。


 時枝のパンプスのサイズも23.5センチであり、捜査にあたる刑事たちは、三条亜希子の付き人の時枝が 対立関係にある長谷麻里子を殺したのではないかと、時枝を問いただした。

 すると時枝は
「そんなことじゃないわ!
 誰があいつのためなんかに…」
 と強い口調で言った。


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「あいつ? それは三条亜希子さんのことですか?」
 と訊かれて、時枝は

「刑事さん、知らないんですね。どうしてあたしが女優をやめさせられたのか。
 亜希子さん知ってたんです。機械の故障で奈落の口があいていたことを。
 知っててあたしを止めなかった。自分の芝居を壊したくないから。
 その怪我の後遺症で、舞台に立てなくなった」

 と言って立ち上がると、窓のふちのあたりを拳で強く殴って、

「三条亜希子のせいであたしは女優をやめたの!
 付き人になったのは、いつか復讐してやるためよ!
 あいつのために自分の手を汚したりしない。
 麻里子さんを突き落としたのは…」

 と、そこまで言って言葉をつまらせた。

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「突き落としたのは…、それから何です?」
「いえ…」
「突き落としたことは認めるんですね」
「突き落としてないわ。あたし、なんにもしてない!」

 時枝はひどく取り乱した様子で、それでも麻里子殺害を否認したが、取り調べに当たった刑事たちは、時枝が自供するのも もはや時間の問題だと考えていた。

 
 しかし、神谷警部(平田満)は、確かに時枝が限りなく黒に近いと確信はしていたが、どうしても気になる点があると、かつての同僚の夜明に打ち明ける。

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 芝居のオーディションで名の売れたアイドルが選ばれるというのは、それほど大したスキャンダルではない。少なくとも、それが原因で殺人事件が起きるほどの秘密ではない。
 殺された戸川が追っていたのは、もっと大きなスキャンダルだったのではないか。それも、三条亜希子に関わる。

 それに、夜明は三条亜希子が人を殺すような人間ではないと言うが、長谷麻里子が殺された時、三条亜希子も西伊豆にいた。
 戸川聡が殺された時のアリバイも、何かトリックがあるのではないかと神谷は言うのだった。



 このあと、事件は予想外の展開を見せる。
 真犯人は誰で、一体どういう動機で3人は殺されたのだろうか。
 (ひとつ余計なことを言っておくと、劇団代表の椎名は、自らのとんでもない発言が原因で殺されている。これは、おそらく犯人にも予測不能
な出来事だっただろう。)



 今回、中山忍は、かつて将来有望な女優でありながら、事故で舞台に立てなくなり、現在は劇団の裏方を務める「森川時枝」という女性を演じている。

 時枝が、奈落に落ちた事故に関して、三条亜希子を今でも恨んでいるのかどうか。その本当のところは、ドラマのラスト近くになって明らかにされる。


 ただ、時枝が刑事たちの前でした供述をよく聞いてみると、その内容がどこか他で聞いたことのあるセリフに似ていることに気づくかもしれない。
 そう。時枝が軽蔑を顕わにした、あのフリーライターの戸川聡が 時枝の心情を邪推したセリフの内容と、時枝の供述の中身とは
、とてもよく似ているのだ。このことは、森川時枝の行動を謎解くひとつのカギと言ってもいいだろう。


 森川時枝は、どちらかといえば、冷静で理知的な人物として描かれていたと思うが、やはり事故で舞台に立てなくなったという思いが常に意識の底にあるせいか、どこか鬱屈とした部分を感じさせる女性だったと思う。
 だが、そんな一見ネガティブな森川時枝が我々に見せてくれたものは、心の中に決して譲ることのできない矜持を持ち続けた一
人のプロフェッショナルな人間としての生き様であったのかもしれない。


 最後に時枝は言った。

「あたしだって、女優なんです。
 三条亜希子の付き人なんかじゃない。
 あの人たちと同じ女優なんです」


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 そして、私たちは、この物語の中に隠された、もうひとつの劇中劇の存在を知ることになるのだ。

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